角松敏生デビュー35周年記念特集  vol. 1

Report

vol.1【ライブレポート】角松敏生デビュー35周年記念ライブ「TOSHIKI KADOMATSU 35th Anniversary Live~逢えて良かった~」 @横浜アリーナ

vol.1【ライブレポート】角松敏生デビュー35周年記念ライブ「TOSHIKI KADOMATSU 35th Anniversary Live~逢えて良かった~」 @横浜アリーナ

角松敏生のデビュー35周年記念ライブ「TOSHIKI KADOMATSU 35th Anniversary Live~逢えて良かった~」。会場は25周年、30周年と同じ横浜アリーナ。大規模改修工事が終了してのリニューアルオープンの7月2日土曜日に、12,000人の観客が集まり開催。1981年のデビューアルバム『SEA BREEZE』を含む16曲を“ACT1”、2014年の話題作『THE MOMENT』から約20分に及ぶプログレッシブポップ「The Moment of 4.6 Billion Years」、その他バラードやインストなどの代表曲で構成された“ACT2”の2部構成で行われた。

取材・文  / 井桁 学 撮影 / 菊地英二


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角松敏生のライブは長いのが有名。ライブを観たことがある人ならば3時間半は普通、4時間だと今日は長かったと思うぐらい。さらに周年ライブともなれば6時間超えは当然だ。この長丁場のライブこそが、5年に1度のファンお待ちかねのイベントなのだ。 

客電が落ちるとオープンニングの映像が流れる。その後ステージにバンドメンバーが入り、最後にスーツにハットをかぶった角松が登場し一礼すると…、PA前のセンターリフターに本物の角松が現れ、歌い始めるサプライズ。なんと、ステージ上はダミーだったのだ。あっけにとられるなか、「これからもずっと」から35周年ライブはスタートする。歌っている場所のセンターリフターはどんどん上へ上がり高い場所から観客に囲まれた中で歌いきった。その後、メインステージへ移動し、アコースティックギターのテリーズテリーをストロークしながら歌う「Startin’」へ。ようやくステージ正面を観ていると、ステージ上の人数に驚く。

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ドラム2人(玉田豊夢・山本真央樹)、パーカッション2人(田中倫明・大儀見元)、キーボード3人(小林信吾・友成好宏・森俊之)、ギター2人(梶原順・鈴木英俊)、ホーン4人(本田雅人 中川英二郎 西村浩二・横山圴)、コーラス6人(チアキ・凡子 ・片桐舞子・為岡そのみ・vahoE・鬼無宣寿)、そしてベース山内薫と角松本人合わせて21人。なかなか観ることのない豪華でスペシャルなバンドである。

「CINDERELLA」ではパーカションをプレイしながら歌う角松。3人のパーカッションが絡み合い、リズムの合間を縫うようなラテンフィールのグルーブで楽曲を構築。ギターだけでなく、今やパーカッションを積極的に叩きながら歌うのも角松敏生の近年のスタイル。初期の名曲「OFF SHORE」でも、ギターは梶原順と鈴木英俊にまかせ、パーカッションボーカルで絶妙かつ心地いい16ビートのシンコペーションを効かせていく。

7曲終わって最初のMC——。

マラソンのようなライブになると思います。5年前(30周年ライブ)よりお客様が多いというのはありがたい。その大きな要因は今年『SEA BREEZE 2016』のリリースがあったから

そう、1981年のデビューアルバム『SEA BREEZE』のアナログマルチテープをアーカイブし、豪華ミュージシャンの音源を生かしつつ、角松自身の歌を再録音したリテイク&リミックスアルバムが今年発売された『SEA BREEZE 2016』である。

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今夜この『SEA BREEZE』をA面1曲目からB面ラストまで曲順通りライブで再現します。それを演奏する上で必要不可欠なミュージシャンをご紹介します。ドラム、村上“ポンタ”秀一!

梶原のギターカッティングと村上“ポンタ”の16分のキメが決まる、さわやかで涼しげなサマーチューンの「Dancing Shower」がスタート。ドラムは重心の低いチューニングが印象的だった。以前掲載したミックスエンジニアの内沼映二氏が取材でも語っていたが、まさに1980年代のドラムチューニングの重心の低さのよう。内沼氏の発言の意味を再認識した瞬間だった。

“B面の1曲目に針を落とします”といって、1stシングルでもある「YOKOHAMA Twilight Time」へ。今剛がギターをダビングして左右のカッティングワークを聴かせたオリジナルプレイも、コードカッティングの鈴木とシングルノートカッティングの梶原でオリジナルを忠実にコピーしていた。ギターソロも鈴木が完全コピー。「Still I’m In Love With You」と「Wave」とバラードが続き、『SEA BREEZE』の世界感は見事に今夜蘇った。

続いて、玉田豊夢と山本真央樹を加え3世代のドラマーでの太く強いグルーブが生まれた85年のシングル「初恋」でACT1は終了。ここから約30分のインターミッションとなった…。

