山口洋のSeize the Day/今を生きる  vol. 51

Column

道 / Never Tire of the Road

道 / Never Tire of the Road

物心ついたときから、道の絵ばかり描いていたという山口。
ROCKの名曲にも“道”をテーマにしたものは多い。
どんなアップダウンにも嵐にも暗闇にも耐えて、その先へ。
混迷の時代を生き抜くために、いま聴きたい、届けたい、この曲。


子供の頃から道に焦がれていた。

5歳まで住んでいた、久留米市にあった家。その家の前の石段は、霊峰へと続いていて、虚無僧が玄関によく托鉢に来る。今振りかえってみると、浮き世離れしたその光景も、子供心には不思議に感じなかった。彼らはどこからやってくるのか。道が彼らを連れてくるのだ。

石段を降りるとすぐに幹線道路があって、そこには戦車もロバも3輪トラックもポン菓子屋も通った。記憶を創造したのでなければ、ほんとうの話。道が彼らを連れてくるのだ。この道の先にはいったい何があるのだろう? どこから道は始まっているのだろう? 夢想しながら、僕はいつも道の絵を描いていた。どこまでも続く、始まりも終わりもない道の絵。メビウスの輪のような。

昭和40年代のはじめ、高度成長期。風情のあるその家は新設される九州自動車道の下敷きになることが決まって、立ち退きを余儀なくされる。こうして古から未来へと続いていたはずの道は、新しい道によって淘汰される。今でもそのあたりを通ると、あの幻の道に胸が熱くなる。 

大人になると。眺めているより、そこを移動していたくなる。

アメリカ大陸なら。クルーズコントロールを使って、頭がおかしくなりそうなくらいにまっすぐな道を1日に1600キロ。Long Way For Nothing、あるいはRunning On Empty。無なのか、空なのか。ほとんど禅問答のような修行。悪くない。僕の場合、いつも一人で。

アイルランドの田舎道なら。コンパクトカーのシフトを小刻みにチェンジしながら、動物たちと並走する。この国の一日に四季があるように、LIFEにもそれがあることを知る。通り雨が降ったあと、太陽が射して道が輝く。その光景が好き。美しいけれど、いつだってその道が茨でできていることも。

LIFEもまた曲がりくねった一本の道。The Long And Winding Road。父親が死んだ日に無性に聞きたくなったのは、ベタだけれど、ポール・マッカートニーが歌う道の歌だった。訳もなく染みた。

流されることと、流れることは違う。流れるのは自分の意思。そう思って今も道を歩いている。こういう歌詞を書いたことがある。

“たどり着く場所なんてわからなくていい きっと道そのものが答えになるのさ”

On the Road。いつだって道を歩いているのが好きだ。

道について描かれた歌で、いちばん影響を受けたのは、僕の音楽の師匠でもあるアンディ・アーヴァインの代表曲、「Never Tire of the Road」。

若くしてバルカン半島やハンガリーやルーマニアを放浪し、革新的なグループ、プランクシティにおいて、旅路で吸収してきたものを結実させ、アイリッシュ・ミュージックを常に進化させ、牽引してきた巨人。

人生のほとんどを旅に費やし、70の齢を超えても、今なお道の上の人。この歌はアンディのヒーロー、ウディ・ガスリーへの憧憬からはじまり、彼の人生そのものにも重ね合わせて、人生の車窓からの風景が描かれる。誇り高きトラベリン・マンが虐げられた人たちにシンパシーを寄せるロードムービーでもある。道を描いた大傑作。

「Never Tire of the Road」。誰に聞いても、どう頭をひねっても、翻訳できない素晴らしさ。だから、彼の言葉を借りる。

「ウディの影響によって、世界が大きく開け放たれ、どこまでも広い世界に誘われて旅を続けてきた。そこで経験したことや、出会った人たちに想いを馳せながら、すべてを受け入れ、そして抗いながら生き続けることが私の信条。」

嗚呼、僕も彼のように生きたい。

この連載で何度も拙訳を載せてきたけれど、彼の詩は素晴らしすぎて、翻訳不能。僕の手には余る。聞いてもらって、それぞれが想いを馳せてくれればと思う。

気に入った方は彼のサイトでアルバムも手にすることができる。

『Rain on the Roof』

『Rude Awakening』

感謝を込めて、今を生きる。

NEVER TIRE OF THE ROAD / Andy Irvine

I was just a small time country boy
When I left that dusty town
Route 66 to the westward
And I hopped an old freight down
California here I come
By the side door Pullman and the sunburnt thumb
And they called us Okies lowdown bums
And the police on us frowned

Never tire of the road
Never tire of the rolling wheel
Never tire of the ways of the world
Way out yonder’s a-calling me
And the dark road leads me onwards
And the highway that’s my code
And the lonesome voice that I heard in my head said
Never tire of the road

California to the New York Island
Me and my guitar
And we played in many’s a hobo jungle
Many’s a skid row bar
Standing out in the wind and the rain
That lonesome whistle is a sweet refrain
When you’re waiting for some old freight train
That carries an empty car

