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辻 凌志朗&鎌苅健太らが「『Like A』(ライカ)room[002]」であなたを未知なる“オシャレ”な街に連れて行く

辻 凌志朗&鎌苅健太らが「『Like A』(ライカ)room[002]」であなたを未知なる“オシャレ”な街に連れて行く

1月12日から、全労済ホール/スペース・ゼロにて、舞台「『Like A』room[002]」が上演中だ。本作は、昨年2月に上演された初演の続編にあたる。前作の“PERMANENT(ペルマネント)”というホテルを中心にした物語から、“High-Tide(ハイタイド)”という街で生きる人々を描く作品となっている。そんな舞台のゲネプロが初日前に行われた。

※辻 凌志朗の辻は一点しんにょう

取材・文 / 竹下力 撮影 / 鏡田伸幸

人間とは“謎=秘密”を解くことで生きる歓びを感じる生き物

人間とは“謎”である。永遠に理解はできない。この舞台を観たからこそ、そう断言してしまおう。自分自身のことは永遠にわからないから、だからこそ、他人はもっと“謎”な存在になる。人は誰だって秘密を心の奥底に隠し、それを隠匿しているからだ。誰かに言えない秘密を抱えてしまうから“人間”だと言い換えることもできるだろう。この舞台の登場人物の11人すべてがミステリアスな存在である。しかもどこか可愛くて、変ちくりんなイメージを有している。だからこそ、現実世界に生きる“人間そのもの”になっていた。つまり、人間とは“謎=秘密”を解くことで生きる歓びを感じる生き物だと教えてくれる舞台なのだ。

初演のレポートでも書いたが、舞台の佇まいや雰囲気はとにかくオシャレでハイセンス。しかも、ストーリーは初演から洗練されディープになり、展開はよりスピーディーでハラハラさせられる。おまけに、人間考察がしっかりされているから、それぞれのシーンに説得力があり、さらに台詞はリリカルで心に突き刺さり、それでいて陽気なヴァイブに満ち溢れている。これこそが『Like A』(ライカ)特有の空気なのだろう。辻 凌志朗はインタビューで今作を“レモン”と評したけれど、まさに明るく弾けるような作品だった。

“渋谷系”ならぬ“『Like A』(ライカ)系”

劇場の全労済ホール/スペース・ゼロに入って席について開演ベルが鳴るまでに聴こえてきた“会場BGM”からしてかっこいい、というか泣きそうになってしまった。どこかで聴いたことがあると思ったら、Shing02、Nujabesと続き、Substantial&L-universeの曲が流れて、ひょっとしたら故Nujabesの立ち上げたレーベル「HYDEOUT PRODUCTIONS」からドロップしたコンピレーションアルバム『FIRST COLLECTION』(2006年)からのチョイスかもしれない。誰がセレクトしたかはわからないが、ジャジーなヒップホップで、とてもコアだし、センスが良いし、何より世界観にあっている。しかも、ものすごい愛聴盤だったから懐かしくなる。だから少しセンチメンタルになって思い出す。渋谷の宇田川町にある近寄りがたいレコード屋のこと。そこに思い切って飛び込んでヒップホップの盤をディグしまくり、そのレコードを見つけて胸の高鳴りを感じた時のことを。ゲネプロのみの選曲だったかもしれないけれど、“渋谷系”ならぬ“『Like A』(ライカ)系”と評したくなる“特別な何か”が開演前から溢れているのだ。

この舞台で観客は、宇田川町のような伝説の街“High-Tide(ハイタイド)”に、勇気を持って飛び込むことになる。そして初演に引き続き、“ハイタイド”に建つ一軒の高級ホテル“PERMANENT(ペルマネント)”が物語の軸となる。そこには様々なホテルマンがいる。レストランのゴミ処理係のBB(ビービー、辻 凌志朗)。ホテルの執事であり、いつも謎の赤ん坊の“ムー”をベビーカーに入れて連れ歩いているバトラー(石賀和輝)や設備点検係のインスペクター(SHUN[Beat Buddy Boi])。

そこから、ドアマンのアッシャー(髙﨑俊吾)、レストランマネージャーのメートル・ドテール(岩 義人)、部屋のクリーニングをする清掃係のキーパー(中谷優心)と登場する。

さらに、宿泊客を客室まで案内するベル(橋本有一郎)、顧客の荷物を運ぶポーター(今井 稜)、財務・経理を取り仕切っているピアノマンのFC(エフシー、平牧 仁[シキドロップ])と前作からの続投組の、とにかく謎めいた人物たち9人がホテルを日々運営している。

そこに今作は、パン屋でホテルにパンを納品するマーマ(鎌苅健太)、“ハイタイド”の観光課で働くプチ(齋藤健心)という“ホテル外”の人間が入ってくることによって様々な事件が起こる仕掛けとなっている。

そのきっかけが、“ハイタイド”に1年に1度だけ催されるお祭りの日、“セレブレートデー”だった。街をあげての行事に張り切る“ペルマネント”はその準備のために1日だけ休館にする。それほど、“ハイタイド”で育った人間にとっては、特別な日なのだ。それでも、登場人物で唯一“ハイタイド”出身ではないアッシャーにとっては不思議な感覚になる。なぜ“ハイタイド”の人間にとって“セレブレートデー”が特別なのか……そうして過去を彷徨いながら、様々な人間模様と思惑が入り乱れ、“謎”が“謎”を呼びつつ物語が進んでいく。

