LIVE SHUTTLE  vol. 315

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ASKA、オーケストラとの競演でステージに復帰。変わらぬ強靭な歌声に存在感輝くパフォーマンスをレポート(“楽屋の立ち話”&セットリスト付き)

ASKA、オーケストラとの競演でステージに復帰。変わらぬ強靭な歌声に存在感輝くパフォーマンスをレポート(“楽屋の立ち話”&セットリスト付き)

ASKAがステージに還ってきた。ビルボードジャパンのポップス&ロックとクラシックの融合公演〈billboard classics〉シリーズとして開催された〈billboard classics ASKA PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2018-THE PRIDE-〉。11月5日の東京国際フォーラム ホールAにて幕を明け、特別プログラム公演の12月23日静岡・グランシップ静岡大ホール・海まで全11公演、オーケストラとの競演で見せた、約6年ぶりとなるASKAのステージパフォーマンス。彼の新たなスタート、その感動の瞬間、初日の模様をセットリスト付きでお届けする。

取材・文 / 小貫信昭

ASKAの強靭な歌声が、メロディという櫓を漕ぐように、会場全体に響いていく

照明に照らされたステージに、東京フィルハーモニー交響楽団の面々が登場する。少し遅れてコンダクターの藤原いくろうが指揮台へ上り、大きな拍手が鳴り響く。この日を迎えるにあたり、彼はASKAと、楽曲のアレンジなどに関して、幾度もミーティングやリハーサルを重ねてきた。いざタクトが振られ、前奏曲(プレリュード)が始まる。最初は何の曲かわからなかったが、それは紛れもなく、「On Your Mark」であった。よりによってこの曲か……。早くも目頭が熱くなる。そして主役が現われた。

ASKAは颯爽と、右手を上げて、ステージセンターへと歩いてきた。シックなスーツ姿だ。万雷の拍手に応えている。拍手はさらにボリュームを上げる。もう片方の手も上げて、両手でそれを受け止める。ひとときの静寂があって、オープニングは「熱風」だった。逆巻く波を越え、目指す場所へと船を出す歌……。ASKAの強靭な歌声が、メロディという櫓を漕ぐように、会場全体に響いていった。

終演後には「同じ出口から出て行けるようなライヴになるように」

この日のライヴには、ASKAの音楽的な相棒であるピアノの澤近泰輔、さらにパーカッションの小野かほりが加わっている。早くも「熱風」で、小野が加わってこそのアンサンブルが、たしかに響いていた。「I’m busy」では、オーケストラの大所帯が身軽に空気を弾ませて、ポップなこの曲を輝かせてみせた。オーケストラの面々が率先して、客席の手拍子を誘う。少しずつ、空気がやわらいでいった。

日本中のマスコミが注目した第一声は、「おまぁたせー」という、実に気楽なものだった。そのあと、IKKOさんのモノマネで笑わせる。ファンはこの日まで、様々な想いを背負って会場に駆けつけたと思うが、彼の気さくな第一声で、いったんそれを肩から下ろし、膝の上に乗せた感じに変わったのではなかろうか。ASKAはMCを続けた。ステージと客席の気持ちが重なって、終演後には「同じ出口から出て行けるようなライヴになるように」と語りかけた。

華やかな前奏から歌い出されたのは、「はじまりはいつも雨」。早くもここで代表曲。うわ〜、ホンモノだ。こういうのは感想とは言わないかもしれないが、こういう声で、こういう説得力のバラードを歌うのは、ASKAひとりなのである。まさに歌の世界観に浸っていた。映画『ブレードランナー』からインスパイアされたとおぼしき「迷宮のReplicant」は、10年前のオーケストラとの競演のときも話題となった。ASKAの歌声が、表現の領域においてオーケストラを凌駕する瞬間があり、その逆もある。この両者こその丁々発止があり、だからこそ、その先に広大な表現のスペースが出現するのだ。

「アスカーっ」「お帰りーっ」。客席から、様々な声が掛かる。MCを遮るようなときは「今、喋ってるからねー」と絶妙の間合いでいなしたり、臨機応変、客席とのキャッチボールを楽しむ。この数年間、何をしていたかの話になる。「曲ばっかり、作ってましたね」。現に昨年、『Too many people』と『Black&White』という2枚のアルバムが出ている。今年に入ってからも、6ヵ月連続で配信による新曲がリリースされてきた。次に歌ったのは、最近の作品から「しゃぼん」。初めて聴くのに前から知っていたかのように心に馴染む。ここでいったん、休憩となる。

澤近のリリカルなピアノに乗せて歌われたのは、「FUKUOKA」

2部がスタートする。タクトを持ってASKAが現われ、早足で指揮台へと上がり、いざ指揮をするかと思いきや、思い留まる(そうか。こういうギャグも用意していたのか……)。定位置へ戻り、曲紹介を始める。「この曲はね……、この曲は……。まっ、いいや」。何かを喋ろうとして、やめる。説明するのではなく、すべてを曲から感じて欲しい、ということなのか……。澤近のリリカルなピアノに乗せて歌われたのは、「FUKUOKA」。この名曲を、生で聴きたかったファンは多かっただろう。

さらに最近の作品から「未来の人よ」。この作品は、冒頭部分が味わい深いモノローグになっている。ASKAらしい“時間への感覚”が発揮された歌詞に思える。「修羅を行く」では、自身のブルースハープの演奏もキマっていた。「MIDNIGHT 2 CALL」は、いつ聴いても物語の切り取り方が絶妙だ。ちょうど歌詞が“動かせないまま”に差し掛かったあたりで弦がブレイク。そこに醸し出された情感は、圧倒的だった。こうしたアレンジ上の意匠は、細かくは触れないが、そこかしこに散りばめられていた。

