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私はこのまま老いていくのか…。レス夫婦が選んだ道は?『レス婚「してくれない夫」と結婚してしまいました』

私はこのまま老いていくのか…。レス夫婦が選んだ道は?『レス婚「してくれない夫」と結婚してしまいました』

子づくりという目的を失った2人の間に、セックスはいつしか完全になくなっていった−−。

セックスレス――このデリケートな問題に、人知れず悩んでいる人も多いだろう。「(自分はセックスを)してない」と公言するのは、「本当はセックスをしたいのに」という気持ちも込みで晒すようで恥ずかしい。だから、ネットの掲示板や相談サイトの類には、誰にも言えない心情を吐き出した書き込みがあふれている。

「レス」になる原因は、夫婦それぞれ。出産を機に、というのが最もよく聞くパターンだけど、マンネリ、多忙による生活リズムの違い、相手のことを異性として見られなくなった……など、さまざまなケースを耳にする。しかし、本書『レス婚 「してくれない夫」と結婚してしまいました』(武蔵野みどり)の場合、そういった“わかりやすい”原因がない。そのため、主人公のみどり(=著者)は長年にわたってモヤモヤとした時間を過ごすことになる。

みどりは、30代半ばにして婚活をスタート。出会い系を通じて、3つ上の人材派遣会社社長と出会う。話はトントン拍子に進み、すぐに同棲を開始。家事は分担、寝室は別。セックスは週末の掃除の後、着衣のままササっと。

初めから淡白な相手だったが、みどりが1度行為を拒んだことで、さらなるレス状態に突入。この状況に不満を募らせながらも、結婚への憧れと焦り、そして、セックス以外の条件は申し分なかったこともあり、1年ほどの同棲期間を経て2人は結婚する。

「結婚したら毎日デキる!?」と淡い期待を抱くものの、そうは行かない。子どもをつくろうと妊活を始めるも、行為は月に1回、排卵日だけ。そこに色気や雰囲気などは皆無である。そして、本格的な不妊治療に進みたい妻と、「自然に任せたい」夫の間に溝ができ、子づくりという目的を失った2人の間に、セックスはいつしか完全になくなっていった−−。

©武蔵野みどり(秋田書店)2018

©武蔵野みどり(秋田書店)2018

©武蔵野みどり(秋田書店)2018

本書が教えてくれるのは、「レスの原因の根本は、夫婦の関係性そのものにある」という真理。

読んでいると、妻であるみどりの“一人相撲”感に胸が締め付けられる。悩みを話そうとしても、一方的に自分の考えだけを述べ、最終的には会話をシャットアウトしてしまう夫。片や、夫婦別室のベッドの中、問題についてひとり考えを廻らせ、なんとか自分を納得させる材料を探す妻……。

目の前の相手とわかり合うこともできず、肌を触れ合わすこともできず、毎朝「私はこのまま老いていくのか…」と思いながら目覚めるのは、恐怖である。そもそも、もともとセックスを大切なものだと考えるみどりと、そうではない上に、相手の気持ちをくみ取ろうともしない夫は、理解し合えるはずもなかったのだろう。

読者として客観的に見ると、この夫の“通じなさ”は異常だと思うのだが、それでも「話せばわかる」「私が変わればどうにかなるかも」と期待してしまうのが、夫婦というものなのかもしれない。

本書が教えてくれるのは、「レスの原因の根本は、夫婦の関係性そのものにある」という真理である。さて、長年の努力の末、ようやくこのことに気づいたみどりが選び取った結論は――? 表紙のドーナツのように開いた心の穴を、彼女はいかにして埋めたのか、その顛末をぜひ見届けてほしい。

「雰囲気づくりが大事」とか、「セクシーな下着を着れば良い」とか、「マッサージから始めよう」といった、わかりやすい“解決策”を教えてくれる本ではない。だから、本書を読んでも、レスに悩む人への特効薬にはならないだろう。しかし、セックスレスに限らず、夫婦間の問題に悩む全ての人にとって非常に参考になるケーススタディが、ここにはある。

文 / 中田千秋

『レス婚 「してくれない夫」と結婚してしまいました』

武蔵野みどり(著)
A.L.C. DX/秋田書店

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