LIVE SHUTTLE  vol. 324

Report

エレファントカシマシ 新春が似合う男たちの熱く清々しい快演が幸福な温もりをもたらした一夜

「新春ライブ2019」
2019年1月16日 日本武道館

恒例となっているエレファントカシマシの新春ライブ。大阪フェスティバルホール2daysに続く日本武道館2daysの初日、16日の公演を観てきた。

すでに松の内は過ぎていたが、曲の途中、ボーカルの宮本浩次が「明けましておめでとう」と挨拶する場面もあった。確かに関東のファンにとって、このライブがエレカシの“あけまして”に違いないのであった。

それにしても彼らには、新春の空気感がよく似合う。股関節柔らかげな立ち姿から両手を広げ、ビブラートで誤魔化さないまっすぐな歌を届ける宮本の姿を見ていると、まっさらなノートを一冊プレゼントされたような気分にもなり、まさに新年に、ぴったりなのである。

下手から平行な角度で照射されるライト。やがてメンバーが登場し、オープニングは「脱コニュニケーション」。インダストリアル系の重心の低さが届く。次の演奏が始まる前から宮本の体が激しくリズムを取り始め、すかさず「Wake Up」へ。

ここまでは、エレファントカシマシの“音楽”に寄った姿勢とも言えて、次の「新しい季節へキミと」では、“歌”の要素が増す。「星の砂」のケレンない洒脱なビートは、このバンドの真骨頂でもあり、後半、ややテンポをあげてくあたりを耳が追いかけて、馴染んだときに醸し出されるトランス状態にも似た頭まっしろけな快感がたまらない。

「悲しみの果て」は、悲しみという滲みがちな感情を、楷書文字で伝えるかのようであり、聴いてるうちに背筋が伸びる。アコギを弾いて「ワインディングロード」を歌う前に、ヴァース的部分を設け、“武道館へよーこそ”と、満員の客席への挨拶も盛り込まれる。

ストリングス陣を紹介するMCから始まったのは「リッスントゥザミュージック」。井の頭公園のボートにまつわる恋愛奇譚をベースにしたこの歌が、リリカルな音の広がりで始まって、後半は、バイオリン・金原千恵子の弦から煙が出そうなくらいの熱演へと変わる。

武士道の神髄「葉隠」にも重なる「昔の侍」を、宮本が訥々と歌い、自らを、バンドを、さらに超満員の武道館の観客の心を指揮するように、今度は朗々と、「大地のシンフォニー」が歌われた。

続く「絆」を聞くにつれ、ソング・ライター宮本浩次のルーツのひとつが西洋のクラシック音楽であることも垣間見ることができる。「too fine life」ではタンバリンを持ち、上手下手へ、移動しながら歌う。宮本がギターの石森敏行に向かって、いつもの“親しいからこそのラフなスキンシップ”じゃなく、彼の熱演を引き立てるような仕草を送る。「珍奇男」では腰掛け、歌うが、その行為により、逆に情熱が巨大に内包され、やがて後半に爆裂し、ぶちまけられた。

「今をかきならせ」は、バンドのポテンシャルを存分に伝える快演だ。ドラムの冨永義之は、もはや日本屈指のドラマーでもあるんだろうが、世の中には“リズム隊”という言葉があるように、ベースの高緑成治とのコンビであることで最強なのだ。二人とも、派手なこともやろうと思えば出来るんだろうが、一切やらずにビートを求道していく。

サポートのキーボーディスト村山★潤のピアノのイントロから始まった「風に吹かれて」はスペシャル・ヴァージョンであり、故に風の強さや向きの違いを感じるのか、歌詞の解釈がオリジナル・ヴァージョンとは少し違うニュアンスに思えた。「桜の花、舞い上がる道を」を聴きながら、やがて巡る暖かな季節を想い、「笑顔の未来へ」を、まっすぐに受け止めた。

「ズレてる方がいい」は、声高なメッセージ・ソングではないが、伝わるものが大きい内容だ。大袈裟かもしれないが、全体主義的世の中へ、警鐘を鳴らす歌でもあるだろう。何度聴いても宮本から放たれる“さあ がんばろうぜ!”が嘘くさくない「俺たちの明日」を聴いて、この日のライブも大団円と思いきや…。

