Interview

歌舞伎界のプリンスが「お茶の間」へ! 中村隼人、究極の恋愛ドラマに挑む

歌舞伎界のプリンスが「お茶の間」へ! 中村隼人、究極の恋愛ドラマに挑む

禁断の愛、三角関係……久しぶりの超・恋愛ど真ん中ドラマと話題の「せいせいするほど、愛してる」。その中で主演の武井咲、滝沢秀明に負けない存在感を発揮、注目を集めているのが中村隼人だ。
二代目中村錦之助を父に持ち、幼少期から歌舞伎の名優に鍛えられ、高校時代は神木隆之介、山田涼介らと過ごしたという歌舞伎界の貴公子だが、30kg体重を増やして現在の体型をつくったという意志の強さ、演じることへの情熱は、若手の俳優の中でも傑出している。ドラマをはじめ、さまざまなジャンルに自分の可能性を広げ始めた22歳の爽やかで熱いインタビュー。

取材・文 / 村崎文香 撮影 / 森崎純子


成長とは、親だけが全てではないことを知っていく道筋

民放ドラマに初のレギュラー出演ですね。

はい。しかも、大人の恋愛ドラマという、僕自身、引き出しのないところで(笑)。三角関係や禁断の愛など、経験のないこと尽くしなので、やっていて勉強になることは多く、その難しさを克服して、自分自身成長していきたいです。僕が演じる久野淳志という人物は、トレーダー兼小説家という夢のような役柄。でも、闇を抱えているというか、秘密を持っています。きらびやかな外見とは違う冷酷さも持っていて……。ひと言でいうと、“女の敵”でしょうか(笑)。これから、どういう人物なのかが浮き彫りになってきます。楽しみにしていてください。

歌舞伎とは随分勝手が違うと思うのですが。

まず、動きの大きさが違いますね。映像は視線だけで表現できる。だからこそ、いつにも増して全神経を集中させなければいけない。自分で違うなと思ったら、視線や細かい動きでガラッと変えることができるところも違いますね。

武井咲さん、滝沢秀明さんら共演者の方々はいかがですか?

武井さんは同い年なので、お話することも最近増えてきました。滝沢さんは舞台もやっていらっしゃって、共通の知り合いも多いので、よくお話をさせていただいています。年齢が近い方が多いですが、みなさん映像は僕より先輩なので、撮影現場では学ばせていただいています。

なんというか、真面目というか……とても素直に育っていらっしゃったように見えます。

僕、素直なんです!(笑) 反抗期というのもほとんどなかったです。歌舞伎では、父親=師匠で絶対的な存在。母親は一歩下がって支えてくれる。普通の家庭のように親に反抗しながら自分を確立していくというより、親以外にも尊敬できる歌舞伎の先輩が周りにたくさんいて、先輩方の言葉からも学ぶことが多く、僕にとって、成長というのは、親だけが全てではない、そのことを知っていく過程でした。

hayato_n1607-8159ML

名優と言われる人の周りには、異空間が立ち上がる

自分のやりたいこと、進むべき道が見えない人も多いなかで、物心ついたときから歌舞伎の世界にいて、自分の道が見えているというのは、うらやましいような、大変なプレッシャーのような……。

小さい頃から歌舞伎は身近にありました。小学2年生が初舞台です。多くの俳優は初舞台のあと、小中学校のころはしばらく学業優先というか、歌舞伎から離れるんですが、僕は離れることが全くありませんでした。生活の中に歌舞伎はあって当たり前のものでした。だからこそ、同世代では経験していない挫折を味わいました。

……挫折?

初舞台のとき、坂東玉三郎のおじさんが母親の役でご出演されていました。それから頻繁に舞台をご一緒させていただいていたんですが、小学4〜5年生のときです。そのとき僕は女方で、お姫様のお役でした。毎日稽古をしながら「ここはこうしたほうがいい」と玉三郎のおじさんにご指導いただきながら、直していったんですが、千穐楽の日におっしゃられました。「最後までここはできなかった」と。それまでは、ほめられたことしかありませんでしたけど、僕が成長したからこそ、そうおっしゃってくださったのでしょう。ですが、初めて「できなかった」と指摘されたことは、ものすごくショックでした。「もっとたおやかに」「もっと艶やかに」……当時の僕には理解できなかった事が多かったです。いまでしたら、なぜそうおっしゃられたのか、わかります。とても悔しい思いをしましたが、歌舞伎をもっと知りたいと思いました。

