SID 15th Anniversary Special マオ Self Liner Notes『歌詞を巡る旅』  vol. 8

Interview

シド 7th Album『M&W』~歌詞のコンセプトを先に決めた初めてのアルバム。様々な“男と女”を表現した意欲作~

シド 7th Album『M&W』~歌詞のコンセプトを先に決めた初めてのアルバム。様々な“男と女”を表現した意欲作~

Self Liner Notes特集「歌詞を巡る旅」の読者の皆さん、今年も宜しくお願いします。というわけで、2019年最初は7thアルバム『M&W』の歌詞を紐解いていきます。このアルバムの歌詞に関しては、先に“男と女を歌う”というコンセプトを決めて作りました。オリジナルアルバムも7枚目となってくると、しばりがあっても歌詞を書けるものなんだろうかとか、しばりがあるなかで書くってどんな感じなんだろうとか。そういうところにも興味を持ち出した時期だったんですね。歌詞のコンセプトを先に決めたのは、そういう自分の興味からです。それで、アルバムのタイトルも男と女という意味で『M&W』と付けました。『男と女』ではさすがに演歌っぽいしね(笑)。『Men&Women』にしなかったのは、『M&W』のほうが字面が好きだったのと、デザインしやすいなと思ったからです。そこは、ジャケットを見てもらうと分かりやすいんですけど、“M&W”を縦に並べて、トランプっぽいデザイン処理がしてあって。この感じがいいなと思いました。ジャケットにメンバーの写真を載せようよというのは、俺が言った気がしますね、確か。いままでメンバーがジャケットに出るということは全くやってこなかったから、逆に面白くない? っていう発想から。あんまり憶えてないんですけど、どこかのラウンジみたいな場所で撮影したんじゃないかなぁ。メンバーの写真が大人っぽい雰囲気でモノトーンになったのは、曲のイメージからだったと思いますね。写真も、ヴィジュアル系のツルンとした加工を入れるんじゃなくて、ザラザラのまんま。あえて荒くしてるんですよ。これは「こうしたらヴィジュアル系っぽくないよね」という考えではなく、「ヴィジュアル系でもオシャレなんだよ」というのを見せるための挑戦です。俺らは昔から「シドってヴィジュアル系だよね? ヴィジュアル系ってカッコいいんだね」っていうことを伝えたくて、新しいことに挑戦してきてるんですよね。

構成・文 / 東條祥恵 撮影 / 今元秀明

<僕サイズ ニット限定ライブ>でもやろうかな(笑)。500人ぐらいは来そうじゃないですか?

マオ from SID エンタメステーションインタビュー

01. コナゴナ
(作詞・マオ/作曲・Shinji)

とにかくこの曲は、サビに出てくる“悪の組織”をメンバーにめっちゃ反対されたのをよく憶えてますね(笑)。「“悪の組織”はちょっと……それを“壊滅すべく”もどうなの?」って言われたので「いやいや。歌詞を最後まで読んでくれ。絶対に面白いから」と伝えて。「“悪の組織”は俺も違和感を感じるよ? だけど、その引っ掛かりがシドじゃん。ファンも“なんじゃこりゃ?”って言ってくるかもしれないけど。それがいいんじゃん!」という話をメンバーにしました。いままで何回も話してきていることなんですけど。逆に俺は、メンバーに歌詞のことを指摘されると「みんな、ちゃんと歌詞を見てくれてるんだ」と思ってうれしいですけどね。それで、違和感があってもまずはやってみるんですよ。やってみると案外ハマるもので。結果、このままでよかったなと思ってます。この歌詞は、読んでみると内容が本当に面白いんですよ! 彼女がカッコいい人に捕らわれてしまったので、自分は彼女のヒーローになるべく、助けに向かうんです。そうしたら決戦の地で、そのカッコいい人というのは実は彼女の彼氏で、自分は彼氏じゃなかったということが判明する。それで“二番手は退散”って、コナゴナになって自ら帰っていくというオチなんですけどね(笑)。いままでには全くなかったコミカルな歌詞になってます。ピーチ姫がクッパにさらわれたと思って助けに行ったら、実はピーチ姫は俺よりもクッパのほうが好きで、「探しに来ないでよ」って言われてるような感じが面白い。最初はそんなこと分からないから“悪の組織”を“壊滅すべく”って、気合いを入れて超カッコつけて彼女を助けに行くんです。それで、助けに行ったら途中、ゲームみたいに“To be continued…”というのが出てくる。歌の歌詞のなかにこんなものが出てくること自体、無茶苦茶じゃないですか?(笑) 俺はそこがすごい好きですね。

