モリコメンド 一本釣り  vol. 98

Column

DedachiKenta ワールドワイドな視野を持つ、ロサンゼルス在住、19歳のシンガーソングライターとは?

DedachiKenta ワールドワイドな視野を持つ、ロサンゼルス在住、19歳のシンガーソングライターとは?

2017年から2018年にかけて聴いてきた音楽のなかで、もっとも心踊らされたもののひとつは、“88rising”のアーティストたちの作品だ。アメリカのヒップホップ・シーンにおいて次々と新たなスターを輩出し、世界中の音楽ファンから熱い視線を集めているアジア発のクリエイター・チーム“88rising”。「ミレニアル世代のグローバルなアジアカルチャーを盛り上げる」ことをコンセプトに掲げたこのチームには、Keith Ape(韓国)、Higher Brothers(中国)、Joji(日本)、Rich Chigga(インドネシア)といったアーティストが参加。彼らがアメリカのマーケットでヒットを連発していることで、アジア全域のアーティストに対する注目度も上がっているのだ。BTSの驚異的ブレイク、そして88risignの躍進は、アジア人のアーティストの世界進出の道を大きく切り開いたといっていいだろう。実際、ヒップホップ系のアーティストに取材していると、高い頻度で“88rising”というワードが出て来る。“アジアのアーティストというだけで欧米のマーケットから切り離されることは完全になくなった”“BTSのブレイクによって、アメリカのライブ・プロモーターがアジアのアーティストに注目している”という話題は本当に刺激的だ。

アジアと世界の距離が加速度的に縮まっているなか、ここ日本だけが出遅れている感はどうしても否めない。オルタナR&B、ネオソウルに象徴される新しい音楽のトレンドを積極的に取り入れているメジャー・アーティストはごくわずかだし、本格的に海外で活動できているアーティストもなかなか増えていないのが現実。日本のマーケットだけでビジネスが成り立つことはもちろん良いことだが、人口がどんどん減っていくこの先、いま以上に音楽シーンが縮小していくことを考えると「いまのままでは絶対にまずい」という結論にどうしても至ってしまうのだ。“平成の音楽シーンを振り返る”みたいな特集をあちらこちらで目にするが本当にどうでもいい。日本人にしかわからない年号で区切ることに対して、何の意味も見い出せないからだ。そもそも筆者は昭和が青春だしな。怒るで、しかし。

またしてもすっかり前置きが長くなってしまったが、今回紹介するDedachiKentaは、狭い日本の音楽シーンを最初から超えている、ワールドワイドな視野を持ったアーティストだ。ロサンゼルス在住、19歳のシンガーソングライター。幼少期からアコースティックギターを手にした彼は、その後もさまざまな楽器に触れながら育ち、14歳からYouTubeを使って自身の演奏動画を配信。美しい透明感と濃密な感情表現を兼ね備えたボーカルは瞬く間に数多くの音楽ユーザーの心を捉え、既に強い支持を獲得した。そして2018年12月、DedachiKentaは待望のデビューを果たした。新たに設立されたオフィスオーガスタのレーベル“newborder recordings”の第一弾アーティストとして、両A面7inchアナログ盤「This is how I feel / Memories」(DL配信も同時にスタート/サブスクでは11月21日〜先行配信)がリリースされたのだ。現時点で正式な音源として聴けるのはこの2曲だけだが、その音楽的ポテンシャルの高さ、シンガーとしての豊かな魅力は十分に感じ取ってもらえるはずだ。

「This is how I feel」は、アコギ、ウクレレ、生ドラム、生ベースを中心としたオーガニックな手触りのミディアムチューン。抑制の効いた平歌、解放感のあるサビ、リズムと自然に絡みながら心地よい高揚感につなげるフロウからは、彼のソングライティングの上手さがはっきりと伝わってくる。アレンジにも奇を衒ったところはなく(後半のクラシカルなストリングの配置も絶妙)、おそらく彼自身にとって、もっともベーシックな音楽性を示す楽曲なのだろう。

一方の「Memories」は、ノイズ混じりのラジオの音から始まるスムース&グル—ヴィーなナンバー。ソウルとファンクを織り交ぜたリズム、滑らかなラインを描き出すメロディを含め、ルーツミュージックの影響を色濃く感じさせる楽曲に仕上がっている。単に過去の音楽をリファレンスするだけではなく、現在のシーンにアジャストしたサウンドを提示しているところもきわめて魅力的だ。

R&B、フォーク、ゴスペルなどのエッセンスを反映した楽曲、豊かなグルーヴと色気を感じさせるボーカルがひとつになった「This is how I feel」「Memories」は全29局のFM曲でパワープレイを獲得するなど、国内でも早耳の音楽ファンの関心を集めはじめている。ここから始まるDedachiKentaのキャリアが日本だけに留まらず、世界中のリスナーに広く浸透することを心から願う。

文 / 森朋之


アナログ盤
FLAKE RECORDS
品番:NBR-001  ¥1,500+tax
詳細はこちらへ
http://www.flakerecords.com/rcminfo.php?CODE=30219

オフィシャルサイト
http://www.office-augusta.com/dedachikenta/

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