Interview

白井貴子×きたやまおさむ特別対談。白井貴子が伝説の作詞家「きたやまおさむ」を歌う

白井貴子×きたやまおさむ特別対談。白井貴子が伝説の作詞家「きたやまおさむ」を歌う

 

面白いものができるんだったら、何やったって構わないんですよね(きたやま)

アルバム『涙河』のリリースを記念して原宿で行なわれたライブには、大勢の観客が詰めかけた。きたやまおさむと白井貴子のコラボレーションが、どんな音楽を生んだのかが高い関心を呼んだのだ。

白井が10歳のときに初めて買ったシングル盤である「白い色は恋人の色」や、少女の頃に大好きだった「さらば恋人」は思い入れたっぷりに歌われて大きな拍手が起こった。

一方で新曲の3曲は、「これがオリジナル・バージョンだ」と言わんばかりの新鮮さで演奏され、これまた大きな歓声に包まれた。

中盤では「戦争を知らない子供たち」と、白井のオリジナル「FOOLISH WAR」が続けて歌われたり、アルバムにも参加している白井の“叔母さんの孫”の斎藤歌織がコーラスで登場するなど和やかなライブとなった。

途中、きたやまがステージに登場して、ミニトークショーになったときのこと。白井が数日前に70歳の誕生日を迎えたきたやまに「おめでとうございます」と言った後、「私ね、ホントにビックリしたんですけども、たとえばアジサイが咲いてツユクサが咲いて、そのあとヒマワリが咲いてくじゃないですか。そんな感じで、地球には出会いがあるんじゃないかってすごく思っちゃったんですけど」とちょっと意味不明のMCをすると、きたやまはすかさず、「最初のアジサイの話と、地球には出会いがあるってことは、どう結びつくんですか?(笑)」と突っ込んで観客の笑いを誘う。そんなトークから、観客は二人のコラボの雰囲気を感じ取って、ライブはますますリラックスしたものになった。

白井貴子×きたやまおさむ特別対談

白井 「さらば恋人」を聴いてくれたみなさんが「懐かしいね」って言ってくれるんですよ。でもよくよく聴き比べていただきたいんだけど、堺正章さんの「さらば恋人」と、アレンジは“似て非なり”なんですよ。だけども同じ懐かしさを醸し出しているっていう感想は、思っていた通りで嬉しいです。

そういうカバーもあれば、私がバンドのようにしてアレンジした「戦争を知らない子供たち」と、私のオリジナルの「FOOLISH WAR」をライブで並べて歌ったら、すごく盛り上がった。きたやまさんの歌と私の歌とでアンサーソングみたいな感じで並べたんです。今回はきたやまさんの“大河”と私の“川”を合流させていくような、そういうステージ構成にしましょうなんていってね。自然と私のカラーが注入できたと思う。すごく面白かったですね。

きたやまさんはアレンジに関して何か注文はしたんですか?

きたやま うーん、いや、僕はほとんど何の注文もつけなかったと思う。もちろん現場に行ったときに、ああだこうだ言ったかもしれないけど、好きにやってくださったらいいと思ってました。「帰って来たヨッパライ」でデビューした人間ですから(笑)。そんなに、これはこうじゃなきゃいかんとか、ああじゃないといかんとかって注文はないんです。むしろ、面白いものができるんだったら、何やったって構わないんですよね。

何も言わないほうが僕は面白いと思うので見守っていたら、白井さんがご自分のカラーを存分に生かして、持てる力を発揮していただいたなと思うんですよね。だから珍しいカバーアルバムだと思う。古いものを活かしながら新しいものを作っている。似て非なりってさっきおっしゃったものを作られていくという姿勢が面白かったんじゃないでしょうか。

音楽って、プレイって遊びだと思うので。みなさん、プレイヤーだし、遊び人だしね。流す機械もプレイヤーだしね。プレイするっていうのは遊ぶことだから、存分に遊んでいただいたほうがいいかなと思ってます。遊びの中から、やがてなんか生まれていくっていうことが、今回も起こったなと思いますね。それが今回の楽しみどころですよね。