02.  ゴーストアパートメント
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

歌い方が……すごい巻き舌で歌ってますね(笑)。曲調がそういう歌い方を呼んでいたんですよ。歌い方は、本番でいろいろ試すんです。この曲は、1サビを巻き舌にして2サビはやめてというのを1回録ってみたら「やっぱ1サビみたいに歌ったほうがカッコいいね」ということになって、全部巻き舌で録り直しました。歌詞は、お化けの男の子が人間の女の子に恋しちゃったというちょっとメルヘンな、かわいい感じのお話です。お化け設定というものに初めてチャレンジしました。これは、曲がシャッフル調のパーティーチューンみたいな感じで。そこから、なぜか分からないけどお屋敷でお化けたちが騒いでてという、ハロウィン的なイメージが出てきたんですよ。そして、一人の男の子がずっと一人の人間の女の子の成長を見守ってるような感じで、ちょっと優しくて、ちょっとホラーな恋愛ものを書きたいなと思ってこの歌詞になりました。テーマは、お化けの遠距離片思いソングですね。ここでの“遠距離”というのは、死んでる人と生きてる人との距離のことです。近くにいても、生きてるのと死んでるのとではめちゃくちゃ距離がある。だから、これは相当な遠距離恋愛ですよ(微笑)。歌詞のなかの“寄りついた 悪い虫を 追い払ってきたのは 僕のラップ音”とか“青白い頬が 紅色に染まるほど 君に夢中”という表現は、お化けという設定にしたからこそ出てきた歌詞なんですよね。そのなかでも“Deadぼうけ”というワードが特に気に入ってます。“待ちぼうけ”っていう言葉があるじゃないですか? お化けが早くこっち側に来てくれないかなって、相手が死ぬのを待ってるときに使うとしたら待ちぼうけじゃなくて死にぼうけだなと思って。でも、死にぼうけだと嫌だな、もっとオシャレな言葉はないかなというので“Deadぼうけ”にしたんです。造語なんだけど、気に入ってますね。ストーリーのなかでは、そうやってDeadぼうけしてたら、最後、彼女はこっちの存在に気づいてくれるんですよ。しかも、他の人みたいにお化けを毛嫌いもしなかったので“今度おいでよ”って。こっちの世界で遊ぼうよっていうところでお話は終わってます。

03. 冬のベンチ
(作詞・マオ/作曲・ゆうや)

