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ハイステ!刀ミュ!松ステ! ライター・横川良明が選ぶ、2018年を彩った至高の5作品

ハイステ!刀ミュ!松ステ! ライター・横川良明が選ぶ、2018年を彩った至高の5作品

今年もあっという間に駆け抜けた2018年。春夏秋冬振り返れば、季節ごとにそれぞれに夢中になった舞台との想い出がありました。ということで、2.5次元を中心とした若手俳優たちの活躍する舞台から、ライター・横川良明が心に残った5作品を紹介。愛と感謝を込めて、その魅力をお伝えします。

文 / 横川良明

ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」〝最強の場所(チーム)〞

演劇「ハイキュー!!」が教えてくれたこと。それは、僕たちはみんな独りじゃないということ。大千秋楽のカーテンコールで、全キャストの挨拶を終えた後、座長・須賀健太から改めてこの台詞を語りはじめました。

「目の前に立ちはだかる高い高い壁。その向こうはどんな眺めだろうか。どんな風に見えるのだろうか。“頂の景色”――俺ひとりでは決して見ることの出来ない景色。でも独りではないのなら見えるかもしれない景色」

原作の冒頭に登場する台詞。演劇「ハイキュー!!」でも何度となく登場してきた台詞です。約3年という時間をかけて、僕はこの言葉の意味するものを見せてもらっていたのだなと涙でむせながら実感しました。

演劇「ハイキュー!!」が座組みのことを「劇団ハイキュー!!」と名乗るのも、キャスト変更のたびにキャスト同士が「繋ぐ」という言葉を使い続けてきたのも、独りじゃないんだということを彼らは知っていたから。みんなで、演劇「ハイキュー!!」をつくり上げていく。

レシーブからトスを上げ、スパイクを打ち、また相手チームがレシーブを上げる。そうやってボールを繋いでいくように、彼らもまた誰かが放った熱と感情を別の誰かが真っ正面から受け止め、何倍にもして打ち返していった。

その嘘のない呼吸に、一瞬たりとも気を抜かない本物の命と青春の躍動に魅せられた。夢中になった。それが、演劇「ハイキュー!!」と過ごした3年間だったんだと思います。

集大成となる〝最強の場所(チーム)〞はもちろん、この約3年の眩しい想い出たちに感謝を込めて、この1年の中の特別な1本として名前を挙げたいです。

ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」〝最強の場所(チーム)〞

東京:2018年10月20日(土)~10月28日(日)TOKYO DOME CITY HALL
広島:2018年11月9日(金)~11月10日(土)はつかいち文化ホール さくらぴあ 大ホール
兵庫:2018年11月15日(木)~11月18日(日)あましんアルカイックホール
大阪:2018年11月23日(金・祝)~11月25日(日)梅田芸術劇場 メインホール
宮城:2018年11月30日(金)~12月2日(日)多賀城市民会館 大ホール
東京凱旋:2018年12月7日(金)~12月16日(日)日本青年館ホール

原作:古舘春一「ハイキュー!!」(集英社「週刊少年ジャンプ」連載中)
演出・脚本:ウォーリー木下
出演:≪烏野高校≫須賀健太、影山達也、小坂涼太郎、三浦海里、塩田康平、渕野右登
、 川原一馬、田中啓太、田中尚輝、冨森ジャスティン
≪青葉城西高校≫遊馬晃祐、小波津亜廉、白柏寿大、金井成大、山際海斗、齋藤健心、北村健人、坂本康太、神田聖司
≪白鳥沢学園高校≫有田賢史、瀬良祐介、横山真史、加藤 健、菊池修司、佐藤信長、辻 凌志朗、高橋駿一、川下大洋
≪烏野高校 OB・OG≫山口賢人、佐達ももこ≪烏野高校 マネージャー≫長尾寧音、斎藤亜美
≪烏野高校 顧問・コーチ≫内田滋、林剛史

オフィシャルサイト

© 古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会

ミュージカル『刀剣乱舞』 ~結びの響、始まりの音~

歴史を守るために、時として元の主を斬らなければいけないこともある。そんな宿命を描き続けてきた『刀ミュ』。中でも本作が感動的だったのは、避けられない宿命を刀剣男士たちが互いに背負い合うことで、悲しみを和らげようとしていたから。

苦悩の渦中に立たされた和泉守兼定(有澤樟太郎)に深く寄り添う長曽祢虎徹(伊万里有)。そして、兼さんのために危険を顧みず無茶な行動に出る堀川国広(阪本奨悟)。そんな刀同士の絆に胸が締めつけられる中、いちばん達観しているように見えた陸奥守吉行(田村心)がいちばん重い十字架を代わりに引き受けてくれた。その選択に、陸奥守吉行の中で眠る、元の主の面影を見ました。

