Interview

KAKASHI〈心の向かう方へツアー〉スタート!「どこへでも行ける」、そうバンドが“心向方向”を指し示す『PASSPORT』を堀越颯太が語る

KAKASHI〈心の向かう方へツアー〉スタート!「どこへでも行ける」、そうバンドが“心向方向”を指し示す『PASSPORT』を堀越颯太が語る

昨年12月、2ndミニアルバム『PASSPORT』をリリースした、群馬県前橋市発、4人組ロックバンド・KAKASHI。日々の生活に誰もが抱える迷いや不安、溢れる感情や言葉にできない気持ちをキャッチーなメロディと痛快なロックサウンドに乗せて代弁する彼らの楽曲たち。必死でもがきながら前に進む“ドブネズミ”の叫びは共感を生み、“心向方向”を導き、愛しき日々を再確認させてくれる。今作を掲げての全国ツアーもスタートしたKAKASHIの堀越颯太(vocal, guitar)に最新作について、そしてツアーへの意気込みを聞いた。

取材・文 / フジジュン
撮影(ライヴ写真)/ ハライタチ

「ドブネズミ」の冒頭もそうですけど、終わりと向き合ってるような感覚

2ndミニアルバム『PASSPORT』を完成しての感想や周囲の反応はいかがですか?

昨年1月に出したミニアルバム『ONE BY ONE』以来のリリースになったんですけど、内容的には前作より評価がずっと高い気はします。自分でも良い曲が作れたなという印象があって、満足しています。

うん、俺も今作を聴かせてもらって作品としての完成度がすごく高いなと思って。前作を経てのやりたかったこと、反省点がちゃんと活かされているんだろうなと思いました。

まさにそうですね。アレンジ面も前作が完成して、「もうちょっと詰めたかったね」って話をしたんですけど、今回は時間もあったのでしっかり詰めることができて。

前回は初の全国流通ってところで、肩の力が入ってしまったところもあった?

すごいありました。念願のリリースだったので、イメージはできてたんですけど、なかなか思いどおりにいかなくて、燃えた部分とへこたれた部分がありました。でも総じて「面白かったな」という感想だったし、バンドの幅が広がったのもあったし。自分が目指していたところに一歩到達できたのが活力になったので、結果すごく良かったです。

『ONE BY ONE』のリリースから始まった2018年は振り返ってみていかがでしたか?

早かったですね。1月にリリースがあって、5月までツアーに回って、また制作に入って。10月には〈灯火祭〉があったり、空白の期間がなく動き続けたので、すごいスピード感があった気がします。ツアーは初めての土地は正直、動員も少なかったんですけど。行き続けていた土地ではちゃんと動員も増えてきたり、手応えを感じました。

その前は2016年にポリープが発症して、2017年春までライヴ活動もできなくて。苛立ちやモヤモヤを抱えている時期もあったわけですよね?

ありました。でも、ホッとした部分もあったというか……。それまでガムシャラに走り続けてきてポリープになって、活動したくてもできない期間があって。そこで自分が戦っていた場所を俯瞰で見たときに、やりたいことが明確に見えた部分もあったので。必要なこと、必要じゃなかったこともちょっとずつ見えてきて、自身を見つめ直す良い機会になったんです。自分がどんなにやりたいと思っていても、できなくなってしまう事態ってきっとあるなとも思ったというか、あのときは「もう歌えない」と思ったので、いつ終わりがくるかわからないということも見えてしまって……今は見えてしまった以上、終わりも見続けなければいけないという感覚もあって、それが曲に出るようになりました。「いつかは終わりが来ると分かっていて」と歌う「ドブネズミ」の冒頭もそうですけど、終わりと向き合ってるような感覚があって。一見ネガティブなんですけど、その先も見据えたうえで終わりを見ているというのは、僕の中ですごくポジティブな感情なので。今の自分にとってプラスになってます。

うん、『PASSPORT』を聴いて、一番心に刺さったのはそこで。どの曲もいつか終わりがくることも受け止めた悲観的なことも歌いながら、「だから前に進むしかない」ってポジティブな考え方にちゃんと昇華できているし、それが力となり推進力になっているなと思って。俺の中で“KAKASHI=チョロQ説”っていうのを考えたんだけど。グッと後ろに引いた溜めがあるから、パワーとスピード感を持って前に進めているし、説得力に繋がってますよね。