白井 ところで、私の親戚のかお(歌織)ちゃん、いかがでしたか? 歌の上手な叔母さんの孫なんですよ。

きたやま おばさんの孫っていうことが、めったにありえないんだよ。おばさんの孫なんか出てこないよ、たいていは。だからそうとうの親戚付き合いがあるのが偉いっちゃ、偉い(笑)。

白井 親戚中、仲がいい。

そういう意味では3世代になったわけですよね。

きたやま そうだね。

白井 さらに私にとっても次の世代につなげることが、自ずとできていったので、すごく良かった。「あとはよろしくね」みたいに、私も次の世代の肩を叩けるように(笑)。

きたやま そうだねえ。

白井 だから、アジサイだと思いませんか?(笑)

きたやま (笑)まだわかんない・・・あっ、わかった! 偶然の必然のことね。アジサイが咲くように、必然的に我々は出会って、自然にものを作ったって言ってるんでしょ?

白井 そういうことです(笑)。

白井貴子×きたやまおさむ特別対談

これからが本番だと思ってます。全国津々浦々、歌いに行くということと…(白井)

カバー曲の中で、僕は「花のように」という曲がとても好きだ。ベッツィ&クリスの1970年のこのヒット曲は、削りに削ったシンプルな歌詞がとても魅力的だ。

白井からアレンジを依頼された中村康就は、加藤和彦が書いた素朴なメロディを、生まれては消えてゆく命の尊さを感じさせるサウンドにアレンジした。白井の歌う♪何気なく見上げた 青空が変わった♪というフレーズが、まるで一個の俳句のように僕の心の奥に響く。僕はこのカバーを聴いて、45年以上前の歌なのに今の時代に対して有効なメッセージを発しているように感じた。

きたやまさんは「花のように」を今聴いて、思うことはありますか?

きたやま 私は何から影響受けたんだろう? いろんなものに影響受けた面はあるかもしれないけど、やっぱりあの時代だよね。「花のように」っていう曲で言えば、フラワーチルドレンの時代、花っていうのがものすごく大きな意味を持ったんだろうと思うんですよね。それでミュージシャンの多くは晩年になると、自然に帰っていくって歌うようになっていったと思う。あの時代は特にそうだったから、私はそういう流れには影響を受けたと思うんですね。

あの時代の花は、メッセージだったね。どのように生きるべきか考えたときに、花のように生きるっていうのは、ひとつの大きなテーマだったんですよ。世界中の若い人たちが、新しい生き方として自然から学ぶとか、花から学ぶとか、そんな感じで生きようとした瞬間があったと思いますね。

アルバムを作って、ライブをやってひとつの完成形だと思うんですけど?

白井 私はこれからが本番だと思ってます。全国津々浦々、歌いに行くということと、私ときたやまさんの生み出した歌が合流というか、接ぎ木というか、お互いに組み込まれていったものが確実にあって。こういうことって、そんなにあることじゃないよねっていう思いが、日に日に大きくなってます。

きたやま 僕も感心してる。すごいなと思ってるよ。つまりこれだけのエスタブリッシュされた名曲の中に、新曲を3曲入れて遜色ないっていうのは、これはすごいねと思ってる。聴いた人がみんなそう言ってますよ。化学反応みたいなものが起きたって証拠ですよね。

そういう意味でいうと、白井さんが「涙河」に関して、「ロックっぽすぎたかしら」ってずっと気にかけてますけど(笑)。

きたやま なんでもいいんですよ、「帰って来たヨッパライ」ですから(笑)。フォークソングだから、フォークソング調じゃないといけないってことはないと思うよ。でも、私の歌詞は、どの歌詞にもそれなりのメッセージがあると思うんだよね。“本当”があると思うんだよね。その本当を伝えていただけるんであれば、どんな形式でも構わないと僕は思うんですよ。

白井 私のファンの人も、新曲がいいって言ってます。また私のことだけしか知らなかった人も、きたやまさんという作家に出会って、私がすごく喜びを感じてるのが伝わってくるって。本当にご一緒できて、アルバムが作れて、ライブもできて、よかったです!