静かな雰囲気で「マボロシ」が歌われて、やがて宮本の頭上のスポットライトが消え、辺りは暗闇に包まれた。しかし鳥のさえずりのようなSEが夜明けの雰囲気を告げるや、さらに大きなノイズとなり、「悪魔メフィスト」が始まったのである。この日のライブだが、ライトの演出はシンプルだったが、ここでは角度の違うレーザーが交差、閃光し、観客の度肝を抜いた。

ここからコンサートの第二部が始まった。彼らのライブは二部、三部構成という場合があり、これは推測だが、観客のステージ対する集中力を、フレッシュに保つ工夫とも思われる。宮本が、膝を折り曲げてまで熱唱する「Easy Go」で始まり、エレファントカシマシの原点にして永遠のマスターピースである「デーデ」、天井から直線の照明が加わり、切なさが香る「かけだす男」と、快調に進んでいった。

途中、宮本は客席を見渡しつつ、「みんな盛り上がってくれて、素晴らしい新春ライブになりました。ありがとうー」と挨拶する。そして「旅立ちの朝」に続いて歌われたのは「風」である。この曲は、特に心に染み込んだ。[あと百年を生き長らえても]のくだりは、特に…。生きていることの儚さ、しかし、巡るかもしれない輪廻。いやほんと。「風」、良かった。

この曲の世界観から腰を上げて、新たな場所へ歩き始めるかのように歌われたのが「四月の風」だ。Aメロからオリジナリティ溢れるメロディの「so many people」、コトバを掴んでは投げ掴んでは投げするような小気味よさの「ファイティングマン」で、今度こそ大団円へ。「ファイティングマン」はエレカシ・ライブの最後の「。」、そう、読点のような曲である。

しかし、アンコールを求める大きな拍手と歓声が鳴り止まない。ステージの照明も、店じまいの時を逸したように灯ったままだ。やはりヒット曲は聴きたいゼ。「今宵の月のように」が始まって、歌い終わり、宮本はアコギをそのまま、ステージに直に置いた。が、まだ続いた。本当の最後は「ゴクロウサン」。バンドは絶好調。無駄な力が抜けた、いかにもアンコールらしい寛ぎの快演だった。

直後、武道館から掃き出された人の波に混ざり、最寄り駅まで歩いたが、みんなみんな、幸せそうな顔をしていた。

取材・文 / 小貫信昭

エレファントカシマシ「新春ライブ 2019」
2019年1月16日 日本武道館

セットリスト

<第1部>
01. 脱コミュニケーション
02. Wake Up
03. 新しい季節へキミと
04. 星の砂
05. 悲しみの果て
06. ワインディングロード
07. リッスントゥザミュージック
08. 昔の侍
09. 大地のシンフォニー
10. 絆
11. too fine life
12. 珍奇男
13. 今をかきならせ
14. 風に吹かれて
15. 桜の花、舞い上がる道を
16. 笑顔の未来へ
17. ズレてる方がいい
18. 俺たちの明日
19. マボロシ
20. 朝
21. 悪魔メフィスト
<第2部>
22. Easy Go
23. デーデ
24. かけだす男
25. 旅立ちの朝
26. 風
27. 四月の風
28. so many people
29. ファイティングマン
<アンコール>
30. 今宵の月のように
31. ゴクロウサン

エレファントカシマシ

1981年結成。メンバーは、宮本浩次(Vo,G)、石森敏行(G)、高緑成治(B)、冨永義之(Dr)。1988年にシングル「デーデ」とアルバム『THE ELEPHANT KASHIMASHI』でメジャーデビュー。ハードなロック・サウンドと文学的な歌詞で高い評価を得る。その後1997年にリリースされた「今宵の月のように」がドラマの主題歌に起用され、70万枚を超える大ヒットを記録。これまでに、通算50枚のシングルと、23枚のオリジナル・アルバムを発表している。ライブ活動もデビュー当初から精力的に展開しており、2016年まで27年連続で日比谷野外大音楽堂でのライブを開催し、2014年にはデビュー25周年記念ライブとして、さいたまスーパーアリーナに1万4000人を動員。2018年3月には、30周年イヤーを締めくくる「30th ANNIVERSARY TOUR“THE FIGHTING MAN”FINAL」、そしてSpitz、Mr.Childrenとのイベント「30th ANNIVERSARY TOUR“THE FIGHTING MAN”SPECIAL ド・ド・ドーンと集結!!〜夢の競演〜」をさいたまスーパーアリなーで開催した。

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