甘くて、トレンディーでいいですね。「夏恋」の冬バージョンみたいなものを意識して書きました。“大人げない 大人の恋”って書いてるから、年齢は大人、社会人なんですよね。週末になれば逢えるのに、離れたらまたすぐに逢いたくなっちゃう。そういうところが大人なのに、大人げなくてピュアな感じがします。“僕サイズ ニット”、これは結構流行りましたね。男の願望ですよ。僕サイズ ニットを着こなす女の子を嫌いな男性って、いないんじゃないですか? <僕サイズ ニット限定ライブ>でもやろうかな(笑)。500人ぐらいは来そうじゃないですか?  “「こんな日が来るなんて夢みたい」なんて 本当は同じ気持ち それ以上さ”という部分は、恋愛が始まったときの一番ワクワクしてるときの感情を表しています。相手もそんなふうに思ってくれてたんだっていうのが分かって、これからこの恋愛はどう発展していくんだろうっていう気持ちの高鳴り、それをこの1行で表せた気がします。全体的にはストレートなラブソングですね。ただ、そこにちょっとひと癖入れてるんですよ。“大人げない 大人の恋 少しの不安もいいさ 出会いと別れ 繰り返し これが最後の出会い”っていうところなんですけど。これまで恋愛もいっぱいしてきてて、だけどこれが本当に最後の出会い? って最初は言ってるんですけど、次は“?”がなくなるんですね。なので、結婚を前提に付き合ってるんですよ。最後の“空席は見当たらない”というところの空席は、俺のなかではベンチのイメージです。例えば、クリスマスとかに恋人と一緒に行きたい人気スポットがありますよね? そこにあるベンチのことをさしてます。“いくつもの 肩寄せ合った 恋に”っていう表現は、すでにそのベンチはたくさんのカップルで埋まってるんですよ。それを見て、ふたりは「やっちゃったー。来るのが遅かったね」って会話をしてるんだけど、男のほうが「でも、来年も、またその次も一緒に来ればいいじゃん」と、プロポーズみたいなことをサラッと言って。そこで、歌は終わるんです。

04. 糸
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

『M&W』のジャケットの世界観は、この曲あたりから引っ張られて出てきてるのかなって思いますね。歌詞で描いているのは、大人の恋愛です。“罪悪経由”ですから、普通の関係ではないんですよ。でも、その罪悪が具体的になんなのか。そこは匂わすだけで、あんまり説明しないように歌詞を書いてます。そのほうが意味深で、大人っぽいかなと思って。大人っぽいけど、ゴリゴリにエロい感じでもなく、ちょいエロぐらいですかね。歌詞は、俺がバーで友達と飲んでたときにぶわーっとこの世界観を思いついて。そのまんま家に帰って、朝方一気に書いた気がします。お酒を飲んでても歌詞は書けますよ。ベロベロに酔っていなければ、ね。この曲の歌詞のなかの“ペリエ”は、別にペリエじゃなくてもよかったんです。バーで飲んでたときに、チェイサーのお水があって。誰かが水の代わりにシュワっとしたやつを飲んでたんで、そういう記憶が入り混じってペリエが出てきたんだと思います。最後に“深く 突き刺した 下から包む 鼓動 欲しがった 破滅は 差し出せない それくらいわかってただろう”というところで、どちらかが一線を越えようとしてきてるんですね。でも、そこは最初からダメって決めてたでしょ? と言っていて。そういうところも含めて、大人の恋愛ですよね。最近は、実験的にお酒を飲んでから歌詞を書いたりもします。『NOMAD』の収録曲のなかにもあったかな? 飲んで書いたら、自分のなかのどんな引き出しが開くんだろうと思ってやってみたんです。なにかの本で読んだんですけど、たくさん連載を抱えている人が息詰まったとき、ちょっとお酒を飲んでみたらいつもとは全然違う扉が開いてめっちゃ書くことが出てきたって。これまでは歌詞を書く前は絶対お酒を飲んじゃダメだと思ってたので、その文章を読んだとき「なんだ、そのおいしいやつは!」と衝撃を受けたんですよ(笑)。それで、ちびちび飲みながら歌詞を書いてみたら、できましたね。

