Interview

料理のスタイルは選ばない、類まれな才能と強烈な刺激が交錯する吉澤嘉代子の初のコラボレーション・ミニアルバム

料理のスタイルは選ばない、類まれな才能と強烈な刺激が交錯する吉澤嘉代子の初のコラボレーション・ミニアルバム

サンボマスターを始め、私立恵比寿中学、岡崎体育など、美味しすぎる魅力的なコラボ作品たち!

 しっかりと育った野菜は、料理のスタイルを選ばない。和洋中やエスニックはもちろん、斬新なオリジナル料理にも溶け込んで、なおかつ上手に自己主張。そういう絶妙な混じり具合と目立ち具合のバランスのうえに成り立っているのが『吉澤嘉代子とうつくしい人たち』。それは誤解を恐れずに言うなら、吉澤嘉代子というアーティストに正面以外から光を当てた結果、本領だけでなく隠れたパワーまでもが浮き彫りになった、ということ。類い希な才能が、さまざまな強烈な刺激をものともせずに受け入れ、いつもとはまた違うスゴいところに着地してみせた初めてのコラボレーション作品である。

取材・文 / 前原雅子 撮影 / 森崎純子

吉澤嘉代子

以前から、こういう作品を作りたいと思っていたのですか。

いえ、最初は夏のアルバムを想定して、夏をテーマに作り溜めていた曲を入れて、みたいに考えていて。それとは別に次か、その次かに、中学生の頃からずっと好きなサンボマスターさんとアレンジとかでご一緒できたらなぁと思ってて。ご相談したら『ものがたりは今日はじまるの』っていう曲をいただいて、それがまたとても素敵な曲だったので、この曲をメインにアルバムができたらと思ったんですね。そこからいろんな方とコラボレーションしてみよう、楽曲とか歌唱とか曲にダイレクトに関わる形で参加していただこうっていうことで、こういう企画になりました。

コラボレーションされた方は、すでに面識のあった方々なんですか。

サンボマスターさん以外は面識がありました。仲よしだったり、楽曲提供させていただいたりっていうご縁のある方々で。

『ものがたりは今日はじまるの』はキラキラ感のある、キャッチーな曲ですね。

キラキラした感じは、あとから入れたんですけど。基本のアレンジはデモの段階でほぼ完成されてました。でもこの曲はコーラスが本当に大変で。コーラスはあまり得意じゃないんで、1日がかりで録りました(苦笑)。とにかく先の見えない緻密な作業なんで、最後に録ったものを重ねたときに「おおおーっ!」って感動したという。

またこの歌詞はサンボマスターの山口隆さんが書かれたものですが、乙女心がとてもリアルに描かれていますね。

そうなんです。子どもの頃に自分が思っていたようなことが書かれていて、自分が書いたと思うくらいで。もちろんこんな素敵な曲は書けないんですけど。……音楽を仕事にしようって思ったきっかけがサンボマスターに会いたいから、サンボマスターとお話ししたいからっていうことで。それがきっかけになって、ここまで来れたので。サンボマスターに連れて来てもらったような気持ちだったんですけど、そのサンボマスターの歌詞で“私を連れていってください”っていうフレーズが飛び出してきたので、とても不思議な気持ちでした。

吉澤嘉代子

私立恵比寿中学がコーラスに参加した『ねえ中学生』は、そもそも吉澤さんが『面皰(にきび)』という曲を提供したことがきっかけですか。

『面皰』は中学生をモチーフに考えて作ったんですけど。そのあとも中学生っていうモチーフが自分のなかで流行って、それでできた曲なんですね。私は中学校にほとんど行ってないので、中学生っていうのがあんまりよくわからなくて、憧れと恐れがない交ぜみたいな感覚があるんですけど。『ねえ中学生』っていう曲は、そういう中学生に対する妄想と大人になった自分が交錯してグチャグチャになってくみたいな物語になっていて。でもまさかエビ中にコーラスで参加していただけるなんて考えてなかったんですけど、想像以上に素敵なコーラスになって。すごくお気に入りの1曲になりました。

少女マンガに出てきそうな設定だなぁと。

そういうキュンキュンする感じですよね。私のなかでは『耳をすませば』をモチーフにしたというか、そういう中学生だったらっていう憧れがあって。

岡崎体育さんとの『ゆりかご』も意外でした。ラップには挑戦してみたかった?

