LIVE SHUTTLE  vol. 318

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藤井フミヤ 35年の歩みを凝縮した夜。アニバーサリーツアーの前半戦を締めくくる贅沢なステージを振り返る。

藤井フミヤ 35年の歩みを凝縮した夜。アニバーサリーツアーの前半戦を締めくくる贅沢なステージを振り返る。

FUMIYA FUJII ANNIVERSARY TUOR 2018“35 Years of Love”
2018年12月16日 NHKホール

藤井フミヤ35th ANNIVERSARY TUOR 2018“35 Years of Love”は、9月に始まって、この日(12月16日)が最終日。周年と同数の、35本目となる。今年から来年にかけてのアニバーサリー・イヤーのスタートを飾るツアーで、いわば“前半戦”のファイナルと言える。 

83年9月21日「ギザギザハートの子守唄」でデビューして以来、チェッカーズとして、ソロとして、弟の藤井尚之とのユニット“F-BLOOD”として、ずっと第一線で活動してきた。こうした形態での長期にわたる活躍は本当に稀で、それこそが藤井フミヤらしさなのかもしれない。

その“フミヤらしさ”を支えている要因のひとつには、ライブのスタイルの多様さがある。バンドスタイルでのライブ、ダンスに特化したライブ、ストリングスとのシックなライブなどがあるが、今回のツアーはそれらとはまた異なる趣きを持つ。ロックバンドのダイナミズムと、バンドメンバーによるコーラスをフィーチャーしたポップなサウンドがミックスされていて、フミヤのライブスタイルがまたひとつ、増えることとなった。

オープ二ングはブルース・セッション。暗転になったステージに5人のメンバーが登場し、ラフなチューニング音の後、ブルースが始まる。本格的なロックバンド・サウンドが会場を包み込む。尚之のサックスと、真壁陽平のギターがディープに絡み合う。そこに、ブルースハープ(ハーモニカ)が聴こえてきた。ステージにセットされた階段の上に、黒いスーツ姿のフミヤが現われる。会場から大歓声が上がる。階段を降りながらのフミヤのハープ・ソロは、絶品だ。

ブルースを短く切り上げると、いよいよ1曲目「GIRIGIRIナイト」が真壁のギター・リフから始まった。2016年のソロアルバム『大人ロック』の収録曲で、このアルバムをプロデュースしたドラムの大島賢治が今回のツアーのバンマスを務めている。それだけに、フミヤとバンドの息の合った演奏がカッコいい。フミヤのパンツには白いステッチが入っていて、シャープなボディアクションを強調する。さらにはインナーも白と黒の幾何学模様で、ジャケットの隙間から見え隠れするたびに、スリルを増幅する。いつもながら心憎いスタイリングだ。エンディングはフミヤのハープ・ソロで、終わると吹いていたハープを客席にフワリと投げ込んだ。

続いては「タイムマシーン」。巨匠・筒美京平の作曲で、アルバム『R&R』(1995年)の先行シングル。フミヤのポップな魅力が楽しめたのだった。

「ようこそ! 前半戦の最後です。やっとここまで来ました。35年間って、短いようで長い。発表した曲は、チェッカーズ、F-BLOOD、ソロで500曲あるんで、今日はその中からいいものを選んでやります。ウニ、イクラ、マグロを丼にドーン!(笑)みたいなライブになるので、ご完食いただければと思います。次は30年くらい前の曲です」。

始まった「素直にI’m Sorry」は、1988年リリースのチェッカーズのシングル。作詞はフミヤで作曲は尚之の、明るいラブソングだ。このキュートな曲をフミヤは、「昔、昔、男の子と女の子がいました」という童話風ナレーション付きの演出で歌う。フミヤのユーモラスな歌とパントマイムとナレーションに、会場からは要所要所で笑いが起こる。「未来列車」では、オーディエンスがハンドクラップをするたびに、手に持ったサイリウムの光が揺れて、ファンタジックな景色が広がる。モータウン・ビートの「なんかいいこと」では、マイクスタンドとボーラーハットを使って、フミヤは痛快なパフォーマンスを見せてくれた。

この3曲には、ミュージカルを観るような楽しさがあった。実はこのライブは、とてもわかり易く構成されている。バラードのコーナーがあったり、エロティックな歌のコーナーがあったり、それぞれが2~3曲にまとめられていて、35年間のフミヤの歩みをテーマ別に味わわせてくれる。