初演よりもさらに純度が上がったミステリー

まずは、前作では明かされなかった人間関係が描かれている。BBとバトラーとインスペクターとキーパーは4人でよくつるんでいたこと。メートルとプチは同級生だった。そのトップに君臨しているのがマーマだ。彼ら7人は事あるごとにはしゃぎまわっているグループだった。そこで明かされるのは苦い思い出。そこから何故、彼らは“ペルマネント”と関わることになり、それぞれに役割が与えられることになるのか……。ワクワクする展開で“謎”が明かされていくのに、また“謎”が待っているという無限ループに入り込む。まさにミステリーそのもので、初演よりも純度が上がった分、答えらしきものが見つかった時の感動に酔いしれてしまう。

そして楽曲制作のAsu(BMI Inc.)による色とりどりの音楽は、初演よりもヴァラエティに飛んで楽しいの一言。ダンスだし、ロックンロールだし、ヒップホップだし、モダンで最高だ。それに合わせた當間里美の振付は、脳内に焼き尽き、キレがあって、ジャジーでさえある。私の思い出に結びつける必要はないけれど、この舞台は、観客それぞれの心に隠された好奇心を刺激してくれる。あるいはちょっとしたノスタルジーも感じる。やはり登場人物たちの“思い出”がお話の中心となっているせいか、自分自身の過去とまざまざと対峙することになるからだ。脚本の三浦 香と伊勢直弘のタッグは、また新しいマスター・ピースを書いてくれたようだ。そして、三浦 香の演出は、ダンス、歌、お芝居のパートを、ジャジー・ヒップホップのように、クールで、ディープで、それでいてソウルフルで、韻を踏んでいるようにリズミカルなテンポで見せる。

初演から造形を深めた役どころが垣間見える

役者陣の演技も見所だ。続投組は、初演から造形を深めた役どころが垣間見える。佇まいからして、掘りが深くなっていて、陰影があるから、歌やダンス、芝居がとても印象に残る。辻 凌志朗は自分の不器用さ加減にうんざりしながらも、実はちょっと熱血漢なところを見せれば、石賀和輝、SHUN(Beat Buddy Boi)、中谷優心と辻の4人組は、悪ガキ風なノリで結束力の高さを表現し、初演を経たからこそ紡ぎあげたリアルな“絆”を感じさせてくれた。アッシャーの髙﨑俊吾は、今作ではキーになっていて、慎重に大切に演じていた。橋本有一郎や今井 稜の初演からの飛躍は目覚ましく浮ついたところがなかった。それから平牧 仁の“なんかムカつく”感溢れる芝居は、思わず笑ってしまうほどだし、さりげなく本当にピアノを弾いているので、男の子からしたらいけすかないと思い込んでしまうかもしれない。

その中でも初出演組のプチの齋藤健心は、ピュアの塊で、「お母さんが心配しているぞ」と呼びかけたいぐらい母性をくすぐる役を演じ切っていた。マーマの鎌苅健太は、個人的に天才肌の人だと思っているけれど、オラオラ系のどこか子憎たらしいガキ大将を演じていて、「そういえば子供の頃、こんな嫌な奴いたな」と思わせる柔軟性があって説得力のある演技に感服してしまう。鎌苅はこの舞台の“過去の自分と向き合い秘められた新しい自分を発見する”というテーマを一心に体現していたと思う。初出演組の演技は、続投組に負けず劣らず、『Like A』(ライカ)の世界に没入していた。全員が、“ハイタイド”という街で“平等”に“自由”に生きている。

それから、11人とも歌が伸びやかで、“ハモリ”や“コーラス”が抜群の出来栄えである。ダンスもしっかりこなしていたから、見所満載で飽きることはない。芝居パートは、三浦 香は当て書きと言っていたけれど、確かに、それぞれの役どころの個性と役者自身の個性が分かち難く結びつき合っていたと思う。ダンス、歌、芝居、それらが上手くミックスされて、舞台に感動的なケミストリーを生んでいた。

また新しい自分に出会える

今作でも、何かが決定的に解決されるわけではなく、ひたすら自分について考えさせられる。おそらく、ちょっとした“モヤモヤ感”を抱いて帰路につくことになるだろう。でも、それが舞台の魅力であるし、答えが見つからない“謎”があるからこそ、その答えを必死で探しだそうと頑張って明日も生きることができるのだ。そしてその“モヤモヤ感”を解決できたときには、また新しい自分に出会えるはずだ。

公演は1月12日(土)~20日(日)まで全労済ホール/スペース・ゼロにて上演される。また、今作のDVDと劇中歌のCDの発売が決定した。残念ながら公演を観の逃した人には朗報だろう。さらに、発売日までに、CLIE TOWNにてDVDとCDを同時に予約すると、「千秋楽公演全景定点映像DISK(非売品)」がもれなくついてくるそうだ。詳細は公式ホームページをチェックしよう。

CLIE-TOWN
https://www.clie.asia/clie-town/

舞台『Like A』room[002]

2019年1月12日(土)~20日(日) 全労済ホール/スペース・ゼロ
脚本・演出:三浦 香
脚本:伊勢直弘
振付:當間里美
楽曲制作:Asu(BMI Inc.)
出演
BB(ビービー)役・辻 凌志朗
バトラー 役:石賀和輝
インスペクター 役:SHUN(Beat Buddy Boi)
アッシャー 役:髙﨑俊吾
メートル・ドテール 役:岩 義人
キーパー 役・中谷優心
ベル 役:橋本有一郎
ポーター 役:今井 稜
FC(エフシー) 役:平牧 仁(シキドロップ)
マーマ 役:鎌苅健太
プチ 役:齋藤健心

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@clie_seisaku)

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