Interview

「おやじ受」全盛!「いい時代になりました(笑)」BL作家のレジェンド・こだか和麻が語るBL創成期秘話が熱い。

「おやじ受」全盛!「いい時代になりました(笑)」BL作家のレジェンド・こだか和麻が語るBL創成期秘話が熱い。

「コミックマズル」は、2018年9月21日に電子書籍・電子コミックストア「Reader Store」から創刊された、無料で読める大人のBLマガジン。その目玉作品のひとつが、こだか和麻のオメガバース作品『ボクと番になってください!』だ。

この作品に、共感しながらどこか救われるのは、現代社会を生きる人たち誰しもが感じている息苦しさを、「誰が誰を好きになっても良い」という世界が癒やしてくれるからなのかもしれない。

「ボーイズラブ(BL)」はここ数年で急激に認知が広がり、ドラマ『おっさんずラブ』などがきっかけで一般的にも知られるものとなった。そんなBL文化の黎明期から第一線で活躍を続けるこだか和麻に、オメガバースBLの魅力と、本作品への想いを語ってもらった。

取材・文 / 柴 佑佳

ボクと番になってください!

茶道・御影流家元の唯一の男子として、大切に育てられてきたαの蒼生(アオイ)。祖母がセッティングする見合いにうんざりし、ストレスから義理の兄・橙二(トウジ)が務める三ノ宮総合病院のバース科カウンセリングを受けることに……。そこでカウンセラーの巴(トモエ)と出会ったことで、蒼生と巴、そして橙二の関係が大きく動き出す!
コミックマズル『ボクと番になってください!』の連載はこちらをチェック!

作家って単純なので、褒められると「アンタのために描くよ!」ってなっちゃいますよ(笑)

『ボクと番になってください!』は、こだかさんにとっては初めての電子配信になりますよね。

本当に未知だったのですが、電子配信では新しい層のお客さんが読んでくださっているようで、ありがたいです。ただ、いままでの読み手さんがだいたい同年代だから、スマホで読んだことがない方も多くて、「どうやって読むの!?」とか、「レビューってどうやって書くんですか!?」みたいなことを聞かれます。無料で読めるというのも驚かれました(笑)

月刊誌や隔月誌での連載と、電子配信はやはり違いますか?

雑誌連載のときは、宣伝のタイミングが難しいんです。雑誌に掲載されるので、中をあまり公開できませんし、場合によっては「いつ、なにを描いているか」も言えないから。Twitterは何も言えないまま2年くらい放置してたんですよね(笑)

現在は、ファンの方との交流や更新のお知らせなど、積極的にTwitterを使いこなしていらっしゃいますよね。

Twitterで良いのって、タイムリーに「これを描いてます、来週載ります!」ってことを「いま」言えるっていうところですよね。あと、読者さんからすぐ反応をいただけるのも嬉しいです。単行本一冊分を描き下ろして、発売までの3ヶ月間黙っているのは辛いんですよ(笑)。

感想はマメにもらえるほうが嬉しいでしょうか? 読み手側からすると感想を伝えるのに躊躇ってしまう気持ちもあるのですが……

「ここが面白かった」「ここが可愛かった」ってちょいちょい言っていただけるほうが、「わーがんばろう!」って思えます。1人で悶々と描いていると、型にはまった展開になりやすいんですけれど、途中で読者さんに「この人のこういうところが好きです!」みたいに「石」をひとつ投げ入れられると、そこからキャラクターが深まることがあって。それが、次の展開に繋がったりするんです。皆さんの感想には、けっこう左右されています。作家って単純なので、褒められると「アンタのために描くよ!」ってなっちゃいますよ(笑)

「男の子同士のマーガレットみたいな話を描きませんか?」

こだかさんがマンガ家としてデビューして間もなく30周年を迎えられますね。

実は、私はもともとBL描きではなかったんです。兄の買ってくる少年漫画を読んで育ったのですが、高校生だった当時、目についた白泉社に作品を投稿したら、「この漫画はウチじゃないでしょう!」と編集さんからお返事が。まあ、そうですよね(笑)。その後、持ち込んだ少年誌から、デビューしました。

デビューから1年半くらい経ったころ、当時のビブロス(※編集部注:BLジャンルの草分け的な出版社)の担当さんから「今度マンガ雑誌を創刊するので、男の子同士のマーガレットみたいな話を描きませんか?」と言われたんです。

男の子同士のマーガレット、ですか!?

