Interview

柴咲コウが、星野源、井上陽水、阿部真央らをカバーしたアルバム『続こううたう』

柴咲コウが、星野源、井上陽水、阿部真央らをカバーしたアルバム『続こううたう』

柴咲コウが、星野源、井上陽水、阿部真央らをカバーしたアルバム『続こううたう』

昨年6月にリリースされたキャリア初のカバー・アルバム『こううたう』からちょうど1年。第2弾となるカバー・アルバム『続こううたう』のアーティスト写真を見てほしい。快晴の水辺で振り向き、やわらかな笑顔を見せる柴咲コウ。その写真を見ながら彼女は「これが私の成熟の頂点かもしれない」とつぶやいていた。肩まであった髪は、だんだんと短く切られ、ボーイッシュなショートカットとなり、目の前の彼女は少し日焼けをし、無邪気に笑っている。大人の女性として成熟した彼女は、今、どこか少年のようにも見えるのだが。

取材・文 / 永堀アツオ

世に出ている曲に対する私の思いやりと経験、その曲に対する愛が込められた

どうしてカバー・アルバムの第2弾を制作しようと思い立ちましたか?

9月から大河ドラマ『おんな城主 直虎』(2017年1月〜NHKにて放送)の撮影が始まるので、何か音楽の痕跡をひとつ残しておかなきゃなということで(笑)。新しいオリジナル・アルバムを作るには準備時間がなかったし、まだ歌いたい歌があるなって思ったのが正直なところですね。

昨年6月に第1弾カバー・アルバム『こううたう』をリリースし、9月からは全国ツアーも開催しました。カバー曲を歌う、表現するということに何か手ごたえを感じてました?

そもそもカバー・アルバムを出されているアーティストさんはいっぱいいるので、そこに自分らしさが乗っからなければ……人の歌を歌うというところに自分の魂が乗らなければ、私がやる意味はないなと懸念していたんです。だから、ずっとやらなかったんですけど、『こううたう』では、世に出ている曲に対する私の思いやりと経験、その曲に対する愛がきちっと込められたなと思っていて。あくまでも自己評価になっちゃいますけど。

前作では小さい頃に夢中で観ていたというアニメ『らんま1/2』の主題歌「虹と太陽の丘」や、小学校の文集に「槇原敬之が好き」と書くほどのファンだった「素直」、カラオケでよく歌っている中山美穂「ただ泣きたくなるの」、工藤静香「めちゃくちゃに泣いてしまいたい」などが選曲されていました。

そうですね。歌のうまい方がヒット曲をうまく歌うカバー・アルバムにも魅力はあるけれど、私はもう少し、自分の生まれ育った環境と合わさった形で、聴いてくださる方に伝わって共感してもらえたらいいなと思っていて。それがきっと出せたし、私自身としても非常に気に入った一枚になったので、前作から何年も間を空けずに引き続きやりたいなと思い、2作目を出そうという気持ちになりました。

その時々の感情を大切に、シンプルに紡ぎつつ、歌い継いでいきたい

第2弾を制作するにあたっては、どんな一枚にしたいと思ってました?

やっぱり『続こううたう』というタイトルにしたように、“続き”っていう感覚で選曲できたかなって思いますね。前作からの1年間の女性としての成長や重みが、選曲によって打ち出せたし。わりと大人の一枚になってると思います。

前作との違いを象徴する曲を挙げるとすると?

絶対に前回だったら歌わなかったのは、「黄昏のビギン」かなと思います。原曲を歌っているちあきなおみさんは歌の女王で、これこそ歌で勝負みたいな曲ですよね。情緒という点では私とは比べものにならないくらい表現力の高い方なので足元にも及ばないなって思ったんですけど、自分なりの解釈でゆったりとした雰囲気は出せるかなと思って。ゆっくりしたテンポで上質なサウンドを構成しつつ、その中でも新しさを出せたらいいなと思っていたので、現代においてこの曲を歌う意義みたいなものを入れるという意味でも、若手の方にアレンジしてもらってます。歌詞に関しては、こんなに叙情的で大人っぽいのに、“あなたとの初めてのキス”の歌だっていう。情景描写だけで、ここまでのドキドキ感や腹の底で思ってる心情を想像させてくれる。やはり名曲だなと思いますね。

同じく永 六輔×中村八大の名コンビによる名曲「上を向いて歩こう」も収録されています。

私にはとてつもなくハードルが高すぎる歌でしたね。原曲の坂本九さんの声がとても感情豊かで。本当に、なんというか、笑顔のまま泣きながら歌ってるというか……。戦争を語るおじいさん、おばさんのような雰囲気があって、その奥にある悲しみは計り知れず、でも、語らないと廃れていってしまうし、忘れられてしまうっていう思いを歌ってるような印象を受けて。自分の悲しみやひとりぼっちであることを本当は言いたくないんだけど、笑顔で「まぁ、実際、そうなんだよね」って言いながら、最後には涙が出てきてしまうっていう。これは、ライブで育てていきたいなと思ってます。その時々の感情を大切に、シンプルに紡ぎつつ、歌い継いでいきたいですね。

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ご自身の思い出と結び付いてる曲は?

