TVアニメ『SSSS.GRIDMAN』特集  vol. 3

Interview

『SSSS.GRIDMAN』にはなぜ“日常”の音楽が(ほぼ)なかったのか。『エヴァ』『シン・ゴジラ』の鷺巣詩郎が劇伴にこめたアティチュード

『SSSS.GRIDMAN』にはなぜ“日常”の音楽が(ほぼ)なかったのか。『エヴァ』『シン・ゴジラ』の鷺巣詩郎が劇伴にこめたアティチュード

意思表示のために、最初は日常の楽曲を一切作らなかった

今回の劇伴は、まさに伊福部 昭や宮内國郎(『ウルトラQ』『ウルトラマン』などの音楽を担当)といった先人の影響を感じさせるオーケストラ曲を筆頭に、ヒロイックなものからミステリアスなイメージの楽曲まで揃っていますが、アレンジを作っていく際に心がけたことは?

鷺巣 いちばん心がけたのは、単なるバリエーションにはならないようにすることですね。日本のアニメは学園ものが多くて、以前に手がけた『BLEACH』という作品なんかは、学園生活は実像、バケモノと戦うときは虚像という形で描かれてるんですけど、『SSSS.GRIDMAN』はその逆で、学園生活のほうが虚像なんですよ。だから僕は最初、日常のほんわかした雰囲気の楽曲を、あえて一切作らなかった。もちろんそういう音楽も必要になることは分かっていたんですが、まずはそうすることで「今回の鷺巣の音楽のアティチュードはこうですよ」ということを意思表示して、「こういう曲が足りないので作ってください」と言われたら作る、というスタイルにしたんです。

種明かしをあえてしますと、今回は物語としても学園生活にいちばん大きな謎が隠されているので、そこのほうが不穏な音楽になるような作りにしたんですね。変な話ですが、自分はいつも万人に受けるものより「偏ったもの」を作りたいんですよ。あくまで持論ですが、音楽は映像作品との親和性をより高めるために、どこかの方向に偏っていないといけないと考えてます。だから、最初からよくあるバリエーション豊かな音楽を右から左に並べることはしたくなくて、まずは偏ったものばかりを出して「これだけじゃできないよ」と言われるぐらいじゃないとダメだと思うんです。

中でも第6話「接・触」の響 裕太と怪獣少女アノシラス(2代目)が電車に乗っているシーンで使われた「HumanLove」のオリジナル版はニューウェーブ風のテクノポップに仕上がっていて、原作の『グリッドマン』で描かれたコンピューター世界ともマッチングする楽曲に感じました。

鷺巣 そうですね。『SSSS.GRIDMAN』にはジャンクという、見るからに昔のコンピューターみたいなものが出てきますけど、そういうオーセンティックな雰囲気を音楽に置き換えると、やはり今のテクノではなくて、80’sのオールドテクノになると思うんですね。実際に「HumanLove」はゲーム画面みたいなシーンで使われましたけど、要は監督なり音響監督に説明しなくても「このシーンを狙ってるな」というのが分かる音にしたかったんです。

『SSSS.GRIDMAN』をやったことで、自分の人生の中で当時のことが浮き彫りになる

実際にアニメをご覧になって、劇伴の使われ方についてどのような感想を持たれましたか?

鷺巣 素晴らしいと思いました。学園シーンでは合唱曲を僕の劇伴と対比させて、遠くから聴こえるものと近くで聴こえるものとして使っているし、雨宮監督は色々なことを計算されてらっしゃることが伝わってきました。バトルシーンも、もっさりと動く特撮とはちょっと違ってスピーディーに動くので、そこにギターサウンドの曲を自分が望んでいた通りに上手く使ってくれてましたし。

さきほども言いましたけど、今回は音楽リストを逸脱した作り方をしたので、とにかく無言でもわかってもらうしかないんですよ。そういうアティチュードを監督なり音響監督がちゃんと受け取ってくれてるのはすごくうれしいですね。

それから物語は9話から大きく変わりだすんですが、その9話からの音楽の使い方も非常に面白いですね。通常は謎が解けていく場合、推理ドラマみたいにだんだん答え合わせになっていきますけど、『SSSS.GRIDMAN』はそうではなくて、謎がさらに深まって不気味になっていくところがあるんですね。そういう意味では、8話までで音楽の使い方をある程度観ている側に示した後に、9話からそれをぐるっと回して使ってるところが上手だなと思いました。

鷺巣さんの印象に残っているシーンやエピソードは?