豪放磊落で、いつも周囲を明るく照らし、日本に新しい時代をもたらすために奔走した陸奥守吉行の元の主・坂本龍馬。近江屋事件で倒れ、その志は夢半ばで潰えたはずだった。だが、陸奥守吉行のあの最後の銃声が、結果的に新選組の終焉を決定づけ、同時に刀の時代に終わりを告げた。

あの銃声を聞いて、初めて副題の意味がわかったし、これは刀剣男士たちの友情物語であると同時に、ひとつの歴史に終止符を打つ物語なのだと、視界を覆っていた濃霧が一瞬で取り払われたような想いでした。

華やかなミュージカル要素で観客を湧かせる一方で、練り込まれたストーリーテリングにも定評のある『刀ミュ』。今後の展開が見逃せません。

横川良明の演劇コラム「本日は休演日」vol.4
なぜ熱狂を生むのか。ミュージカル『刀剣乱舞』が描いてきた3つのこと

なぜ熱狂を生むのか。ミュージカル『刀剣乱舞』が描いてきた3つのこと

2018.06.18

「ミュージカル『刀剣乱舞』 ~結びの響、始まりの音~」

東京:2018年3月24日(土)~4月1日(日)日本青年館ホール
大阪:2018年4月8日(日)~15日(日)梅田芸術劇場 メインホール
東京凱旋:2018年4月20日(金)~5月6日(日)TOKYO DOME CITY HALL

原案:「刀剣乱舞-ONLINE-」より(DMM GAMES/Nitroplus)
脚本:御笠ノ忠次
演出:茅野イサム
振付・ステージング:本山新之助
出演:鳥越裕貴、有澤樟太郎、田村心、阪本奨悟、伊万里有、丘山晴己
/高木トモユキ、辰巳智秋、新原武/藤田玲ほか

オフィシャルサイト

©ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会

舞台『おそ松さん on STAGE ~SIX MEN’S SHOW TIME 2~』

待てど暮らせどビューネくんがやってこない我が家において、すり減った心を癒してくれたのが『松ステ』でした。

ここではっきり言いましょう。くだらないは最高です、ということを。

もちろん複雑な社会性を帯びたドラマや、一度では咀嚼できない難解かつ芸術的な作品も素晴らしいと思います。が、それと同じように、何も考えずにサクッと楽しめるものや、何なら次の日にはもう何も残っていないような作品もまた、等しく価値があることを、僕は声を大にして言いたい。

そんなくだらなさが最高のカタチで昇華したのが、この『松ステ』でした。飛び出してくるのは小学生のような牧歌的なやりとりと、シュールなハイセンスギャグだけ。ショートコントオムニバスのような形式で描かれる六つ子の日常と、あまりにカッコすぎてキャーキャー言うべきなのか笑うべきなのかよくわからなくなるF6のステージングは、もうバカ丸出し。決して観た人の人生を変えようなんて崇高な意志は感じられない。

でも不思議なことに、僕はこのくだらないステージを観て、ボロボロ涙が止まらなくなったのです。そしてそれからというもの、いつも何かに追われてピリピリして、しかめっ面ばかりしていた自分が、ほんの少しだけ生きやすくなったのです。

それはきっと、徹頭徹尾くだらないことをやり通す彼らを見て、僕もこんなふうに気ままに楽しく生きてみたいと思えたから。

今でもふっと眉間に皺が寄りそうになったときは、6つ子の顔を思い浮かべます。そして、一回深呼吸をして口の中で唱えてみるのです、「マッスルマッスル! ハッスルハッスル!」と。そしたら自然と口角が上がってる。彼らが教えてくれた、元気の出るおまじないです。

舞台「おそ松さん on STAGE ~SIX MEN’S SHOW TIME 2~」

大阪:2018年2月23日(金)~26日(月)梅田芸術劇場 メインホール
東京:2018年3月1日(木)~11日(日)TOKYO DOME CITY HALL
原作:赤塚不二夫「おそ松くん」
演出:小野真一 
脚本:伊勢直弘、鹿目由紀、小峯裕之 
音楽:橋本由香利 
出演:高崎翔太、柏木佑介、植田圭輔、北村諒、小澤廉、赤澤遼太郎/井澤勇貴、和田雅成、小野健斗、安里勇哉、和合真一、中山優貴ほか

オフィシャルサイト

©赤塚不二夫/「おそ松さん」on STAGE製作委員会2017

舞台「駆けはやぶさ ひと大和」

今年も舞台『ジョーカー・ゲームⅡ』など2.5次元シーンを湧かせた一方で、オリジナル作品にも精力的に取り組んできた西田大輔。その魅力が存分に発揮されたのが、この舞台「駆けはやぶさ ひと大和」でした。

