LIVE SHUTTLE  vol. 35

Report

水曜日のカンパネラ「未確認ツアー」@新木場 STUDIO COAST 2016.6.25

水曜日のカンパネラ「未確認ツアー」@新木場 STUDIO COAST 2016.6.25
“ヤフオク!”や“日清カレーメシ”のCMでオフビートな新キャラクターとして認知され、注目を集めている「水曜日のカンパネラ」が、ついにメジャー・デビューEP『UMA』を6月22日にリリースした。続いて25日には『UMA』を掲げた『未確認ツアー』がスタート。その初日を見に、新木場STUDIO COASTに駆け付けた。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / Noboru Miyamoto


あまりにも型破りな破壊力を持つステージ

本当はもう少し前に『UMA』を出してリスナーに聴きこんでもらってから、満を持してツアーに臨むはずだったのが、いろいろあってこうなったらしい。しかもこの日のライブ中にそんな裏事情をバラしてしまうが、なんとも「水曜日のカンパネラ」らしい。結局、この日は、オーディエンスにとって新曲のオンパレードのライブになった。

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開演前の会場のスクリーンには、ゲームの設定画面のようなジャングルのイラストが映し出されている。その映像の中から、時折、変な動物が現われ、続いてその動物のスペックがゲームカードのスタイルで紹介される。

そう、『UMA』とは“謎の未確認動物”のこと。次々に画面に登場する“ツチノコ”や“チュパカブラ”、“雪男イエティ”などの未確認動物たちは、『UMA』に収められている曲名なのだ。スクリーンのイラストはEP『UMA』のジャケット・ビジュアルになっていて、もう少し早く『UMA』がリリースされていれば、会場はいちいち映像で盛り上がるはずだった。なのに発売が遅れたため、大半のオーディエンスは意味がよくわからず、何となくザワついているだけなのだった。

ただし、この妙な感じも、ガツガツしない「水曜日のカンパネラ」らしくて面白かった。僕の横にいたオーディエンスたちも、「けっこう開演、遅れてるね」「いつものことじゃん」とリラックスした様子でのんびり話している。“期待”と“非期待”が入り混じって、やはり普段とは違う空気がCOASTに漂っていた。

スクリーンと簡単なオブジェ、DJブースがあるだけのステージが暗くなる。いよいよ開演だ。いきなりスクリーンに、ジャングルの中で「メデューサ」を歌うコムアイが現われた。あらかじめ撮影された映像なのかなと思っていると、客席後方の一段高い所にある“VIPルーム”に明かりが灯り、そこに作られたセットの中でコムアイがパフォーマンスしているのが見えたから、フロアを埋めたオーディエンスたちは振り返って騒ぎ出す。さらにコムアイがVIPルームから出てきてバルコニーに身を乗り出すと、騒ぎはさらに大きくなった。

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「水曜日のカンパネラ」は、昨年あたりからライブでの人気も急上昇。特にイベントでの破壊力は凄まじく、各地のロック・フェスに出演するたびに、センセーションを巻き起こした。YouTubeに次々とアップされるMVで「水曜日のカンパネラ」を知ったリスナーのイメージを、いい意味で裏切るパフォーマンスが強い衝撃を与え、話題をさらったのだ。

一方でワンマンライブは、少々わかりにくいものだった。実験的なサウンドを長々と聴かせたり、突然、客席に飛び込んだり、意味不明なパフォーマンスが多かった。

実はワンマンでもフェスでも、「水曜日のカンパネラ」は同じことをしていた。ただ断片的に見せるフェスでは、突出したアイデアがオーディエンスを瞬殺する効果を上げていた。だが、統一感を求められるワンマンライブでは、ぶっ飛んだアイデアが拡散してしまい、まとまりがないように僕には見えた。

なので僕は「水曜日のカンパネラ」が今後、“完成”に向けてライブ活動を続けていくのか、それとも“突出”するために過激化していくのか、注目していた。この日もトリッキーな演出でライブが始まったので、その後の展開がどうなるのかを注意深く見守ることにした。

ライブは初日らしい盛り上がりを見せる。「シャクシャイン」でコムアイが北海道名物を連呼しながら、ロシアの格闘技“システマ”のようなダンスを披露すると、フロアは大喜びする。「いくよ、新木場」とコムアイが叫ぶ。

