Interview

kobore 50本超のロング・ツアーで感じたことを彼らは初めてのフルアルバムにどんなふうに昇華したのか?

kobore 50本超のロング・ツアーで感じたことを彼らは初めてのフルアルバムにどんなふうに昇華したのか?

ライブ・シーンでどんどん評価が高まっている4人組から、1stフルアルバム『零になって』が届いた。新作は、53本に及んだロング・ツアーを通して得た実感をしっかりと音楽化した新曲と、これまでの作品からの再録を合わせ、現在のバンドの充実を余すところなく伝える仕上がりだ。
ここでは、そのツアーの感想から始めて、今回の新作の聴きどころをメンバー全員にたっぷり語ってもらった。

取材・文 / 兼田達矢 撮影 / 高木博史

「たくさんライブをやって、(バンド感が)弱まることはもちろんないですけど、でも強まらないですよ(笑)」

去年の話になりますが、前作リリース後のツアーの話をまず聞かせてください。前回のインタビューでは、伊藤さんが運転手としても期待されていました。

伊藤 あっ、実はツアー前に免許が取れなくて、取った頃にはツアーが終わってたんですよ(笑)。

(笑)。佐藤さんは「5000キロは走ってもらわないと」と言ってましたが。

佐藤 でも、運転よりも大変なことが多くて、だから僕は運転している時間が一番楽だったというか。逆に、考える時間ができるというか。クルマで移動している時間が一番“無”になれる時間だったりしたんで。

佐藤赳(Vo.Gt)

あの厳しいスケジュールのなかではそういうことになるんだというのは、やってみての発見という感じですか。

佐藤 そうなっちゃったという感じなんですけど。ライブハウスに着くともう、ライブという頭になっちゃうんで。それをいったん“無”にして自分と向き合う時間が、僕の場合は運転してる時だったりしました。だから、運転してる時間がけっこう大事だった気がします。クルマの中だと、好きな音楽が聴けますしね。

ツアー中は4人で一緒にいる時間が長くなるから、お互いの関係性に関してあらためて感じたことがあったんじゃないですか。

佐藤 僕は逆だったかもしれないです。4人でいることが多かったから、逆に一人になる時間を作りたがってたんじゃないですかね。4人で一緒にいる濃密度を意識するよりも、僕は一人でいる時間の濃密度を上げることを考えることのほうが多かったです。

田中さんはどうですか。

田中 どうしてたんでしょうねえ…。ライブハウスに着いたら、それぞれにやることがいろいろあるから…。どこだったか、その日のライブに集中しなきゃいけないのに、もっと先のことを考えたりして頭の中がゴチャゴチャしてる時がありましたね。頭の中ゴチャゴチャしてるなあと思ってトランクケースを開けたら、トランクケースもゴチャゴチャしてて、“こりゃあ、ちょっと末期だな”と思って…。そういう時はクルマに戻って荷物を整理したりして、気持ちをスッキリさせて、それからライブハウスに戻る、みたいな時もちょっとありましたね。

「たくさんライブをやって、バンド感が深まりました」みたいな話がありますが、それほど単純な話でもないんだろうなということも思うんです。

佐藤 たくさんライブをやって、弱まることはもちろんないですけど、でも強まらないですよ(笑)。

(笑)。あのツアーが今回のアルバムに何か影響しているとしたら、それはどういう部分だと思いますか。

安藤 毎日ライブ、みたいな感じだったんで、ツアーが終わってから演奏を根本から見直す気になって、僕はギターの握るフォームから、ピックの大きさから、とにかく全部変えてみて、“なんでこんな詰まる感じになるんだろう?”とか“力んでるのかな?”とか、いろいろ考えて、見直すきっかけにはなりましたね。だから、根本に戻ってみれた、みたいなことが成果なのかなと思います。

安藤太一(Gt.Cho)

伊藤 今回のアルバムで、自分のなかに全曲を通してのコンセプトが一つあって、それはシンプルにしてみようかなと思ったんです。変にコネコネやるのはやめようって。その理由の一つとして、あのツアーでみんなのいいところをけっこう見れたなということがあって、それは演奏の面でもそうだし、私生活の面でもそうだし。そういうみんなのいいところをもっと全面的に出そうと思った時に、僕はちょっと独りよがりなフレーズを作ってたんで、そういうのはやめようと思ったっていう。