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ACT2は小林信吾・友成好宏・森俊之のキーボード3人との共演、Tripodのパフォーマンスから。Tripodは今年で7年目。パーカッションやコーラス6名も加えて「RAIN MAN」からスタート。ゴスペル調のアレンジで、渾身のコーラスワークを聴かせる。80年代からコーラスワークを研究・実践してきた角松らしい緻密で美しいハーモニーが楽しめた。

そして2014年に発売した『THE MOMENT』の中から20分を超える大作「The Moment of 4.6 Billion Years」へ。フュージョンスタイルのインストとポップな歌モノが混在した組曲。ここで、初めてエレキギターを持ちギターソロを聴かせる角松。メインのエメラルドグリーンのシグネイチャーモデルで弾くギターソロは、ミッドブーストしたサウンドが特徴的だった。

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再度、村上ポンタをステージに招き入れてのMC——。

ポンタさんといえば、僕の中ではバラードです。ポンタさんが叩くと一瞬で80年代の100本近くツアーをやっていたことを思い出します

と、「RAMP IN」と「DESIRE」、人気の2曲を披露。重心の低いキックと乾いているが艶のあるスネアが心地よい。そして、感情をコントロールするようなグルーブ、極上のバラードで酔いしれた。

 ポンタさんといえば、80年代後半に僕が出した歌のまったく入っていないギターをフィーチャーしたインストを忘れることは出来ません。今日はひさびさに、ややこしい難しい曲を若い2人のドラマーとバトっていただきます

と、インストゥルメンタルアルバム『SEA IS A LADY』収録のキメから始まる「OSHI-TAO-SHITAI」へ。この曲を聴くと ビルボードライブでの“Kadomatsu Plays The Guitar ”の演奏を思い出す。角松のギターを中心に、鈴木と梶原も参戦して3人のギターバトルへ。続いて、角松はパーカッションへ移動し、3人のパーカッションバトル。そして、3世代のドラマーバトルへ。角松の初期時代から支えた村上ポンタのプレイは、ジャズ的かつダイナミクス溢れていた。売れっ子ドラマーとして、近年の角松のライブを支え続け30周年のライブにも参加した玉田の安定したプレイ、若手ながら2014年末のツアーより参加している山本のテクニカルなプレイなど、このインストのアンサンブルがプレイヤー的には一番の見所だった。 

その後は、角松がプロデュースした作品をデュエットするコーナーで5人のシンガーと共演。そして、アルバム『THE MOMENT』に収録した祈念碑的な作品「Get Back to the Love」を披露。『THE MOMENT』ツアーでは全国各地のクワイアと共演してきた。そのときにお世話になったクワイアが総勢98名登場。ACT2でずっと座ってバラードやインストを聴いてきた観客もこの曲で総立ちになり、共に歌うことの楽しさと、ゴスペルクワイア(聖歌隊)のすごさを目の当たりにした、圧巻のパフォーマンスだった。

ACT2の後半戦は1980年代を代表するアッパーな楽曲が続いた。アーバンチューンの「After 5 Crash」ではギターソロも披露。初期の名曲「RUSH HOUR」ではレッドカラーのムーンのストラトタイプでカッティング。そして、4分打ちのキックとベースラインのイントロが印象的な代表曲「Tokyo Tower」。「Girl in the Box」では、カッティングするレッドカラーのムーンから、パーカッションへ、そしてリードではムーンのメインギターへ持ち替えてプレイ。パーカッションとギターをとっかえひっかえ演奏しているシーンが印象的だった。本編は「ハナノサクコロ」で終了した。

 アンコールではテリーズテリーのストロークから始まるサマーソングの定番曲「浜辺の歌」や、「ILLUMINANT」では、キティとダニエルが応援に駆けつけダンスを披露。そして、この曲をやらないと終われない2曲。娘の小学校の教科書にも載ったという「ILE AIYE~WAになっておどろう~」ではゲストアーティスト含め100名を超えるミュージシャン全員で歌い、「Take You To The Sky High」では、観客から飛ばされる恒例の紙飛行機が降り止まらない中、アンコールは終了。

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ダブルアンコールでは、娘が好きな曲と紹介した「Always Be With You」、4度目となる周年ライブの最終曲「No End Summer」ではセンターリフターに移動して高い場所からテリーズテリーをかき鳴らしながら最後の力を振り絞って歌った。

 40曲を披露した35周年記念ライブ。角松本人はこのライブをマラソンに例えていたが、歌とギター、MCに加えデュエットやパーカッションまで、休むことなく駆け抜けた6時間はトライアスロンのようである。近年の角松のライブを見るたびに思うのは、年を重ねるごとに歌に艶や響きが増し、ミュージシャンとしての表現力がブラッシュアップされていた。それは、35年のミュージシャンとしてのキャリアやスキル、そして生きざまを見せつけられたようでもあった。

ステージを去る前に「また5年後」と言った、観客への約束。40周年の景色はどうなっているのだろうか…。東京オリンピックが終わった翌年の2021年に期待と想像をかきたてながら、これからもライブを見続けていきたい…。