「どうも、『未確認ツアー』にようこそ。海外の人に曲を頼んだりしたから、やりとりが大変で、本当はもう少し早く出るはずだったんだけど・・・出てから3日しか経ってないけど、まだ『UMA』を聴いてない人?・・・けっこういるね、逆に勇気あるな(笑)」と言って、早速、『UMA』から「ツチノコ」を歌った。

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最初の盛り上がりは、人気ナンバー「ディアブロ」から「小野妹子」への流れだった。コムアイは手にスマホを持ち、エフェクトをかけて動画を撮影できるアプリを通した自分の顔の映像を、リアルタイムでスクリーンに映し出す。パンダになったり、ウ○コになったりするコムアイの顔を見せられて、客席はゲラゲラ大笑い。

「チュパカブラ」では、看護婦が出てくるMVの設定をステージ上に再現。車椅子に乗っているのは、普段は裏方としてトラックを作っているケンモチヒデフミだ。You TubeでMVを見まくってきたファンたちはまたまた大喜び。こうしたメディアを使ったバーチャルな遊びが「水曜日のカンパネラ」の得意技だ。

コムアイはMCで「メジャーになっても、何も変わってないです。ライブは自分が面白いと思うことをやっていきたいし、物販も自分が使いたいと思うものしか作ってない。変わったのは“GARAGE”っていうサイトを作ったこと。今までためてきた音源や映像を楽しんでもらえるようにしました。よかったら見てください」とこれまでと変わらない姿勢を告げ、メディアからの発信を強調する。「メジャーになって予算が増えたけど、こだわって割に合わないことをやってるから、儲からないです」とも付け加えた。

音楽的にライブを引き締めていたのは、「ウランちゃん」から新曲「バク」への流れだった。ノイズ混じりのハウスミュージックが「水曜日のカンパネラ」のシャープな一面を強烈に印象付ける。パフォーマンス重視の曲がある一方で、ディープなグルーヴを追求するナンバーもある。豊富なアイデアを、うまくバランスを取って表現していた。「水曜日のカンパネラ」のライブが、確実に進化していることが伝わってきた。

その他、ライブの細かい様子は、まだツアーが続いているのでこれ以上書かないことにする。

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本編ラストは、出世作ともいえる「桃太郎」だった。透明なバルーンの中にコムアイが入り、空気を満たして封印し、そのままオーディエンスの上を転げ回りながら歌う。いわゆる“ダイブ”の超変形バージョンだ。この大胆な演出に、オーディエンスは大興奮。サビを大合唱して応える。曲が終わってバルーンから出て来たコムアイは、沸きに沸く会場に向かって「ありがとう、さいなら~」と感謝を込めて叫んで本編を締めくくった。

一度、ステージを去ったコムアイは、すぐに戻ってくる。「私はアンコールですぐに出たいタイプ。だって、さんざん待たせて『着替えてねーじゃん』とか思われるのがイヤだから(笑)」。無事、ライブ本編を終えてホッとしたのか、コムアイは笑顔でオーディエンスに問いかける。

「水曜日のカンパネラ」のライブは「3人でやると思ってた人?」と質問すると、客席から笑い声が起こった。

誰も手を上げなかったが、たぶん3人でステージに立つと思っていた人がいたはずだ。コムアイ、ケンモチ、Dir.Fの3人からなる「水曜日のカンパネラ」のライブで、基本的にステージに登場するのはコムアイだけだ。彼女はそれを知らないでライブにやってきた人がいるかもしれないと思って問いかけた。このツアーを含めて、今後「水曜日のカンパネラ」のライブを初めて見る人は確実に増える。急速に拡大するファンのことを、彼女は意識し始めていた。

続いて「今日のライブにどこからやって来たのか」を問いかける。都内、関東はもちろん、沖縄、北海道、オーストラリアからも来ている人がいると知って、「最北端と最南端でLINEのグループでも作ってください」。コムアイらしいセリフだった。