たくさんあるんですけど、例えば、井上陽水さんの「少年時代」を聴けば、小学生の頃、夏休みに4週間くらいホームステイしていた静岡のおばさんの家で過ごした時代を思い起こすし、中学生のときに聴いていた田村直美さんの「あの日の二人はもういない」はシングル「ゆずれない願い」のカップリングなんですけど、タイトル曲より気に入っちゃって。私がデビュー・シングルのカップリングで歌詞を書いたっていうのは、ここからきてるんじゃないかと思う。高橋真梨子さんの「遥かな人へ」も中1のとき。<人を愛するため人は生まれた>という歌詞は、自分が言いたいことのすべてであるかもしれないから、これは絶対に歌いたいと思って。小学校高学年から中学生にかけては、一番CDをよく聴いてた時期ですね。あと……これは、言うのが恥ずかしいんですけど、GAOさんは小学校5年生のときにCMで見て、衝撃を受けたんですよ。「なんだこの人は! 私の理想の人だ!!」と思って。恋愛ですよね、完全に(笑)。小5の私は恋をしたんです。それからずっと大ファンで、アルバムも買って完コピするくらい聴きまくってました。

(笑)どうして前作では歌わなかったんですか?

頭をよぎったんですけど、なんか違ったんですよね。前回は、恋愛というよりは愛情に近い、きちんと育って満たされた成熟した女性による愛情深い一枚になったんですけど、今回は私の中にある二面性のもう一面を意識してた部分もあって。去年の暮れに髪を切ってからどんどん短くなってるんですけど、今回はボーイッシュやマニッシュなものを望んでたんだと思う。あと、今回、“雨”と“銀色”というキーワードもあって。純粋で健康的な、男女ではない、湿潤というか憂いを帯びている感じはポイントになってますね。

「雨音はショパンの調べ」には両方入ってますね。

今回、なぜか多いんですよね。どうして“雨”と“銀色”に惹かれてるのかはわからないけど、ちょっと隠微なというか、公表できない自分の思惑や関係性を象徴するのにうってつけのシチュエーションではあるなと思う。あとは、前回は朗らかで温かくて晴れてる雰囲気だったから、そのギャップを自分でも見たいっていうのがあったのかもしれない。ほかの曲にも“雨”や“銀色”があるので探してみてください。

弱さや孤独感も普通に表現できるようになった。今、ゼロっていう感じがする

最後にZARDの「永遠」をカバーしています。たしかにこの曲も雨が降ってますね。

本当に念願が叶って歌えることになった珠玉の名曲ですね。嬉しすぎますね。この曲がリリースされた15歳当時に聴いていたというよりは、翌年にデビューして以降、大人になるにつれてよく聴くようになって、20代後半から最近までカラオケで熱唱してる曲で(笑)。もちろんカラオケで歌っているだけでも満足なんですが、それだけ好きだっていう気持ちを持って世に出せたらいいなと思ったし、今生きている人たちが生きた歌声で繋げていく部分も必要だと思うんですね。私もこの曲のファンのひとりとして、あらたな魂を乗せることで、曲に対しての愛が膨らみ続けていって伝わればいいなって思ってます。

今、いろいろとお話をお伺いするなかで感じたことなんですが、柴咲さんは今、「大人の女性として成熟した」時期ですよね。そのタイミングで、マニッシュでボーイッシュな、さらに影の部分を表出させた一枚を作ったというのはどういう意味があると思います?

なんでしょうね。このあとに自分に何をもたらすのかはまだわからないけれども、原点回帰に近いのかもしれない。『こううたう』と『続こううたう』の2枚で一巡して、「ここまでちゃんと成長しましたよ。35歳の大人の女性だよ!!」みたいな(笑)。いろいろ頑張ってきたけど、もう肩肘は張ってなくて、自分の弱さや孤独感も普通に表現できるようになった。今、ゼロっていう感じがするのかな。月の満ち欠けでいうと朔、真っ暗な新月で、これからすべてが新しくなっていくっていうか。月の見え方や美しさは周りの雲でも決まるから、雲のあり方によって全然違う人生になるなって思う。とりあえず今、1タームを生きて、次はどうなることやら、みたいな感じですね。

リリース情報

2016年7月20日発売

【初回限定盤】

【初回限定盤】

【通常盤】

【通常盤】

ALBUM 『続こううたう』

【初回限定盤(CD+ポエトリー&ビジュアルブック)】
VIZL-1002 ¥3,500+税
【通常盤(CD)】
VICL-64598 ¥3,000+税

【収録曲】
※()内オリジナル・アーティスト名
01.そして僕は途方に暮れる(大沢誉志幸)
02.黄昏のビギン(ちあきなおみ)
03.少年時代(井上陽水)
04.サヨナラ(GAO)
05.白いカイト(MY LITTLE LOVER)
06.雨音はショパンの調べ(小林麻美)
07.あの日の二人はもういない(田村直美)
08.遥かな人へ(髙橋真梨子)
09.千の夜と一つの朝(ELLIS)
10.上を向いて歩こう(坂本九)
11.夢の外へ(星野源)
12.いつの日も(阿部真央)
13.テルーの唄(手嶌葵)
14.3月9日(レミオロメン)
15.永遠(ZARD)

柴咲コウ『続こううたう』特設サイト >http://www.jvcmusic.co.jp/kouutau/


プロフィール

柴咲コウ


1981年8月5日生まれ。映画『バトル・ロワイアル』(00 / 深作欣二 監督)、『GO』(01 / 行定勲 監督)などに出演以降、映画、テレビなど数々の話題作に女優として出演。2017年1月より放送のNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』では主演を務める。ミュージシャンとしては、2002年にシングル「Trust my feelings」でデビュー。2003年に自身出演の映画『黄泉がえり』主題歌「月のしずく」をRUI名義で発表し、ミリオンセールスを果たす。福山雅治、東京スカパラダイスオーケストラ、グループ魂をはじめ、ジュノ・リアクターなどコラボレーションも多数行っており、2016年には映画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN Ⅲ 暁の蜂起』主題歌「永遠のAstraea」を服部隆之と共に手がけている。
柴咲コウ Official Web Site
http://www.koshibasaki.com
http://www.jvcmusic.co.jp/-/Artist/A024829.html