冒険Bリーグ  vol. 8

Column

好調・名古屋を支える優しきスーパーアスリート、マーキース・カミングス

好調・名古屋を支える優しきスーパーアスリート、マーキース・カミングス

『冒険Bリーグ』第8回は、名古屋ダイヤモンドドルフィンズ(以下、名古屋)のマーキース・カミングスが主人公。好調・名古屋を支える彼は驚異的なアスリートにして「究極のオールラウンダー」である。そして、そんな彼の秘めた意外性とは?

ウチのチームが一番欲しかったピース――。名古屋の梶山真吾ヘッドコーチは開幕前、新加入のカミングスについてそう評していた。

名古屋は若くてアスリート能力の高い選手が多い。梶山HCはそのような人材を活かして「Bリーグで一番速いチームを作りたい」とも口にしていた。カミングスはそんなチームにフィットしている。彼は192センチ・104キロと「小型」だが、鋭く動けて跳べて、しかもパワフルなスーパーアスリートだ。

とにかくこの男は何でもできる。速攻の先頭に立ってボールを運び、インサイドへ大胆に切れ込み、外からのシュートも悪くない。ダンクシュートはお手の物だし、気の利いたパスだって出せる。センターからポイントガードまで難なくこなせて、身体を張ってスクリーンをかける側にもなれる――。できないプレーが思い浮かばない、完璧なオールラウンダーだ。

カミングスは2013年にフィリピンでプロ生活をスタートさせるとアメリカ、ポーランド、エジプト、レバノン、韓国、ギリシャと世界中でキャリアを積んできた。

8ヵ国目となる日本でも、強烈なインパクトを残している。B1デビューから9試合連続で20得点以上を記録し、現在1試合平均24.2得点を記録。これはB1全体でも2位の数字だ。チームもB1西地区2位と、チャンピオンシップ進出圏内にいる。(※12月23日時点)

実際に話を聞いてみて、彼の謙虚さ、シャイな性格に驚いた。

アスリートからいいコメントを取るためには、機嫌よくしゃべってもらうことが一番。「こんなプレーが凄かった」「こんないい記録を残している」と、 “おだてる”のが記者の常套手段だ。しかしカミングスはそういう話を振れば振るほど微笑で誤魔化し、声も小さくなっていく。例えばこんなコメントだ。

「チームメイトが全員必要なことをやってくれた。(安藤)周人、(中東)泰斗、ササ(笹山貴哉)と点数の取れる、上手いチームメイトが沢山いるので、自分が取れなくても勝てる試合がたくさんある」

「俺のここが凄い」というコメントを、なかなかしてくれない。

B1ハイライト】12/22 川崎 vs 名古屋D(18-19 B1第15節)

12月21日の川崎ブレイブサンダース戦は、彼にとってちょうど30歳の誕生日。「勝利がいいプレゼントになったのでは?」と水を向けても、答えは「(プレゼントを)頂いておきます」とひと言だけだった。

オールラウンドなプレーを褒めてみても「コーチに言われたこと、チームにとって必要なことを勝つために何でもやる。これができないということはないけれど、僕は完璧じゃないし、今日もいくつも失敗をしてしまっている」と謙遜モードは揺らがない。日本人でも今時、これだけ控え目なタイプは珍しい。

アウト・オブ・プレーとなった場面で、一つ気になるシーンがあった。反則がコートの反対側であり、カミングスはレフェリーに胸元へボールを投げ返した。小さなテイクバックのさりげないスローイングにもかかわらず、強烈な「レーザービーム」だった。

少しずつ減っていると聞くが、アメリカには複数の競技を掛け持ちするアスリートがいる。カミングスのようなスーパーアスリートならばバスケ以外の適性もあるだろうし、あのフォームと剛速球はいかにも怪しかった。

「フットボール、例えばクォーターバックの経験があるのか?」と尋ねると、彼は照れながらこう語り始めた。

「本当は話したくないんだけど、高校のときはクォーターバックをしていて、大きい大学からのリクルートをいくつもされていた。ただ、大学へ行くときにフットボールとバスケットでどちらかを選ばなければいけなかった。家族と話し合ってバスケットにした」

アメリカでアメリカンフットボールはバスケットと同等以上の花形種目。彼はジョージア州の「アルフレッド E. ビーチ・ハイ・スクール高校」で、アメフトの花形ポジションを担っていた。“アメフト愛”は今も変わっておらず、好きな大学チームの試合を朝3時4時に起きて見ることもあるという。

さらに人生最初のスポーツは野球で、16歳で辞めるまで投手、捕手、一塁手としてプレーしていたのだという。

しかし「なぜいい話なのに嫌がるの?」「何校くらいオファーが来たの?」と尋ねても、「分からない」「忘れた」と誤魔化されてしまった。決して不愛想ではなく、質問にはしっかり向き合って、取材後は笑顔で握手を求めてくる。間違いなくナイスガイなのだが、一方でとにかく照れ屋だ。

プロスポーツ選手なのだから運動能力は高くて当然なのだが、カミングスほどの「オールラウンダー」は日本国内のあらゆる種目を探してもいないだろう。この優しきスーパーアスリートが持つ凄さを、今後も探ってみたい。

取材・文 / 大島和人 写真提供 / B.LEAGUE

B.LEAGUE(Bリーグ)オフィシャルサイト
https://www.bleague.jp/

バスケットLIVE
https://basketball.mb.softbank.jp/

著者プロフィール:大島和人

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都町田市に在住する。大学在学中にテレビ局の海外スポーツのリサーチャーとして報道の現場に足を踏み入れ、アメリカの四大スポーツに接していた。損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年から「球技ライター」として取材活動を開始。バスケの取材は2014年からと新参だが、試合はもちろんリーグの運営、クラブ経営といったディープな取材から、ファン目線のライトなネタまで、幅広い取材活動を行っている。

vol.7
vol.8
vol.9