「ハァハァ、ハシャギ過ぎた(笑)。まあ、お座りください。35年ですよ。皆さんの年齢から35を引いてみてください・・・俺も若かった(笑)。21才でデビューしたから、それに35を足してください。それが俺の実年齢です。そこから10引いてください。それは呑み屋のねーちゃんに聞かれたときに答える年齢(笑)。さらに10を引いたのが、俺の精神年齢です。怒涛の芸能界を生き残ってきました。その間、友達もいっぱいいました。次は友情の歌です」

友情コーナーは、「白い雲のように」からスタート。尚之の弾くアコースティック・ギターの響きがいい。1996年に“猿岩石”に提供した楽曲で、98年にF-BLOODとしてセルフカバーしている。一緒に未来を夢見る友達同士の歌が、藤井兄弟と重なる。「Friends and Dream」の♪俺たちはいつからガキじゃなくなったんだろう♪というセリフが心に刺さる。盟友の木梨憲武、ヒロミと一緒にレコーディングされた「友よ」で、このコーナーを締めた。

「チェッカーズは、何回くらい紅白に出たんでしょうね、尚之さん?」とフミヤが問うと、尚之が「デビュー翌年から解散するまで出てたから、9回じゃないですか」と答える。「なんか、ここ(NHKホール)でやってるのって、不思議な気分だね。クロベエの“パンツ事件”を思い出す」とフミヤは言って笑った。友情の歌のせいで、亡くなったチェッカーズのメンバーを思い出したのだろうか。クロベエのちょっと恥ずかしいエピソードをバラした後、フミヤは「ゴメンね、クロベエ!」と天井に向かって詫びて、次のバラード・コーナーへと進む。

岸田勇気の弾くピアノを軸にして「Another Orion」、「大切な人へ」と名バラードが続き、最後の「DO NOT」が凄かった。今回のバンドの大きな特長であるコーラスの魅力が発揮される。曲のエンディングではフミヤが指揮を取り、メンバーによる壮大なコーラスワークを披露。終わると、この日いちばんの大きな拍手が巻き起こった。

「あぁ、疲れた(笑)。めっちゃリキんだもん」とフミヤが満足気につぶやく。ドラムの大島とベースの川渕文雄ががっちり固めるロックなボトムと、倍音を豊富に含むポップなコーラスの対比が楽しいコーナーだった。

それにしても、フミヤにはNHKホールがよく似合う。「俺がデビューした83年は、まだケータイもパソコンもない時代。♪最後のコインに祈りをこめて~ダイヤル回す♪って何だよ(笑)。今はもう、まったく意味がわからない。とうとう平成が終わりますね、昭和の皆さん! 次はチェッカーズのオリジナル・ソングです。その時の感じに戻って、若返って歌います。なので、皆さんも“キャー”って高いキーで叫んでください」。

キャーキャー叫ぶオーディエンスに向かって、チェッカーズの「I Love You,SAYONARA」を歌う。イントロの尚之のサックスは、さすがにキャリアを重ねた分だけ上手くなっているが、爽快な雰囲気は当時と変わらない。続く「裏通りの天使たち」では、真壁のギター・ソロがチェッカーズ・ナンバーに新鮮なアクセントを付けたのだった。会場からは「フミヤ~!」「ナオちゃ~ん」という“黄色い”歓声が飛び交う。

「暗闇で名前を呼ばれたら、皆さん、あの日のままだね(笑)。500曲の中で、色っぽい歌も歌ってきました。最近は色っぽい歌が消えた。腰から下がない(笑)。後半は色っぽく行きます」。

確かにフミヤの言うとおり、最近のJ-POPやJ-ROCKには色っぽい歌詞が皆無だ。そこでフミヤが選んだのが「女神(エロス)」だった。♪俺の夜になりな♪という強烈なフレーズは、今もJ-POP史に燦然と輝いている。この曲を作曲したミスチル桜井和寿も、この歌詞を聴いてビックリしたのではないかと思う。

ライブも後半に差しかかって、フミヤの声もバンドもサウンドも熱を帯びて、エロティックな歌にピッタリと寄り添う。マイクスタンドを振り回したり、セクシーなステップを踏んだり、パフォーマンスもエロティック全開。オーディエンスたちは、本気でキャーキャー大騒ぎだ。

