LIVE SHUTTLE  vol. 322

Report

アルバム『Heart Mining』の世界観を体現したaccessツアー。あの奇跡のコラボも再び実現し、最高潮の盛り上がりを見せた。

アルバム『Heart Mining』の世界観を体現したaccessツアー。あの奇跡のコラボも再び実現し、最高潮の盛り上がりを見せた。

access Tour 2018 Heart Mining
2018年12月16日 舞浜アンフィシアター

12月15日と16日、『access TOUR 2018 Heart Mining』の舞浜アンフィシアター公演が行われた(このレポートは16日の模様)。ツアー前から「アルバム『Heart Mining』の世界観をしっかり伝えたい」「アルバムの世界観に沿った新曲も演奏したい」と、浅倉大介がインフォメーションしていたとおりの、有言実行のステージだった。

冒頭、舞台上に吊るされた5枚のLEDビジョンに映し出されたのは、AIの心模様だったのかもしれない。だから、もはや心(Heart)は、知力の高い動物だけの特権ではなくなり、演算処理(Mining)によっても生成され得る時代になったと、告げているのだと受け止めた。SF映画の冒頭、例えば<23xx年 核戦争終焉後のワシントンD.C.>のような字幕が出るのと同じだ。これから始まる物語(ショー)の時代背景や舞台設定を定義する演出だ。

レーザー光線が交錯する中、舞台中央、純白の衣装のaccessが登場。「Vertical Innocence」。曲が進むに連れ、ステージはカオスの度合いを増す。赤いライトと黄緑のレーザーが観客の視覚を刺激し、左右のスピーカーを行き来する電子音が聴覚のバランスを揺さぶる。

「Share The Love」では、浅倉が赤いエレクトリックギターを抱え、半円状の舞台を動き回る。一方の貴水博之は、もうひとつの目がある──自分たちの舞台をリアルタイムで俯瞰する視点を持ち合わせている。浅倉との関係でもっとも効果的な場所を常にキープしていた。デビュー以来、浅倉は理論派、貴水は感覚派と疑うことはなかったが、25年以上が経った今、一概にそうとは言い切れないらしい。ステージングについては特にだ。浅倉は、その瞬間の感情の赴くままパフィーマンスする。貴水は、冷静さと客観性から、自分のなすべきパフォーマンスを導き出す。つまり、浅倉が感覚派、貴水が理論派に思える瞬間があったということ。彼らに限らず、誰であろうと、心を掘ってみると、意外な側面が眠っていることは少なくない。

 

「Crack Boy」。アルバム『Heart Mining』を語る上でも、その世界観を表現する上でも、外せない1曲。コリオグラフされた貴水のダンスは、心を持つことができないロボット(心を持たない機械が)空想した人間らしさを表現していたのか。単に決められた振り付けを踊るのではなく、踊りの背景や自分の役割を表現する貴水の深さが、そう見せたに違いない。続く「SILVER HEART」も心を持たないと思われている者が主人公。ロボットかサイボーグか、そうした者の心を掘った曲だ。舞台中央で、背中合わせに立った浅倉と貴水が無機質な振り付けでシンクロ。舞浜アンフィシアターならではの、内側と外側が逆方向に回転するステージも、ねじれた空間やねじれた思考を表現するのに一役買っていた。

アレンジされた「Tragedy」「ELECTLIC☆NIGHT」「MISTY HEARTBREAK」。『Heart Mining』の世界観に「ELECTLIC☆NIGHT」と「MISTY HEARTBREAK」の2曲を引き入れたという解釈が正しいのではないだろうか。

「Tragedy」での貴水は、再びコリオグラフされたダンスを披露。錯綜する赤と青のライトの中、踊るというより舞うといったほうが似合っていた。貴水がこの曲で、このダンスで、表現していたのは、誰の中にも潜むダークな因子に思えた。暖色や寒色を基準にしたカラーチャートでは、赤と青は対峙しないが、比視感度曲線なるグラフでは、両極に位置するという。結果、赤と青の速い交差は、瞳孔の開閉が追い付かず、不安定な視野になるそうだ。その意味では、音楽・ダンス・照明が三位一体となり、『Heart Mining』の世界を表現していたと言える。

貴水の舞いは、「ELECTLIC☆NIGHT」でも続いた。鍵盤を叩き、デジタルノイズを連射する浅倉が暴走するAI役か、貴水は人間の心の役か。

続いては、浅倉のキーボードソロ。前出の機械と心、理論と感覚、赤と青の両極が織りなすカオス同様、ここでも浅倉は、混沌や混迷の面影を追っていたと思う。なぜなら、理由は3つ。

まずは心を掘れば、そこにあるのは混濁した領域だから。そこまで掘ってみて、初めて見えるものがあると、伝えたかったからではないか。建前や体裁の裏に潜む、善でも悪でもないもの、正しくもなく誤りでもないものへ到達することの大切さを表したかったからだと思う。

