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“なぜアニメ化するのか”を実感できた─ラブコメの真髄『ハイスコアガール』再検証。驚愕のラストから、待望の続章に向けて

“なぜアニメ化するのか”を実感できた─ラブコメの真髄『ハイスコアガール』再検証。驚愕のラストから、待望の続章に向けて

アニメ『ハイスコアガール』(2018年7~9月放映)の魅力とは、数々の権利元から許可を取ることで実際のゲーム画面&筐体登場を実現し、見る者全ての心に潜むゲームファン魂を呼び起こした点も確かにあろう。だがそれは、多くの読者を惹きつけたラブコメ作品にとっては、主役を引き立てる黒子。ラブコメの真髄を忠実にアニメ化した点こそが優れている。

そのアニメは、最終話を迎えるものの予想を覆したシーンで終了。放映後のCMで、TVシリーズのBlu-ray/DVDリリース(2018年12月19日に1~4話収録の1巻を発売、以降毎月1巻ずつ発売、全3巻)後の3月にTVシリーズの続きが配信・発売されると告知された。現段階ではどのような形でアニメが終焉を迎えるのか定かではないが、現時点で卓越したアニメ化作品であることはすでに判明している。『ハイスコアガール』とはどのようなアニメ作品だったのか。

文 / 清水耕司(セブンデイズウォー)


記憶の中に埋めているゲームはなんというタイトルだったのか

おそらく書店の2階だったと思う。だが、何十畳もありそうな空間に仕切りはなく、梁のような鉄骨がそこかしこに見えていた。窓はそこそこ大きいが屋根面だけで、部屋の側面にはないので少し薄暗く、蛍光灯がいくつか吊り下げられていた。まさに、広い屋根裏部屋を倉庫としているという感じで、隅の方には大きな段ボール箱が何個も置いてあった。人も誰もいなかった。ただ、倉庫ではないとわかるのは、部屋の中心近くには画面が光るゲーム筐体が何台もあったからだ。

そのうちのひとつに、『機動戦士SDガンダム サイコサラマンダーの脅威』があった。このゲームを思い出そうとするとまず浮かぶのは「金にあかせてクリア」だった。この場所を見つけた友人とふたりプレイで挑むものの、早々に撃沈。だが、横スクロールで『ダライアス』系シューティング(ゲーム)と言えなくもないが、敵の弾が細かすぎない弾幕、見慣れた『ガンダム』キャラクターという親しみやすさ、そして登場するMS・MAのグラフィックの素晴らしさ! などに魅せられ、1プレイ50円という値段設定を追い風に、後日50円玉を大量に用意して再挑戦する。それでも、すぐ壊れるシールド、ミスすると初期状態(攻撃はバルカンのみ)からスタート、というハードさにクリアできたのは友人だけ。私はサイコ・サラマンダーを倒す直前で、資金切れと「ここまで来たらあとはクリア画面見るだけ」(実際にはもうひと展開あったが)の思いでこと切れた。元々、ゲームのセンスはなく、川原泉漫画の主人公よろしく『マリオ』で突然崖に飛び降り自殺するタイプなので、エンディングは友人の隣で赤い丸椅子に座りながら見守った。コミック『ハイスコアガール』を読んだとき、そんな思い出がつぶさに蘇ってくる。

『ハイスコアガール』に触れた者の多くはおそらく、スーパーライトどころかミニマム級のゆるゲーマーから、ゲームに青春を賭けたヘビーなゲーマーまで、脳の奥底に眠っていた記憶を呼び覚まされたはずだ。作品の舞台は1990年代。登場する矢口春雄(通称ハルオ)や大野晶、日高小春たちは1979年生まれだが、1980年前後から大ヒットを巻き起こした『スペースインベーダー』(タイトー)をスタート地点に考えると、1960年代生まれ以降の日本人なら思春期~青春期にゲームの洗礼を受けただろう=ゲームにまつわるなんらかの思い出が持つはず、と予想する。作品の性質上、アーケード寄りではあるが、少しでも「ゲーム」を触ったことがある人ならば、きっと心が呼応する瞬間はあるはずだ。久しく見ていない、プレイステーションが起動する際のあの音とあの映像。何年ぶりかに触れたのはアニメ『ハイスコアガール』の中でだった。

コミックでも強かったノスタルジー要素だが、それはアニメ化によって超絶加速する。数々のメディアで証言を見つけられるように、単純にアニメーションプロデューサーならびに制作プロデューサーがゲーム好きだったことから、作中に登場するゲームの再現に大いなる情熱を費やされた。さまざまな権利元への確認を果たし、資料の少ない筐体に関しては置いてあるという噂を元に秋葉原やら箱根やらまで足を伸ばした。

