モリコメンド 一本釣り  vol. 101

Column

Kitri 京都出身のピアノ連弾ユニットが届ける、心地よいグルーヴと美しい歌声

Kitri 京都出身のピアノ連弾ユニットが届ける、心地よいグルーヴと美しい歌声

クラシックをバックグランドに持つ高度な音楽性、どこか懐かしい雰囲気を感じさせる叙情的なメロディライン、そして、ピアノと歌の圧倒的なスキルの高さ。この先長い年月に渡り、豊かな音楽を生み出してくれるだろう、無限のポテンシャルを備えたニューカマーが登場した。1st EP「Primo」でメジャーデビューをするKitri。京都出身のピアノ連弾ユニットだ。

作詞・作曲、歌、ピアノ(低音部)を担当するモナ(姉)、ピアノ(高音部)、ギター、パーカッション、コーラスを担うヒナ(妹)が姉妹ユニット・キトリイフとして京都で活動を始めたのは、2015年。幼い頃からクラシックピアノを習い、大学で作曲を学んだ彼女たちの独創的にして高品質な楽曲は、地元の音楽シーンで徐々に注目を集める。Kitriの存在がさらに広く知られたきっかけは、2016年、ライブで京都を訪れていた大橋トリオに彼女たちの自主制作盤が届けられたこと。音源を聴いた大橋が高く評価し、彼が劇伴音楽を担当していた映画『PとJK』(主演/亀梨和也×土屋太鳳)のテーマ曲にボーカルとハミングで参加。さらに翌2017年には大橋のプロデュースによるパイロット盤『Opus 0』を制作し、Kitriとして本格的な活動をスタートさせた。大橋はふたりの音楽に対し、「彼女たちの世界観の中の住人になりたいです僕は。これは是非聴いてほしい!」と絶賛。もともとKitriの2人も大橋トリオをリスペクトしていたということで、まさに理想的なコラボーレションと言えるだろう。 昨年9月に音楽フェス「Slow LIVE’18 in 池上本門寺」にオープングアクトとして出演するなど活動の幅を広げてきたKitri。1st EP「Primo」によって彼女たちは、幅広い音楽ファンの心を掴むことになる。

リードトラック「羅針鳥」は、彼女たちのルーツであるクラシックの要素をたっぷりと反映させたピアノ演奏(有名なクラシック楽曲のフレーズも引用されている)と現代的なダンスミュージックにも通じるリズムトラックを融合させたナンバー。アレンジには大橋トリオのドラマーでもある神谷洵平(赤い靴)が参加。ゴンドウトモヒコ(METAFIVE)がユーフォニアム、フリューゲンホルンを演奏し、叙情的なポップネスをたたえた楽曲の世界観を引き立てている。緻密に構成されたアレンジメント、演奏者のプレイヤビリティを活かしたサウンドメイクも素晴らしいが、中心にあるのはやはり2人の歌とピアノだ。高い技巧を随所に凝らしながら、心地よいグルーヴと美しいメロディを描き出すピアノ、そして、様々な不安や葛藤を振り切り、新しい世界に向けて旅立つ瞬間を“ひたすら胸の中の音を頼りに飛んでいけ”というフレーズのなかに込めた歌詞を、まるでファンタジックな物語を紡ぐように歌うボーカル/ハーモニー。「羅針鳥」を聴けば、間口の広いポップ感と奥行きのある音楽性を兼ね備えたKitriの魅力を存分に感じ取ってもらえるはずだ。

その他、ピアノの連弾による楽曲3曲を収録。シャープな手触りのピアノのリフ、2人のハーモニーを活かしたメロディラインとともに、細胞レベルで惹かれ合ってしまう状態を描き出した「細胞のダンス」、切ない別れのシーンを叙情的に映し出すバラードナンバー「sion」、瑞々しく、華やかなピアノと新しい出発の場面をテーマにした歌がひとつになった「一新」、さらに「羅針鳥」を2人だけで演奏した「羅針鳥-naked-」も。ピアノの繊細なタッチ、姉妹ならではの有機的なコーラスワークを堪能するために、できれば音源を正確に再現できるヘッドホンかイヤホンで聴いてほしい。聴くたびに深みを増していくような、きわめて豊潤な音楽世界がそこにあるはずだ。聴き手の心のなかに映像を呼び起こすことも、彼女たちの音楽の特徴。Kitriの楽曲は、近い将来、アニメ、映画、ドラマなどの映像作品ともつながっていくことになるだろう。

2019年1月から2月にかけて大阪、東京、福岡、熊本で「Kitri Debut Live Tour 2019『キトリの音楽会#1』」を開催。今後はライブ活動も増えていきそうだ。「Primo」とは“第一”の意味(音楽用語の“テンポ・プリモ”は“曲の始まりの速さで”)。ここから始まり、さまざまな出会いを経験しながら広がっていくであろうKitriの音楽に大いに期待してほしいと思う。

最後に本作「Primo」がリリースされる日本コロムビアの「BETTER DAYS」レーベルについて少しだけ。坂本龍一のソロデビュー作『千のナイフ』(1979年)をリリースしたことで知られるこのレーベルは、ギタリストの渡辺香津美、サキソフォン奏者の清水靖晃らを輩出。Kitriは同レーベルからデビューする約30年ぶりの新人だが、高度な音楽の素養と革新的な音楽性を備えたアーティストを幅広く音楽ファンに届けるというスタンスは、現在も確実に引き継がれている。

文 / 森朋之

ライブ情報

「Kitri Debut Live Tour 2019『キトリの音楽会#1』」

1月25日(金) 大阪・Soap opera classics -Umeda-
2月1日(金) 東京・JZ Brat SOUND OF TOKYO
2月2日(土) 福岡・ROOMS
2月3日(日) 熊本・tsukimi(ツキミ)

オフィシャルサイト
http://kitriofficial.com
https://columbia.jp/kitri

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