Shipped on board of a liberty ship
To sail the ocean blue
We were carrying guns, TNT, D-day soldiers too
All of the men on board agreed
With Cisco, Jimmy Longhi and me
And our song rang out across the sea
You Fascists bound to lose

All of you Fascists bound to lose
Yes all of you Fascists bound to lose
We say all of you Fascists bound to lose
You’re bound to lose you Fascists bound to lose

Don’t let them ever fool you
Or take you by surprise
The dirty smell of the politician
And the man with the greed in his eyes
One Big Union that’s our plan
And the IWW’s your only man
The flames of discontent we’ll fan
For the cause that never dies

Never tire of the road
Never tire of the rolling wheel
Never tire of the ways of the world
Way out yonder’s a-calling me
And the dark road leads me onwards
And the highway that’s my code
And the lonesome voice that I heard in my head said
Never tire of the road

アンディ・アーヴァイン / Andy Irvine:1942年、英国ロンドン北西部で生まれる。アイルランド人の母親とスコットランド人の父親を持ち、母親がミュージカル女優だったことも手伝って、幼少の頃からテレビや舞台で子役として活躍。13歳でクラシック・ギターを学び、ウディ・ガスリーに出会ってからはフォーク・ミュージックに心酔する。1962年、アイルランド・ダブリンに移住。俳優で生計を立てながら音楽活動をスタートさせる。スウィーニーズ・メン、プランクシティ、パトリック・ストリート、Mozai、LAPD、Usher’s Island等数々の伝説的なユニットで活動。ハーモニカ、マンドリン、マンドラ、ハーディ・ガーディ等民族楽器を駆使し、移民労働者や傷ついた女性など弱者の側から貧困や差別、社会的正義を歌う一方で、ユーモア・ソング、バラード……と作風は幅広く、「アイルランドの巨人」として50年以上にわたり世界のフォーク・ミュージックに大きな影響を与えてきた。ギリシャの伝統的な弦楽器、ブズーキを新たなチューニングでアイルランドの楽器に変容させたことでも有名。ドーナル・ラニーとのユニットで2017年には来日公演を行ったのをはじめ、イギリス、ヨーロッパ、南北アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドでツアーを行っている。

オフィシャルサイト

アンディ・アーヴァイン&ルーク・プラム
『プレシャス・ヒーローズ / Precious Heroes』

オーストラリアのマンドリンの巨匠、ルーク・プラムとともにレコーディングした最新作。アイルランドの伝統的なバラードからオーストラリアの古典的なバラード、キルケニーの炭鉱労働者の権利のために闘ったヒーローの歌等を収録。2018年2月リリース。


著者プロフィール:山口洋(HEATWAVE)

1963年福岡県生まれ。1979年にHEATWAVEを結成。1990年、アルバム『柱』でメジャー・デビュー。1995年発表のアルバム『1995』には阪神・淡路大震災後に作られた「満月の夕」が収録され、多くのミュージシャン、幅広い世代に現在も歌い継がれている。アン・サリーによるカヴァー「満月の夕(2018ver.)」は2019年2月公開の映画『あの日のオルガン』(監督:平松恵美子、主演:戸田恵梨香、大原櫻子)に起用されることが決まった。東日本大震災後は、仲井戸“CHABO”麗市、矢井田瞳らと“MY LIFE IS MY MESSAGE”として、福島県相馬市の人たちと希望のヴァイブレーションを起こすイベントを続けている。2018年4月から池畑潤二(Drums)、細海魚(Keyboard)と新生HEATWAVEとしての活動を開始。2018年12月にはHEATWAVE TOUR 2018“Heavenly”を行った。3月25日から名古屋を皮切りにソロ・ツアー“山口洋(HEATWAVE)the boy 40 tour”をスタートさせる。4月6日・7日には東京・国立で本連載の番外編ライヴ・イベント第2弾を開催。トークとライヴの2部構成で、連載で書き下ろしたアーティストの楽曲紹介をはじめ、HEATWAVE結成40年秘話や、カヴァー曲、新曲などを各日異なるテーマで披露する。

オフィシャルサイト

山口洋(HEATWAVE)the boy 40 tour

2019年3月25日(月)名古屋TOKUZO
2019年3月26日(火)京都coffee house拾得(Jittoku)
2019年3月28日(木)高松 Music & Live RUFFHOUSE
2019年3月30日(土)広島 音楽喫茶ヲルガン座
2019年4月1日(月)大坂 南堀江 knave(ネイブ)
2019年4月3日(水)静岡 LIVEHOUSE UHU(ウーフー)
詳細はこちら

「Seize the Day/今を生きる」番外編トーク&ライヴ

“Long Way For Freedom”
2019年4月6日(土)国立 地球屋
“Long Way For 40th”
2019年4月7日(日)国立 地球屋
詳細はこちら

HEATWAVE SESSIONS 2019

2019年4月18日(木)横浜THUMBS UP(サムズアップ)
2019年4月20日(土)京都 磔磔(takutaku)*磔磔45周年記念 HEATWAVE SESSIONS 2019 in 磔磔
詳細はこちら

vol.50
vol.51
vol.52