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YMO40周年記念、貴重なトーク&試聴会イベントをレポート! テイ・トウワ、砂原良徳も『NEUE TANZ』の制作秘話を披露!

YMO40周年記念、貴重なトーク&試聴会イベントをレポート! テイ・トウワ、砂原良徳も『NEUE TANZ』の制作秘話を披露!

イエロー・マジック・オーケストラの結成40周年を記念した公式試聴会イベントが、12月10日(月)に東京・タワーレコード渋谷店B1F CUTUP STUDIOにて開催された。

イベントには、10月17日に発売された、40周年アニヴァーサリー・コンピレーション『ノイエ・タンツ(NEUE TANZ)』の選曲・監修を務めたテイ・トウワ、リマスタリングを担当した砂原良徳が出演。『ノイエ・タンツ』の制作秘話や、11月28日に発売された、アルファレコード時代のアルバム3作『イエロー・マジック・オーケストラ』『イエロー・マジック・オーケストラ<US版>』『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』の最新リマスター盤について、多様化する音楽の聴き方などのトークが展開された。

古くから交流があり、現在は高橋幸宏とともにMETAFIVEのメンバーでもあるテイ・トウワと砂原良徳。多くのYMOフリークが集まる中、司会者も交えて和やかなムードで2人の会話が進行。まず、イベント冒頭で2人はYMOとの出会いを語る。

テイ・トウワ 「ちょうど『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』が出た頃、町田のレコード屋さんの店頭で、人民服着た人がタンス(モーグ・シンセサイザー)の前にいる映像で、音は<ライディーン>が流れてたんですよ。ずっと授業中気になってて、次の日、店に行って“中国の人のレコードありますか?”って買ったんです。そこからですね」

砂原良徳 「ほぼ同時期だと思うんですけど、子供が見に行くロボット博で、ロボットの後ろで<中国女>が流れてたのに衝撃を受けたんですよ。あとで、<中国女>を聴いたときに、これあのときかかってた曲だ!と思ってそこからのめり込んでいきましたね」

では、アルバム『ノイエ・タンツ』の概要に触れよう。『ノイエ・タンツ』は、1978年から1983年のアルファレコード時代にリリースされた、YMOとメンバーのソロの中から、テイ・トウワが選曲し、その楽曲たちを砂原良徳がリマスタリングしたコンピレーション作品。ジャケットのアートワークは、現代美術家の五木田智央が手がけている。40周年を迎えたYMOの音楽を、現在の新譜であるかのように届けたいという、テイの発案がこのプロジェクトのスタートだ。

テイ・トウワ 「今年YMO40周年だなと思って、今年の頭に細野さん主催の新年会にお呼ばれしたとき、何かやるんですか?って聞いたんです。そしたら“なんもないよ”っておっしゃってたんですよ。そこからですね。去年、僕がニューヨーク行ってるときに、中古レコード屋さんで“YMOのレコードが欲しいって若者が毎日来る”って話を聞いて、じゃあせっかく40周年だし、若い人に先入観なく聴いてもらえる、今のもののような振りをしたYMOの作品が作れないかな?ってぼんやり思ったんです。それで、高橋幸宏さん…僕は会長って呼んでるんですけど、会長に、ベストアルバムじゃないコンピレーションアルバムをアナログで出したいって話をしたんです。そしたら”他の2人(細野晴臣、坂本龍一)も、テイくんならダメとは言わないんじゃないかな”と言ってもらえて、そのあとソニーミュージックさんと話を詰めていきました」

リマスタリングを砂原良徳に依頼するのは、最初から決めていたことだという。

テイ・トウワ 「まりん(砂原)にお願いするのは、最初から頭にありました。ジャケを五木田くんにお願いするのも勝手に決めてましたね。五木田くんは、僕より詳しいYMO好きなんですよ(笑)。なので、実質3人で『ノイエ・タンツ』を作っていきました。最初、まりんにはコンピレーションの意図を伝えて、元のマスターの素材も聴いてもらって、違うものにできるでしょって言ったんだよね」

砂原良徳 「でも、最初は自信なかったです。YMOファンって見る目も厳しいじゃないですか(笑)。だけど、試しに音をいじってみたらいい感じになって、やりますって返事をしました」

