es執筆陣が独断で選ぶ2018年 BEST MUSIC  vol. 2

Column

2019年、歌う“菩薩”の降臨を願うベスト3

2019年、歌う“菩薩”の降臨を願うベスト3

クイーンのフレディ・マーキュリーと誕生日が一緒だったことに改めて気づき、びっくりしたけどネタにもすることが出来た2018年(笑)。SNSで呟くと、“ああ、確かに似てる…”と知人のギタリストから反応があった。でもフレディと僕の、何が似てるかを問い質すことはしなかった。ちなみにそれは、顔の造作やファッション・センス、歌唱力ではないらしい(そだねー)。

2018年といえば、話題の人物は貴乃花元親方(周辺)と前澤社長であった。僕は前澤社長、好きだ。様々なジャンルの芸術家を月旅行に連れていこうとしているのは、そのことで何かインスパイアされ、作品に活かしてくれたら、という願いからのようだし、こういう人を真の“パトロン”と呼ぶのだろう(前澤、半端ないって!)。

さてここからは、自分の本業である音楽シーンを眺めてのベスト3だが、勝手に歌う“菩薩”の降臨を願うベスト3、なんていう大仰な構えにしてみた。まぁ、要は“気になる女性ボーカリスト”を3人挙げた、ということである。

文 / 小貫信昭

Aimer/「Ref:rain / 眩いばかり」

Aimerのことは読み方すら分らなかったが、2017年のベスト盤のジャケの猫が可愛かったので、ふと聴いてみた。完全な“ジャケ買い”状況だったが、「こんな凄いボーカリストが居たのか」と驚いた。心、揺さぶられた。心、揺さぶられるとは、脳を経由しない感動だ。人間、齢を重ねると、「これは私が感動するに値するモノだろうか?」などと、背景なんかも考えつつ判断しちゃうけど、そういうことを飛び越え、まさにダイレクトに響く歌だった。

そんな中、2018年の彼女の1曲を個人的に選ぶなら、「Ref:rain / 眩いばかり」である。何度も聴いた。歌が静かな波動となり押し寄せて、気づけば心地良く、私は感涙していた。ひとりぼっちの仕事場という、密閉された場所での出来事だったが、あまりにも見事にヤラれたので、隠さず公表したいと思った。

オフィシャルサイトhttp://www.aimer-web.jp

大原櫻子/『Enjoy』

大原櫻子は多動力系といえばそうだが、ここでは菩薩部門でのエントリーである。彼女の歌は、聴いていると辺りの酸素が濃くなっていくような気分になる。頭がすっきりしてきて、心の歩幅もちょっと広くなっている。まだまだお若いが、さらに今後、艶や翳りといった陰影が、より歌唱表現に加わり、万人を包み込むようなボーカリストへと育っていくことを願っている。

最新アルバム『Enjoy』は、さらにさらに可能性を拡げている彼女を捉えた作品集であった。個人的に特に良かったのは、「夏のおいしいところだけ」である。高橋久美子の作詞だが、この業界、作詞家は慢性的に人材不足であるけれど、高橋は逸材だろう。“夏のおいしいところだけ”というフレーズは、多分、スイカからの遠い連想だろう。巧みに季語を隠している。この表現がたまらなくイイのである。

オフィシャルサイトhttps://oharasakurako.net

佐藤千亜妃/『SickSickSickSick』

最後に佐藤千亜妃の『SickSickSickSick』を。この5曲入りは、個人的には2018年の夏の覇者であった。あの季節の午後といえば、「空気というのは気体ではなく固体なのでは」と思うくらいまとわりつく瞬間があるが、そんな時、この作品集は深呼吸する場所を与えてくれたのだ。特に「Summer Gate」は必殺必聴の1曲。外国のものなら、カエターノ・ヴェローゾとかヴィニシウス・カントゥアリアなんかと並べてもいい感じで部屋の空気を満たしてくれた。

彼女のソングライターとしての資質も分りやすく伝わった。「ああ、佐藤千亜妃だな」というメロディの上げ下げというか呼吸というか、きのこ帝国の「クロノスタシス」に衝撃を受けて好きになった人間にとって、“あの感覚”にプラス、よりマイルドな雰囲気、というか…。

砂原良徳のプロデュースも密度の高いものであり、全体を“音響系”的に塊としても聴けつつ、個々がそれぞれ際立つ工夫も手抜かりナシだ。「Signal」は、地下水脈で坂本龍一の「SELF PORTRAIT」に繋がっているのではと思ったりもした。ラストの「Prologue」が、作品集全体をメビウスの帯のようにした。

オフィシャルサイトhttp://kinokoteikoku.com/


なお、エンタメステーションで週一の更新を続けている【80年代名鑑】明菜からYMOまで 80’sからの授かりものが、お陰様で連載100回を突破しました。2019年も、ぜひぜひ宜しくお願いいたします!

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