Report

橋本祥平らが「生の舞台は面白い」と観客を唸らせる。ミュージカル『封神演義–目覚めの刻(とき)–』上演中!

橋本祥平らが「生の舞台は面白い」と観客を唸らせる。ミュージカル『封神演義–目覚めの刻(とき)–』上演中!

累計発行部数2,200万部超え。藤崎 竜による人気コミックス『封神演義』がついにミュージカル化を果たした。主人公・太公望 役に橋本祥平を迎え、安里勇哉、輝山 立、陳内 将、大平峻也ら若手人気俳優から畠中 洋、高松 潤ら実力派まで多彩なキャストが揃い踏み。中国最古の王朝・殷の時代を舞台にした壮大な冒険絵巻を華やかな音楽と大胆なアイデアで完全再現したミュージカル『封神演義-目覚めの刻(とき)-』の模様をここにレポートする。

取材・文 / 横川良明 撮影 / 竹下力

不可能を可能にする。そんな舞台の面白さを体感できる挑戦作

見えないものが、見える。できないことが、できる。それが、舞台の魅力だと思う。

人間は空を飛べないし、仙術や妖術といった類のものも操れない。映像ならCGを使って、いかにも本物のように見せることはできるかもしれないけれど、生の舞台では到底不可能。劇場で演劇を観たことがない人は、もしかしたらそんなふうに思うかもしれない。

でも、違う。不可能を可能にするのが、舞台だ。

このミュージカル『封神演義-目覚めの刻(とき)-』は、そんな不可能に真っ向から挑んだ挑戦作。原作の魅力である、仙人のための武器“宝貝(パオペエ)”を使った壮大なバトルシーンを劇場で再現する。それも、プロジェクションマッピングなどの映像表現を駆使するのではなく、あくまで人の力だけで。演出の吉谷光太郎は当初からそう意気込んでいた。

その挑戦は、いかなるものだったのか。結論から言えば、「だから生の舞台は面白いんだ!」と断言できる内容だった。

数々の名場面、名キャラクターを劇的に演出すべく、布やスモーク、人形遣いといった伝統的な表現手法を積極採用。そこに9人のアンサンブルキャストによる統率された動きが加わることで、一気に見応えあるものに。

特に聞仲(畠中 洋)、そして四聖との対決シーンはクライマックスの見せ場だけあって迫力十分。高友乾(武藤賢人)の繰り出す大津波は、プロジェクションマッピングで見せるよりもより立体感と動きが出て、視覚的な面白さが増した。

何より本来そこにないものを見出そうとする観客の想像力をフルに刺激してくれるところが楽しい。四不象(操演:吉原秀幸)にまたがり太公望(橋本祥平)が空を飛ぶシーンなんて、その背に流れる古代中国の山々まで浮かんでくるようだった。

楽しむ気持ちと想像力さえあれば、演劇は何だってできる。そう改めて確信させてくれる、実り多きチャレンジだった。

放心状態になるまで熱演! 橋本祥平が見せる強く優しい太公望

ストーリーも原作の第1話から聞仲との初対決までをうまくまとめていて、サクサクと進んでいくので飽きずに楽しめる。

楊戩 役の安里勇哉は美貌の天才肌をさらりと演じ、哪吒 役の輝山 立は冷血な無表情が哪吒そのもの。黄天化 役の陳内 将は見事な腹筋もさることながら、本格的な出番は第二幕からにもかかわらず軽快な演技で印象を残し、妲己 役の石田安奈は徹底的にチャーミングに演じることで、妲己の悪女ぶりを強調。申公豹 役の大平峻也は道化的な役柄がぴたりとハマり、聞仲 役の畠中 洋はベテランらしい貫禄と圧倒的な歌唱力で終盤は独擅場状態。

だが、やはり一番印象的だったのは、太公望 役の橋本祥平だった。太公望は、定番のザ・主人公キャラではなく、知略家なのにどこかトボけていて、ちょっと食えないところのある役だ。

太公望の実力と人柄に惹かれるようにして、徐々に仲間が集まってくるのが、今回のストーリーの大きな見どころ。普段は「本当に強いのか?」と仲間から疑問視されるなど、いまいち頼りない太公望になぜ仲間たちはついていこうとするのか。その説得力がなければ、どうしてもストーリーそのものも求心力を欠いてしまう。

熱血しすぎてもいけないし、かと言って淡々としすぎてもいけない。非常に難しい塩梅を、橋本祥平はうまくモノにしていたように思う。四不象をイジるなどメタフィクション的なギャグを入れたり、そこかしこで笑いをとることで、観客との距離をぐっと縮め、太公望の愛され力を体現。

そんなマイペースさとは対照的に、人狩りによって家族を失った悲しい過去と、それゆえに抱く平和への真摯な想いは、個人的には原作以上によりドラマチックに伝わってきた。普段ののほほんとした雰囲気とのコントラストが明確であるぶん、彼が内に秘めた義勇の心がより際立ったし、それでいて争いごとを好まぬ優しさも同時に感じ取れて、こんなリーダーなら自然とついていきたくなるなとうなずける魅力的な“師叔”ぶりだった。

上演時間2時間45分(休憩15分含む)ほぼ出ずっぱり。台詞だけでなく、歌やアクションも多く、特にクライマックスのバトルは最大の山場だけに体力・気力ともに消耗が激しい。終演後の挨拶では「放心状態で……」と口にするなど、舞台経験豊富な橋本祥平でもこの太公望はハードな大役だ。

けれど、原作ファンも2.5次元ファンも納得の太公望だったことは、終演後の熱気に包まれた客席の雰囲気が一番に証明していた。

1 2 >