お二人とも、ありがとうございました。

 

リリース情報

涙河 NAMIDAGAWA

『涙河 NAMIDAGAWA』
白井貴子「北山修/きたやまおさむ」を歌う

CVOV-10032/¥3,000+税
2016年6月15日発売
レーベル:(株)キャピタルヴィレッジ

01. 花のように(作詞:北山修 作曲:加藤和彦)
02. 涙河(NAMIDAGAWA)(作詞:きたやまおさむ 作曲:白井貴子)
03. 返信をください(作詞:きたやまおさむ 作曲:白井貴子)
04. あの素晴らしい愛をもう一度(作詞:北山修 作曲:加藤和彦)
05. 手と手 手と手(作詞:きたやまおさむ 作曲:加藤和彦)
06. さらば恋人(作詞:北山修 作曲:筒美京平)
07. 白い色は恋人の色(作詞:北山修 作曲:加藤和彦)
08. 戦争を知らない子供たち(作詞:北山修 作曲:杉田二郎)
09. 花嫁(作詞:北山修 作曲:端田宣彦/坂庭省悟)
10. 初恋の丘(作詞:北山修 作曲:渋谷毅)
11. 風(作詞:北山修 作曲:端田宣彦)
12. 悲しくてやりきれない(作詞:サトウハチロー 作曲:加藤和彦)
13. 「いるだけ」の幸せ(作詞:きたやまおさむ 作曲:白井貴子)
「スペシャル・トラック」
14. さよなら青春(作詞:キタヤマ・オ・サム 作曲:坂庭省悟)

プロフィール

白井貴子

神奈川県生まれ。フェリス女学院音楽科卒。1981年デビュー。84年「CHANCE」のヒットで「ロックの女王」と呼ばれ、「ライブイン10DAYS」・「新宿厚生年金5DAYS」・「西武球場ライブ」を成功させ、女性ポップ&ロックの先駆者的存在となる。1988年~90年、2年間ロンドンでの充電期間を経て、「横浜市倉田小校歌」・全国植樹祭のうた「森へ行こう!」・神奈川県清川KIDS SONG「みんなの未来」など、子供達の歌を多数発表。2014年文部科学省ESD「持続発展教育」メッセージソング「僕らは大きな世界の一粒の命」作詞・作曲。CDと南流石さん振付のダンスDVDが全国800校の「ユネスコスクール加盟校」と神奈川県・愛知県・茨城県の全小・中学に無料配布された。2016年.デビュー35周年を迎える。神奈川県環境大使・横浜YESアンバサダー・環境省3R推進マイスター

TAKAKO SHIRAI THE PEACE ON EARTH
 http://www.takako-shirai.jp/

 

きたやまおさむ

フォーク・クルセーダーズのメンバーとして「帰って来たヨッパライ」でマスコミデビュー、作詞家としての代表作は「戦争を知らない子供たち」「あの素しい愛をもう一度」など。近年は坂崎幸之助とCD「若い加藤和彦のように」を完成し、講演記録としてアカデミックシアターのDVD 全三巻が発表された。主な著書に、『北山修/きたやまおさむ百歌撰』(ヤマハミュージックメディア2008)、『ビートルズを知らない子どもたちへ』(アルテスパブリッシング2009)、『帰れないヨッパライたちへ~生きるための深層心理学』(NHK出版新書)』。専門書としては『劇的な精神分析入門』(みすず書房2007)、『意味としての心』(みすず書房2014)など多数。

きたやまおさむによるアカデミックシアター公式サイト
 http://academic-theater.jp

 

ライブ情報

白井貴子35周年アニバーサリーライブ

11月23日(水・祝) 赤坂BLITZ


きたやまおさむ ライブ「生きてます」

10月1日(土)、10月2日(日)  原宿クエストホール

問い合わせ:http://www.capital-village.co.jp/

 

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