玉三郎さんはそのくらい大きな存在だったということですね。

玉三郎さんのお母様に3歳のときから日本舞踊を習っていたんです。ですので、子どものころから玉三郎さんは「身近なようで、遠い存在」でした。「名優」と言われる人には一種独特のオーラがあります。その人が立つだけで異空間が立ち上がる。玉三郎さんがまさにそうで、その玉三郎さんに頂いたご指導は、いまも忘れません。

女方(おんながた/女性の役を演じる役者)から立役(たちやく/成年男子の役。善人・美男の芝居の主要な役)に転じられたそうですが。

歌舞伎俳優は、30歳くらいまではどちらもやります。僕も今年の1月公演では、女方をやりました。でも、声質、体格など、いろいろ考えると、僕の声質、身長(175cm)で女方をやるのはものすごく努力が必要です。というのも、僕の身長で鬘をかぶると、立ち姿が180cm以上になってしまう。膝を折って10cmは低く見せなければいけない。その努力をしている間に、身長160cmくらいの人は別の努力ができるんです。玉三郎のおじさんにもあなたは「立役」でやったほうがいい、とおっしゃっていただきました。今後は立役一本でやっていこうと思っています。

hayato_n1607-8006ML

みんなそれぞれ悩みはある。限界を超えて強みにできるかどうか

ダイエット花盛りの今の時代に、あえて体重を30kg増やす努力をされたと聞きました。

歌舞伎はほとんど着物で演じるので、太っているほうが見栄えがいいんです。着物は腰回りがあったほうが帯も落ち着くし、似合います。舞台に上がったとき、体型も顔も大きいほうが映える。もっと太ったほうがいい、と平気で劇評に書かれる時代もあったそうです。僕は手足が長いんですが、歌舞伎俳優としてはあまりいいことではない。でも、それを「人にはないものが、武器になるから」と吉右衛門のおじさんにおっしゃっていただきました。気にしていた身長の高さも「小さく見せることはできても、大きく見せることはなかなかできない」とも。それから、自分の体型も苦ではなくなりました。自分の持っているものを生かそう、と。

太りにくい体質だと伺いましたが、食生活を変えるのは苦しかったのでは?

苦しかったです。ですが、みんな、いろいろ悩みはありますよね。それこそ太ってしまって大変、痩せたいって人もいますし。人それぞれ悩みがある。ですが、僕は悩みを強みにできてきた。やっと、そう思えます。

hayato_n1607-8139ML

舞台のたびに役に合わせてトレーニングをされるのでしょうか?

1月のように女方を勤めるときは、体が大きく見えないように膝を折って、肩幅も広く見えないようお客様から細く見える角度を考えて動きます。指の重ね方や、角度も考えて工夫しながら演じます。逆に、立役のときは胸を張り、もうめいっぱい体を大きく見せていいんですけれど。女方をやると一ヶ月で太腿も首も太くなり、なで肩にもなる。立役を勤めると胸の幅が厚くなる。体型はお役で変わるんです。

自分の可能性をどんどん広げていく仕事ですね。

そうですね、何百人、何千人もの先人たちがいて、その人たちが苦労してやってきたことを見ると無理なことや限界はないんだなと思います。それを信じてやっています。

高校時代の同級生は、僕にとって帰る場所

堀越学園では神木隆之介さんや山田涼介さん、志田未来さんらと同期ですね。「華の93年組」と言われています。

「華の93年組」なんて言われているんですか? 知らなかった。僕は例外ですね、残念ながら(笑)。あの場所に身を置けてよかった、と思っています。ほかの高校に行って、学業に精を出してふうふう言いながらやる道もあったけれど、僕の今回の人生はそうでない道を選んだ。大学にも進学しなかったので、学生時代というと中学くらいで、集まるとなっても中学の同窓会しかないというのは、少々淋しいところはあります。本当に帰るところ、休まるところはどこなのかなって考えることもありますが、高校の友人はみな芸能界で頑張っている人たちばかりなので、休まるところが彼らだったりするんだと思います。

hayato_n1607-8064ML

みなさん、子どもの頃から仕事をしていらっしゃるせいか、年齢の割に大人っぽい気がします。

老けてるんです(笑)。あ、いや、表面的には。中身は……子どもです(笑)。

たとえば、どんなところが?

コンビニで新発売のドリンクが出たらすぐに買って飲んだり(笑)。好きな食べものはカレーにパスタ、オムライスです。

日本人の感覚の全てが歌舞伎にはある

オフの日って、あるんですか?

