Interview

平野 良&久保田秀敏が舞台『文豪とアルケミスト 余計者ノ挽歌(エレジー)』で“文学”する役者となる

平野 良&久保田秀敏が舞台『文豪とアルケミスト 余計者ノ挽歌(エレジー)』で“文学”する役者となる

2月21日(木)からシアター1010にて、舞台『文豪とアルケミスト 余計者ノ挽歌(エレジー)』が上演される。原作はDMM GAMESの大人気ゲームで、この世に再び転生した文豪たちが本の世界を侵蝕する“侵蝕者”たちから、文学を守りぬくという設定になっている。
今回はこの舞台で、太宰 治を演じる平野 良と芥川龍之介を演じる久保田秀敏にインタビュー。今作のことから、ふたりの出会い、役者と世界の関係性にいたるまで、まさに文学的な話が垣間見えた。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 増田慶


プレッシャーよりも楽しみのほうが大きい

原作は人々の記憶から文学が奪われる前に、 転生した文豪たちと共に敵である“侵蝕者”から文学書を守り抜くことを目指すシミュレーションゲームですが、原作のゲームをプレイしてみていかがですか。

平野 良 大人気ゲームですが、とても練り込まれた設定のゲームだと感じたのが第一印象です。このゲームのファンは文学が好きな以上に、いろいろな要素が好きで、かつ強い情熱を持った方が多いのではと思いました。

久保田秀敏 設定が細部までこだわっていますね。流れている曲も素晴らしかったし、創り手の情熱を感じました。

平野 それから、詳しい専門用語も散りばめられていて、しっかりした世界観をつくり上げるための様々な仕掛けがあることに感動しました。

平野 良

大人気ゲームが原作になる舞台で演じることにプレッシャーはあったりされますか。

平野 ミュージカル『テニスの王子様』(08)まで舞台の経験がなかったので、そのときはプレッシャーがありましたね。ただ、様々な経験を積んだ今になると、プレッシャーというよりも、どんな舞台も楽しみのほうが大きくなりました。

久保田 僕もプレッシャーはないですね。気をつけたいのは、原作から逸れないように最低限のことは守って、役を演じる意味を考えながら自分の色を出したいと思っていて。ただ、ロボットのようにガチガチな感じにはせずに、あくまで生身の人間が演じることで生まれる空気感や役者同士が空気を読み合うお芝居をしたいですね。そうすることでキャラクターに確固としたイメージが生まれるから、特別に何かをすることはなくて、純粋に頑張ろうと思っています。

久保田秀敏

太宰 治は柔らかい飴細工のような印象

平野さんは太宰 治を、久保田さんは芥川龍之介を演じます。

平野 実際の太宰は精神的に浮き沈みがあって近寄りがたいことで有名ですが、今作はもう少し親近感を持つことができるキャラクターですね。自分は天才肌だという自信過剰な部分があるけれど、打たれ弱かったり、無邪気な部分がある、柔らかい飴細工のような印象を持っていて。ゲームのキャラクター像を理解しつつ、実在した太宰の葛藤や欲望をも匂わせて役を深められたらいいですね。

久保田 芥川の代表作は知っているのですが、2.5次元に昇華したときにどう表現していくのか悩んでいる状況ですね。ただ、戦闘シーンもあるそうですし、稽古が始まってどういう演出になるのか楽しみにしています。

平野 ちなみに、武器は何?

久保田 剣ですね。

平野 いいな。僕はめちゃくちゃ大きい大鎌だよ(笑)。

(笑)現実の世界でも原作の世界でも、太宰は芥川にとても憧れていますね。その関係性をどうやって舞台で表現されるか楽しみです。

平野 もちろん、人間として100パーセント他人に寄り添うのは難しいけれど、まずはベタ惚れしようと思っています。太宰が芥川に憧れたように、芥川は今作には出てきませんが夏目漱石に憧れていた。今作は憧れで繋がっている要素があります。これから出来上がる脚本を読んで、なぜ芥川に憧れているのか再考する必要はありますが、今作は憧れの芥川も侵蝕者たちと戦っているからこそ、太宰のかっこよさが引き立つと思うんです。ただ、芥川をかっこいいとか強いといったことで憧れているわけではなくて、それまで歩んできた“魂”に惹かれているんですね。