言葉のイントネーションは、俺も東京に出てきたときに苦労しましたね。

マオ from SID エンタメステーションインタビュー

05. Café de Bossa
(作詞・マオ/作曲・ゆうや)

歌詞が長いですね(笑)。俺のなかでは、小沢健二さんの「痛快ウキウキ通り」みたいな色を入れたいなというイメージで書きました。俺、あの曲が大好きなんですよ。「痛快〜」ではプラダの靴が出てくるんですけど、“流行りのLouboutin”というフレーズは、小沢色が色濃く出ちゃってるところですね(笑)。Louboutinは、当時の海外ドラマ『ゴシップガール』のチャックが大好きだったんですよ(笑)。カッコいいなと思って。あのドラマにはいろんなハイブランドが出てきたので、その影響だと思います。この歌詞のなかで、相手の女の人は都会育ちで、すっごいオシャレでスラッとした人なんですよ。こっちは“イントネーションの違いも 上手に隠せない”というように、まだちょい訛ってるような田舎育ちで。お金もセンスもない。それでも、女の人のために頑張って流行りのLouboutinを買うような、可愛らしい男の子なんです。そういう男女の身の丈に合ってない恋のお話なんだけど、最後はちょっとだけ希望が見えるんですよね。この男の子じゃないけど、言葉のイントネーションは、俺も東京に出てきたときに苦労しましたね。あんなにTVでずっと観て、聞いていたはずなのに、実際に東京に来てみたら、みんなが“関東弁”を話してるように思えて驚きました。それに慣れるまでは大変でしたよ。でも、3ヵ月ぐらいでバリバリ標準語はしゃべれるようになりましたけどね。自分より5年ぐらい先に上京してたのに、バリバリ訛ってる先輩がいたんで、これは絶対本気で憶えてやろうと思ってかなり自分で訓練したんです。俺はまず、なるべく人に会うようにしました。しゃべるとまだ方言が残ってるから、「そうなんだ」とか、憶えた標準語以外は絶対にしゃべらないと決めて。人が話してるのをずっと聞いてるんです。それで、家に帰って標準語の発音を練習する。そういうことをやっていったら、意外と早く慣れましたね。

06. S
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

映画『貞子3D』の主題歌になりました。シドとしては初の映画主題歌だったので、すごくうれしかったですよ。シドのライブに貞子が出てきたこともありましたね(笑)。タイトルの「S」は、“貞子”のSと“SM”のSです。歌詞は『貞子3D』のタイアップが決まったあとから書いたんですけど、貞子のことは書いてないです。でも、ちょっと怖い感じで、危うい言葉が多いですね。“飼育”とか、ヤバイですね。そういう行為に関しての知識がないから、あくまで想像の域のなかで書きました。SMって鞭がつきものってイメージがするじゃないですか? それを“冷たい無知”と表現することで、そっちの世界をすごく知ってる人と知らない人とのコミュニケーションなんだということを表しました。そういうテーマになったのは、曲調のせいです(きっぱり)。すごくダークで攻撃的な曲調が久しぶりにきて。かつ、それがシドがよくやるちょっと前のハードロックな感じではなく、最新の音だったんで、そういうものがすごく刺激になってこういう歌詞が生まれたんだと思います。サウンドに合わせて、声もエフェクト処理をしましたね。個人的にその世界には全く興味がないです。心理的な意味で男性がサディスト、女性がマゾヒストというのが、俺の理想形ではあるんですが、その世界では単純な男対女ではなく、人対人になっていく。そうなると、俺はちょっとね、と思ってしまう。最低限男と女の関係で、そこに恋愛感情がないと俺は面白さを感じない。だから、この歌詞の世界観までいっちゃうと、俺はダメですね。飼育とか言ってる時点で男女を超えて人対人になっちゃってますから。

