LIVE SHUTTLE  vol. 321

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和田唱 バンドとはまったく違う魅力を見せたソロツアー。音楽のルーツや生活感情、人生観が溢れたステージを振り返る。

和田唱 バンドとはまったく違う魅力を見せたソロツアー。音楽のルーツや生活感情、人生観が溢れたステージを振り返る。

和田唱1st SOLO LIVE TOUR 2018 “一人宇宙旅行” 追加公演
2018年12月30日 東京・マイナビBLITZ赤坂

昨年10月に初のソロアルバム『地球 東京 僕の部屋』をリリースしたTRICERATOPSの和田唱は、すぐさま11月にツアー“一人宇宙旅行”をスタートさせた。すべての楽器を自分で演奏してレコーディングされた『地球 東京 僕の部屋』は、ミュージシャンとしての技量はもちろん、改めて和田のソングライターとしての才能の広さと高さを示していて音楽シーンの注目を集めた。そのアルバムを掲げてのツアーを、たった一人で行なうと宣言。赤坂ブリッツで観たツアー最終日の追加公演は、和田の音楽のルーツから最新の音楽性までを堪能できる素晴らしいものとなった。

バンドでの和田も素敵だが、ソロでのパフォーマンスにはバンドとはまったく違う魅力にあふれていた。まるで和田のプライベート・スタジオに招かれているようなリラックスした気分になり、音楽もトークも楽しめたのだった。

ステージの上には絨毯が敷かれ、ボーカルマイクの背後には、2本のアコースティック・ギター、2本のエレキギター、2本のベースギター、それにキーボードが置かれている。天井からは数個の天体模型が吊り下げられているだけの、実にシンプルなセットだ。これが和田がこれから乗り込む“宇宙船”というわけだ。

ブリッツのアリーナには椅子が並べられている。基本的にオーディエンスは座ってライブを楽しむスタイルだ。宇宙との交信を思わせるSEが流れる中、スリムな黒のパンツと真っ白なシャツをザックリとまとった和田が、すっとステージに入ってくる。アコギを手に取ると、立ったままツアーのテーマ曲「一人宇宙旅行のテーマ」を歌い出す。天体模型とたくさんの星球が点灯され、和田の周囲をやさしく包む。ギターのアルペジオの音色が美しい。それに乗せて言葉を伝える和田の声が柔らかい。とてもジェントルなオープニングとなった。

「一人宇宙旅行のテーマ」からメドレーで、『地球 東京 僕の部屋』の1曲目「大きなマンション」へ。身体をゆらゆら揺らしながら、ひと言ひと言を丁寧に歌う和田は、ある意味、TRICERATOPSとは別人のようだ。言い方を変えるなら、まったく別の魅力がある。43才の男としての優しさや深みが、シンプルなアコースティック・サウンドによって浮き彫りになる。それを裏付けるように、この歌が終わると、温かい拍手がブリッツに響いたのだった。

「オーイェー! 僕の“一人宇宙旅行”へ、ようこそ。この“一人宇宙旅行”はチャレンジングなツアーです。と言うのは、21才でデビューしてもう43才になるわけですが、初めてソロ・ツアーをやることになって。このツアーをやるまでは一人では最大で50分しかライブをやったことがなかった。でもそんなわけにはいかないでしょ。もう未知との遭遇ですよ。今日はどうなるかわからないけど、僕も楽しみたいと思ってます。最後まで、よろしく。オーライ!」と和田が言って始まったのは、TRICERATOPSの「Shout!」だった。そう、今回のツアーはバンドの曲もありなのだ。聴き慣れているナンバーなので、オーディエンスがハンドクラップとコーラスで参加する。少し緊張していたブリッツが、この曲で和んだ。