2つめは混沌の対極にある整然と際立たせるため。漆黒の中の1点の光ほどまぶしいものはないのと同じだ。無秩序の中の清廉は、ひときわ胸に響く。では、その清廉とは何か。きっとメロディ-だ。あるいは歌詞だ。それらの断片だ。どの曲のどこか胸に焼きつくかは、観客一人ひとりで異なる。が、この非日常から日常へ、断片のひとつでもふたつでも持ち帰ってもらいたいという思いからだろう。

最後は時代。人は調子の良いとき、自分を顧みることはない。時代も同じ。行く先がひたすら明るい時代は心の在り様だとか、心の置き場所など、問わない。前進あるのみ。前進以外に幸福に到達する道はないと猛進、いや、盲信する。ひるがえり現在。決して上り調子ではない。未来は明るいだけではない。むしろ混迷の色を濃くしている。だからこそ、心の在り様が問われる。そして、前進以外の幸福への道を探さねばならない。そのための第一歩が心を掘ることではないだろうか。

「Inside me, Inside you」での貴水のボーカルはやさしかった。転調で曲の景色が変わろうと、そのやさしさがブレることなく、ほのかに光る一本道に思えた。LEDビジョンにオレンジ色の屋根の街並みが映し出された「Missing 4 seasons」や原形を残す「SCANDALOUS BLUE」は、心を掘ると現れてくる、思い出や懐かしさを表現していたのだと思う。

浅倉のキーボードと貴水のアコースティックギター&ボーカルで「Friend Mining」。accessサウンドの代名詞であるシーケンサーが一切稼働しない1曲。『Heart Mining』収録のオリジナルバージョンは、フルデジタル・サウンド。生楽器なし。全編シーケンスサウンド。すなわち、形こそ似ているがこのライブバージョンとは内実がまったく異なっている。むしろ正反対だ。浅倉のことだから、アルバムレコーディング中、すでにこうしたライブアレンジをイメージしていたはずだから……。心とは、外見は似ていても、内側は正反対の場合もある、というメッセージが込められていた可能性もありそうだ。

「LOVING YOU」はライブでしか演奏されない楽曲。浅倉がイントロを奏で始めると、咳ひとつない静寂が会場を包む。すべての観客の気持ちがひとつになっているのが感じられた。20代のやんちゃだった時代とは違う、大人の風格が漂う貴水のボーカルも素晴らしかった。包容力という言葉がふさわしい歌だった。ラストの♪守りたいーのロングトーンも秀逸。真っすぐに伸びる。ここでビブラートをかけられると、この清廉な曲が台無しになることを、貴水は誰より心得ている証明だ。

13曲目の「LOVING YOU」が終わったところで、ホールツアー恒例のaccess Channel。今回の企画は、浅倉vs貴水の神経衰弱。笑いも感動も、コントもドラマも、肝心なのは緊張と緩和だそうだから、ここは緩和のひととき。緩ければ緩いほどラストスパートの緊張が抜きん出る。

緊張の第一弾が「Heart Mining」。乱舞する光の中、舞浜アンフィシアターならではのせり上がりでaccess登場! そのまま、浅倉がインフォメーションしていた「アルバムの世界観に沿った新曲」へ。「Grateful Circle」という曲名らしい。このツアーに何度か足を運んでいる観客はいるだろうが、それでも観客のレスポンスが凄い。うっかりすると、新曲とは思わない盛り上がり。この敏感なファンにaccessは支えられてきたのだと、改めて痛感した。

 

ひと息つくまもなく、あの清廉なピアノのフレーズが鳴る。一瞬の空白から、ハードなリズムとラウドなギターが加わる。「Doubt & Trust」。高速グルーヴで一気に押す。観客の思考を停止させ、心を解放させるセットリスト。心を掘るとは、頭で考えることではなく、いかに思考回路をパスするかだと、伝わってきた。曲が進むと、心の解放も進む。アルバム『Heart Mining』収録曲を連発。「Discover Borderless」「Knock beautiful smile」。ステージを駆け巡る浅倉。ここまで歌ってきても、息切れしたり、声がヨレたりしない貴水の強靭なボーカル。しかも、曲ごとにボーカルの質感をしっかりキープ。ライブだから、少々の荒さがあっても許されるものだが、例えば「Knock beautiful smile」なら、やわらかな質感を守り続けた。ボーカルが主役である、というプライドの成せる業だ。

締めもキラーチューンの3連発。「JEWELRY ANGEL」「MOONSHINE DANCE」「永遠dive」。LEDに映し出される浅倉の横顔がグラムロックのシンボルだったデヴィッド・ボウイと重なった。妖しさをまとった知性や自己をアイコン化するアーティストリーは、確かに共通しているが、今までつながったことのない二人が重なった。それはきっと浅倉がまだまだ新境地へ向かっている証明。新たな領域に足を踏み入れた証明。