07. MOM
(作詞・マオ/作曲・Shinji)

まず「MOM」というタイトルが強烈だなと思います。この曲はサビがキャッチーなんで、そこにキャッチーな言葉として“MOM”をのせて、それを分かりやすく連呼しました。“MOM”は、鼻歌で歌っていたら歌いやすいなと思って出てきたフレーズです。歌詞は、男の人がやらかしちゃって、女の人にお別れを告げられる歌ですね。いままで書いたものにはなかった、新しい題材で書きたいなという気持ちがまず最初にあったので。男性って、人によっては家に帰ると女性がお母さんみたいな存在になっちゃって、自分ではなんにもやらない。そういう人がいるというのをよく聞いていたので、それを題材にして歌詞は書いていきました。すべて女の人に任せっきりにしておきながら、なのに自分は外で遊んでるという、ちょっと悪い感じの男です。1番の頭から、女の子はまた男が遊んでるなっていうことに薄々気付いちゃってるんですよ。男は過去に何回もやらかしてきてるから“私にこれ(携帯)を開けさせたらもうおしまいよ”って言ってたのに、そういう状況になってしまって。“火遊びが ボヤになる ボヤが火事になる でしょ? 得意のいつものやつ ギャグギレ状態ね”というところは、最初は男も軽いつもりで外で遊んでたんでしょうけど、どんどんそれがエスカレートしてしまって。女の人がとうとう“これ、もう全然笑えないんですけど”ってなってますね。“あなたは 「貴方」で”と書いているところですけど、まず漢字の“貴方”はすごい紳士でカッコいい感じがするんですね。そこからの男の変貌ぶりを表記を変えることで表現しています。そうして“お仕置きは バイバイに決めた”と、女の人のほうから最後、愛想をつかして男に別れを告げています。そういえば、この曲、ライブで全然やってないな〜。

学生時代の恋って、恐ろしいほど自分のなかに煮えたぎってる想いがあるんですよね。

マオ from SID エンタメステーションインタビュー

08. いつか
(作詞・マオ/作曲・Shinji)

僕には想っている女性がいて、その女性がまだ前の恋を忘れられないというちょっとせつない状況で、いつかは忘れてほしいな、という曲です。“受け止めるのが怖くて”という歌詞があるんですけど。そこに、2人のこの恋の始まりの空気感が凝縮していますね。“薄目でぼかした僕と 軽率な君とで 始めた 恋”ということで、お互いちょっと「始めちゃって大丈夫かな? この恋」と思いながら始めてるんですよ。こういう始まり方もあると思うんですよね、恋のなかには。まだ前の恋を彼女は引きずっている。その状況をなんとなく最初から自分は分かってはいるんだけど、そこは見たくないから薄目でぼかしつつ、いつかは忘れてくれるんじゃないかなという淡い期待を抱きつつ恋を始めるんです。サビに関しては、言っちゃえばJ-POPの人たちがいままで散々使いふるしてきた言葉。あえて、そういうものを詰め込んだサビにしたかったんですよ。俺が書くJ-POPの王道のサビって、どういうものになるんだろうという実験ですよね。ここでは、同じサビを何度も繰り返してるんですけど、曲が進むにつれてその言葉がどんどん違う感情で響いてくる。そういうものが作りたかったんだと思います。そのために、サビは同じだからこそ、A〜Bメロで感情が動いていくんです。“彼にないものを求めるのに 彼の面影押しつけてる”には、女の子のほうが男を振り回してる感じが出ているので、男のほうが好きの度合いが強いのかなって気がしますね。それで、ここで女の子がほのめかす「いつか」を、男は期待を抱きながら待つんです。1回目のいつかは、希望があるいつかなんですよね。それで、男のほうは“何度も消してほしいと願う 彼に繋がる11桁”といって、女の人が自分の意思で元カレの電話番号、気配を消してくれるのを待ち続けるんです。だけど、その「いつか」もだんだんと分からなくなってきたと男が嘆いてるのが、2回目に出てくるいつかで。そうしていくつかの嘘も、相変わらずのふたりの距離感も、これまで耐えに耐えてきた結果、これはもう無理なんだろうなと思ったときに“「いつか」来る”と言ってる3回目のいつかは、いずれ来るだろう別れを予感しているいつか。1回目、2回目、3回目と「いつか」に込められている感情がどんどん変わっていくという手の凝った歌詞の書き方をしています。