すると和田が、そんなオーディエンスの気持ちを察したように笑顔で言う。

「ありがとう、みんな、上手いよ。次の曲は、ソロでもトライセラでもありません。でも俺が作った曲で、ある人にプレゼントした曲です」。

シャッフルのビートを刻むベースラインとコード・カッティングが1本のギターから繰り出される。名手・和田の腕が冴える。SMAPに提供した「藍色のGANG」だ。この選曲に、オーディエンスは大喜び。初めてのソロ・ライブとは思えない巧みな構成だ。ソロ楽曲はもちろん、バンドのレパートリーや提供曲を弾き語りで聴かせるという、ソロの基本をきちんと押さえている。そしてオーディエンスがその基本形を理解したところで、和田のチャレンジが始まった。

「ステージの上には、俺、一人。お友達は楽器だけ。淋しい・・・でも楽しいよ。昔は一人でやるって言ったら、弾き語りしかなかった。でも最近の若者は“ループペダル”というものを使って、音を重ねてライブをやる。そういう卑怯な若者が多い。で、僕も面白そうなので、“ループペダル”を買いました(笑)」。

そこから和田によるループペダルの使い方講座が始まった。ギターのフレーズを録音して、即座に連続ループ再生する。そこに他のギター・パートを重ねる。歌のリフレインも同じように重ね、和田はあっという間に一人多重トラックを完成させ、即興で歌い出した。その見事な裁きに、会場から拍手が起こる。ここで和田は、さらに“ループペダル”を使う意図を説明する。

「僕の曲はAメロもサビも同じコード進行のものが多い。だからループペダルを使うと、凄いことになる。ということで、自分の曲、やっていいですか?」と和田は自信満々。『地球 東京 僕の部屋』からの「矛盾」は和田の言うとおり、凄いことになった。

ギターのリフを重ね、そこにギターのボディを叩いてキックドラムの音を足す。続いてバック・コーラスをさっとまとめて多重トラックを作り、和田が歌い出す。きっと今回のレコーディングはこんな風に進んでいったのだろう。それまでの弾き語りとはまったく違う、サウンドのタッチだ。あまりの完成度の高さに、オーディエンスが完全に呑まれている。終わると、この日いちばんの大歓声が上がった。

続いて、これもニューアルバムから「アクマノスミカ」。手際よくバックトラックが完成していく。目の前で組み上げられていく4声のコーラスの素晴らしさに、その時点で拍手が起こる。一人で重ねているから“声の相性”はいいに決まっているが、リード・ボーカリストとして非常に優れている和田なので、コーラスがとてもゴージャスになる。ほとんどのパートが同じコード進行なので、ループペダルの威力が存分に発揮される。隙間の多いトリッキーなアレンジが、ループペダルによってポップに聴こえてくる。和田は歌い終えると、勝ち誇ったように両手を上げてみせた。

和田自身、アルバムのインタビューで語っていたが、『地球 東京 僕の部屋』はTRICERATOPSと比べると、和田のプライベートな感情が大きく反映されている。それもそのはずで、和田は吉田佳史(dr)と林幸治(b)の2人のメンバーの意にそぐわない言葉を避けて作詞してきた。しかしソロではその縛りがなく、自分の生活感情や人生観が素直に語られる。自分の心の中身をユーモラスに吐露する「アクマノスミカ」は、ソロならではの楽曲。歌詞とループ・サウンドがマッチして、僕にとってこの夜の最高はこの曲だった。

ここから和田は、自分のルーツを明らかにしていく。子供の頃から聴いてきた映画音楽を、ギターのインストで披露。さらには大好きなディズニー映画のナンバーを、英語詞の弾き語りで歌ってみせる。同世代のミュージシャンの中で、和田の音楽性は飛び抜けて高い。この音楽性と知識をもってTRICERATOPSの音楽を作っていたのかと思うと、彼のポップ感覚の奥深さに敬意が湧いた。そんなことにも気付かせてくれるソロ・ライブだった。さらにはリスペクトするマイケル・ジャクソンの「BAD」を、ループペダルを駆使してダンサブルに聴かせると、ブリッツはおおいに盛り上がる。

終盤は『地球 東京 僕の部屋』からの曲を中心にして突き進む。ベースをループさせた「Harajuku-Crossroads」、洗練されたポップ「Vision Man」と、今の和田が持っている音楽家としての指向がしっかり伝わってくる。そしてTRICERATOPSの「Fly Away」も壮大に披露して見せた。