昨今では、ありとあらゆるアーティストのリマスター盤が存在しているが、古い作品の掘り起こし作業のため元の素材となるマスターテープがない場合も少なくない。YMOの場合は、しっかりと音源が残っているため、音を追求した真のリマスタリング作品が作ることができたそうだ。

テイ・トウワ 「結構、当時の素材のマスターがなくて、CDから作業するリマスター盤って多いんですよ。でも今回は、当時のオリジナルアルバムを作ったときの、マスタリングする前のトラックダウンした2チャンのものが全部あったんです。なので、例えば「ファイアークラッカー」や「シムーン」はミックスが2種類あるので、それぞれの音源を聴いて、選んで入れることができたんです」

では、今回テイ・トウワがどのような基準で選曲や曲順をしていったのか。

テイ・トウワ 「選曲に関しては、1曲目を<開け心-磁性紀->で始めて、それに続く感じでっていうのだけ見えてた感じですね。曲順で気にしたことは、まずアナログを想定したんです。今回2枚組なので、A面、B面、C面、D面があるけど、それぞれの面が全部違うアルバムから集まるように考えたんです。っていうのは、みんなオリジナルアルバムを持ってる人たちが聴くので、違うアルバムの曲が隣り合わせになる面白さ、違うクラスの生徒とか先輩後輩が一緒にいるみたいな面白さが出せればなって思いましたね。新しい作品の振りをするということで。あと、アナログありきの発想だったので、2枚で12曲目まではアナログで、残り4曲はCDのボーナストラックって考え方にしたんです」

世の中の音楽は、制作されパッケージに落とし込まれていくまでに、レコーディング、ミックス、マスタリングといった流れを踏む。アナログ盤の場合は、そこからプレス作業を行うための、カッティングという工程が必要になる。アナログ盤の『ノイエ・タンツ』のカッティングは、クインシー・ジョーンズ、マイケル・ジャクソン、プリンス、スティーリー・ ダンなど、多くの名盤を手がけてきたバーニー・グランドマンが担当している。

砂原良徳 「そもそも、僕がマスタリングに興味を持ったのはバーニー・グランドマンだったんです。ジャネット・ジャクソンのアルバム『The Velvet Rope』を聴いて、なんじゃこりゃって衝撃を受けて。バーニー・グランドマン・マスタリングが日本にもできて(バーニー・グランドマン・マスタリング東京)、僕のアルバム(『The Sound Of ’70s』)もマスタリングをお願いしたことがあります。バーニー・グランドマンのマスタリング技術は相当なものですね」

なぜ、彼らがこれほどまでにこだわりを持って作業を行ったかというと、「アナログでもCDでも、プロダクトとして作っていく中でどの工程も音に影響する」(砂原良徳)ことがあるから。CDのプレスよりも、さらに工程の多いアナログ盤となると、より厳密な目が必要になってくる。今回、監修を務めるテイ・トウワは、そうした面でも抜かりなしの手腕を発揮した。

テイ・トウワ 「今回、スタンパー(塩化ビニールをプレスするための、音溝の型)の作業をLAでやったんです。メッキの素材が違うらしくて、やっぱいいんですよね。ただ、今回1回やり直したんです。非常にいいまりんのリマスタリングを、一番最後のスタンパーの段階でロウを1デシベル以内で増やしました。アナログ用にごくわずかな補正をしたんですけど、それがいい方向に転んだと思ってます」

音像の部分に触れながら、原曲のイメージを損なわない。ここは、リマスター作品の大きなポイントだ。聴感をフレッシュにしつつ軸はキープするというバランス感は、やはりYMOに愛情を持った人たちが手がけたからこそ、『ノイエ・タンツ』という素晴らしいコンピレーション作品を作り出すことができたのだろう。

イベントでは、『ノイエ・タンツ』のCDから、「今のダンスミュージックを聴いてる人にも聴いてほしくて収録した」(テイ・トウワ)という、アルバムタイトル曲になった「新舞踊」をハイエンドのオーディオセットで試聴。

アナログプレーヤーは、ドイツの老舗ブランドのエラックMIRACORD 90。プリアンプは、アメリカのブランドのオーディオアルケミーDDP-1。フォノアンプは、オーディオアルケミーPPA-1。スピーカーシステムは、細野晴臣、坂本龍一、そしてテイも愛用する、ムジークエレクトロニク ガイザインRL921Kというシステムで、「新舞踊」が流された。

