冒険Bリーグ  vol. 9

Column

「年男」の覚悟。A東京、馬場雄大が見据えるのは世界の大舞台だ

「年男」の覚悟。A東京、馬場雄大が見据えるのは世界の大舞台だ

『冒険Bリーグ』の第9回はアルバルク東京(以下、A東京)の馬場雄大を取り上げる。筑波大在学中にプロ入りして現在2季目。昨年11月7日に23歳の誕生日を迎えた「年男」の彼が持つ覚悟を語ってもらった。

2018年は馬場にとって悪くない一年だった。5月にはA東京でBリーグ王者に輝き、日本代表としてもワールドカップ予選の6連勝に貢献。特に11月30日のカタール戦、12月3日のカザフスタン戦では地元・富山でプレッシャーを跳ねのけて好プレーを見せた。

特にカザフスタン戦で決めたダンクは、国際バスケットボール連盟が世界5大陸の全試合から「ベストダンク」に選出したスーパープレーだった。

Top 25 Best Dunks – Window 5 – FIBA Basketball World Cup 2019 Qualifiers
※3分10秒~をご覧ください。

馬場は198センチの長身で、スピードや跳躍力もずば抜けている。そのダンクを見れば恵まれた運動能力は明らかだが、スキルもハイレベル。跳びながら相手の逆を取ったり、ボールを持ち替えたりして放つ「ダブルクラッチ」のシュートはお手のものだ。現在はシューティングガードとスモールフォワードを定位置としているが、本人はポイントガード志望を公言している。

ただ、その姿からは“もがいている”様子も伝わってくる。言葉の節々からちょっとした焦りを感じることもあった。

A東京と馬場にとって2019年の開幕カードとなったのが栃木ブレックス戦。2016-17シーズンの王者・栃木と、2017-18シーズンの王者・A東京がぶつかる大一番だった。1月5日の初戦はA東京が79-62で先勝したものの、翌6日の第2戦は62-63で惜敗。現在東地区3位のA東京にとって、栃木や千葉ジェッツとの差を詰めるチャンスを逃してしまった。

彼の良さも出る展開だったが、試合後の本人は反省顔だった。残り15秒、2点ビハインドの勝負所で、A東京は栃木の遠藤祐亮に3ポイントシュートを決められた。マークについていたのは馬場だ。

馬場は振り返る。

「ゴール下を警戒しつつ、いろんなことを頭に入れて考えたところで、ポッと遠藤さんにトップ(3ポイントラインの外/ゴール正面)へ上がられた。何とか追いついたんですけれど、きっちり決めてきた」

その2分前は、逆に馬場が遠藤の3ポイントシュートを鮮やかにブロックしている。しかしそのスーパープレーが、小さな隙を作ったことで帳消しになってしまった。彼は試合後、ルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチからこのように諭されたという。

「1本ブロックショットがあったけれど、それで満足するのでなく、最後の最後まで、勝敗に関わる部分を考えないといけない。そう言われました。経験と言えば経験ですけど、今日は悔しい敗戦でした」

体力や技術を活かすのは知性と人間性だ。この大器は時に痛い思いもしながら経験を積み、さらに成長していくのだろう。

年男の抱負に尋ねると、こういう答えが返ってきた。

「僕自身、勝負の年になると思う。1試合1試合を大切にするのは当たり前ですが、将来に向けてどう戦っていくか考えながら今を過ごしていきたい」

馬場は大学時代に海外志望を公言しつつ、Bリーグに加入した。A東京の質が高いトレーニング、環境を通して成長できるという確信があったからだ。ただし海外でのプレーを断念したわけではなく、今オフにはNBAのマイナー組織にあたるGリーグなど、国外への挑戦を念頭に入れている。

1歳上の渡邊雄太は昨年メンフィス・グリズリーズでNBAデビューを果たした。2学年後輩の八村塁も、6月のNBAドラフトで指名が濃厚だ。一方で日本代表の比江島慎は5日に、オーストラリアリーグ(NBL)のブリスベン・ブレッツから放出されている。実力、コミュニケーションの両面で、日本人選手の海外挑戦には決して低くはない壁がある。

馬場はこうも語った。

「ただ行くだけでなく結果を求めてきたい。それを考えたら今から(世界を)見据えなければいけない」

少し前、日本代表の合宿期間中に富樫勇樹選手(千葉ジェッツ)がこんな裏話を“暴露”していた。

「(馬場選手が)日記を毎日英語で書いている姿を、ルームメイトとして見ています。英語の動画を見て『ちょっと問題を出して』と言われたり、海外遠征で時間があるとずっと英語の勉強をしている」

富樫は高校の3年間をアメリカで過ごしていて、英語が堪能だ。馬場は抜け目なくチームメイトを“利用”して、貪欲に英語を学ぼうとしているのだという。

富樫は「そういう意識の高さも含めて、今後必ず海外に出て、活躍してくれるのではないか」と太鼓判も押していた。馬場は身体的な才能に安住せず、いい意味で飢えている男だ。上を目指す意思を行動に移し、自分を夢の実現に向けて追い込める選手なのだ。

取材・文 / 大島和人 写真提供 / B.LEAGUE

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https://www.bleague.jp/

著者プロフィール:大島和人

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都町田市に在住する。大学在学中にテレビ局の海外スポーツのリサーチャーとして報道の現場に足を踏み入れ、アメリカの四大スポーツに接していた。損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年から「球技ライター」として取材活動を開始。バスケの取材は2014年からと新参だが、試合はもちろんリーグの運営、クラブ経営といったディープな取材から、ファン目線のライトなネタまで、幅広い取材活動を行っている。

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