久保田 (平野)良くんとは2013年の『歳末明治座 る・フェア~年末だよ!みんな集合~』で初共演したのですが、ほとんど絡んでなくて、今回は物語の設定上、会話をすることになると思うので楽しみですね。僕は良くんのお芝居の空気感が好きなんです。今作もキャストに入っていると聞いただけで成功すると思ったし、良くんへの安心感が僕らの関係性においても重要だと思っています。今回はそれが逆転するから、立ち回りを大きく見せて先輩風を吹かせるのではなくて、普段、良くんから感じる尊敬できるところを役に活かして演じたいです。

吉谷光太郎は死ぬほど芝居が好き

演出の吉谷光太郎さんの印象はいかがですか。

平野 プロジェクションマッピングを駆使したりせずに、マンパワーで世界観をつくられる方ですね。ミザンス、つまり役者の立ち位置でどういう効果が生まれているのかをつねに考えている印象があります。もともと関西の小劇場で、振付のMAMORUさんや歌唱指導の水野里香さんと必死に舞台をつくられてきたメンバーです。全員に共通しているのは死ぬほど芝居が好きな方だということですね。コテコテの芝居も好きだし、エンターテインメントもつくるという、二面性があるんです。たとえば、吉谷さんが久しぶりに書き下ろした舞台『RE:VOLVER』(18)では、ほぼ演技を付けないで、“魂”で演出したと聞きましたし、とにかくお芝居が大好きな方なんですよ。演技を付けるときは、心で演出しながら、徐々にテクニカルに紐解いて、ロジカルに届けるにはどうしたらいいかを考えていらっしゃる。それから、MAMORUさんが天才で、鬼のような振付をされるので、観ても面白いし、観終わったあとも考えさせられる舞台になると思います。

久保田 僕は吉谷さんとは初めてなので、良くんが言ったことを聞くと何も考えることなくついていけばいいと思いました。僕という“人間”を見てくれる方だと感じたので、思いっきりぶつかり合いたいですね。

平野 吉谷さんの作品に出ると、アンサンブルがとにかく頑張らなくてはいけないので、ついつい彼らにおごりたくなるんです(笑)。実際にご飯をおごったこともありましたし、千秋楽で一番大きな拍手を送りたくなる相手はアンサンブルでしたね。つまり、僕たち役者だけでなく、アンサンブルも生かすことで、それだけ良い芝居が生まれるんですよね。

芝居のカテゴリーはお客様が決める

お二方とも2.5次元からストレートプレイ、ミュージカルまで幅広く演じていらっしゃいますが、それぞれ違いはありますか。

平野 やはり、カテゴリーはお客様が決めるものですね。昔は、2.5次元には2.5次元のつくり方があると思っていたのですが、最近は「何も考えなければ、勝手にそうなっていく」と流れに身を任せています。テレビでMCをやってもいるけれど、実際は実家ではそれほど喋らないですし(笑)。場の雰囲気に合わせれば、自然とその場にふさわしい状態になってしまうと思うんです。

久保田 それほど差はないですね。カラーは違いますが、お芝居をすることに変わりはないので、しっかり演じることさえ心がければ、どのジャンルでもお客様に届くと思うんです。ミュージカルであれば歌で、ストレートであれば会話で、2.5次元にはそれらにビジュアルがくっつくという印象ですね。

平野 血が通っているかどうかだよね。僕が演技を始めたときは、下積みがあって、出演する機会をもらってようやくデビューする時代だったんです。今の時代はデビューと同時に、訓練をしないまま人前に立って、お客様を感動させなければいけない状態が多いと思います。もちろん、2.5次元にも、演技が伝わるメソッドや、普通のテンションでは聞こえないシェイクスピアの台詞回しのメソッドが確立されていて、慣れていない役者でも大丈夫だといえば大丈夫なのですが、それでも役者として目指すのは、しっかりした人間として人を演じて、他者に“魂”を伝えることが大切になるんです。

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