チェッカーズ・ナンバーを彷彿とさせるF-BLOODの「孤独のブラックダイヤモンド」や「NANA」で場内は一気に熱くなり、そのまま本編ラストの「恋の気圧」まで突っ走った。

アンコールを求める拍手の中を再登場したフミヤが語り出す。

「俺はもう少し休みたかったけど、みんなの手も痛いだろうから、走って出てきました。このツアーが今日終わったら、すぐにカウントダウン・ライブのリハに、このメンバーで入ります。では藤井フミヤの代表曲に、皆さんのカウントで入りたいと思います」。会場の全員が「1.2.3.4」とカウントして「TRUE LOVE」へ。イントロのお馴染みのフレーズを、尚之のアコギと真壁のエレキギターが美しく奏でる。そこにオーディエンスの想いが重なっていく。アンコールの2曲目もしっとりとした「夜明けのブレス」だった。

「最後の曲になります。ベスト盤の人気投票で第1位になった曲で、2位の曲の投票数をかなり上回ってます。ライブでそんなに毎回、歌ってこなかったのにね」と、フミヤにとって意外だったナンバーワン・ソングの「ALIVE」へ。♪明日があるかぎり 長い坂を上っていく♪という前向きな歌詞が、エンディングを明るく彩った。

さらにダブル・アンコールを求める拍手が続き、フミヤが一人で再びステージに戻ってきた。「クッタクタなんだけど」とボヤキながらも、表情には笑みが浮かんでいる。スタッフからアコギを受け取ると「もう1曲、行きますか、お客さん」とおどけて言って、「I HAVE A DREAM」。チェッカーズの解散ライブの最後を飾った曲を、フミヤはファンと一緒にギター1本で弾き語る。35年間のファンへの感謝の思いのこもった、感動的なエンディングとなった。

文 / 平山雄一

FUMIYA FUJII ANNIVERSARY TUOR 2018“35 Years of Love”
2018年12月16日 NHKホール

セットリスト

1. GIRGIRIナイト
2. タイムマシーン
3. 素直にI’m Sorry
4. 未来列車
5. なんかいいこと
6. Little Sky
7. 白い雲のように
8. Friends and dream
9. 友よ
10. Another Orion
11. 大切な人へ
12. I Love you,SAYONARA
13. 裏通りの天使たち
14. 点線
15. DO NOT
16. 「I」
17. 女神
18. 孤独のブラックダイヤモンド
19. NANA
20. SHOOTING STAR
21. UPSIDE DOWN
22. 恋の気圧
EC. TRUE LOVE
EC2. 夜明けのブレス
EC3. ALIVE
WEC. I have a dream

ライブ情報

FUMIYA FUJII ANNIVERSARY TUOR 2019 開催決定!

詳しくは、オフィシャルサイトにて!

藤井フミヤ

1962年7月11日、福岡県生まれ。’83年 チェッカーズとしてデビュー。
’93年以降、ソロアーティストとして活動。「TRUE LOVE」や「Another Orion」等ミリオンヒットを世に送り出す。
2013-2014年の2年間にわたり、『藤井フミヤ30TH ANNIVERSARY TOUR vol.1 青春』『藤井フミヤ30th Anniversary Tour vol.2 TRUE LOVE 』として全国ツアーを展開。またアニバーサリーイヤーの大晦日に日本武道館『藤井フミヤ カウントダウンライブ』を復活させる。
2015年、前年に好評を得た『billboard classics FUMIYA FUJII PREMIUM SYMPHONIC CONCERT』のアンコール公演を開催。
2016年、4年振りのオリジナルアルバム「大人ロック」リリース、また2年振りの全国ツアー『Fumiya Fujii CONCERT TOUR 2016 大人ロック』を開催。
2017年、『billboard classics FUMIYA FUJII PREMIUM SYMPHONIC CONCERT』において、指揮者・西本智実氏とのコラボレーションが実現。西本氏とフミヤによる共作も演奏される。
そして、結成20周年を迎えたF-BLOODとして、6月にアルバム「POP ‘N’ ROLL」をリリース、9月からは『F-BLOOD 20th Anniversary POP ‘N’ ROLL TOUR 2017』と題した全国ライブハウスツアーを行った。年末には日本武道館でのカウントダウンライブを開催。
2018年、デビュー35周年を迎える。

オフィシャルサイト
https://www.fumiyafujii.net

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