劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』II.lost butterfly 公開記念  vol. 5

Review

【レビュー】鑑賞後、言葉を失うこと必至の衝撃作。劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel] II.lost butterfly』所感

【レビュー】鑑賞後、言葉を失うこと必至の衝撃作。劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel] II.lost butterfly』所感

2019年1月12日(土)よりいよいよ公開となる劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel] II.lost butterfly』。試写会で観たその圧倒的な内容に、観客たちはエンドロール後もしばらく言葉を出せずにいた。「映像美の極致」だとか「桜かわいい」だとか、そんなチャチなワードでは言い表しきれない。筆者自身「ヤバい、ヤバすぎる」と、プロライターにあるまじき語彙貧な感想しか出てこなかったが、これから観る人もきっと同じ思いを抱くだろう。三部作で構成されるシリーズの2作目である本作を、今回は公開日に先駆けて筆者なりの見どころをレビューする。

文 / 福西輝明


『Fate』ビギナーの心を打ち砕く!? 登場人物たちの変わり様

『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』(以下『HF』)の物語を大雑把に表すとすれば、筆者的には「闇堕ちラブストーリー」と言い表したい。本作の主だった登場人物たちは、抗いきれない運命の波に巻き込まれていく。

『HF』1作目(I.presage flower)のラストでは、主人公・衛宮士郎のパートナーであるセイバーが黒い影に飲み込まれ、「セイバーオルタ」となって生まれ変わる。士郎がもっとも信頼していた味方であった存在が、恐るべき敵となって現れるのである。

また、本シリーズでメインヒロインとして描かれている間桐 桜は、『HF』2作目(II.lost butterfly)で他関連作品とは大きく違った表情を見せてくれる。他の『Fate』シリーズでは、桜は士郎にとってはいつも温かな笑顔を向けてくれる「日常の象徴」だった。しかし、TVアニメ『Fate/Zero』を視聴した方なら、桜は間桐家の魔術を受け継ぐ運命を背負わされ、過酷な幼少期を過ごしてきたことを知っているだろう。本来ならば、笑顔を浮かべられるような心など残っていないはず。それが、中学生の頃に士郎と出会い、共に過ごしてきたことで、人としての心を少しずつ取り戻していったのだ。『HF』1作目では、そんな桜の一途で健気な側面がクローズアップされた。戦いに赴いた士郎を心配するあまり、雪が降りしきる中、上着も着ずにサンダル履きのまま外で待っていた姿には、思わずグッとくるものがあった。

そんな桜が──詳しくは本編を実際にご覧いただきたいが、『HF』2作目ではこれまで内に押し隠してきた気持ちを少しずつあらわにしていく。

さらに、「正義の味方」を志す士郎にも変化が訪れる。彼は亡き養父・衛宮切嗣の夢を継いで、人々の幸せを守る「正義の味方」を志していた。命を賭して「聖杯戦争」に参戦したのも、無関係な人間が傷つくのを防ぐためだった。そんな彼が、この第二章では自分の信じてきた正義を貫き通すかどうかという選択に迫られる。

大きな選択に迫られる士郎。少しずつ押し隠してきた感情をあらわにしていく桜。そして「セイバーオルタ」となり敵に回ったセイバー……。彼らの変化が、この上なく丁寧に、そして濃厚に描かれていく。これまでの士郎やセイバー、そして桜を知る人にしてみると、そんな彼らの姿にはかなりの衝撃を受けることになるかもしれない。

それでも作品の根底にあるのは「愛」

士郎は常に誰かのために尽くし、何の見返りも求めない。その結果、自分が傷つくことになっても、気にする素振りすら見せない。それが、彼が目指した「正義の味方」の姿なのだろう。しかし、冷静に考えると、そんな生き方はひどく歪に見える。「誰かのために」という思いはたしかに尊いものだが、まるで人間の幸せのために尽くすことを義務付けられたロボットのように思えてしまうのだ。

しかし、第二章の本予告でも「俺は、桜だけの正義の味方になる」というセリフがあったように、士郎の桜に対する思いは注目すべき点だ。桜により変化していく士郎の思いと選択。この思いの行方の先にはどのような物語が待ち受けているのか。

『Fate』史上もっとも血が沸き立つといっても過言ではないバトルシーン

『HF』第一章での、ランサーVS真アサシンのバトルは、まさに演出技巧の極致とも言える出来栄えだった。あまりにその印象が強烈すぎて、2作目となる本作ではあのバトル以上のものは見られないだろうとすら思ったが、それはまったくの杞憂に終わることになる。

本作最大の見どころの1つであるバーサーカーVSセイバーオルタのバトルは、『Fate』のアニメ作品の中でもっともド派手で、血沸き肉躍ったといっても過言ではない。戦いの詳細は伏せるが、「俺たちのバーサーカー」の姿が、そこにあった。圧倒的な力を見せるセイバーオルタ相手に奮戦するバーサーカーに向かって、筆者は「やっちゃえ、バーサーカー!」と心の中で絶叫しながら見守った。このバトルシーンのためだけにでも、本作を観る価値は十分すぎるほどあると断言できる。もし叶うなら、「バーサーカー応援上映会」のような企画を実施していただきたいとも思う。

観る前には是非相応の心構えを。それほど最高に楽しめる一作

『Fate/stay night』で描かれている3つのルート『Fate』、『Unlimited Blade Works』、そして『Heaven’s Feel』。それぞれにテーマが異なるが、『Fate』シリーズのヘビーなファンであるほど、『HF』と桜が好きだという人が多い印象がある。これは、清純で朗らかだったヒロインの変わり様が好きな人の心に、ストライクな内容であるためだろうと筆者は考えている。

それゆえに本作は、是非いろいろな感情に揺さぶられる心構えをした上で劇場に足を運んでいただきたい。そうして足を運んでいただけたならば、『Fate』のアニメ作品史上、最高の一作ともいえるこの作品の姿を目の当たりにできるだろう。

劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel] II.lost butterfly』

2019年1月12日(土)全国ロードショー

【STAFF】
原作:奈須きのこ/TYPE-MOON
キャラクター原案:武内 崇
監督:須藤友徳
キャラクターデザイン:須藤友徳・碇谷 敦・田畑壽之
脚本:桧山 彬(ufotable)
美術監督:衛藤功二
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:松岡美佳
編集:神野 学
音楽:梶浦由記
制作プロデューサー:近藤 光
アニメーション制作:ufotable
配給:アニプレックス

【CAST】
衛宮士郎:杉山紀彰
間桐 桜:下屋則子
間桐慎二:神谷浩史
セイバーオルタ:川澄綾子
遠坂 凛:植田佳奈
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン:門脇舞以
藤村大河:伊藤美紀
言峰綺礼:中田譲治
間桐臓硯:津嘉山正種
ギルガメッシュ:関 智一
ライダー:浅川 悠
アーチャー:諏訪部順一
真アサシン: 稲田 徹

©TYPE-MOON・ufotable・FSNPC

劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』オフィシャルサイト
劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』オフィシャルTwitter

コミック版『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』

vol.4
vol.5
vol.6