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水野良樹、ぼくりりも参加!日々劇的な環境の変化が著しい音楽業界の未来について語り合うイベント開催!

水野良樹、ぼくりりも参加!日々劇的な環境の変化が著しい音楽業界の未来について語り合うイベント開催!

ソニー・ミュージックエンタテインメントとWeWork Japan 合同会社、そして雑誌『WIRED』日本版の元編集長で、コンテンツレーベル「blkswn publishers(黒鳥社)」のディレクターである若林恵がタッグを組み新プロジェクト「新しい音楽の学校」の1dayカンフェレンスを開催した。

「新しい音楽の学校」は、ホスト役を務める若林恵とともに、エンタメとITをつなぐオンラインサロン「エンタメブートキャンプ」の岡田一男、デジタル音楽ジャーナリストで世界の音楽テクノロジー&ビジネスメディア「All Digital Music」の編集長であるジェイ・コウガミを共同監修に迎えた、21世紀の音楽ビジネスを学ぶ新プロジェクト。2018年12月15日(土)に開催されたvol.00は、「音楽は<新しいプロフェショナル>を求めている」をテーマに、ミュージシャンやコンサルタント、不動産デベロッパーや雑誌編集者などを招き、音楽にまつわる様々な仕事についての活発なトークセッションが展開された。

「ミュージシャンがひとりで生きていくための装備」と題したオープニングトークには、放牧中に作家として多数の楽曲提供を行いながらも、国民的グループである“いきものがかり”の活動を再開したばかりの水野良樹と、2019年1月で活動終了を宣言した “ぼくのりりっくのぼうよみ”(以下ぼくりり)が登壇した。
若林から「ミュージシャン側から、音楽業界に必要な人材を語ってほしい」と促されたぼくりりは、「まだ3年しかいないんですけど」と前置きをした上で、「当事者意識があったほうがいいなと思います。決められた仕事だけ、叱られないための仕事をしてる人が多いし、創意工夫が足りない人が多い」と正直に不満を吐露した。一方の水野はミュージシャンを目指す若者に向けて「助けに来てくれる人(スタッフ)の目的と、自分(音楽家)の目的が必ずしも一致するとは限らないと認識していた方がいい。目指す目標は一緒でも最終目標が違うことがある」と“目的”の違いを強調。さらに、エイベックスでの勤務経験もある岡田が、ミュージシャンにとっては自己表現や自己実現である音楽を、商品としてのプロダクツに落と仕込む過程とバランスの難しさと、メーカーに頼らない新たな資金の集め方について補足した。

さらに、話題は「この12年間での音楽業界のあり方の変化」に移行。CD不況に陥る直前だった2006年にデビューし、「90年代末までのサポートのやり方(テレビやラジオなどのメディアを最大限に使ったプロモーション方法)で売れた最後のグループ」と自認する水野が、「今はレーベルの力を借りずに、自分たちの才能と力だけで前に出てくるスタイルがより強くなってる」と語り、動画サイトで絶大な支持を集め、メジャーレーベルの助けが必要なかったように見えたぼくりりに「なんでデビューしちゃったんですか?」と直球の質問を投げかけた。ぼくりりは「気づいたら」と苦笑しながら、3年でぼくりりを辞職する決意をした心境に言及。水野の顔を見ながら「作品に向き合う意欲がすごく出てきて。そうなった時に、アーティストとしてまだ世にないものを出したいなと思って。それは、単純にアルバムを作って出すというよりも、自分自身(ぼくりり)の死というか、ぼくがいなくなることによってそれを強めることができるんじゃないかなって。つまり、作品の一部として、ぼくのりりっくのぼうよみが終了するというイメージです」とコメント。
さらに、今後については、「1月末に『葬式』っていうラストライブを終えた後は、レコード会社もマネージメント会社も離れて、完全にフリーになります」と明かすと、水野は「それ、最高じゃないですか」と目を輝かせ、「一旦、素の自分に戻って、また新しいプロジェクトを立ち上げたり、違う作品をそのキャラクターを離れてやれるというのは、超羨ましいですけどね!!」と声を上げると、ぼくリリは爆笑。水野は、いきものがかりのリーダーというキャラクターを背負っていかないといけないという日本の芸能のあり方への苦悩をにじませながら、自身は責任を持って背負っていく覚悟を示した上で、ぼくりりに対しては「クリエイターとして、めちゃくちゃいい前進だし、いい壊し方だよ」とエールを送った。