さて、イベントでは、『ノイエ・タンツ』のあとに発売された、『イエロー・マジック・オーケストラ』『イエロー・マジック・オーケストラ<US版>』『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』の3作品についても触れられた。こちらのリマスタリングは、名匠ボブ・ラディックが手がけており、LPのカッティングは同じくバーニー・グランドマンが担当している。2人は、「アナログは聴いてないけど、デジタルのパッケージングされた音源は聴きました。僕のやったマスタリングより、もっと筋肉質な感じで、重たい感じがしました。これはこれですごくかっこいいです」(砂原良徳)、「そうそう。まりんよりもハンバーガーを食べてそうな音がする(笑)」(テイ・トウワ)と、ユーモアを交えて感想を語った。

ここから、アナログ、CD、ストリーミングなどの最近の音楽鑑賞事情に話題が移り、2人が思う音楽の楽しみ方についてが語られていった。

テイ・トウワ 「アナログの方が、製造工程とか転び方でいいパッケージになったりダメなものになってるものがある。『ノイエ・タンツ』はいい転び方したと思ってるんです。やっぱりアナログは、デジタルよりもノイズが宿りやすい。聴く環境のちょっとしたことで音が劇的に変わるんです。あと、僕はアナログしかかけないDJイベントをやったり、家ではアナログがあるものは極力アナログで聴いてます。今、サブスクあるけど、もともと僕も便利が最高かもと思ってたんですよ。だけど、アナログが好きですね。それは、サイズ感、袋から出してターンテーブルに置いて針を落としてとか全ての行為をひっくるめて不便だけど最高に好きなんです」

テイの言うノイズというのは、単に雑音というだけでなく、手間暇かけることでいいもの、心地よさを得られるという、遠回りの楽しみのように受け取れる。

砂原良徳 「効率化の時代だから、めんどくさいことが全部マイナスって思われるけど、でも実はめんどくさい中に楽しさがあるっていうのはありますね」

これは、単純にデジタルがダメでアナログ最高と言ってるわけではない。実際に砂原は「僕は、逆にデジタルを追求してる」と口にするほどだ。ここで彼は“いい音”について持論を述べていく。

砂原良徳 「僕は、いい音といい女は一緒な気がするんです。よく、”絶対的にいい音だから”って勧めてくる人がいるけど、絶対的にいい女はいないのと一緒で、いい音の正解は自分の中にしかないと思うんですよ。だから、アナログでもCDでもサブスクでも、自分が好きなものを聴けばいいと思うんです」

音の好みも十人十色。ある意味、今はいろいろなデバイスから自分に合った視聴環境を選べる素晴らしい時代とも言える。

イベントでは観客から2人へのQ&Aのコーナーも設けられた。

選曲について「メンバーソロ曲で、なぜこの3曲が選ばれたのか?」の問いに、テイは「やっぱり、ベストにしない、コンピレーションアルバムだというのが大きかったです。YMO周辺でいい曲もたくさんあるので入れたくて。そういう意味では、今までのYMOのコンピではなかった作品になったと思います。選曲にもあまり悩まなかったです」と回答した。

別の質問者からは「今回の『イエロー・マジック・オーケストラ』のUS盤が、以前の盤と長さが(トータルで)1秒違うのはなぜですか?」というマニアックな質問が飛ぶ。すかさず砂原は、「新しい方が長いんですよね。それはなぜ起こるかというと、元のテープが保存されてる間に伸びるんです。それでリマスターが長くなることが多いんです。それを直す技術はないわけじゃないけど、そのままで作業することが多いですね」と回答。意外な事実に、会場の全員が思わず納得となった。

2人のトークの終わり際に、五木田智央が手がけたアートワークについても語られた。

テイ・トウワ 「原画は60センチくらいあって、実物見るとすごくよくできてます。これは、五木田くんのポケットに入ってた『SUKITA』って映画(写真家・鋤田正義のドキュメンタリー作品)のチラシがくしゃくしゃになってて、それを拡大したら傷がかっこいいと思って、そこから始めたと言ってました」

イベントの後半は、先ほどのハイエンドオーディオシステムを使い、最新リマスターのSACD盤『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』を試聴。音の際立ち感となめらかさが絶妙に溶け合う2018年バージョンの『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』を堪能できた。

