LIVE SHUTTLE  vol. 316

Report

aiko 現在をしっかり見せ、未来にしっかりと光を当てたライブ。最新ツアー東京公演のステージをレポートする。

aiko 現在をしっかり見せ、未来にしっかりと光を当てたライブ。最新ツアー東京公演のステージをレポートする。

aiko live tour「Love Like Pop Vol.20」
2018年11月29日 NHKホール

ダブルアンコールを終え、全てを歌い終えても客席からは「aiko~」という歓声というより、絶叫がNHKホールを包む。aikoが全力で駆け抜け、作り上げた一期一会のライブへの感謝、惜別の想い、様々な想いが込められた“絶叫”だった。

20周年を迎えたaikoが、今年6月から約半年をかけ、全国27カ所45公演という自身最長にして最大のホールツアー『Live Tour「Love Like Pop vol.20」』を行い、12月9日、大阪・フェスティバルホールでファイナルを迎えた。その前の東京公演、11月29日の東京・NHKホール公演を観た。20周年のタイミングでのツアーいうことで、新旧のヒット曲、ファンに人気の曲を織り交ぜたセットリストと思いきや、ニューアルバム『湿った夏の始まり』(6月6日発売)からの楽曲を中心に、現在をしっかり見せ、未来にしっかりと光を当てたライブだった。セットリストはいくつかのパターンを用意し、NHKホール公演だけでも8本、半年間続くという、大規模かつ長いツアーにメリハリをつけていた。バンドメンバーは、佐野康夫(Dr)、須長和広(B)、佐藤達哉(Key)、浜口高知(G)、設楽博臣(G)、小林太(Tp)、川原聖仁(Tb)、山本公樹(Sax)という凄腕が揃い、aikoの世界観をより感動的に伝える演奏で、その場にいる全ての人の心に残る音を作り上げていた。

ステージと客席の間に降りている紗幕に、aikoの20年を振り返るオープニング映像が映し出される。aikoの影が見えると大歓声が起こり、一曲目は『湿った夏の始まり』のオープニングナンバーでもある「格好いいな」だ。佐野が叩くドラムの一音目から、ひきつけられるイントロ。青い光と闇が印象的な照明演出が、心の“揺れ”を歌うaikoの歌の切なさを表現し、その世界に引き込まれる。跳ねるのピアノの「ストロー」でaikoも跳ねる。「運命」では短い花道の先にあるステージに行き、ファンの近くで歌い、踊る。NHKホールで、客席をつぶし、花道とその先にステージを作るアーティストは、aiko以外見た事がない。少しでもファンの近くに行きたい、近くで歌いたいというaikoの想いが花道という形になっている。

MCタイムはいつものようにお客さんと“普通”に話をする。これがaikoのスタイル。お客さんもaikoに近況報告をしにやってくる。アットホームな空気が生まれ、そのまま「合図」に。シングル「プラマイ」(2015年)のカップリング曲で、<あなたの秘密になりたい><あなたしか見てないから>というフレーズを優しく、切なく歌うファンに人気のナンバーだ。ホーンセクションが登場し「あなたは」、そして上質なR&Bの肌触りの「愛は勝手」と最新アルバムからの曲で、心地いいグルーヴを作り出す。

「サイダー」「ぬけがら」「月が溶ける」ではさらにaikoの世界の深いところに、いい意味で引きずり込まれる――歌詞だ。彼女はこれまで数え切れないほどの、女性の恋のシーンを描いてきた。100人いたら100通りの恋のカタチがある。でもその全ての人にaikoの歌は結びつく。aikoの物語が、色々な人達の恋の物語と繋がっている。

「男子へ、女子はこういうことを考えているからね」と、ピアノの弾き語りで「恋人同士」を披露。原曲のアップテンポのアレンジとは違うアレンジで、切々と歌う。もう一曲は「17の月」。一フレーズ一フレーズをちゃんと伝えたいという彼女の気持ちが、歌に出ている。弾き語りで聴くaikoの歌はどこまでも繊細で、優しくて強い。そして切ない。弾き語りは、この、彼女の最大の武器を、改めて堪能できる感動的な時間になった。歌い終わると「本当に来てくれてありがとう」という感謝の言葉を贈り、歌の余韻がさらに心に広がっていく。

弾き語りの後の「宇宙で息をして」は、のびやかな声がさらに瑞々しくなったように思えた。「ドライブモード」ではピアノの音と、aikoの揺れる髪とひらりと揺れるスカートの裾とが、歌詞の行間に潜む、艶っぽさ情念を浮かびあがらせる。「トゥトゥル~」の歌だしでおなじみの「予告」は、2017年のシングル曲で、嫌なことを忘れさせてくれるようなアップテンポの、希望を与えてくれる人気曲だ。