「どうもありがと、ブリッツ。当初、“一人宇宙旅行”は慣れないことをやるし、孤立するかなと思ってやってみたら、“全員宇宙旅行”じゃん(笑)。みんなと旅行できて、楽しかった。でも、まだまだ自分を磨かなきゃいけない。ここまでやると、見えてくるものがあるから、このカタチをもうちょっと続けたい」と和田がソロ続行を宣言すると、オーディエンスは賛成の拍手を返す。「たいていのことは思うようにはならないから、目の前にあることに、笑顔で取り組むしかない。そう思って、人生を肯定する歌を書きました。心を込めて弾き語りで歌います。ループペダルは使わないよ(笑)」。

本編ラストの「1975」は、自分の生まれた年から現在に至る過程を全肯定する歌だ。聴いていて、CDよりもボーカルの説得力が増しているように感じられた。それはおそらく、“一人宇宙旅行”のつもりでツアーに出たら“全員宇宙旅行”になったことと関係がある。和田はこのツアーで、真の意味でライブをオーディエンスと一緒に作る方法を発見した。だからこのツアーは、各地のオーディエンスに応じて、毎回違うライブになったに違いない。この夜の「1975」は、赤坂のお客さんと共に作られたもので、感動的な1曲になった。

アンコールで演奏された「Raspberry」は、サビもAメロもすべて同じコード進行の“和田唱スタイル”を代表する作品。ループするトラックが絶大な効果を発揮する。唯一、コードが異なる大サビも、和田がループを止めることで、かえって盛り上がったのだった。

そしてツアーの締めは、アルバムの最後の曲「Home」。ピアノの前に座った和田が語り出す。

「俺はもう一枚、このやり方でアルバムを作れたらいいと思ってる。みんなに今、俺が信じてるものを聴いて欲しいから。来年は一段ステップアップした俺を見せたいな。来年もよろしく」。♪君の涙を消したくて 宝物また増やしたくて♪と歌う最高のラブソングが、ブリッツの一人一人に届くと、オーディエンスのみんなが笑顔になった。

このツアーで和田は、ミュージシャンとしても、パフォーマーとしても、人間としても、大きく成長した。その成果はやがてTRICERATOPSに還元されるのだろうが、その前に和田はソロとして新たな伝説を作ることになる。

文 / 平山雄一 撮影 / 岡村直昭

和田唱1st SOLO LIVE TOUR 2018 “一人宇宙旅行” 追加公演
2018年12月30日 東京・マイナビBLITZ赤坂

セットリスト

1. 一人宇宙旅行のテーマ
2. 大きなマンション
3. 地球 東京 僕の部屋
4. Shout!
5. 藍色のGANG
6. 矛盾
7. アクマノスミカ
8. Pure Imagination~Over The Rainbow (Guitar Instrumental)
9. Someday My Prince Will Come~Winnie The Pooh~When You Wish Upon A Star (Disney Medley)
10. Music Of The Night (The Phantom Of The Opera)
11. BAD (Michael Jackson)
12. Harajuku-Crossroads
13. Vision Man
14. Fly Away
15. 1975
Encore
1. Miracle
2. Raspberry
3. Home

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和田唱

1975年東京生まれ。TRICERATOPSのボーカル、ギター、作詞作曲も担当。ポジティブなリリックとリフを基調とした楽曲、良質なメロディセンスとライブで培った圧倒的な演奏力が、幅広い層から大きな評価を集める。アーティストからのリスペクトも多数。
SMAP、藤井フミヤ、松たか子、Kis-My-Ft2、SCANDAL などへの作品提供も多い。
2018 年はソロ活動を開始。10 月には1stアルバム『地球 東京 僕の部屋』をリリース、11 月スタートした全国ソロツアーも、12月30日のマイナビBLITZ赤坂にて無事終了した。

オフィシャルサイト
http://triceratops.net

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