09. ドレスコード
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

世界観があるものにしたくて“舞踏会”や“エスコート”といった華々しい世界のなかで、ちょっと強めな女の人を主人公に置いて、歌詞を書いていきました。みんな、その女の人のことを狙ってるんですよ。“おほほほほほー”って笑うような高貴な女性をここでは描きたかったんです。そこは、完全に曲調ですよね。“トゥットゥー”は、仮歌に“ラッラー”か“フッフー”みたいな感じであのメロが入ってたんですよ。俺は、女性がツンとした表情でおすまししてる感じをそこで出したいなと思ってたら、あの“トゥットゥー”が出てきたので、そのまんま使いました。歌詞のなかで“御目に敵う 一流 それ以外は 一列”、ここがめっちゃ大好きですね。ワードが気に入ってる。自分が選ぶ者以外は、そこで一列になってて、っていうことが言えちゃうところがカッコいい女性ですよね。“鏡よ鏡 この世界で一番は 誰? 「勿論」付けてよ”もカッコいい。とにかくカッコいい女性を描いてみたかった。気品があってカッコいい女性なんですよ。この曲は歌詞がめちゃくちゃ短いので、当然入れられる文字数が少ないんです。その範囲内で書いてるから、余計なものは全く入れてないですね。

10. gossip!!
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

“2こ上の階”というのがあるから、主人公は学生ですね。青春時代って、すぐ噂になるじゃないですか? 目立つ人がいると。手の届かない人に恋い焦がれている。そんな男の子の設定が面白いかなと思って、年上の人気者の女の人を好きになった男の恋心を書いてみました。ここでは、学生の頃の恋心を“鼓動を握るのは あの子で それは もう自由自在に 速度まで操れるんだ”って書いたんですけど、学生時代の恋って、相手に近づいただけでドキドキしてしまって。こういうのって、向こうにバレてしまうんじゃないかなって思いませんでした? 俺はよく思ってたんですよ。「やべっ。バレるだろう、このドキドキは」っていうぐらいドキドキしてたので。そういうドキドキの速度まで相手に操られてしまう感じを、ここでは表現しました。同じような設定で書いた「サーカス」という曲では、憧れのあの子と最後にはうまくいくんですけど、これは、どうなるんだろうっていうところで終わるんです。“見た目と 噂話が包む”の噂話が包むというところは、学生時代の恋愛においては、結構リアルなところなんじゃないかなと思いますね。モテる女の人って、「めっちゃ怖いヤツと付き合ってるらしいよ」とか「彼氏は大学生らしいよ」とか「誰かと車乗ってるの見た」とか。勝手に悪い噂が広がっていったりするものじゃないですか? そういう噂ばかりが男の子のなかでもどんどん膨らんでいっちゃうんですよ。 “ほんとは 手を繋いだりもしたい”って心のなかでは思ってるんだけど、結局最後まで伝えきれないで、まだ恋愛が始まってもいないままでこの歌は終わるんです。学生時代の恋って、恐ろしいほど自分のなかに煮えたぎってる想いがあるんですよね。でも、この曲のように伝えられなかった想いは、俺の場合ほとんどないです(笑)。考えたら、この曲も全然ライブでやってないですね~。ここら辺の曲はまあまあ新しいから、なかなかやれないんですよ。好きな人もいるだろうから、やらなきゃね。

11. 残り香
(作詞・マオ/作曲・ゆうや)

