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橋本祥平が稽古場を奮い立たせ、陳内 将がカンパニーを引っ張る! ミュージカル『封神演義–目覚めの刻(とき)–』稽古場レポート

橋本祥平が稽古場を奮い立たせ、陳内 将がカンパニーを引っ張る! ミュージカル『封神演義–目覚めの刻(とき)–』稽古場レポート

2019年1月13日(日)からEXシアター六本木にて、ミュージカル『封神演義–目覚めの刻(とき)–』が上演される。原作は藤崎 竜の人気コミックで、連載が終了して約20年の時を経ているが、今なお多くのファンに愛されている。中国最古の王朝・殷の時代、人間界と架空世界の仙人界が入り乱れ、コメディありのファンタジックなストーリーとなっている。クリスマス・イヴの2日前、そんな舞台の稽古にエンタメステーションの取材班が潜入することができた。さらに、稽古の合間をぬって太公望 役の橋本祥平からコメントもいただけた。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 岩田えり

原作の魅力と稽古場の雰囲気のギャップに驚く

12月22日の土曜日、小雨が散らついてますます寒くなった稽古場の外は、多くの人々が笑顔で行き交い、クリスマスの祝祭ムードに溢れていた。そんななか、稽古場への重い扉を開けると、そこにはまた違う、凄まじい熱気と高いテンションが満ちていた。

すでに扉のすぐそばでは演出の吉谷光太郎が熱心に役者に演技を当てていた。橋本祥平が「現段階では稽古は順調で、すでに1幕は演出がついている段階」と言っていたように、稽古の順調さを伺わせるようなリラックスした雰囲気がありつつも、やはり肌にはピリピリした緊張感がしっかりと突き刺さってくる。取材陣が立ち会うことができたのは、2幕のとあるシーンの芝居稽古(演出家が中心となって演出を当てること)と振付の稽古だった。

物語の場所は、殷という国が栄えた中国。時代は紀元前16世紀から11世紀のとある時期になる。殷王朝30代目の王・紂王(瀬戸祐介)は、文武両道に優れ、良政をしいていたが、妲己(石田安奈)という絶世の美女を娶ることで豹変してしまう。妲己は人間とは異なる世界に住む仙人で誘惑の術をかけて紂王を意のままに操つり、紂王に悪政を行わせ国民を苦しめる。そして国民の不満は募り、いつの間にか国は乱れてしまう。そんな状況を見かねた仙人界のトップの元始天尊は、一番弟子の太公望(橋本祥平)に、“封神計画”遂行の命令をする。簡単にいえば、人間界にいる悪い仙人たちを打ち倒し、その魂を封印するというもの。その計画の最大のターゲットである妲己をいかにやっつけていくかというのがストーリーの骨子になっている。

原作は、圧政をしく国王にほとほと困り果てた市井の人々の苦悩も描いているので、現代社会の風刺も感じさせる。だが、ストーリーは誰でも楽しめるほど風通しが良くて、どのキャラクターも可愛いらしいし、ノンシャランとした性格に思わずクスッとしてしまうのが魅力だ。稽古場にも、そんな原作に忠実な柔らかな雰囲気が漂っているのだが、いざ吉谷が演技を当てると緊張感に満ちる。そんな不思議な稽古場の空気のギャップにまずは驚いた。リアルな舞台にしようとすれば、演劇人の鬼気迫る想いがそこには漂うからだろう。

以前からどの役者にインタビューをしても、「吉谷光太郎の演出はすごい」と聞いていた。橋本はそんな吉谷を評して「芸術家の一面があって、お芝居の見せ方がとても上手」と語ってくれたが、「ここは声を大きくしたほうがいい」とか「コミックスのニュアンスを変えていこう」と緻密でいて、時には大胆にアレンジを加えながら、役者に丁寧に演技を当てて、ミュージカル『封神演義』の一場面をつくり上げていた。

太公望の最大のライバル申公豹(大平峻也)を余所目にしながら、妲己やアンサンブルたちが大きな扇子を使い、華麗な舞を見せるシーンでは、妖艶でいて、どこかデカダンな踊りを見せ、“この国の政治はお終い”という諦念を感じさせる物語の見どころをきちんとつくり上げていた。もちろん、音楽劇(ミュージカルと言ってもいいだろう)を描くことに長けた“劇団鹿殺し”主宰の丸尾丸一郎の脚本を見事に再現していた証左でもあるのだろう。

注目すべきは陳内 将のリーダーシップ

面白かったのは、稽古間の小休憩で、黄天化 役の陳内 将がリーダーシップを取り、「さあ、始めますか」と、多くの役者やアンサンブルと“楽しい4分間のトレーニング”と標して、スマートフォンから音楽を流しながら、激しいストレッチをしていたことだった。しかもその場に、演出の吉谷も笑いながら参加していて、この座組みの“絆”の強さや、楽しくお芝居をしている気持ちがダイレクトに伝わって、こちらも思わずほっこりしてしまったのだ。