 

心を掘り尽くした後、本編ラストでTRFのYU-KIが登場。マイペースなトークの浅倉と女性のエスコートに長けている貴水のキャラが鮮明なMCだった。

この日(16日)から配信が始まったaccess × TRFコラボ楽曲「Get Wild-live ver.-」を披露。女性キーでも歌える貴水と、小室哲哉サウンドを知り尽くしている浅倉と、平成小室ブームの火付け役でもあるYU-KIによる生「Get Wild」は超貴重。強引に斬新なアレンジをしないのは、浅倉の小室への敬意だ。また同日に「LET ME GO MY WAY feat.Daisuke Asakura / TRF」の配信もスタートした。

アンコールでは、浅倉の希望を全員で実現。浅倉が「レッツ!」とコールすると、観客と貴水で「マイニング!」とレスポンス。浅倉は「これをみんなと一緒にやりたかった」とご満悦(笑)。

曲は「White Lights」。心が洗われるイントロのピアノフレーズ。清廉な響き。曲の随所にも現れるこのメロディ-が心に焼きつく。そうだったのか、心を掘る、そして、ラストで心を洗う──そんな物語が用意されていたのか。掘り返した心に清廉な雪を降らせたのか。

すべての締めは緩和。「S-MILE GENERATION」。名は体を表わす。混沌の先に待っていたのは、笑顔満開の景色だった。

文 / 藤井徹貫
撮影 / 阿部薫 (※写真は12月15日に撮影したものです)

access Tour 2018 Heart Mining
2018年12月16日 舞浜アンフィシアター

SET LIST
01.Vertical Innocence
02.Share The Love
03.Crack Boy
04.SILVER HEART
05.Tragedy
06.ELECTLIC☆NIGHT
07.MISTY HEARTBREAK
08.Key solo
09.Inside me,Inside you
10.Missing 4 seasons
11.SCANDALOUS BLUE
12.Friend Mining
13.LOVING YOU
14.Heart Mining
15.Grateful Circle
16.Doubt & Trust
17.Discover Borderless
18.Knock beautiful smile
19.JEWELRY ANGEL
20.MOONSHINE DANCE
21.永遠dive
22.Get Wild (feat.YU-KI)

EN1 White Lights
EN2 S-MILE GENERATION

ライブ情報

access ELECTRIC NIGHT 2019

3月30日(土) 宮城:仙台Rensa
4月7日(日) 大阪:なんばHatch
4月13日(土) 神奈川:横浜Bay Hall
4月14日(日) 神奈川:横浜Bay Hall
4月20日(土) 愛知:ダイアモンドホール
4月21日(日) 愛知:ダイアモンドホール
4月27日(土) 広島:広島クラブクアトロ
4月28日(日) 福岡:DRUM LOGOS
5月2日(木・休) 高知:キャラバンサライ
5月3日(金・祝) 香川:高松MONTER
5月6日(月・休) 新潟:新潟LOTS
5月18日(土) 東京:STUDIO COAST
5月26日(日) 北海道:ペニーレーン24

リリース情報

access×TRF~25th Anniversary Joint Live~を記念して、TRFとaccessがコラボ楽曲を2曲配信!

access

浅倉大介(プロデューサー)/貴水博之(ボーカル)からなるユニット。1992年11月26日、「VIRGIN EMOTION」でデビュー以来、「MOONSHINE DANCE」「夢を見たいから」などヒット曲を連発。1994年には、3rdアルバム『DELICATE PLANET』でオリコン初登場1位を獲得し、その年の『NHK 紅白歌合戦』にも出場する。1995年、一旦活動休止をするが、2002年、access再始動。以来、毎年全国ツアーを始め、シングルやアルバムもコンスタントにリリースし、精力的に活動している。2019年の春に、恒例のELECTRIC NIGHT TOURが開催決定!

オフィシャルサイトhttp://www.access-web.jp

TRF

YU-KI(ボーカル)、DJ KOO(DJ、サウンドクリエーター)、SAM(ダンサー)、CHIHARU(ダンサー)、ETSU(ダンサー)からなる5人組の音楽ユニット。1992年9月結成、1993年2月25日にメジャーデビューした。ダンス系テクノをポップミュージックに導入した日本初のレイヴユニット。小室哲哉プロデュースのもと、90年代を中心に数々のミリオンヒット曲を連発し、デビューからわずか2年でCD総売上枚数が1000万枚を突破、また5作連続でミリオンセラーを記録するなど、まさに一時代を築き上げた。配信限定曲「LET ME GO MY WAY feat.Daisuke Asakura」が好評配信中。

オフィシャルサイトhttps://trf.avexnet.or.jp/

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