MCでは今話題の「ハズキルーペ」の話になり、客席から「aikoも(CM)に出て~」という声が上がると「CMの中で歌わせてくれたら出るわ~」と笑わせ、おなじみ“男子、女子、そうでない人~”のコールアンドレスポンスで会場をひとつにし、怒涛の後半戦へとなだれ込む。<楽しい事なんてこの世には死ぬほど沢山あるのよ>という、ポジティブな歌詞で全員を元気づける「未来を拾いに」、イントロからギターが高らかに鳴り響き、煽る「プラマイ」、軽快なシャッフルビートに乗せ、不安な気持ちと、強い意志とを歌いあげる「夢見る隙間」、本編ラストは「ハナガサイタ」だ。『湿った夏の始まり』の収録の中でも、特にライブでの盛り上がりが想像できた曲だが、ライブアレンジが素晴らしく、会場の熱はマックスに。

鳴りやまないアンコールの声援と拍手に応え、ステージ帰ってくるaiko。無数の細いライトが光のカーテンを作り、その中でピンスポットを浴び、幻想的な雰囲気を作り出し、「だから」をしっとりと歌う。「終わるのが寂しい」と語り、最後まで盛り上がって聴いてくれた客席に向かい、おじぎを深々とし、感謝の気持ちを伝える。「嫌なこと、腹が立つことを全部言って欲しい。そして置いていって欲しい」、ファンに幸せな毎日を過ごして欲しいという思いを込めて「シアワセ」を披露。ホーンとピアノが重なるイントロからグッとくる、ポップで泣ける曲だ。さらに「ボーイフレンド」で再びもの凄い盛り上がりに。そして客席からの“終わらせない”歓声の大きさにaikoも感動し、“とりあえず”ありがとうございましたと言い残し、ダブルアンコールを予感させステージから去っていく。

再び登場し、「(挨拶だけで)終わっていい?」と聞くと、客席からaikoのライブではおなじみの、でも久々の「Xジャンプ」が飛び出す。aikoも笑顔で「Xジャンプ」を受け止め、「beat」のピアノのイントロが鳴り始める。その弾けるリズムに、客席もaikoもハジける。これで終わりではなかった。さらにファンファーレのようなホーンが鳴り響き、aikoのライブには欠かせない「be master of life」を投下。花道の先にある中央ステージで、寝っ転がり、胡坐をかきながら、まるで自分の部屋にいるようなリラックスした様子で歌うaiko。そして冒頭のシーンへとつながる――熱気と共に、深く、美しい余韻を残してライブは終了した。この日のライブも含めて、全ての会場で「みんなに届きますように。一対一で聴いてね」という気持ちを胸に歌い、丁寧に想いを伝えてきたaiko。

ツアーが終了し、ファンもaikoも寂しさを募らせているかもしれない。しかしまたすぐに会える。このあと2019年1月から3月にかけてアリーナツアー「Love Like Pop vol.21」を開催することが発表されている。大阪城ホール、さいたまスーパーアリーナ、マリンメッセ福岡で再び、aikoとファンは、熱狂を共有する。まだ一度もaikoのライブに行ったことがないという人は、この機会に一度会場に足を運ぶことをお勧めする。20年選手の底力を感じて欲しいのはもちろん、あなたの恋の物語と、aikoが紡ぐ恋の物語とがつながった瞬間、得も言われぬ“感動”に包まれ“シアワセ”を感じることができるからだ。

文 / 田中久勝 撮影 / 岡田貴之

aiko live tour「Love Like Pop Vol.20」
2018年11月29日 NHKホール

セットリスト

1.格好いいな
2.ストロー
3.運命
4.合図
5.あなたは
6.愛は勝手
7.サイダー
8.ぬけがら
9.月が溶ける
10.恋人同士
11.17の月
12.宇宙で息をして
13.ドライブモード
14.予告
15.未来を拾いに
16.プラマイ
17.夢見る隙間
18.ハナガサイタ
EN-1.だから
EN-2.シアワセ
EN-3.ボーイフレンド
WEN-1.beat
WEN-2.be master of life

ライブ情報

aiko live tour「Love Like Pop Vol.21」

1月26日(土) 大阪:大阪城ホール
1月27日(日) 大阪:大阪城ホール
2月9日(土) 埼玉:さいたまスーパーアリーナ
2月10日(日) 埼玉:さいたまスーパーアリーナ
3月9日(土) 福岡:マリンメッセ福岡
3月10日(日) 福岡:マリンメッセ福岡

オフィシャルサイト
https://aiko.com

aikoのその他の作品はこちら

vol.315
vol.316
vol.317