前に一度、大サビみたいな部分にラップを入れたことがあるんですけど。基本的には畑が違うので、これも全然うまくできなかった(苦笑)。体育さんが歌詞を作ってるときから母音と子音の関係性をすごい大事にされてて、いろいろ教えてくれたんですけど。レコーディングのときも「はい、もう一回!」って、塾の先生みたいにスパルタで教えてくださって。もともと早口言葉が苦手なんで、ホントに身の丈に合ってなかったです(笑)。でもすごい楽しかったし、新しかったですね。

この曲はちょっとアンビエントなサウンドっていうこともあって、聴き方によってはエロティックとも言えるような。

ホントですか? ……。恥ずかしくなってきた……(笑)。

伊澤一葉さんと作った『アボカド』もいいですね。男性が「女心はわからない」って言う心理を端的に歌っていると思いました。

そうですよね、ひねくれたというか。決めつけないでほしい、と言いつつ。

でも今は決めつけていて、みたいな。「どっちなんだよ!」って言われそうな(笑)。

そうそう(笑)。伊澤さんはツアーにもバンマスで参加していただいてる、すごく信頼してる方なんですけど。その流れで曲を作ってみようってことになって。だけど伊澤さんの声って、ちょっとザラついてて、すごいセクシーで。ホントにかっこいいんですよね。サビだけコーラスをお願いしたんですけど、伊澤さんの声があると、主人公が好きな男の人が歌ってるみたいで。なぁ~んか伊沢さんの声、王子様みたいって思って。王子様の声ってどんな声かわかんないですけど(笑)。完全にかっこいい2枚目タイプの声だったので。こぉれはいい!と思って。

吉澤嘉代子

吉澤嘉代子

今回の楽曲でもっとも斬新なのは、プーチンズが作詞作曲をしている『じゃじゃじゃ』かもしれないですね。

ホントに私はただのプーチンズ・ファンなんですけど。この曲はマンガのヒーローを恋人に持つ女の子の歌で、いろいろギリギリ「アウト」なんじゃないかっていう歌詞が登場して(笑)。

この曲はボーカルも、いつもと違う感じで。

私のボーカルのクセを全部とって、ボーカロイドみたいに歌ってほしいって言われたんです。でも自分のクセがどこにあるのか、自分ではわからないので。普通に歌うと「もう1回、も1回、も1回」ってなるんで。もう「うわ~~~~」ってなりそうになって。どこに向かって歌っていいのかわかんなくなって。だから歌詞の“がんばれ わたし! わからないけど 負けるな わたし! 知らないけれど”ってフレーズが妙に染みて(笑)。すごい気持ちを込めて歌えたんじゃないかと。

『綺麗』と『東京絶景』はすでにリリースされている曲ですが。この2曲は「こういう形で」とアイデアを温めいたんですか。

『東京絶景』は、原曲で曽我部(恵一)さんにギターを弾いてもらっていて、そのときにコーラスもやってもらっていたんですね。そのときは最終的に私の歌だけのものにしたんですけど、曽我部さんの声もすごく『東京絶景』にピッタリだったので、どこかで出せたらなぁと思ってて。今回、ちょうどいいんじゃないかと思って入れました。

『綺麗』のリミックスは?

これまで、あまりリミックスには縁がなかったんですけど。今回はコラボレーションっていうことだったので、今までやってないことをやってみようと思って。曲を共作した小島(英也)くんに託して、小島くんの思い描くようなサウンドにしてもらったら面白いかなと思って。でも今回やってみてリミックスの楽しさに目覚めてしまい。また何かやってみたいなぁと思いました。

それにしても今回は、さまざまなコラボレーションがありますね。楽曲を一緒に作ったり、楽曲を作っていただいてボーカリストとして関わったり、完全に委ねるリミックスのような形があったり。

歌唱に関しては、いろいろ思うところがありました。例えばこれまでコーラスは自分でやることが多くて、お願いすることがあっても女性のコーラスだったりしたんですけど。今回は男性の声が入ることも、自分の声と誰かの声が混ざり合うみたいなことも多かったので。相性も含めて、声に対しての興味がすごく増したというか。