佐藤 唯一、全体を見ていた男。

伊藤 (笑)。

佐藤 田中は自分のトランクだし、俺は一人になりたいと思ってるし、安藤は自分のフォームを見直しているし。

田中 僕は、ステージの奥からずっとみんなの背中を見てたっていう。

佐藤 さすがです。

「ツアーをやってるうちに、考えれば考えるほど感傷的になってくるというか、その感じを歌にしたいなと思ってできたのが“さよならは言わずに”ですね」

今回の新曲は、ツアー中に作った曲もあるんですか。

佐藤 ツアーが始まる時点ではほぼゼロの状態だったんで、ツアー中に作った曲がほとんどです。

ということは、バンドでアレンジを詰めたりするのも、旅先でスタジオに入ったりしたんですか。

佐藤 そうです。ただ、そのスタジオ代も節約したいんで、ライブをやったライブハウスが次の日空いてたら使わせてもらったり、スタジオを借りる場合もライブハウスの店長さんにいいスタジオを紹介してもらったりして。

そういうふうに進めた制作を振り返って、個人的に印象に残っている曲を1曲上げるとすると、安藤さんはどの曲になりますか。

安藤 そうですねえ…。僕のなかでは「さよならは言わずに」が、いちばん時間がなかった曲なんだけど一番気に入ってて。それは、リズム隊から順番にレコーディングしていって、最後に僕の番になって、いろいろ考えながら臨んだレコーディングでフレーズが気持ちよくはまったところが多かったので。一番最後にレコーディングした曲だからこそ、そういうことになったのかなと思ってて、そういう曲がアルバムのいちばん最後に入ってるわけだし、個人的には一番聴いてほしい曲ではありますね。

この曲は、まさにツアーをまわっているバンドだからこそ歌える曲、歌いたい曲という感じの内容ですよね。

佐藤 ツアーをやってるうちに、だんだん本数を数えなくなってきて…。考えれば考えるほど感傷的になってくるというか、1本終わったなあという感じと、また次があるという感じが、フィフティ・フィフティであるっていう。その感じを歌にしたいなと思ってできたのが、この曲ですね。

この曲の主人公は、曲の最初の部分では“「また会いに行くよ」と言ってはみたけど約束はできない”と思ってるんだけど、後半になると“待ってる人がいてくれるんだから、歌い続けなきゃ”というふうに意識が変わってきますよね。

佐藤 ツアーの1本目と53本目との、僕らのなかの変化をこの曲に詰め込めたかなという気がします。というのは、53本というツアーはもう二度とやりたくないし…(笑)。まあ、やるとなったらやりますが、それでもこの次のツアーは確実に53本もまわらないし、ということは行けないところが出てくるということですよね。そういう場所の人たちに向けてのメッセージというか、“このままkoboreはもう来なくなっちゃうのかな”と思われちゃうのはすごく嫌だから。僕らとしては、“ずっと歌い続けるから、いつでも見に来てくださいよ”という気持ちも込められてますね。

伊藤さんは、今回の作品を振り返って、印象に残っている曲を1曲選ぶとどれになりますか。

伊藤 どの曲というより、さっき話した「変にコネコネやるのはやめよう」っていう視点でやってみたからこその苦労もあったし発見もあって、そういう意識でやったということがこの作品についての一番の思い出です。

伊藤克起(Dr)

今回シンプルにやってみようと思った、その気持ちの流れには理由として何か思い当たることはありますか。

伊藤 もっといろんなことをやってみたいなと思ったなかの一つに、例えば“シンプルな8ビートで聴かせられるようにがんばろう”とか、そういう気持ちの変化が去年の53本のツアーのなかであって。というのが、あれだけの数をやると、いろんなバンドと対バンするじゃないですか。いろんなバンドのいろんな良さを感じることがあって、そのせいで自分が作るフレーズもけっこう変わってきたし。そういう変化が一番出たのがそこかなという感じですかね。

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