es執筆陣が独断で選ぶ2018年 BEST MUSIC  vol. 3

Column

日本産ポップスの素晴らしさを再確認した3曲

日本産ポップスの素晴らしさを再確認した3曲

「J-POP」という言葉はもう死語に近いかもしれない。世界に扉が開かれつつある中で、わざわざ日本に限定する必要はないし、新たな種類のポピュラーミュージックが出現する可能性のほうが高い。けれど、日本のアーティストによる日本で暮らす人々のための、日本でしか生まれないようなポピュラーミュージック、というのはまだ確実にあって、今は個人的に「J-POP」をそう解釈している。その意味で自分はJ-POPで育ったJ-POPラバーだと思う。今年はアジアにもヨーロッパにも北米にも南米にも行って、海外のフェスやライブで大いに刺激も受けたけど、ゆえに改めて日本を見つめ直す1年でもあった。
その国産ポップスの中で、2018年に発表されて強く惹かれたもの。例えば星野源「アイデア」とか米津玄師「Lemon」とか椎名林檎とトータス松本「目抜き通り」とか、話題になった楽曲はもちろんだけど、個人的には次の3曲だ。後世に残っていってほしいと本気で願う名曲3作について、思いをぶちまけます。

文 / 鳴田麻未

「マリーゴールド」/あいみょん

カノン進行のこの曲を最初に聴いた時「わ、勝負曲だ」と思った。“J-POP”という言葉が興った90年代から日本人が慣れ親しんできたあんな曲やこんな曲と、正面から向き合って、あいみょんなりの球速でストレートを投げたような潔さを感じる。この曲は、それまで一番の代表曲だった「君はロックを聴かない」を超える夏の曲を書きたいと思い、わざと近いニュアンスで作ったという。結果、本人も目標達成と思うほどの出来でシングルリリースに至り、初紅白の歌唱曲にもなった。つまり自他共に、かつ名実共にあいみょんの代表作になった、今年をも代表するポップスの1つだと思う。

12月17日にZepp Tokyoで行ったツアーファイナル(ツアーのサブタイトルの「HONEY LADY BABY」って「麦わらの帽子の君」のことなんだろうか)で、あいみょんは大躍進の2018年を振り返って「マリーゴールドという花は今年、よく咲いてくれたなと思います。マリーゴールドという花がいろんなところに連れてってくれたなと思います」と話した。その色の通り、彼女のキャリアにおいて黄金色に輝いていく1曲だろう。彼女がみずみずしい才能を駆使して、またこれを越えていくのが楽しみ。

オフィシャルサイトhttp://www.aimyong.net

「未来花(ミライカ)」/スキマスイッチ

3月にリリースされた約3年ぶりのアルバム『新空間アルゴリズム』は、スキマスイッチ史上最高の呼び名高い傑作だった。“原点回帰”を意識して制作された本作だが、1st〜3rdアルバムあたりの初期の純真なアプローチをしながらも、3年間のインプットで得た刺激や思考が相まって、未知なる奥行きを持った高精細な音楽が詰め込まれている。

そのリード曲が「未来花」だ。一生の中で愛しい存在の名前を呼ぶことをテーマにしたヒューマニティの歌詞に、歌とピアノというスキマスイッチ最小にして「僕らとしては最大の表現」(常田真太郎)で織り成す、ごく静謐なバラード。大橋卓弥は「作った当時から手応えがあって、思いどおりの曲ができたという達成感が大きくて、とても大事な曲になっていたので、ずっと出し惜しみしていた」と語っており、シンプルな構造ゆえに、鍵盤の音の強弱やニュアンスを徹底的に詰めるなど非常に神経を使ったという。受け手側も一生をかけて聴いて味わっていきたいと思うスルメソング。

11月に横浜アリーナで開催した15周年記念ライブでは、この曲をバンドアレンジでレコーディングし直した「未来花(ミライカ) for Anniversary」として披露した。この形やライブアーティストとしてより強靭になったことも、この数年間武者修行のようにライブを繰り返した成果ではないだろうか。あのアニバーサリーライブは、スキマスイッチが15年間真摯に積み重ねてきた良質なポップミュージックの結集だった。2018年一番泣いたライブ。

オフィシャルサイトhttp://www.office-augusta.com/sukimaswitch/

「ドラマ」/C&K

波瑠主演のドラマ「サバイバル・ウェディング」の主題歌として流れてきて興味を持ち、ドラマのストーリーと歌詞のリンク度合いが回を追うごとに効いてきて、3カ月かけてじわじわ感心、終わった頃には「なんってよくできてる曲……!!」とリピートの手が止まらない、というハマり方をした。C&Kだから活かせるジェットコースター級の歌メロ、ゴスペル調の厚いコーラス、ホーンやチャイムを多用したきらびやかなサウンド、起承転結のはっきりしたまさにドラマのような楽曲構成、CLIEVYとKEENのそれまで以上に豊かな歌声。どれを取っても贅沢で、ポップス愛好家の耳にとってご褒美みたいな曲ではないか。こんな心躍るアレンジをしたのは誰かと調べたら、いつも自分のツボを押すUTAだったので腑に落ちた。カップリングに収録されている、ピアノ1本によるスローバージョン「ドラマ(No Make ver.)」は2人がまた違う歌い方で魅せているのもニクい。

どうしてもライブで聴きたくてTOKYO DOME CITY HALLでのワンマンを初鑑賞した。CLIEVYが本番中に両足骨折して車椅子に座りながら熱唱する、という本当のドラマが起きたが、そんなアクシデントでも雰囲気を落とさず、バラードもお涙頂戴演出をせず。スキルフルなのに親しみやすいエンタテインメントに昇華させて、これまでの地道な活動でファンもガッチリつかんでいる彼らなら、そりゃ横アリ埋めるわと納得した。

オフィシャルサイトhttps://c-and-k.info

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