本作は、幕末を駆け抜けた新選組の光と影を描いた青春ドラマ。人を斬ることを得意とせず、代わりに絵を描くことに長けた主人公・中島登(花村想太)の視点から、時代の趨勢に呑み込まれ壮烈に散っていった新選組の姿が語られます。

誰もが幸せに暮らせる「まぼろば」を信じ、共に集まった新選組の隊士たち。動乱の中でも、時に杯を交わし合い、時に馬鹿話で盛り上がる。その楽しげな姿に、こんなにも胸が苦しくなるのは、彼らの幸せな時間が永遠ではないことを僕たちはすでに知っているから。

刻一刻と近づく滅びのとき。それでも懸命に自分の使命を全うしようとする男たちの姿に、脳が熱くて痺れるほど号泣しました。

舞台「野球~飛行機雲のホームラン」もそうですが、西田大輔はこうした男の熱さ、不器用さ、ひたむきさ、そして儚さを描かせたら天下一品。舞台「駆けはやぶさ ひと大和」、そして舞台「野球~飛行機雲のホームラン」と、今年は西田大輔の当たり年だったことをここに記しておきたいです。

「もののふシリーズ最終章『駆けはやぶさ ひと大和』」

東京:2018年2月8日(木)~18日(日)天王洲 銀河劇場
大阪:2018年2月23日(金)~25日(日)森ノ宮ピロティホール

作・演出:西田大輔
出演:花村想太/久保田秀敏、山本涼介、杉江大志、健人、近藤頌利、林田航平、山下聖菜 /中村亀鶴/荻野崇、越村友一/青木玄徳、荒木宏文/的場浩司

オフィシャルサイト

©舞台「もののふシリーズ」製作委員会

舞台『Shakespeare’s R&J~シェイクスピアのロミオとジュリエット~』」

ドラマや映画、音楽にゲームなど、いろんなエンタメがある中で、どうして僕はこんなバカ高いチケット代を払って演劇を観るのだろう。時折そんな疑問にぶつかることがあります。でも、こういう作品に出会えるから、僕はしげしげと劇場に通っているのだよなと再確認させてくれたのが、この舞台『Shakespeare’s R&J~シェイクスピアのロミオとジュリエット~』でした。

演劇の魅力は、「嘘」だと思っています。もちろんドラマや映画だって架空の創作。「嘘」であることは同じです。でも、何百人の観客を目の前にして、その「嘘」を「本物」だと思わせること。「嘘」にお金を払わせ、酔いしれさせ、完全に騙し通すことは至難の業。編集や誤魔化しが効かない分、ほんの小さな綻びで途端に「嘘」が見破られてしまう。演者と観客の関係は、とてもスリリングです。

その中で本作の面白さは、そんな演劇の「嘘」の魔力に、演者たちもが溺れだす背徳のひとときに光を当てたこと。物語は、禁欲的な生活を送るカトリック校の男子学生が、部屋を抜けだし、禁書として指定されているシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を夜な夜な読みふける。ただそれだけ。

なのに、「現実」と「虚構」の間で翻弄され、やがて我を失い、悲劇の恋に堕ちてしまう男子学生の姿に、途中から目が離せませんでした。終演後の、全身の力が抜け落ちてしまったような酩酊感が、今も素肌に甘い微熱を残しています。

シアタートラムという客席200席強の小劇場で起きた、魔術のような奇跡。観た人だけが知っている極上の物語。この至福の観劇体験を、僕はこれからも折々で語り続けるでしょう。

横川良明の演劇コラム「本日は休演日」vol.1
4人の男子学生が溺れたシェイクスピアという名の劇薬

4人の男子学生が溺れたシェイクスピアという名の劇薬

2018.03.12

舞台『Shakespeare’s R&J ~シェイクスピアのロミオとジュリエット~』

東京:2018年1月19日(金)~ 2月4日(日)シアタートラム
兵庫:2018年2月7日(水)~2月8日(木)兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
原作:W・シェイクスピア 
脚色:ジョー・カラルコ
翻訳:松岡和子
演出:田中麻衣子
出演:矢崎広、柳下大、小川ゲン、佐野岳

オフィシャルサイト


舞台があるから、人生は楽しい。そう胸を張って言える体験を、今年も何度も劇場で味わうことができました。今回紹介した中で言えば、演劇「ハイキュー!!」は春に新作を控えていますし、『刀ミュ』も秋に新作公演を予定しています。また、西田大輔×花村想太のタッグで3月から舞台「PHANTOM WORDS」の上演も決定。この中にまた来年を代表する1本があるのかと思うと今から胸がワクワクしします。興味のある方はぜひ劇場へ。演劇でしか味わえないものが、そこにあります。