別れから始まるバラードです。いい曲ですね。向こうはふっきれてるんです。でも、こっちはふっきれてなくて、せつないですね。だから「残り香」というのは、まだ自分のなかで消えないで残っている彼女の面影のことを表現しています。そうして“あれから 幾つかの 恋をした ふりをした僕に 受話器越し あなたは 穏やかにうなずいた そうじゃない”とあるので、ふたりは別れた後もまだつながりはある関係なんですよね。受話器越しに、自分はまだふっきれていないくせに、彼女に次の恋をしてるんだっていうことをほのめかして言うんですよ。こっちとしては“えーっ”って悲しんでくれることを少しは期待してたのに、彼女は悲しむこともなく“うんうん”って穏やかに聞いてるんです。いやいや、そこはうなずかないでよっていう気持ちになって、余計に傷が深まるという。せつないですよね(苦笑)。別れたあとも、彼女は友達状態という関係がずっと続いているもんだと思ってるんですよ。それで、向こうはこっちの気持ちはなにも知らずにたまに無邪気に“優しさの 赤い絵文字”を送ってきたりするわけですよね。だから、最後は“本当の さよなら”を自分から言うしかないなと思って彼女に伝えるという……。切ないお話ですよね。この歌詞のなかでは、“子供の頃も かさぶたを 我慢できず”が俺は好きなんですよ。ほっとけば傷は治るかもしれないのに、我慢できなくて剥がしちゃう人っているじゃないですか? そういうはっきりさせたい性格だから、電話してみたりとかしちゃって、余計に傷が深くなるんです。かさぶたは、俺も剥がしてたかも。でも、綺麗に剥がしてましたけどね(笑)。俺、めちゃめちゃ怪我してたんですよ。普通の子供の10倍ぐらいは怪我してた(笑)。そういう遊び方しかしてなかったから。怪我してもなんとも思ってなかったんですよ。痛くても、血が出てても、楽しいほうを取りたかったから。ちょっとアホだったのかな(爆笑)。

ヘア&メイク / 坂野井秀明
スタイリング / 奥村 渉

衣装協力 / NOID.
https://store.noid.jp/

次回 8th Album『OUTSIDER』編は2月上旬掲載予定です。


LIVE DVD / Blu-ray『SID TOUR 2017 「NOMAD」』

2018年7月25日リリース
【初回生産限定盤DVD(DVD+写真集)】
KSBL-6322-6323 ¥6,000+税
【通常盤DVD】
KSBL-6324 ¥5,000+税
【初回生産限定盤Blu-ray(Blu-ray+写真集)】
KSXL-268-269 ¥7,000+税
【通常盤Blu-ray】
KSXL-270 ¥6,000+税

Mini Album『いちばん好きな場所』

2018年8月22日リリース
【初回生産限定盤(CD+DVD)】
KSCL-3076-3077 ¥2,788+税
【通常盤(CD)】
KSCL-3078 ¥1,852+税

ライブ情報

SID 15th Anniversary ASIA TOUR “THE PLACE WHERE WE LOVE MOST 2019”

2019年2月15日(金) Legacy Taipei / Taipei
2019年2月20日(水) MacPherson Stadium, Mongkok, Kowloon / Hong Kong
2019年2月22日(金) BANDAI NAMCO SHANGHAI BASE DREAM HALL / Shanghai
2019年2月24日(日) Tango livehouse / Beijing

SID 15th Anniversary GRAND FINAL at 横浜アリーナ ~その未来へ~

2019年3月10日(日) 横浜アリーナ
http://archive.sid-web.info/15th/
公演スケジュールなどの詳細は公式サイトをご参照ください。

マオ from SID

マオ/福岡県出身。10月23日生まれ。2003年に結成されたロックバンド、シドのヴォーカリスト。
2008年10月「モノクロのキス」でメジャーデビュー。以降、「嘘」「S」「ANNIVERSARY」「螺旋のユメ」など、数多くの映画・アニメテーマ曲でヒットを放つ。2018年、バンド結成15周年を迎え、4月にはセレクションベストアルバム『SID Anime Best 2008-2017』をリリース。直後の5月から6月28日まで”SID 15th Anniversary LIVE HOUSE TOUR 2018”と銘打った全国6都市14公演ツアーを開催。9月からはLIVE HOUSE TOUR”いちばん好きな場所”を展開、11月21日のマイナビBLITZ AKASAKAで全国31公演を無事に完走した。

オフィシャルサイト
http://www.maofromsid.com
http://sid-web.info

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