あまりないですね。昨年は12ヶ月で12公演出ていたので1日もなかったです。いまはドラマに出させていただいているので、「撮休(さつきゅう)」と言って週に1日お休みがあるんです。そうなると逆に、もう、何していいかわからないんです(笑)。

で、何をしているんですか(笑)?

お稽古に行ってしまいます(笑)。茶道や日本画を習ったり、歌舞伎に直結するお稽古事もありますし。最近では古館伊知郎さんの新書を拝読しました。話し方のコツとか、古館さんが何十年、パーソナリティやキャスターとして学んだことが書かれていてとても面白く、勉強になります。昨年からNHK-FMの番組『邦楽ジョッキー』のパーソナリティを始めたので、初対面の方と2~3時間話すことがあるんですが、歌舞伎俳優がやっているラジオ番組なんですが、ラジオ番組としてきちんと成立するものにしたくて。

hayato_n1607-8123ML

いろんな意味で真面目というか、勉強熱心というか、自分の道をひたすら極めようとされているようです。これからのビジョンを聞かせてください。

やはり歌舞伎に必要とされる人材になることです。お客様にも、主役を勤める先輩方にも、「中村隼人がいないとね」と言われる俳優になりたい。まだまだ吹けば飛ぶような存在なので、ちゃんと地に足付けてやっていきたいです。

憧れの先輩俳優さんは?

市川染五郎のお兄さんと市川猿之助のお兄さん。染五郎のお兄さんは劇団☆新感線など、歌舞伎以外の舞台にも出ていらっしゃいますので、お会いするたびにいろんなアドバイスをくださいます。僭越ですが、僕、勝手に、声質や体型が似てるんじゃないかと思っていて、こっそり真似しているんです(笑)。猿之助のお兄さんが『スーパー歌舞伎? ワンピース』に出させて下さったからこそ、新しい世界が開けた部分があります。そうでなければ、こんなにいろいろな仕事に興味は沸かなかったかもしれません。

最後に、歌舞伎の魅力を歌舞伎を観たことがない若い世代に伝わるように、教えてください。

とにかく一回は観てほしいです、日本人なら。そのきっかけが僕であれば、すごく嬉しい。もちろん、僕でなくてもいい。いろいろな娯楽がある中で、高いチケットを購入して、わざわざ歌舞伎の舞台に足を運んでくださる人がいらっしゃる、その意味。やはり日本最高峰の伝統芸能です。 松本幸四郎のおじさんがおっしゃっていたのですが、「歌舞伎俳優は何でもはやらなくていいけれど、何でもできなくちゃいけない」と。深いなぁと思います。

歌舞伎の魅力を語り出したら何時間でも喋り続けてしまうので、入り口だけ言うと(笑)、歌舞伎には全ての色彩の原点がある。紫、赤、黒、という色の合わせ方は、よく見ると思うんですけど、その原点が「助六」という演目の着流しにあったり、花魁の衣裳にあったり。昔は灯りがロウソクしかなかったから、「隈取」ができたり。日本人の持っている感覚の集合体が歌舞伎の舞台にはあります。そういう日本人の知恵が詰まった舞台が海外でも評価されているのは嬉しいことです。

色彩、そして様式美。言葉がわからなくても、400年続いてきた芸能ですから、訴えかけてくるものはあると思う。また、TVで観たことがある俳優さんが舞台に立つとどう変わるのか、是非観に来てくださると有難いです。一回ハマったら抜け出せない。それが歌舞伎の魅力だと思います。

プロフィール

中村隼人

1993年11月30日生まれ。東京都出身。射手座。A型。
二代目中村錦之助の長男として生まれ、‘02年、歌舞伎座『菅原伝授手習鑑 寺子屋』の松王丸一子小太郎で初代中村隼人を名乗り初舞台。『義経千本桜』の源義経、『おちくぼ物語』の左近少将など美しい貴公子役で評判をとる傍ら、スーパー歌舞伎?『ワンピース』サンジ/イナズマでの評判は記憶に新しい。大河ドラマ「八重の桜」や「メンズキッチン2」(LaLaTV)、「揖保乃糸」TVCMなど、映像にも意欲的だ。

TBS系連続ドラマ『せいせいするほど、愛してる』

?TBS

TBS系

毎週火曜午後10時
 ※時間はやむを得ず変更になる場合がございます。

【原作】
北川みゆき「せいせいするほど、愛してる」(小学館刊)
【脚本】
李正美 渡邉真子 井上聖司
【主題歌】
松田聖子「薔薇のように咲いて 桜のように散って」

【出演】
武井咲/滝沢秀明
中村蒼/水沢エレナ/トリンドル玲奈/中村隼人 他