セットリスト

「TOSHIKI KADOMATSU 35th Anniversary Live〜逢えて良かった〜」
2016年7月2日@横浜アリーナ

ACT-1
01.これからもずっと
02.Instrumental
03.Startin’
04.Realize
05.CINDERELLA
06.OFF SHORE
07.LUCKY LADY FEEL SO GOOD
08.Dancing Shower
09.Elena
10.Summer Babe
11.Surf Break
12.YOKOHAMA Twilight Time
13.City Nights
14.Still I’m In Love With You
15.Wave
16.初恋

ACT-2
01.RAIN MAN
02.IZUMO
03.The Moment of 4.6 Billion Year
04.RAMP IN
05.DESIRE
06.OSHI-TAO-SHITAI
07.Duet #1(DADDY)
08.Duet #2(鏡の中の二人)
09.Odakyu CM Duet
10.Duet #3(Never Gonna Miss You)
11.Duet #4(Smile)
12.Get Back to the Love
13.After 5 Crash
14.RUSH HOUR
15.Tokyo Tower
16.Girl in the Box
17.ハナノサクコロ

ENCORE

01.君のためにできること
02.浜辺の歌
03.ILLUMINANT
04.ILE AIYE~WAになっておどろう~
05.Take You To The Sky High

MORE ENCORE

01.Always Be With You
02.No End Summer

<参加メンバー>
村上”PONTA”秀一・玉田豊夢・山本真央樹・ 山内 薫・ 梶原 順・鈴木英俊・ 小林信吾・友成好宏・森 俊之・田中倫明・大儀見 元・本田雅人・中川英二郎・ 西村浩二・横山 圴・チアキ・凡子・片桐舞子(MAY’S)・為岡そのみ・vahoE・鬼無宣寿・吉沢梨絵

 

リリース情報

角松敏生 SEA BREEZE 2016

角松敏生
『SEA BREEZE 2016』

【初回生産限定盤(2CD)】BVCL-707/8
¥3,700+税

<DISC1>
「SEA BREEZE」のヴォーカルリテイク&リミックス+ボーナストラック1曲収録

<DISC2>
「SEA BREEZE」のアナログ盤をレーザーターンテーブルでアーカイブ&リマスタリング音源

【通常盤(CD)】BVCL-709
¥2,800円+税

※初回生産限定盤DISC1のみのボーナストラックが無い商品となります。

<Disc1>
01. Dancing Shower
02. Elena
03. Summer Babe
04. Surf Break
05. YOKOHAMA Twilight Time
06. City Nights
07. Still I’m In Love With You
08. Wave
Bonus Track
09. Last Summer Station
※当時の音源をベースに、ヴォーカルを差し替え、リミックス。ボートラとしてオリジナルアルバムに未収録だった未発表楽曲を収録。

<DISC2>
01. Dancing Shower
02. Elena
03. Summer Babe
04. Surf Break
05. YOKOHAMA Twilight Time
06. City Nights
07. Still I’m In Love With You
08. Wave

※当時のアナログ盤をレーザーターンテーブルでアーカイブ、リマスターした『SEA BREEZE』
「SEA BREEZE 2016」アナログ盤も発売中!【BVJL-19-20(2枚組/重量盤) ¥5,000+税】

角松敏生

角松敏生(かどまつとしき)※本名同じ
1960年 東京都出身

1981年6月、シングル・アルバム同時リリースでデビュー。以後、彼の生み出す心地よいサウンドは多くの人々の共感を呼び、時代や世代を越えて支持されるシンガーとしての道を歩き始める。
1993年までコンスタントに新作をリリース、いずれの作品もチャートの上位を占める。同時に杏里、中山美穂、らのプロデュース作も上位に送り込んだ角松だったが、アーティスト活動を『凍結』。しかしこの“凍結期間”は、「プロデュース活動」を充実させた。また、1997年にNHK“みんなのうた”としてリリースされたAGHARTA(アガルタ :角松敏生が結成した謎の覆面バンド )のシングル「 ILE AIYE(イレアイエ)〜WAになっておどろう」は社会現象ともいえる反響を集め大ヒット。
『凍結』から約5年、角松敏生は遂に自身の活動を『解凍』することを宣言。1998年5月18日、活動を休止した同じ日本武道館のステージに再びその姿を現した。翌年リリースしたアルバム『TIME TUNNEL』はチャート初登場第3位を記録し、変わらぬ支持の大きさを実証してみせた。
その後『INCARNATIO』、再びスティーヴ・ガッドを起用した角松サウンドの集大成アルバム『Prayer』、大人の遊び心に溢れた『Summer 4 Rhythm』『Citylights Dandy』、30周年を記念したリメイク・ベストアルバム「REBIRTH 1」など、作品ごとに新しいコンセプトで挑むアルバムやライヴDVDなど、コンスタントにリリースを重ねている。  その妥協を許さないスタンスとクオリティで常に音楽シーンの最前線で活動をしている。
2016年デビュー35周年企画として『SEA BREEZE 2016』のリリースを皮切りに、7月2日には横浜アリーナでの35周年記念ライブ「TOSHIKI KADOMATSU 35th Anniversary Live 〜逢えて良かった〜」を大成功させた。

オフィシャルサイトhttp://www.toshiki-kadomatsu.jp/

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