鷺巣 その9話です。『SSSS.GRIDMAN』というアニメの品位が一段上がる重要な回で、物語の持っていき方がとても映画的だと思いましたね。たとえばウルトラシリーズというのは基本的に『ウルトラQ』の頃からずっと1話完結で続きますが、この『SSSS.GRIDMAN』も最初のうちは1話1怪獣というシステムでいきますよね。それが6話で初めて怪獣が出ない回があって、9話の夢の話でひるがえって、1話完結方式から完全に逸脱してしまうわけです。つまり『マトリックス』の後半や『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』のようにクライマックスの手前でおもいっきりドロっとさせて、そこからえぐり返すやり方なのですが、これを1クールのアニメで描くのはかなり難しいことだと思うんですけど、それを高いグレードでやってのけたのだからすっげー!と思いました。

最後に『SSSS.GRIDMAN』の劇伴および今回のサントラは、鷺巣さんのキャリアにおいてどんな作品になったと感じていますか?

鷺巣 ひと言で言うなら、やはり父と円谷英二との関係も含めた、鷺巣親子にとっての円谷作品という、きわめて個人的な重みです。1966年に『ウルトラQ』が放送された後、『ウルトラマン』よりも先に放送が始まったのが『マグマ大使』(同作はピー・プロダクションが制作/日本初の連続カラー特撮番組となる)だったんですが、その頃に僕も父親に連れられてよく円谷さんのところに行ったりもしましたので、やはり感慨深いところはありますね。家族で夕食を食べてるときも、「円谷作品はスタイリッシュなのにピープロ(ピー・プロダクション=アニメや特撮などの制作会社)はモッサリしてるよね」みたいな話をしてましたから(笑)。まあ父親はニコニコしながら聞いてましたけどね。

ただ、これは絶対言っておきたいんですけど、そんな会話をしてたぐらいですし、お互いに行き来もあったので、ライバルとか競争相手という感覚はまったくなかったんですよ。サントラのライナーにも66年から68年は特撮の黄金の3年間みたいなことを書きましたけど、要するに『ウルトラQ』からの3年間というのは、あんなに特撮が盛り上がった時期はその後もなかったし、初めての盛り上がりだったわけです。

今回円谷作品に関われたことで、その当時のことが本当に逐一走馬灯のように蘇る思いがしましたね。この『SSSS.GRIDMAN』をやったことによって、単に音楽を作ったということではなく、また自分の人生の中で当時のことが浮き彫りになる、どちらかと言うとそういう意味合いが強いんですよ。自分の中には、宮内(國郎)か冬木(透、『ウルトラマン』シリーズの音楽を担当)かすぎやまこういち(『ドラゴンクエスト』シリーズなどの音楽を担当) か冨田勲(『ジャングル大帝』『リボンの騎士』などの音楽を担当)か、というのが貼りついてますし、音楽として今聴いても非常によくできたものが多いですよね。そういう意味で、ライナーには「誇らしい」と書きましたけれども、やっぱり『ウルトラQ』から巡り巡ってここに戻ってきたか、という感じがしますね。

TVアニメ『SSSS.GRIDMAN』

2019年1月より追加放送が決定!
千葉テレビ(CTC・チバテレ) 1/7(月) 17:30~
テレビ埼玉(TVS・テレ玉) 1/8(火)  19:30~
テレビ神奈川(tvk) 1/8(火)  25:00~
サンテレビ  1/8(火)  24:30~
RKB毎日放送(RKB) 1/9(水)  26:30~
BS11 1/3(木)  23:00~
※放送開始日・放送日時は変更となる場合があります。

【スタッフ】
原作:グリッドマン
監督:雨宮 哲
脚本:長谷川圭一
キャラクターデザイン:坂本 勝
グリッドマンデザイン:後藤正行(円谷プロ)
アレクシスデザイン:コヤマシゲト
怪獣デザイン:西川伸司 /丸山 浩 / 板野一郎 / 山口 修 / 前田真宏
アシストウェポンデザイン:野中 剛
ジャンクデザイン:三宮昌太
ヒロイック作画チーフ:牟田口裕基
3DCG監督:宮風慎一
3DCG制作:グラフィニカ
美術監督:渡辺幸浩(アトリエPlatz)
色彩設計:武田仁基
撮影監督:山本弥芳(グラフィニカ)
編集:吉武将人(グラフィニカ)
音楽:鷺巣詩郎
音楽制作:ポニーキャニオン
音響監督:亀山俊樹
音響効果:森川永子
ラインプロデューサー:竹内雅人
アニメーションプロデューサー:舛本和也
アニメーション制作:TRIGGER

【キャスト】
響 裕太:広瀬裕也
グリッドマン:緑川 光
内海 将:斉藤壮馬
宝多六花:宮本侑芽
新条アカネ:上田麗奈
サムライ・キャリバー:高橋良輔
マックス:小西克幸
ボラ―::悠木 碧
ヴィット:松風雅也
謎の少年:鈴村健一
アレクシス・ケリヴ:稲田 徹
六花ママ:新谷真弓
なみこ:三森すずこ
はっす:鬼頭明里

OP主題歌 : OxT「UNION」
ED主題歌 : 内田真礼「youthful beautiful」

©円谷プロ ©2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

『SSSS.GRIDMAN』オフィシャルサイト

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