明確なパブリックイメージは、世間の認知度を上げる武器になる一方で、その枠から外れることが許されなくなり、クリエイティブの幅を極端に狭められることにもなる。デビュー以来、常に“らしさ”を求められていたぼくりりが、熱烈なファンとSNSを通した舌戦を繰り広げたことも大きなニュースとして取り上げられた。ここで、若林から「ファンがネックになるか?」という質問を投げかけられたぼくりりは、「僕は、メジャーデビューするにあたって、音楽業界全体を見渡した時に、ソロの男性の可愛らしいポジションがぽっかり空いてるなと思って。曲はめっちゃカッコいいんだけども、本人は少年ぽくて可愛い、みたいなラインに自分の見え方を合わせていったんですけど、言ってみたらその海はめっちゃ小さくて。ブルーオーシャン(競争相手のいない市場)なんですけど、太平洋じゃなくて、瀬戸内海くらいしかなかった。でも、それは、やってみて初めてわかったことで。だから、リセットするのはそういう意図もありますね。先ほど、水野さんが言った“キャラクター”に自分からハマりに言ったんですけど、思った以上に地獄だったから」と正直に話し、過度にカテゴライズしたがる傾向に疑問をなげかけた。最後に、再び水野がミュージシャン、レコードメーカー、マネージメント、メディア、ファン、「それぞれの目的によって、それぞれの求めるものややり方が違うことを認識する必要性」を改めて訴えかけた。お金を儲けたいのか? それとも、より多くの人に聴いて欲しいのか? 自己実現の手段なのか? 満員の観客ひとりひとりに「音楽業界で働く“あなた”の目的は何か?」というメッセージを投げかけ、白熱した議論は大きな拍手の中で締めくくられた。

続いて、ジェイ・コウガミが「音楽とマネタイの未来をサバイブする」をテーマに、次世代の音楽マネタイズの手段と、未来の音楽業界に置ける様々な仕事を提示。音楽&テクノロジービジネスプロデューサーの福山泰史(PRTL)は「プレイリスト=現代のラジオであり、すでに古いメディアになっている」と語り、AIで誰でも曲が作れる時代が到来することを予見。2つのプレゼンテーションの後に10分間の休憩を挟み、後半のセッションに突入した。

「なぜ都市に音楽が必要なのか?」をテーマにしたトークセッションでは、都市に音楽で付加価値をつける、地域の音楽コンサルタントを手がける「Sound Diplomacy」のKatja Hermesが初来日。お台場にチームラボの美術館を立ち上げた杉山央(森ビル)と物件サイト「東京R不動産」のディレクターである林厚見とともに、音楽を軸にした都市の在り方や、音楽の生産と消費が循環するエコシステムについて議論。現在進行形のジャズを読み解く雑誌「Jazz The New Chapter」の編集長でジャズ評論家の柳樂光隆は現役のジャズミュージシャンが講師を務めるバークリー音楽院やTHE NEW SCHOOLを例に「音楽教育最前線」を紹介した。 

続いて、12月13日にデモデイが実施されたソニー・ミュージックエンタテインメントによるアクセラーションプログラム「ENTX(エンタエックス)」のプレゼンテーションと、WeWork Japan 合同会社のメンバーによるスタートアップピッチを経て、最後に2014年から中国深センの「B10 Live」で毎年5月に開催されている、エクストリームな音楽フェスティバル「Tomorrow Festival」の主催者の1人で、画家でもあるテン・フェイとカルチャー誌「STUDIO VOICE」のディレクターの川田洋平を迎えて、「アジアの新しい音楽ネットワーク」について熱く語り合い、懇親会をもって「新しい音楽の学校」の授業はすべて終了。

ミュージシャンの来場もちらほらと見受けられ、業界でも注目されたイベントだったようだ。
若林は最初に「今日はキックオフで、ゆるゆるで適当です」と語っていたが、新たな言論空間であり、音楽で食べていく人材を育てる教育機関であり、刺激的で新しい情報を収集できる貴重な場となることを示したイベントとなっていた。

取材・文 / 永堀アツオ
撮影 / 西田香織

イベント概要

blkswn
+Sony Music Entertainment
+WeWork
presents
New School of Music
新しい音楽の学校Vol.00
「音楽は〈新しいプロフェッショナル〉を求めている」

日時:2018年12月15日(土)13:00~19:00
会場:WeWorkアイスバーグ
内容:
◆『ミュージシャンがひとりで生きていくための装備』
水野良樹(音楽家)+ ぼくのりりっくのぼうよみ(音楽家)+ 岡田一男(エンタメブートキャンプ)+ 若林恵
◆『「音楽をマネタイズする」の最前線 マネタイズをちゃんと考える』
ジェイ・コウガミ(All Digital Music)
◆『ミュージックAIは音楽家を助けるか?』
福山泰史(PRTL)
  ◆『なぜ都市には音楽が必要なのか?』
Katja Hermes(Sound Diplomacy) + 杉山央(森ビル)+林厚見(Speac)+ 若林恵
◆『新しいジャズの学校:音楽教育最前線』
柳樂光隆(Jazz the New Chapter)
◆『WeWork presents 音楽スタートアップピッチ』
◆『アジアの新しい音楽のネットワーク』
Fei Teng(B10 Live/ Tomorrow Festival)+ 川田洋平(STUDIO VOICE Director)+ 岡田一男(エンタメブートキャンプ)+若林恵