少女漫画の主人公(女の子)の周りにいる、たくさんの男の子たちが男同士でくっつくお話。それを「少年漫画のタッチで描いてほしい」と言われたんです。担当さんに「それ、大丈夫なんですか?」と聞いたら、「大丈夫です! ジャンプもマガジンもサンデーも、女性読者は皆そういう目で見ています!! 男の友情は愛はイコールなんです!!!」と。

そのとき、雑誌の創刊と同時にコミックスを出す話があり、『マガジンBE×BOY創刊号』、こいでみえこさんの『放課後の職員室』、そして私の『KIZUNA』の三冊が、同時に発売されました。『KIZUNA』は「チャンピオン」で連載していた別作品のスピンオフを同人誌に描いていたものだったのですが、そのまま一冊のコミックスにしよう! ということになりまして。 ちょうど尾崎南さんの『絶愛』がマーガレットコミックスで出た直後くらいだったんです。桑原水菜さんの『炎の蜃気楼』も同じ時期ですよね。

『KIZUNA -絆-』(こだか和麻/ビーボーイコミックス/リブレ)

当時はまだ「BL」が「やおい」と呼ばれていた時代で、『JUNE』など小説作品が主流でした。

そうですね。ちょうど「明るいテンポのBLを、漫画で読みたい!」と望んでいる人がいたけれど、作品がない時代だったんです。当時は『JUNE」の時代で、小説作品が多めでしたから。それが92年の12月かな。あのころ一斉にBL雑誌が出たんですよね。「BL」という名詞もそこで生まれて……いまではすっかり定着しましたね。

それから25年あまりが経ったわけですが、BL文化の変化を目の当たりにされてきて、いかがでしょう?

ウソみたいですよね。腐女子が普通に表を闊歩して(笑)、テレビドラマでもBLが取り上げられるようになるなんて。テレビドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日/2018年放送)なんか、「リーマンものBL」のお手本ですよね。展開も王道で、ぶっちゃけ先は読めてしまう。でも、そこが気持ちいい。「最後に部長が手放すんでしょう~? 知ってるよ~」なんて思いながら、見ちゃう。BLを知らない人の第一歩としても最高でしたよね。明るいし、周りも二人の関係を「ダメ」とは言わない。

男性が普通にBLに触れるようになったというのも、大きな変化ですよね。男性読者さんでも、「腐男子です」という方もいれば、「ぼくはヘテロですけれど、普通に読んでいます」という方も多いです。

オメガバースBLへの挑戦。正直、「やっと描ける!」という気持ちです。

「オメガバース」は、BLの歴史のなかでは新しい世界観ですが、先生がオメガバースに出会ったきっかけは?

編集部注:オメガバースとは、男女の性別に加えて第三の性「バース性」が存在し、それぞれ「アルファ/ベータ/オメガ」と呼ばれ、そのバース性によって明確な階級制が敷かれた架空の世界設定。両性具有や男性妊娠が描かれるものも多い。

そういう言葉があって、二次創作が盛り上がっているということを知ったのが、数年前です。それまでは、いわゆる「セクピスパロ」(編集部注:寿たらこ氏によるBL漫画『SEXPISTOLS』〈リブレ出版〉の「二種の種族に分かれた人類が共存する世界」という設定に準じた創作)が描かれていて、それが終わったあたりに、若い子たちが「オメガバ」って言い出しているのを知りました。「それなに?」って聞いたら、「海外のアネキたちから入ってきたんです!!」と言われて。それで今回、連載のお話をいただいたときに、「……オメガバってどうでしょうかね?」と。

前々から好きな設定だったのですが、昔は、いわゆる「男性妊娠」を描くと、けっこう叩かれたんですよね、「それはもうBLじゃなくない?」って。それをあえて描いた杉本亜未さんの『ANIMALX(アニマルエックス)』は名作ですよね。作家仲間とも「いい時代になったよね」って話をしました。正直、「やっと描ける!」という気持ちです。

©こだか和麻/コミックマズル

時代が追いついた感がありますね!

