Interview

アニメ『宇宙戦艦ティラミス』“一見シリアスなのにアホ丸出し”の魅力を語る。「陰毛の嫁が大好きだった」「実は哲学的」─特別対談:石川界人×みきとP

アニメ『宇宙戦艦ティラミス』“一見シリアスなのにアホ丸出し”の魅力を語る。「陰毛の嫁が大好きだった」「実は哲学的」─特別対談:石川界人×みきとP

人類が宇宙に生活圏を拡大し、地球連邦とメトゥスの民を称する宇宙移民組織が一進一退の宇宙大戦を繰り広げていた――という一見、シリアスなSF設定とシリアスな作画がありながら、地球連邦の宇宙戦艦ティラミスの引きこもりエースパイロット、スバル・イチノセを主人公に、スバルと敵対するメトゥスの民のだいぶおかしな兄イスズ・イチノセ達とのぶっ飛んだ日常を描いたショートギャグアニメ『宇宙戦艦ティラミス』。2018年春より2シーズンに渡って繰り広げられてきたスバルと愉快な仲間達とのアホ丸出しの物語は、アニメファンに大きな衝撃を与えた。

そんな話題作の第2期『宇宙戦艦ティラミスⅡ(ツヴァイ)』は、1期に続き主人公スバル・イチノセとして声優・石川界人がオープニング主題歌「Gravity Heart」を歌唱し、現在、シングルが好評発売中だ。石川が「ギャグアニメなのにカッコ良すぎてビックリした」と振り返る「Gravity Heart」は、ヒット曲「ロキ」などでも知られるボカロP、みきとPが作詞(“てにをは”との共作)・作曲・編曲を手がけている。そんな二人の初対談が実現! 同じ作品に関わった声優とソングクリエイター、二人が感じた『宇宙戦艦ティラミス』の魅力と楽曲制作への想いを語ってもらった。

取材・文 / 阿部美香 撮影 / 小賀康子


『ティラミス』は真面目なところが全部ネタふりに見えるんです(みきとP)

石川さんは1期から主人公スバル・イチノセを熱演されてきましたが、みきとPさんは『宇宙戦艦ティラミスⅡ』の主題歌作家としてシリーズに初参戦されましたね。

みきとP はい。主題歌のオファーは突然のことだったんです。そこからアニメの1期を拝見したら、とても僕好みの面白い作品だったので、「ぜひやらせてくだい」とお返事したのが、参加したきっかけです。

『ティラミス』の面白さを、どこに一番感じましたか?

みきとP 「緊張」と「緩和」というお笑いのメソッドを、しっかり昇華されているところがいいですよね。どれだけ緊張させておいて落とすかが、コメディでは重要な要素だと思うんですが、『ティラミス』は真面目なところが全部ネタふりに見えるんです。

キャラクターが誰一人、ふざけていないですよね。くだらないことを大真面目にやっている。

みきとP そう、ギャグも大げさじゃないんですよ。だから、観ているほうの意表を突く。それがとても刺激的だし、「来た来た!」感がすごいんです。音楽で例えると、サビばかりの曲をずっと聴いているような感じ。短いお話の中に、山がいくつもあるんです。そういうところが、すごく面白いですね。10分アニメという尺も、構えずに観られて、とてもいいですよね。

石川界人 そこに関しては、業界人の方からもたくさんお褒めの言葉をいただいているんです。『ティラミス』のようなコメディ作品は、こうであるべきだと。自分達も作品を作るなら、短い尺というのも考えていきたいという話をされていました。他の現場のスタッフさんからも、「『ティラミス』観てます、面白いです」という言葉をたくさんいただくんですよ。

業界内にも衝撃を与えた『宇宙戦艦ティラミス』ですが、ちょうどアニメ2期も最終話を終えました。せっかくなので、改めて作品を振り返っていただければ。本作は、石川さん演じる主人公スバル・イチノセもそうですが、どのキャラクターもユニークで超個性的ですね。気になったキャラクターはどなたですか?

みきとP 僕は、スバルが傷ついたパイロットスーツの上着を買い替えに、戦闘中なのにパイロットスーツ専門店に行っちゃう回が、なんか好きで(笑)。

『Ⅱ』の「#08:DIFFERENT FUTURE/JIKAN YO TOMARE」の回ですね。スバルが急いで服を買おうとしているのに、気の利かないロボット店員の対応に焦りまくるシーン。

石川 (スバルの声で)「おっせー!」「ちょっ、まだだって!」のヤツですよね(笑)。

みきとP あの店員ロボが、ほんと怖くて(笑)。本当にいますよね、ああいう店員さん。自分が服を買いに行く時も、とっとと選びたいのに適当な店員トークをされると困るんですよ。「すっげー気持ち分かる!」と思って観てました。きっと、マニュアル通りにやれと言われてるんでしょうね、上の人から。

石川 店員ロボ、お好きですか?

