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映画は観るだけではもったいない!? 映画を語りあう楽しさを描いた、異色トーキング・コメディ・マンガ3選

映画は観るだけではもったいない!? 映画を語りあう楽しさを描いた、異色トーキング・コメディ・マンガ3選

気のおけない友人と映画について語ることは、人生における至福のひとつだ。好きな映画はもちろん、好きではない映画でも他人の意見を聞くことで意外な発見があるし、好きではないがツッコミどころ満載の映画で盛り上がるのもまた楽しい。

映画好きの男子高校生たちの日常

そんな同朋は多いのか、ここ最近、登場人物が映画について語るだけの漫画が次々に登場している。なかでも、その火付け役というべきマンガが『怒りのロードショー』だ。

『怒りのロードショー』
マクレーン(著者) / KADOKAWA / エンターブレイン

「(『28日後…』を観て)ゾンビ映画の最高傑作だ!」「ゾンビは歩いてこそゾンビ」「たった3本しか見てないのにゾンビ映画最高傑作を決めるのはおかしーでしょーがーっ!!」「やっぱりロメロの『ゾンビ』だなあ…」「洗濯物をたたみながら見れるゾンビ映画は『バイオ ハザード』シリーズだけだよ!!」といった具合に、映画好きの男子高校生たちが毎回いろんな映画をネタに時にはケンカもしながら、ダラダラとおしゃべりを繰り広げる。その重箱の隅をつつきあうようなノリは、あたかも2ちゃんねるの実況板を読むようで実にくだらなくもおもしろいのだ。

とある高校の映画研究部を舞台としたキレのいいギャグ炸裂

『シネマこんぷれっくす!』は、とある高校の映画研究部(通称:死ね部)に入部した熱川顎人と残念美人な先輩たちが字幕派吹替派論争やB級映画議論など、映画ファンなら思わずニヤリなネタをキレのいいギャグを交えながら繰り広げるさまが楽しい。

『シネマこんぷれっくす!(1)』
ビリー(著者) / ドラゴンコミックスエイジ / KADOKAWA / 富士見書房

「ここは誰もがお前の口にする映画を理解してくれる“エルドラド”だ」と言われ、今まで友人に映画の話が伝わらずに悲しい思いをしてきた顎人がつい涙するシーンは、他人事とは思えずつい肩を叩きたくなってしまう…!?

入部してきた女子高生は、邦画が好きで人に薦めずにいられない“邦キチ”だった

『邦キチ!映子さん』もまた、高校の映画部が舞台。映画について語らえる友人がいない小谷洋一が作った「映画について語る若人の部」に入部してきた女子高生・邦吉映子は、邦画が好きで人に薦めずにいられない“邦キチ”だったーー。

『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん』
服部昇大(著者) / スピネル / 集英社

という設定の通り、作品的には邦画限定なのだが、「変な人を演じさせたら天下一品の香川照之が全力で変なお隣さんを熱演!! まさに水を得た魚!開かれたパンドラの箱!!」」「ひたすら噛み合ない会話!得ない要領!やたら近い距離感!つのる不信感!」(『クリーピー 偽りの隣人』)といった邦キチの熱い&圧いプレゼントークが最高すぎて、対する洋一の「お前も似た所あるけどな」ってな返しも絶妙で、深夜ラジオさながら延々聞いていたくなる中毒性があり。好きな映画について「プレゼンする」という発想は、近年盛り上がりつつあるビブリオバトル(本を紹介しあって、その順位を競うスポーツ的な書評会)にも通じるもので、ケレン味たっぷりの世界観は「読む格闘技」といった趣きすらある。


映画配信サービスが普及しつつある一方で、爆音上映、応援上映、ライブビューイングなど、多様な映画の楽しみ方が盛り上がりつつある昨今。この三作品もまた、そんな「参加型エンタメ」の流れを汲みつつも「ただ語るだけ」というシンプルさが逆に奥深く、贅沢にも感じられる。
大人になってからは、すっかり映画はひとりで楽しむものになっていた…という人は多いだろうが、たまには学生時代に戻って、誰かと一緒にワイワイ観て語らってみてはいかが?

文 / 井口啓子