両拳を突き上げ、魂を解放させ、“YAH〜YAH〜YAH〜”と大合唱

いよいよライヴは後半へ。渾身の歌唱が聴けた「君が愛を語れ」は、マイクスタンドの上下2箇所をしっかり掴んで体を反らし、歌をさらに深掘りしていく、彼ならではのパフォーマンスである。「月が近づけば少しはましだろう」は、もともとロックオーケストラ的な世界観のアレンジなので、今回のようなコンセプトのライヴにも、そのまま馴染む感じがした。

そしてついに、降りそそぐような照明とともに「YAH YAH YAH」が始まる。このあたりまでくると、これがオーケストラとの競演だろうと、バンドとのものであろうと、“音楽はみな同じでしょ!”みたいな感覚になっていく。両拳を突き上げ、魂を解放させ、“YAH〜YAH〜YAH〜”と大合唱するとき、我々は無に近づき、体全部が心地良くなる。それに向かうための“装置”が、つまりこの歌なのだ。〈ASKA PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2018 -THE PRIDE-〉は、着席して観ることを基本としているそうだが、かといって、この期に及んで座っているのは不可能ともなっていた。

最後の最後、コンサートタイトルでもある「PRIDE」が歌われた。その前に、自分たちがブレイクを果たした曲は「SAY YES」だと言われているが、「曲が“ひとり歩き”し出したのはこの曲から」と語る。ふと口ずさめば、迷える気分が正されて、かわりに気高さが満ちてくる歌だ。歌い終わったASKAは、やり遂げた表情になっていた。そして、藤原いくろうと肩を組み、ステージを去った。

「今がいちばんいい」──自分という歴史の肯定。瞬間瞬間の充実

アンコールは「SAY YES」。さらに、「つねにこう思っています。今が一番いい……」。そんな言葉とともに歌われた、「今がいちばんいい」。世の中には“リア充”という言葉もあるけど、それに較べて「今がいちばんいい」で歌われていることは、周囲を見渡し、他との比較で感じる充実ではないだろう。自分という歴史の肯定というか、そこにはムダなどないと信じることから生まれる瞬間瞬間の充実に違いない。だから、過去を切り捨てればいいってものでもないのだ。これから歌が浸透するに従い、客席の反応も、どんどん熱いものになっていきそうな予感がする。なにしろ今回は“初演”なので、今後を見守ろう。

終演後にちょっとだけ、ASKAと立ち話をした。僕は第一声の「おまぁたせー」が気になっていた。

なんであんなにくつろいだ第一声にしたんですか?

ASKA いや、あれは、(手を胸より下へ持っていき)このあたりから少しずつ、徐々に上がっていけたらいいなって思ったからなんだけど。

それは思いどおりに?

ASKA そうだね。うまくいきましたよ。

billboard classics ASKA PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2018-THE PRIDE-
2018.11.5@東京国際フォーラム ホールA SET LIST

Prelude. On Your Mark
M01. 熱風
M02. Man and Woman
M03. I’m busy
M04. はじまりはいつも雨
M05. 同じ時代を
M06. 迷宮のReplicant
M07. しゃぼん
M08. FUKUOKA
M09. 未来の人よ
M10. 修羅を行く
M11. MIDNIGHT 2 CALL
M12. 君が愛を語れ
M13. 月が近づけば少しはましだろう
M14. YAH YAH YAH
M15. PRIDE
EN01. SAY YES
EN02. 今がいちばんいい

ライブ情報

ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA – 40年のありったけ –

2019年
2月6日(水)オリンパスホール八王子
2月8日(金)神奈川県民ホール
2月15日(金)ソニックシティホール
2月19日(火)福岡サンパレス ホテル&ホール
2月21日(木)広島文化学園HBGホール
2月22日(金)サンポートホール高松
2月26日(火)名古屋国際会議場 センチュリーホール
3月1日(金)静岡市民文化会館
3月12日(火)グランキューブ大阪 メインホール
3月13日(水)神戸国際会館 こくさいホール
3月20日(水)新潟県民会館
3月23日(土)宇都宮市文化会館
3月24日(日)仙台サンプラザホール
4月12日(金)東京国際フォーラム ホールA
※追加公演開催予定。

ASKA(アスカ)

1979年にCHAGE and ASKAとして「ひとり咲き」でデビュー。「SAY YES」「YAH YAH YAH」「めぐり逢い」など、数々のミリオンヒット曲を生む。並行して、音楽家として楽曲提供やソロ活動も行い、1991年発表の「はじまりはいつも雨」がミリオンセールスを記録。同年リリースのアルバム『SCENEⅡ』もベストセラーに。また、アジアのミュージシャンとしては初めて「MTV Unplugged」へも出演。2017年には自主レーベル「DADA label」より、アルバム『Too many people』『Black&White』をリリース。2018年7月には『Black&White』のMusic Video集、10月には、ファンが選んだベストアルバム『We are the Fellows』と、ASKAが選んだベストアルバム『Made in ASKA』を発表している。また、11月には『SCENE -Remix ver.-』『SCENEⅡ -Remix ver.-』をリリースし、2019年2月からは、バンドツアー「ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA -40年のありったけ-」を開催する。

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