休憩後は演出から振付の稽古になった。吉谷の演出を見るのも心待ちにしていたのだが、それと同じぐらい、演劇界注目の振付師、MAMORUの振付指導を直接眺めることができることも楽しみだった。我々が見たのは、太公望と、その弟子武吉(宮本弘佑)や、太公望の仲間である黄天化が、王魔(青木一馬)を中心とする九竜島の四聖(4人の戦闘のプロの道士)の水の使い手、高友乾(武藤賢人)と戦う場面の振付であった。

稽古場には、天井から長い布のようなものが何本か垂れ下がり、MAMORUの指示のもとアンサンブルたちが、それらを使って、波や水の質感を本物さながらに表現しようとしている。MAMORUは台本に自ら書き記しただろう振付案を確認しながらいくつも試して、布とアンサンブルのダンスで、太公望がピンチに陥るシーンをクリアに描き出す。音楽のtakによる原作の世界観をしっかり表現した曲も素晴らしくて、橋本が「吉谷さんも音楽は魔法だとおっしゃっていました」と稽古の合間に語ってくれたように、この座組みでは音楽が本当に愛されていて、実際に流れている楽曲もまさにミュージカルと唸らせるほど生き生きとしていたのが印象的だった。

その中でも、「普段はふざけつつも、時折り見せる真面目な姿とのギャップを大切にして、つかみどころのない魅力を表現したいです」と橋本が言う、太公望のキャラクターは見もので、原作に寄り添いながらも、橋本が思い描いているだろう演技プランがスパイスとして効いていて、舞台ならではの太公望に仕上がっていたと思う。

あらゆるピースがぴったりとはまっていく

また、原作ファンとしては、太公望を守る霊獣である四不象(スープーシャン)の、なんとも言えない“カバ”のような造形が愛くるしく再現されていて嬉しかったのだが、そんな迫力あるキャラクターを、あくまで人力でアナログに表現していることに演出家・吉谷の矜持を感じた。橋本は「吉谷さんのアナログだからこその血の通った表現」と語っていたが、それがMAMORUとtakたちカンパニーの手によってつくり上げられていく。そして、陳内 将が積極的にアンサンブルに布の使い方などのアドバイスを伝えている様を見て、“どんな舞台もひとりではできない”という演劇の真髄をまざまざと感じさせてくれた。

この舞台では、そうした、役者やスタッフ、“モノ”にいたるまで、あらゆるピースがぴったりとミュージカル『封神演義』に的確にはまっていく気がした。この後稽古はさらに振付が加速し、美術の布をどのように使っていくかMAMORUや吉谷たちが話し合って、太公望たちが大波に飲まれるシーンを迫力あるものにしていく。いったいどんな展開になるのか……と期待したところで、残念ながら取材は“今日はここまで”となったが、ここから稽古が本格的になっていくと思うとますます本番が楽しみになる。

この座組みでしか生まれない化学反応が溢れる舞台になる

橋本「今回は魅力的なキャラクターがたくさんいますし、約20年前の原作ですが、舞台化によって『封神演義』という熱を上げられたらと思っています。漫画の『封神演義』ファンにはこの舞台で演劇を好きになってもらえたら嬉しいですし、原作に触れたことのない舞台好きの方には、原作を好きになってもらえたらと思います」とまっすぐ力強い視線で最後に決意表明をしてくれたけれど、このカンパニーを見ていると、そんなことが本番では100パーセント可能になるような気がしてしまう。この座組みでしか生まれない化学反応が溢れる舞台になることを確信させてくれた稽古場取材であった。

公演は2019年1月13日(日)から20日(日)までEXシアター六本木にて上演される。

ミュージカル『封神演義–目覚めの刻(とき)–』

2019年1月13日(日)~1月20日(日)EXシアター六本木

原作:藤崎 竜(集英社文庫コミック版)安能務訳「封神演義」より
脚本:丸尾丸一郎
演出:吉谷光太郎
音楽:tak
振付:MAMORU

出演:
太公望 役:橋本祥平
楊戩 役:安里勇哉
哪吒 役:輝山 立
黄天化 役:陳内 将
武吉 役:宮本弘佑
黄飛虎 役:高松 潤
太乙真人 役:荒木健太朗
四不象 役:吉原秀幸
妲己 役:石田安奈
紂王 役:瀬戸祐介
王魔 役:青木一馬
高友乾 役:武藤賢人
申公豹 役:大平峻也
聞仲 役:畠中 洋

佐藤優次、澤邊寧央、多田 滉、光永 蓮、飯嶋あやめ、さいとうえりな、熊田愛里、三宅妃那

オフィシャルサイト
公式Twitter(@musical_houshin)

©安能 務・藤崎 竜/集英社
©「ミュージカル封神演義-目覚めの刻-」製作委員会出演

関連書籍:コミック『封神演義』(著者:藤崎 竜 出版社:集英社)