みきとP うーん……嫌いかも(笑)。あと好きなシーンでいうと、スバルのお兄ちゃん(イスズ・イチノセ/CV:櫻井孝宏)とキャラウェイのバーでのやり取りも好きですね。

『Ⅱ』の「#04:BUT THERE THERE WAS A GIMLET/AI」で、スバルに敵対する兄イスズの部下でイスズを慕う人工ユニヴァース感覚覚醒者の、フェイ・キャラウェイ(CV:潘めぐみ)が、恋愛映画のバーでの男女のようにムーディーな雰囲気で戦火を報告するんですが、お会計になってイスズがとにかくダメ男っぷりを発揮し……という回でした。

みきとP お慕いしていたイスズのイメージが、キャラウェイの中でどんどん崩壊していく感じがたまらなかったですね。「イスズ、もうやめてっ!」て感じで(笑)。

石川 アフレコ現場でも、みんなが「やめてっ!」て思ってました(笑)。イスズは本気のアホだぞっ!と。『ティラミス』のお話は、宇宙規模になっただけで、中身は全部が“日常回”なんですよね。

みきとP 壮大なロボットSFアニメかと思って観ていたら、急に日常にぐっと迫ってくる。その感じが本当に面白いです。好きなシーンはたくさんありますね。

石川 めちゃめちゃカッコつけてるイスズが、中学生みたいなマジックテープの財布を持ってたり。

みきとP そうなんですよ。いちいち「もうやめてっ!」って感じですよね(笑)。

石川 スバルも、コックピットに閉じ込められた時、オカズがないから自分のカラダの塩分でご飯を食べようとしますしね。そこも「もうやめてっ!」ですよね。そんな人はそうそういないと思うんですが、人は極限状態に置かれると宇宙空間でも山でも家でも、思いも寄らぬ行動を取るんだという本質は変わらない。『ティラミス』は本当は哲学なんじゃないかなと。物事の本質に、迫っているんだと思います……と僕も今、真面目な声で喋っていますが、ここは絶対に「(笑)」を付けるとこなんで!(笑)。

これだけ面白いものに関わるのだから、もっと面白くしたいという思いを、みんなが強く持っている(石川)

石川界人

そのテイストが、まさに『ティラミス』の面白さですよね(笑)。今、櫻井孝宏さんが演じたイスズの面白エピソードが登場しましたが、『Ⅱ』はスバルと兄イスズのアホ同士なイチノセ兄弟のやり取りも見どころでした。櫻井さんとのコンビネーションはいかがでしたか?

石川 櫻井さんは大先輩ですし、数々の作品に出ていらっしゃって、僕みたいな若手とも共演経験が豊富。すごく合わせていただけているなという感覚がありました。スバル・イチノセは何事にも突っ走るほうなので、周りと合わせることなく自分のやりたいことをやるキャラクターなんですが、アホなイスズといると、キャラクターの関係性が逆になるんです。やりたい放題なイスズにスバルが、彼は兄だからと気を使う。そこはお芝居としても難しいところだったんですが、櫻井さんがイスズを振り切って演じてくれたことによって、僕は無理しなくても気を使っているように見えるんです。そういう関係性が出来上がったことで、安心して収録に臨めました。先輩にすごく助けていただきましたね。

秋に開催されたイベント(ユニヴァース感謝祭)では、1期に登場したスバルが唯一、心を許した親友で、愛機デュランダルの発射トリガーに引っかかっていたスバルの陰毛役のベテラン声優・中田譲治さんが、まさかのキャラクターコスプレで登場したりと、キャスト側のノリノリな様子も感じられました。

石川 キャストも全員、ベテランも若手も分け隔てなく、作品をもっともっと面白いのにしようという前向きな気持ちで、いろんなことをやっていましたね。スタッフさんの作品愛も相当強い。みんなが、これだけ面白いものに関わるのだから、もっと面白くしたいという思いを、強く持っていました。

そんな石川さんが、スバル以外でとくに印象的だったキャラクターを挙げていただくと?

石川 陰毛の嫁(CV:能登麻美子)が大好きでしたね。お芝居的にもとても面白い回でした。

1期の「#09:RETURN OF THE ACE PILOT/A FRIEND OF MINE」に、陰毛と一緒に戦闘中のスバルの窮地を救いましたね。

石川 中田譲治さんが、先に陰毛というキャラクターを作り上げて、そこに能登麻美子さんが嫁役で登場したんですが、能登さんの対応力が物の見事。歌いながらお芝居に入ってくるところも、中田さんのアドリブに瞬時に能登さんが合わせてお芝居が生まれていった。とてもクリエイティブでしたね。

アドリブが多い現場だったのですか?

石川 本編の尺が短いので、あまりアドリブを入れられる余裕はないんですけど、入れられるところには。

みきとP アニメの制作には詳しくないので、アフレコがどういう様子なのかわからなかったんですけど、「Gravity Heart」のリリースイベントで、石川さんがアドリブの話をしていらっしゃったので、声優さんはそういうことをされるんだなと分かったんですよ。新しい発見でした。

石川 僕も音楽の現場はさっぱりわからないので、どういう風に曲を作っていくのかが不思議で。僕たちには、台本がありますけど、みきとPさんは主題歌をゼロベースから作っていくわけじゃないですか。何をヒントにやってるんだろうと不思議に思うんです。なので、こういう機会をいただいて音楽制作のお話が聞けるのは、うれしいですね。

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