Interview

“やりすぎた”と思いつつ、ちょっとうれしかった─『ウマ娘 プリティーダービー』TVアニメ+完全新作を走りきった胸中を監督らに聞く!

“やりすぎた”と思いつつ、ちょっとうれしかった─『ウマ娘 プリティーダービー』TVアニメ+完全新作を走りきった胸中を監督らに聞く!

ウマ娘たちによって繰り広げられた熱いレース、そして友情――スポ根の中に散りばめられた適度なギャグが小気味よく、大好評で幕を閉じたTVアニメーション『ウマ娘 プリティーダービー』。

今回は自称ギャグ担当の及川監督と、制作を担ったP.A.WORKSの橋本真英氏に、制作を終えた今の感想、そして昨年12月19日に発売となった『ウマ箱』第4コーナー アニメ『ウマ娘 プリティーダービー』トレーナーズBOXに収録されている完全新作アニメーションについて伺った。

取材・文 / 加藤和弘(クリエンタ)


次の作品に繋がるいい経験となった『ウマ娘』

まずはTVアニメの制作を終えられての感想を教えてください。

及川 啓 初めに伊藤(隼之介)プロデューサーからお話を伺ったときはとても面白いタイトルだと思い、受けさせていただきました。ですが、競馬をやったことがない自分が視聴者の皆様に満足していただける仕事が出来るのかがとても不安でしたし、また作品のタイトルの想像以上の大きさから制作中はとてもプレッシャーを感じていました。

しかしながら、競馬の知識面では伊藤さん、キャラクターの魅せ方では、コンテンツプロデューサーのCygames石原さん(※1)と、お二人には本当に頼りにさせていただきました。

また、P.A.WORKSさんを始め、製作スタッフのたくさんの支えがありまして、ほっとすると同時に携わっていただいたスタッフの方々には本当に感謝しています。

橋本真英 新作アニメーションの制作を終えて、ようやく終えたなという印象です。TVアニメの制作を終えたときは、まだ新作アニメーションが3話分あったので、終わった気がしませんでした。これまでにも本編後にもう一本ならあったのですが、TVアニメの尺で新作3本というのは初めてでしたので、終わってようやく安堵しています。

※1 Cygames石原さん
石原章弘。TVアニメ『ウマ娘 プリティーダービー』ではシリーズ構成も手がける。代表作はゲーム『アイドルマスター』シリーズ(ディレクター)ほか。

監督としては経験がない競馬をテーマとした作品でしたが、制作を終えられて成果といいますか、手に入られたものはありましたか?

及川 僕は『ウマ娘』はスポ根モノと思っていますが、実は監督としてスポ根モノをやらせていただいたのが初めてでした。ですので、作品を通して凄く勉強させていただいたという実感があります。

また、テクニカルなところで上げますと今作では3Dも多用させていただいたのですが、これも今までの作品を通して初めての経験でした。そのような点で次の作品に活かせる貴重な経験をさせていただいたと思っています。

橋本 監督からは3Dが多かったという話でしたが、それほど弊社の他の作品と比べても多くはなかったと思います。ただ、今回メインキャラクターも3Dで表現している箇所があって、それは初めての経験でした。それとダンスシーンの3Dも初めてで、13話では気持ちよく動かしてくれて、良い経験をさせていただいたと思います。

にんじんハンバーグとサイレンススズカの裏話

制作を終えられて、印象に残っているウマ娘やシーンはありますでしょうか?

及川 やはり、スペシャルウィークはたくさん描きましたし、取材では実際のスペシャルウィークに会ったこともあるので、愛着を持っています。

印象的なシーンですと、第9R(9話)でエルコンドルパサーが凱旋門賞後にスペシャルウィークと電話で話しているシーンは個人的に印象に残っています。そしてそのエルコンドルパサーを下したブロワイエにジャパンカップでスペシャルウィークが挑むという流れが凄く好きでしたね。

橋本 監督はスペシャルウィークがお好きということですが、にんじんハンバーグ(※2)の誕生秘話はあるんでしょうか?

及川 実はないですね(笑)。脚本に「にんじんハンバーグ」って書かれていたのですが、あまり考えずに「こんな感じかな」ぐらいでコンテに描いてました。でも長い受話器(※3)のことは脚本の段階でこんな感じだろうとすでに絵を描いていましたね。

橋本 長い受話器については、監督は第1Rが始まる前から言ってました(笑)。世界観としてこういったものがあるんじゃないかと。第1Rではお母さんも一緒に暮らしているので普通の黒電話でしたが、スペが聴くときは耳のほうに持っていき、話すときは受話器を下げるということをやったのですが……。

及川 黒い受話器と(スペシャルウィークの)実家の壁が似たような色で、あんまりあの芝居が見えなかったんです。そこは反省点でした。第9Rでは目立っていたので嬉しかったです(笑)。

橋本 わりと真剣なシーンであの受話器というギャップが(笑)。

及川 視聴者の方の反応で、「受話器が気になって話が入ってこない」というのを見た時は、してやりすぎたと思いつつちょっとうれしかったです。自分は今作ではギャグ担当だと思っていましたので(笑)ストーリーやキャラクターの部分については伊藤さん、石原さんにお任せしつつ、隙あらば小ネタを挟んでいくというスタンスでした。

橋本 オグリキャップのお腹も出しましたしね(笑)。

及川 お腹に関しては確かに僕の部分もあるのですが、僕が参加する前の、2016年3月に公開された『ウマ娘』のPVですでにお腹が出ていて、それならこのテイストを本編にも活かそうと思って取り入れてみました。元のPVになければやっていなかったとは思います(笑)。

※2 にんじんハンバーグ
第10Rに登場したスペシャルウィークの大好物。通常のハンバーグの真ん中ににんじんを突き立てたインパクト大の料理だった。

※3 長い受話器
ウマ娘の耳は頭の上にあるため、それに合わせた仕様のウマ娘専用電話の受話器は通常のものより長く作られていた。見た目のインパクトが素晴らしく、視聴者はその姿に釘付けとなった。

橋本 僕の場合は第7Rのエンディングが印象に残っていますね。Silent Starという曲をかけることはあらかじめ決まっていて、7話用に曲を編集していただいているのですが、映像の入りとかに凄くこだわりました。脚本もだいぶ難航しましたしね。『ウマ娘』は明るい作品だと思うので、あんまりしんみりし過ぎてもちょっと違うかなという気もしますし、ただ明る過ぎてもウマ娘たちの心情の流れを表現できるのかということもあって、凄くデリケートなお話でした。

及川 実際に出走前のゲートイン中にサイレンススズカが騎手を振り落としてゲートをくぐっちゃったというエピソードがあって、どこかでそのエピソードを入れたいなとは思っていたんです。それで第7Rのエンディングは特殊エンディングだったので、ギャグにするつもりはなくて怪我をする前の姿を描こうと思って入れたのですが、カットされてしまいました。

橋本 ベッドから窓の外を眺めるカットで終わっていたこともあり、エンディングでそのシーンが流れると悲壮感が出すぎてしまうと。話し合いをするうちに、第8Rにつながる流れにしたほうがいいのではという話になり、現在の形になりました。

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