結果、アーケード筐体や家庭用ゲーム機をCGによって完全描写するのは当然として、筐体画面やブラウン管画面の違いによるゲーム画面のゆがみにも配慮、作中のゲームプレイはゲームセンターを擁して再現&撮影、ゲームショウや新作リリースポスターといった小物も充実、さらにはゲーム関連以外に関しても当時の世相や文化を画面に焼き付けている。アニメを見たときの、少年・少女時の記憶の揺さぶられ方が尋常ではない(このあたりはBlu-ray・DVDに付属するブックレットをご覧いただきたい)。

原作者・押切蓮介の言葉を借りれば、平成30年に『モータルコンバット』の筐体が登場する作品を見ることがあるとは思わなかったし、その難易度で格闘ゲーム界にその名を轟かせる「独歩頂膝」からの連続技動画をTVアニメ内で見られるとも思わなかった。

原作を十二分に理解し、その魅力増幅に徹したアニメ

しかし、とはいうものの『ハイスコアガール』の本質はラブコメにある。押切連介という漫画家が連載開始時から意識したのもそこであるし、多くの人を心底夢中にさせるのもそこである。『ストリートファイターII』や『キングダム ハーツ』シリーズで音楽を担当し、今回のアニメで劇伴を手がけた下村陽子が「キュンキュン」したのも、カプコンの『ストリートファイター』シリーズに関わるスタッフが(ゲーム部分は勿論ではあるのだが)心を掴まれたのもラブコメ部分である。

実際、『初恋限定。』『キルミーベイベー』『リトルバスターズ!』『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』といった数々の秀作を生み出した山川吉樹監督の腕は確かで、ゲーム関連のシーン・設定・プロップの再現度は高いが、ラブコメ部分もそれを勝る勢いで増幅されている。中学の修学旅行の宿泊先で夜景を見つめる小春、高校生となってハルオと疎遠になった大野が宮尾に何か言いたげな様子など、さまざまなしぐさやセリフ、シーンでアニメオリジナル演出が投入されて、漫画原作をより泣ける映像に仕立て上げている。実際、2回は泣ける。

原作が、秀逸な設定、練り込まれた脚本、魅力的な主演俳優によって最高にセンチメンタルなボーイミーツガール物ラブコメであるならば、アニメは原作でそぎ落としていた大掛かりな現地ロケや味のあるバイプレーヤーが参加したようなもの。TVシリーズアニメでありながら、劇場版アニメに劣らぬクオリティを放っている。実際、原作ではモブであった、すぐ切れるマーくんやその(元)彼女のみーたんなどが何度も登場するが、それも作ったCGキャラクターを有効活用というだけではなく、そこに物語を付随させている点が心憎い。原作のカラーや味を十二分に理解しての仕業といえる。その意味で言えば、アニメ化にあたってメインキャストの3人に、天﨑滉平、鈴代紗弓、広瀬ゆうきという隠れた逸材を見い出したのも見事だが、同様に、脇の脇のキャラクターに杉田智和、安元洋貴などの布陣をあてがったのも見事。

本作を見ていると、アニメ化の意義、なぜアニメ化するのか、アニメ化するメリットとは? という点を実感させてくれる。原作における両輪、「ゲーム」と「ラブコメ」という魅力をアニメで昇華させた手腕は、本作を語る上で特筆すべきポイントなのは間違いない。その意味でさらに一点重要なのは、原作を1クールという現在のアニメ事情に合わせて伸縮させなかったこと。小ネタも含めて、前述のようにラブコメの空気感は増してはいるものの、ストーリーはほぼ原作準拠。そのスピード感の結果、TVシリーズ1期=12話は、小春からハルオに対する告白で最終回を迎える。通常あり得ないと言ってもいい箇所だろう。

原作が最終回を迎えたとはいえ、そして続編13話~15話が既定路線であったとしても、このペースではどのみち原作の最終回までを描ききることはできない。ならば、15話のラストはやはり原作の途中段階で幕引きとするか、オリジナルになるか。だが、作品からひしひしと感じる「『ハイスコアガール』のアニメ化に対する情熱」を考慮すると後者はありえないだろう。とすると……。気になる。

「ハイスコアガール」ROUND13~15

2019年3月にNetflixにて3話同時配信予定

© 押切蓮介/SQUARE ENIX・ハイスコアガール製作委員会
© BNEI © CAPCOM CO., LTD. © CAPCOM U.S.A., INC. © KONAMI © SEGA © SNK© TAITO 1986

TVアニメ『ハイスコアガール』オフィシャルサイト

原作コミック

ハイスコアガール CONTINUE
著:押切蓮介 出版社:スクウェア・エニックス