『ねえ中学生』もエビ中の声が入ってくると、その瞬間、吉澤さんの声がすごくお姉さんっぽく聴こえてきて。妄想の中学生と大人の女性が錯綜するような感じがしました。

あぁ。それはあるかもしれませんね。

『ゆりかご』も岡崎さんの声があるから、エロティックな感じがするのかもしれないなと。

たしかにそうですね。特に体育さんはデュエットというか二人で歌い分けてて、そういうのは初めてで。お互いに「こう歌ってほしい」って言いながら、自分が出過ぎてもいけないし、でも私の声のほうが細いんで、相手に負かされてもだし。そのバランスを意識しながら歌ってました。『ものがたりは今日はじまるの』にしてもデモ音源の山口さんの声が最高で。だからそれに引っ張られて歌ってたところがあったり。なんか今回は歌唱の面で、すごく再認識したところがありましたね。自分の声をちょっとだけ客観的に感じとれたかなぁと思いました。

自分で作っていない曲は旋律や譜割の感じが違うでしょうし。

そうなんです。こうなるか……、みたいなのがあったりして。そこに自分らしさを出そうと思うと、もう歌唱だけになるので。

吉澤嘉代子

ところでタイトルなんですが。

今まで4文字の漢字でタイトルを作ってきたので、まずそれを崩すかどうかだったんですけど。今回は変わり種の作品なので、一緒にやってくださるみなさんへのリスペクトもタイトルで伝わるようなものにしたいと思って。みなさん、どんな人たちだろうっていろいろ考えて。結局、私のなかの最高の言葉、「うつくしい人たち」になりました。

いろんな意味を感じさせられる言葉ですね。

『東京絶景』の歌詞に“東京はうつくしい”ってフレーズが出てくるんですけど。それも「うつくしい」っていう平仮名にしていて。漢字は意味を限定するよさもあるけれど、平仮名はそれが全部フラットになって、意味が広くなると思って。今回はみなさんに「うつくしい」っていうひと言では語れない素晴らしさがあると思うので、平仮名にしました。でもホントに大好きなみなさんと、ご一緒できたので。デビューしてまだ2年ですけど、意外と友達ができてたんだなぁと思いました。友達と言っていいのか、わからないですけど(笑)。

 

リリース情報

2016年8月3日発売
『吉澤嘉代子とうつくしい人たち』

【初回限定盤(CD+DVD)】

吉澤嘉代子とうつくしい人たち

CRCP-40470 ¥2,315+税

【通常盤(CD)】

吉澤嘉代子とうつくしい人たち

CRCP-40471 ¥1,852+税

【CD】

01 ものがたりは今日はじまるの feat.サンボマスター
02 ねえ中学生 feat.私立恵比寿中学
03 ゆりかご feat.岡崎体育
04 アボカド feat.伊澤一葉
05 じゃじゃじゃ feat.ザ・プーチンズ
06 綺麗 remixed by 小島英也(ORESAMA)
07 東京絶景 feat.曽我部恵一

【DVD】

「ものがたりは今日はじまるの」MUSIC VIDEO
「手品」ライブ映像、絶景ツアー “夢をみているのよ” 2016.4.30東京国際フォーラムにて収録
「movie」ライブ映像、絶景ツアー “夢をみているのよ” 2016.4.30東京国際フォーラムにて収録

プロフィール

吉澤 嘉代子

1990年6月4日、埼玉県川口市生まれ。鋳物工場街育ち。 父の影響で井上陽水を聴いて育ち、16歳から作詞作曲を始める。 ヤマハ主催”The 4th Music Revolution” JAPAN FINALにてグランプリとオーディエンス賞をダブル受賞。2016年、2nd アルバム『東京絶景』をリリース。自身初となるホールツアーを全国7箇所にて実施。国際フォーラムCでの公演を成功させた。2016年夏、「ROCK IN JAPAN .FES 2016」、 「JOIN ALIVE」など大型フェスヘ出演決定。私立恵比寿中学、南波志帆らへの楽曲提供も行う。

吉澤 嘉代子 オフィシャルサイト

 

ライブ情報

「吉澤嘉代子とうつくしい人たちツアー」

10/14(金) 名古屋ボトムライン
10/16(日) 東京キネマ倶楽部
10/22(土) 神戸クラブ月世界