少し前に「オヤジ受」の本が出たときも、担当さんと「時代が追いついたね~!」という話をしていたんです。昔は、サラリーマンものでも「受が30代なのはやめてください」と言われていたんです。

そんな、もったいない!(笑)

まだ、読み手さんが若かったんでしょう。読者の方が受け入れやすいように「もう少しライトに、読みやすくしてください」という要望をいただくことは多かったです。

オメガバースも、どうしても暗くて重い話になりやすいですよね。

描くときは「アルファでも、オメガでも生きにくさがある」という感じにしています。自分の生活や立場によって感じる生きにくさって、誰にでもありますよね。たとえば現実の社会で、「子どもは産んでおけ」って言われるのは女性です。それは唯一、三つのバース性のすべてを産むことができるオメガも一緒。しかも、オメガが社会的に立場を保障されている世界であれば、「恵まれているくせに、どうして産まないんだ!」と言われる。そういうことって、共感できる人が多いんじゃないかと思います。いまでも、ばりばり働いている女性が田舎に帰ると、独身でいることがものすごく悪いことであるかのように言われるでしょう?

©こだか和麻/コミックマズル

そうですよね。

 

オメガバースって、苦手な人もいるかと思うんです。でも、本当は、いろんな社会で生きている人の、ジェンダーレスな話なんですよね。たとえば、エリート層であるアルファにも、アルファなりの生きにくさがあるはずです。それって、いまの世界でも、もしかしたらあり得る光景ですよね?

『ボクつが』でアルファとして優位に立っているように見える橙二も、お父さんの病院からは出られないでしょう。あの世界ではアルファに限って一夫多妻が認められていますが、それは「アルファの子を増やせ」という重圧でもあります。オメガは「産む装置」として扱われる面もありますが、「相手を選ぶ自由」はあります。ただ、現実の男女の関係でも、「選ぶ自由」って実際のところ難しいことも多いですよね。だから、それと同じかなって。

©こだか和麻/コミックマズル

誰が誰を好きになっても構わない。『ボクつが』の世界と、これから

作品の中では、「オメガの女性カップル」も描かれていますよね?

そうです。自分の周囲では珍しいことではないのですが、漫画のなかで描く機会ってあまりなかったんですよね。でもこの世界観とかいまの情勢であれば、描いても構わないよなって思って。「誰が誰を好きになっても構わない。でも、そんななかでも色々な制約がある」っていう世界にしています。

ただ、あまり現実の辛いところばかりを描いてしまうのもね……読んで、幸せになってもらいたいですから。なので、そこを「オメガバース」という世界観に託すことで、少しだけ軽く表現できるかなと思っています。

©こだか和麻/コミックマズル

オメガの巴とアルファの橙二が過去の関係に苦しんでいるなかで、エリート層のアルファ、しかも茶道家家元の一人息子と恵まれた環境に生まれた蒼生は「アルファの重圧」を背負いながらでも軽やかですね。

蒼生も重圧を受けてはいるんだけれど、完全に守られて、お坊ちゃまとして育てられていますからね。だから、なんでも自由にできると思っています。でも、徐々に「あれ? そうでもないぞ?」ということに気付いていきますよ。

これからの「ボクつが」について聞かせていただけますか?

悩みながら描いているところがあって、「ここが好きです!」なんて言っていただけると励みになるし嬉しいです。レビューって本当にありがたいんですよ。レビューで書いたことをTwitterでも呟いてくださっている方もいて。いままでの読者さんはもちろんですが、私の作品を初めて読んでくださった方の感想は嬉しいですね。4話までが1まとまりのエピソードなので、とりあえず4話まで読んでいただけたらと思います。無料ですし!(笑)

こだか和麻(こだか・かずま)

兵庫県出身。1989年秋田書店『少年チャンピオン』デビュー。1990年代に執筆の場を少年誌からBL誌に移行。BL誌創成期から活動し、現在に至るまで第一線で活躍を続ける。代表作『KIZUNA』『腐った教師の方程式』『BORDER』など著書多数。
Twitter@kodaka_kazuma


大人のBLマガジン「コミックマズル」
https://ebookstore.sony.jp/stc/article/campaign/3362/