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善か悪か……『絶体絶命都市』被災地で試されるプレイヤーの人間性

善か悪か……『絶体絶命都市』被災地で試されるプレイヤーの人間性

災害に見舞われた都市から、6日間にわたって脱出を図るアドベンチャーゲーム『絶体絶命都市4Plus -Summer Memories-』。前回の記事では被災地を舞台にした人間ドラマ、主人公を襲うさまざまな災害について紹介した。今回はさらに掘り下げていき、時間と共に姿を変えていく被災地やそこで発生する犯罪、そして本作の大きな特徴のひとつとなる、プレイヤーの気持ち次第でさまざまなプレイスタイルが楽しめる豊富な選択肢について紹介していく。

文 / 長田雄太


主人公を襲うのは災害だけではない

震災に見舞われた都市で起こる余震や建物の倒壊といった、人の力ではどうにもできない二次災害の怖さはすでに触れたが、被災地で主人公に襲い掛かる危険はそれだけではない。本作には人助けなど、現状をどうにかしようと動く人々もいれば、混乱に乗じて悪行を重ねる人も登場し、後者の人々が起こす犯罪に対面しなければいけない状況も起こってくる。

震災の発生初日。人々がまさに混乱の真っただなかにあるなか、主人公が序盤で出くわすのが“熊沢”という男。最初に訪れることになるコンビニで店員を装っているこの男は、コンビニの責任者がいないのをいいことに商品を定価ではなく、破格の値段で売っているのだ。数百円のコンビニ弁当を数千円で売り、あげくの果てにはトイレの扉を施錠し、トイレ利用を求める人にそのカギを10万円で売る始末。そのくせペットのエサは150円と、ほかの商品よりも明らかに安い値段で売っているのだからタチが悪い。

▲不当な値段だと怒れば怒るほど、値段を釣り上げていく熊沢。この男とたびたび会うことになるが、つねに怒りが込み上げてくる

皮肉なことに、彼が売っているものがストーリーを進めるうえで必要になることもある。熊沢とは複数のコンビニで出会うことになるが、会ったときはとりあえず売っている商品を確認。回復ゲージが残りわずかなときなど、どうしても必要なアイテムがあるとき以外は無視して立ち去ろう。ストーリーを進めていけば、良心的な値段で商品を売っている路上売りや通常のコンビニでも買い物ができる。アイテムが尽きて熊沢から買うことにならないようにしたい。

▲誰もいない家のなかから突然現れる熊沢。ここで何をしていたのかは描かれていないが、コイツの行為は容易に想像できる

熊沢のように陰湿な方法で欲望を満たす人間もいれば、より直接的な手段で危害を加えてくる人もいる。訪れた地下鉄のホームでは自暴自棄になったふたり組の暴漢に出くわし、問答無用で襲われ、縛られた状態で地下から脱出しなければいけない。手足が縛られているため、移動速度が非常に遅くなっている状態でいかに巡回する暴漢に見つからず、地上に出られるかというイベントだ。ただし、縛られた状態で地上への階段は上がれないため、逃げる途中でロープを切るアイテムを見つけなければいけない。

前回の記事でも述べたが、本作にはトラブルが絡むイベントが数多く待ち構えている。さまざまな状況下での緊張感あるプレイが体験できるというわけだ。ちなみに、襲ってきたふたり組の暴漢は、主人公が逃げたのちも犯罪を繰り返している噂を聞くことがあり、ストーリーを進めていくとさらにひどい行動に出るようになる。弱った人々を襲ってくる彼らも災害のひとつと言えるだろう。

▲述べてきた犯罪以外に、殺人現場にも遭遇してしまう主人公。余震が起きないかとビビりながら扉を開けると、目のまえに刺されて絶命した遺体があるのだから、一瞬何が起こっているのかわけがわからなくなる

時の流れとともに変化する被災地の姿

震災から数日が経つと、次第に人々は秩序を取り戻すようになっていく。余震は続いているものの、街ではガレキを撤去するための重機が動き始め、大型施設が避難所として使われていたり、駅に向けて人々の流れができていたりと、震災直後とくらべて非常に落ち着く光景が広がっている。

▲あいかわらず被災地の光景は悲惨だが、重機が動き始め、配給などのボランティアも行われている様子を見るとだいぶ穏やかな気持ちになれる

こういう状況ではまた違ったトラブルが発生してくる。その一例として、主人公は救いを求める人々に入会を呼び掛ける怪しい集団と出会い、彼らの組織に入ってしまうのだ。

▲突然声を掛けられ、“安らかな白き衣の会”に入ることになった主人公。彼らが拠点としている建物には豪勢な食事が用意されており、ライフラインが途絶えているのになぜかクーラーが稼働しているなど、被災地とは思えない別世界になっている

さらに入会者を増やすよう勧誘に駆り出され、気づけばあっという間に組織のトップの座に。どうも主人公はその場の空気に流されやすい傾向にあるようだが、結局のところ裏切り者として追われる立場になり、命からがら逃げることになってしまう。

▲裏切り者扱いされるようになると、“安らかな白き衣の会”の人々は別のエリアに移動するまで集団になって主人公を追いかけてくるので、つねにダッシュしながら逃げ道を探さないといけない。追いつかれると暴行され、ライフゲージがどんどん減っていく

避難所になっている学校を訪れると、町内に住んでいる人々が徒党を組んでおり、外から来た被災者を排除しようとする動きを目撃する。こういうときこそ助け合わなければいけないというのに、配給を与えなかったり、体育館を町内の人間だけで独占したり……。主人公も散々な扱いを受けるのだ。そんな光景には、ゲームであっても怒りすら覚えてくるのだが、彼らもまた被災者だと思うとモヤモヤとした気持ちだけが残ってしまう。犯罪もそうだが、本作でリアルに描かれているのは決して災害の恐ろしさだけではない。人間同士のいさかいも多様に描かれており、物語が進んで人々のストレスが限界に近づいてくると、それが顕著に表れてくる。時の流れとともに変化していく被災地、そして被災者の心情の変化なども繊細に描かれているのだ。

▲避難所でも主人公はその場の空気に流されてしまい、病気や怪我を治すという“奇跡の水”をめぐる大きなトラブルに巻き込まれていく

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