アンコールに選ばれた曲は「ドラキュラ」。歌う前のコーラスパートの練習で、オーディエンスが♪おまえの ちーすうたろか♪と大声で歌うと、「凄い! 凄い! みんな、You Tube見過ぎじゃない?」と持ち上げた後、「冷やかしで見に来たみなさんも歌ってください」と呼びかけて笑いを誘う。新しいファンに気遣いながらも、必要以上に親切にしない。コムアイのライブに対するアティテュードが見えた瞬間だった。

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この日のステージには、音楽的な柱、コムアイ個人のパフォーマンス、演出のユニークさ、オーディエンスとのコミュニケーションなど、ライブが完成に向かう要素のすべてが揃っていた。特にオーディエンスが「水曜日のカンパネラ」の歌やキャラクターをよく理解していることを確かめて、「これがワンマンだよね!」と無邪気に歓ぶコムアイの明るい表情が印象に残った。ずっとアウェイで闘ってきた彼女が、ようやく“ホーム”を楽しみ始めたのだ。

新しいエンターテイメントとしての「水曜日のカンパネラ」が、もっと多くの人たちに届く日は近い。音楽のみならず、ネットメディアやスマホなどのコミュニケーション環境を巻き込んだエンターテイメントが、予想外の切り口で世の中を楽しませることになるだろう。

初日のライブを見終わって、コムアイとは、一体、どんな“記号”なのだろうという思いがよぎった。

80年代の戸川純、90年代のPUFFY、2000年代の椎名林檎など、カルトとメジャーを自由に行き来する女性アーティストは、自覚的であるか無自覚であるかを問わず、それぞれに“時代の記号”を背負ってきた。戸川は「バブルの裏側」、PUFFYは「脱力の時代」、椎名は「本能の復権」という記号とも読み取れる。そして2010年代に現われたコムアイが、今、その全貌を現わそうとしている。そんなスリリングな状態にあるコムアイを、このライブで目撃できたのはラッキーだった。

ツアーは7月18日の京都・萬福寺まで続く。なぜファイナルにこの寺を選んだのかはわからないが、この古刹には伝説の快速ランナー仏の韋駄天や、巨大な木魚などの“未確認動物(?)”が安置されている。そこで「水曜日のカンパネラ」はどんなパフォーマンスを見せるのか。期待と妄想は膨らむ一方だ。

水曜日のカンパネラ ワンマンライブ 2016 “未確認ツアー” 2016.6.25 セットリスト

01.メデューサ
02.シャクシャイン
03.ツチノコ
04.ナポレオン
05.ディアブロ
06.小野妹子
07.雪男イエティ
08.フェニックス
09.チュパカブラ
10.ウランちゃん
11.バク
12.ユタ
13.ツイッギー
14.ラー
15.ミツコ
16.ユニコ
17.桃太郎
EN01. ドラキュラ

水曜日のカンパネラ ワンマンライブ 2016 “未確認ツアー”

7月2日(土) 福岡 嘉穂劇場
7月6日(水) 札幌ペニーレーン24
7月9日(土) 岡山 YEBISU YA PRO
7月10日(日) 広島クラブクアトロ
7月16日(土) 名古屋ダイアモンドホール
7月18日(祝・月) 京都 萬福寺

リリース情報

UMA

『UMA』

メジャー第1弾アルバム

【初回限定盤】(CD+Tシャツ)
WPCL-12387/¥3,611+税

【通常盤】(CD)
WPCL-12388/¥2,315+税

01.チュパカブラ
02.ツチノコ
03.雪男イエティ
04.ユニコ
05.フェニックス
06.バク
07.クラーケン


水曜日のカンパネラ

水曜日起動型、ポップハウス・ユニット「水曜日のカンパネラ」。2013年からコムアイを主演とするユニットとして始動。メンバーはコムアイ(主演)、ケンモチヒデフミ(音楽)、Dir.F(その他)の3人だが、表に出るのは基本的には主演のコムアイのみとなっている。2014年11月に発売した 『私を鬼ヶ島に連れてって』に収録されている楽曲「桃太郎」がWEBやラジオを中心に話題となり耳の早いリスナーが次々と中毒者になっている。そして、昨年11月11日に1年ぶりのアルバム『ジパング』が発売。ヤフオク!のCM楽曲の「ツイッギー」や日清カレーメシ2とのコラボ曲「ラー」など話題の楽曲が収録されている。2016年3月にはアメリカ・テキサス州『SXSW2016』に出演。

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