LIVE SHUTTLE  vol. 39

Report

UA @日比谷野外大音楽堂 2016.6.18

UA @日比谷野外大音楽堂 2016.6.18
最新アルバム『JaPo』で、プリミティブで母性的なスケール大きな愛を歌いあげたUAが日比谷野外音楽堂に戻ってきた。
アルバム曲を中心に構成された躍動感溢れるステージからは、優しく開放的でポジティブなエネルギーの波動が押し寄せた。
満月に近い真ん丸の月が輝き、真夏日の熱気と夕暮れの風が交わる野音に、自然や宇宙とも溶け合うUAの歌声が響き渡った一夜の様子を。

取材・文 / 青木 優


UAが踊っていた。こんなに踊る彼女の姿は、初めて見た。序盤の「Panacea」、そして「AUWA」から、ステージは躍動感がはじけていた。

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それはダンスというよりは踊り、もしくは激しい舞いのようでもあった。腕を振ったり、体を大きくくねらせたり。おそらくは沖縄に住んでいた頃に身に着けたというアフリカンダンスなのだろう。コーラス隊のMEGと神田智子のふたりも同じ振付で踊っている。ただし独特なのは、3人の動きがじつに大らかで自由だということ。互いの細部の動きを合わせることなんかより、音と一緒になって身体でリズムをとる楽しさ。そこにルールや束縛なんてない。その豪快な踊りが発するエネルギーによって、会場中がそれぞれに身体を揺らしている。客席は満杯で、立ち見も多数。なにせ日比谷野外音楽堂はUAが節目節目でライブを行ってきたゆかりの場所だ。6年ぶりとなる今回の野音公演では、子供たちの姿も今までで一番たくさん見かけた。

そんな演者たちの躍動感は、この夜の音楽にも同じようにあふれていた。ポリフォニー、ポリリズムの要素が取り入れられた新作『JaPo』からの曲は、アレンジ的には複雑な構造をしているが、聴く側にはとても開放的な音として届く。しかもUAは曲間に謎の言葉を口にしている。奄美の言葉? いや、古代語か。おそらくは「ありがとう」とでも言っているのだと思われる。アルバムでも使われている言葉なのだろう。

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それには、ルーツに対する意識を感じる。アーティストとしてのUAを振り返ると、彼女が母親の出身地である奄美大島(正確には加計呂麻島)の歌に意識を向けたことはひとつのターニングポイントだった。時期としては、2000年から2004年にかけての頃か。この頃には奄美出身の唄者である朝崎郁恵からも大きな影響を受けたはずだし(当時、互いの作品に参加)、あの島で歌い継がれてきた民謡や島唄に触れたことはUAの中の大切な何かを呼び覚ましたのではないかと思う。また、これと同じ時期にNHKの教育番組をきっかけに世界中の童謡に触れたことも忘れてはいけない(その童謡集は<ううあ>名義での『うたううあ』として発表されている)。

そうした過程でUAは流行とか時代性とは別のところで音楽に向かっていった。そこでは、たとえば奄美の血をひく者として、日本に生まれた者として、あるいは地球上に生きるひとりの生き物としての歌のあり方、というか。だから彼女の歌には、そうしたあらゆるものが混在し、息をしている。

ただ、それは決して簡単なことではない。ルーツを掘り下げるというテーマは、ひどく壮大だ。それが知識を入れるだけの頭でっかちなものでは意味がないし、逆に皮膚感覚だけで音を鳴らせば作品化できなかったり、散漫なものになる危険がある。だがUAは自分の現在の感覚で……そう、生活や価値観、もっと言えば自分の人生観までを音楽に込めることに成功している。彼女は基本的には作曲をしないアーティストだが、その時々の自分が求めている音や表現したい方向性を手繰り寄せることにものすごく長けていて、それを自身の歌としてしまえる巨大な才覚の持ち主なのだ。

そうしたことをよく理解しているであろうファンは、UAの音楽を心から愛しているようだ。「ただいま!」というMCに「お帰り!」という声が返ると、すぐに「うれしい!」と口にするUA。夕方に始まったライブは中盤に差しかかり、気がつけばあたりは徐々に暗くなってきている。
「この黄昏の時を、このまたとない時間を、エンジョイしておくんなまし」
「U子(うーこ)として歌を歌って21年になります! 晴れて成人して……1才でーす! アンチエイジング(笑)」

MCでもまったく素のようだ。そう、飾らない、気取らないこと。自身の感覚に忠実であること。それが今のUAというアーティストのスタンスである。そんな彼女の歌を支えるバンドのマスターはLITTLE CREATURESの青柳拓次が務めており、メンバーにはUAと初めての顔ぶれも多いのだが、歌ととてもなじんでいるのが素晴らしい。