本イベントでは、テイと砂原のトークで『ノイエ・タンツ』の話題から、リマスタリング作品の制作の裏側という、なかなか聞くことのできない話を満喫できた。『ノイエ・タンツ』というコンピレーションアルバムの魅力がさらに増し、そしてYMOへの関心がさらに深まるイベントだった。

残念ながら機材の不調によりアナログ盤の試聴は叶わなかったが、再発アルバム3作とも音の仕上がりを高く評価され、発売以来好セールスをあげているという。来年2月には『パブリック・プレッシャー』『増殖』の2作が発売されることがアナウンスされ、お楽しみはまだまだ続きそうだ。

取材・文 / 土屋恵介

YELLOW MAGIC ORCHESTRA / NEUE TANZ

イエロー・マジック・オーケストラ/ノイエ・タンツ
CD/LP発売中
CD:MHCL-30538 定価2,400+税 高品質Blu-spec CD2
LP:MHJL-49~50(2枚組) 33 1/3RPM 定価5,500+税 完全生産限定盤
●選曲・監修:TOWA TEI
●アートワーク:TOMOO GOKITA
●リマスタリング:砂原良徳
発売元:(株)ソニー・ミュージックダイレクト

「YMO40」第2回発売

2019年2月27日同時発売予定
ハイレゾ配信を除く各ヴァージョンにプレイパス封入(初回生産分のみ)
発売元:(株)ソニー・ミュージックダイレクト

『パブリック・プレッシャー(Collector’s Vinyl Edition)』
MHJL-61~62 ¥9,000+税 完全生産限定盤(45回転2枚組)
『パブリック・プレッシャー(Standard Vinyl Edition)』
MHJL-63 ¥3,700+税 完全生産限定盤
『パブリック・プレッシャー(SACD Hybrid)』
MHCL-10110 ¥3,000+税
『パブリック・プレッシャー(ハイレゾ[FLAC 96kHz/24bit])』
税込¥3,200(¥2,963+税)


『増殖(Collector’s Vinyl Edition)』
MHJL-64~65 ¥9,000+税 完全生産限定盤(45回転2枚組)
『増殖(Standard Vinyl Edition)』
MHJL-66 ¥3,700+税 完全生産限定盤
『増殖(SACD Hybrid)』
MHCL-10111 ¥3,000+税
『増殖(ハイレゾ[FLAC 96kHz/24bit])』
税込¥3,200(¥2,963+税)

*今後の発売予定タイトル
『BGM』
『テクノデリック』
『浮気なぼくら』
『サーヴィス』
『アフター・サーヴィス』

「YMO40」第1回発売

2018年11月28日同時発売
ハイレゾ配信を除く各ヴァージョンにプレイパス封入(初回生産分のみ)
発売元:(株)ソニー・ミュージックダイレクト

■『イエロー・マジック・オーケストラ(Collector’s Vinyl Edition)』
MHJL-51~52 ¥9,000+税 完全生産限定盤(45回転2枚組)
■『イエロー・マジック・オーケストラ(Standard Vinyl Edition)』
MHJL-53 ¥3,700+税 完全生産限定盤
■『イエロー・マジック・オーケストラ(SACD Hybrid)』
MHCL-10107 ¥3,000+税
■『イエロー・マジック・オーケストラ(ハイレゾ[FLAC 96kHz/24bit])』
¥2,963+税

■『イエロー・マジック・オーケストラ〈US版〉(Collector’s Vinyl Edition)』
MHJL-54~55 ¥9,000+税 完全生産限定盤(45回転2枚組)
■『イエロー・マジック・オーケストラ〈US版〉(Standard Vinyl Edition)』
MHJL-56 ¥3,700+税 完全生産限定盤
■『イエロー・マジック・オーケストラ〈US版〉(SACD Hybrid)』
MHCL-10108 ¥3,000+税
■『イエロー・マジック・オーケストラ〈US版〉(ハイレゾ[FLAC 96kHz/24bit])』
¥2,963+税

■『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー(Collector’s Vinyl Edition)』
MHJL-57~58 ¥9,000+税 完全生産限定盤(45回転2枚組)
■『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー(Standard Vinyl Edition)』
MHJL-59 ¥3,700+税 完全生産限定盤
■『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー(SACD Hybrid)』
MHCL-10109 ¥3,000+税
■『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー(ハイレゾ[FLAC 96kHz/24bit])』
¥2,963+税

YMO結成40周年オフィシャル・サイト
http://www.YMO40.com