あはは、チョロQって懐かしいですね(笑)。嬉しいです。

人に伝えたいことをどれだけ曲げずにわかりやすく伝えるか

で、その中でも今一番歌いたいことをシンプルに明解に表現した1曲目「ドブネズミ」のパワーってすごくて。この曲があるから作品にグッと入り込めるし、その後の曲も共感度は増すばかりで。ラスト「愛しき日々よ」の美しさにすべて救われる感がありました。

ありがとうございます。今作で歌ってることって、ずっと歌い続けてきたことでもあるんですけど、少し間口を広げたというか。今までずっと人に向かって歌ってきたんですけど、今回は自分自身や日々の生活、過去や未来という時間軸も強く意識して書いたので、感じる部分が多いと思って。そういう部分は少し変わったかもしれないです。

「コーヒーとオイル」は現在や過去としっかり向き合えているし、「旅立つ夜に」や「愛しき日々よ」は大切な人や自分をしっかり思い浮かべたうえで歌えているから、聴いてる側も歌詞を自然と自分自身に当てはめて聴くことができます。

良かったです。曲を作るときは誰かひとりに向けてってところが強くて、曲の先に必ず誰かがいるので。そこはブレてないし、これからも変わらないと思います。あと前作以降でひとつ変わったとすれば、人ってどうしても主観的に喋ってしまうものですけど、それをしっかり人に伝えるのがボーカリストとしての役割だなと思うようになって。それはツアーで学んだことだったんですが、自分の言いたいことの本質をどうやったら伝えられるかということを考えました。今までは思ったことを書きなぐって、それをメロディに落とし込む作業だったんですけど、今回はメロディに落とし込む前にしっかり歌詞を推敲するようになったんです。人に伝えたいことをどれだけ曲げずにわかりやすく伝えるかが重要だと思ったので、そこはしっかり考えました。

“心向方向”とわかりやすさの折り合いですよね。ただ自分の心の向くままに歌っていたら、伝わるものも伝わらなくて。それを伝える術も必要になってくる。

そうですね。僕、心の向くままに喋ると誤解されることが多くて。嫌味っぽく聞こえたり、上から目線で聞こえることが多いみたいで。そう思われないためにどうしたら良いか?って考えたとき、人間力や伝える技術もすごく重要なんだろうなと思って。まだ発展途上ではあるんですけど、そんなことも意識しながら書きました。

そうなんですね。俺の印象は逆で、押し付けがましさもなく、聴き手の心に寄り添えた歌詞が書ける人だなぁと思いましたよ。

え、そうですか? だったら少し引っ込みすぎたかな?(笑)

いやいや、プロフィールに「誰もがふとした瞬間に抱えてしまう気持ちを代弁するかのように」とありますけど、ちゃんとそれができていて。モヤモヤを抱えた人たちが聴いたときに「そう、それ!」って思う歌詞になっていると思いますよ。今回出来た新曲たちをメンバーに聴かせての反応はどうでした?

デモはいつも弾き語りで聴かせるんですけど、今回はちょっとしたDTMみたいなものでベーシックを作ったんです。その段階で「前作より曲が良くなった」って言ってくれたのが自信になったし、みんながしっかり曲と向き合ってくれてるのがわかったので、すごく嬉しかったですね。僕の頭の中にも各自が前に出る箇所のイメージはあったんですけど、「ここは俺が行くから、抑えてくれ」みたいに自発的に言ってくることもあって。それは今までにない変化だし、曲にしっかり入り込んでくれたんだなというのは思いました。

各パートの楽曲への理解も感じたし、ライヴも想像できる演奏ですよね。

ライヴでできないことをやりたくないってのもあるんですけど、音源を超えるライヴをしたいっていうのが念頭にあって。かといって音源のクオリティを下げてるわけじゃないんですけど(笑)。ツアーでは音源を超えていきたいというのはみんな思ってて。自分の中ですごく良い音で録れたので、「これだったらCD聴いてるほうがいいや」って思われないように、ライヴでは音源を超えていきたいと思ってます。

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