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クライマックス。UAが「みんなで無限大体操でもしようよ! この地球を抱いているかのように!」と言って、オーディエンスが本当に∞のように腰を揺らした「2008」。「それではみなさんのお手を拝借プリーズ!」と手拍子を誘った「ドチラニシテモ」。満員の会場では、ところどころで子供たちがわちゃわちゃとはしゃぐ声や話す言葉も耳に入ってくる。その空気も含めて、すべてを受け止めているかのようなスケールの大きな音楽。あたたかく、優しく、やわらかい昂揚感が流れていた。

その温度はアンコールでも同じだった。「ありがとう、野音! みなさんが輝く時がやって来ました。キラキラ~!」。そしてUAは、次の曲の意訳である言葉を続けた。「子供たちから愛や時間や総合力を奪っていくのは、もうやめよう。動きを止めてしまう言葉を使うのは、もうやめよう。闇に覆われてしまわないように。みんなの透明な心だけが、ここが楽園だってことを知ることができるから」。その「BEAM YOU」に身体を任せながら、思い出した。UAが光や輝きをモチーフにした歌を書くようになった時期があったことを。この日、本編で唄われた「閃光」もそのひとつだし、そうした歌には生きる上で大切な希望や純粋さといったものが込められてきた。ただ、新作からのこの「BEAM YOU」はかなりポジティヴで、そこに今のUAを強く感じる。

そう……これは、実は本人が過去に話していたことなのだが、先ほど書いた奄美というルーツとの出会いは、UAが内面に持つものを自覚させてくれる機会でもあった。それは生きている上での悲しみ、せつなさ、はかなさ。そういった感覚だ。この話を聞いた当時、たしかに2000年代までの彼女の歌にはそうしたメランコリックな感情が多く内在していることを思い、納得したものだった。

しかし今のUAはとてもポジティヴで、開放的だ。冒頭で書いたアフリカンダンスのように、明るくて力強い、陽性のエネルギー。おそらく彼女がそうなっていったのは、愛を歌うことに意識的になり、そのためにはそうしたパワーを発していくことの大切さに、自然に向かっていったからではないだろうか。「今は19歳になった息子のことを書いた歌です」と前置きされた「あいしらい」も、やはり愛に満ちた歌だ。

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そして歌われた「ミルクティー」「情熱」といった90年代を彩ったヒットソングも、ちゃんと現在の感覚でアレンジされていた。そしてこの頃の歌を歌い続けていることにこのアーティストの一貫性を感じたし、と同時に、成長と変化も感じた。最後の「月がきえてゆく」では「今日の日が永遠につながりますように。ありがとう」という言葉が残された。

ダブルアンコールは「黄金の緑」。この地球で生きること、そして輝く感覚を歌った曲である。最後まであたたかい空気が漂っていた2時間あまり。「またねー! ありがとう」と言ってステージを去るUA。大らかで自由でポジティヴな今の彼女を体感した、最高に至福の時間だった。

UA TOUR 2016 HELLO HAPPY JAPONESIA セットリスト

01.PANACEA
02.AUWA
03.JAPONESIA
04.KUBANUYU
05.KOSMOS
06.ISLAND LION
07.MOSS STARES
08.いとおしくて
09.踊る鳥と金の雨
10.閃光
11.愛を露に
12.温度
13.2008
14.ドチラニシテモ

EN1.BEAM YOU
EN2.あいしらい
EN3.ミルクティー
EN4.情熱
EN5.月がきえてゆく

EN6.黄金の緑

プロフィール

UA


1972年3月11日生まれ。大阪府出身。母方の故郷は奄美大島。1995年デビュー。デビュー当時から、その個性的なルックスと存在感のある歌声で注目を集める。1996年発表のシングル「情熱」が大ヒット。2000年、BLANKY JET CITYを解散した浅井健一とAJICOを結成。2003年よりスタートしたNHK教育テレビ「ドレミノテレビ」に歌のおねえさん<ううあ>としてレギュラー出演し、翌年、童謡や愛唱歌を集めた<ううあ>名義のアルバム『うたううあ』をリリース。2006年には菊地成孔とスタンダードジャズアルバム『cure jazz』を発表した。2016年5月25日には、デビュー20周年を記念し、90年代にリリースした4タイトル『PETIT』『11』『アメトラ』『turbo』を豪華デラックス・エディションで発売。2005年より都会を離れ、田舎で農的暮らしを実践しつつ、環境問題や平和を願う活動にも力を注いでいる。

公式サイト:http://www.uauaua.jp/

リリース情報

VICL-64408 JaPo

JaPo

VICL-64408 ¥3,000+税

01.AUWA
02.JAPONESIA
03.ISLAND LION
04.いとおしくて
05.あいしらい
06.KUBANUYU
07.BEAM YOU
08.愛を露に
09.TARA
10.ドチラニシテモ


ライブ情報

FUJI ROCK FESTIVAL ‘16
7月22日(金) 新潟県湯沢町苗場スキー場

スキマアワー
8月6日(土)京都精華大学

UA TOUR 2016「HELLO HAPPY JAPONESIA」追加公演
8月7日(日)大阪・千日前ユニバース

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO
8月13日(日)北海道・石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ


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