『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』特集  vol. 1

Interview

『PSYCHO-PASS サイコパス』4年ぶり新作でメインキャラへ! 声優・佐倉綾音、高校時代から演じてきた“憎まれっ子”と大人への成長を語る

『PSYCHO-PASS サイコパス』4年ぶり新作でメインキャラへ! 声優・佐倉綾音、高校時代から演じてきた“憎まれっ子”と大人への成長を語る

人間の心理状態を数値化し管理する近未来を舞台に、潜在犯を裁き取り締まる刑事の活躍を描く人気アニメシリーズ『PSYCHO-PASS サイコパス』。2012年のTVシリーズ第一期、2014年の第二期、2015年の『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』を経て、これまで語られてこなかった登場キャラクターたちのエピソードに焦点を当てた、シリーズ約4年ぶりのスピンオフ新プロジェクト、劇場版3部作『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』が、2019年1月よりいよいよ公開をスタートする。

その1作目となるのが、『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』後の2117年冬を舞台に、正義漢の強い若き女性監視官・霜月美佳(CV:佐倉綾音)と、複雑な過去を抱える元エリート監視官の執行官・宜野座伸元(CV:野島健児)が、青森の潜在犯隔離施設<サンクチュアリ>の深い闇を暴く「Case.1 罪と罰」だ。TVシリーズ第二期では、人々を支配するシビュラシステムに懐疑的な同僚たちに反発し、孤高の“嫌われキャラ”だった霜月美佳。全シリーズを通じて霜月を演じている声優・佐倉綾音に、作品の見どころ、霜月とシリーズへの想いを語ってもらった。

取材・文 / 阿部美香 撮影 / 増永彩子


憎まれ役だった霜月が、主人公のひとりになるとは思ってもみなかった

2015年公開の劇場版以来、久々のシリーズ復活ですね。新プロジェクト『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』の始動が発表されたのは2018年春。キャストさんにはそれ以前にお話があったかと思いますが、佐倉さんはどう受け止められたのでしょうか?

佐倉綾音 もう2年以上前になるんですが、事務所から「次の作品です」と渡された資料の中に、さらっとこの作品の台本が入っていまして。「これは何ですか?」とマネージャーさんに聞いたら、「『PSYCHO-PASS サイコパス』が3部作をやるらしいです」と、さりげなく言われ。「え?そうなんだ!……あれ? 霜月の絵が資料の表紙にあるけど……霜月×宜野座編って書いてあるけど!?」と思いながら台本を読んでみたら、ほぼ全ページ喋っているみたいな状況で……とてもびっくりしました。

しかも劇場版ですから、驚きもひとしおでしたね。

佐倉 それが……その時は「3部作」としか聞いていなかったので、OVAとかテレビの特別放送かな?と、勝手に思い込んでいまして。後で塩谷(直義)監督から、「まだまだ『PSYCHO-PASS サイコパス』を大きく広げていきたいんです」というお話を伺って、そんな大規模なプロジェクトなんだ!と、現場で思い知りました。なので最初は、嬉しい、頑張る!というよりも、ポカンとあっけにとられてしまって。それが一瞬にしてプレッシャーに変わり……喜びをかみしめている余裕がなくなりました(笑)

プレッシャーの中身は何だったのでしょう?

佐倉 『PSYCHO-PASS サイコパス』に関しては、いろいろな思いをしてきました。第一期ではただの普通の女子高生で、猟奇殺人事件で幼馴染みを殺されてしまう被害者のひとりとして霜月を演じていました。今でもよく覚えているんですけど、収録を終えたら塩谷監督と総監督の本広(克行)さんに、「次も霜月、出るからね」と言われまして。「え?どういうことですか?」と聞き返したら、「あははは!」と笑いながらいなくなっちゃったんですよ(笑)。「どういうことですかーー!?」と思っていたら、『PSYCHO-PASS サイコパス 2』からはしっかりとレギュラーでスケジュールが入っていて、まさかの公安局刑事課一係に配属されていましたね。

19歳で異例の最年少監視官となった霜月は、『PSYCHO-PASS サイコパス 2』では、シビュラシステムが判定した潜在犯は直ちに排除すべきだという頑なな信念を持ち、公安局のセオリーからはみ出す主人公の先輩監視官・常守朱(CV:花澤香菜)に相当反発していましたね。

佐倉 そうなんです。なので、第二期の第1話の時には塩谷監督から、「全世界の視聴者の方に嫌われてください。霜月としての佐倉さんは、花澤香菜さんのことを嫌いになってください」と言われていまして。自分の役が嫌われることはもちろんですけど、誰かを嫌いになることも、相当しんどい。とはいえ、「全世界の人に好かれてください」と言われるよりはマシかな? と思いながら、演じていましたね(笑)。

視聴者に嫌われる演技をしようと。

佐倉 はい。とにかく霜月の中の正義は歪めずに、悪としてではなく、正義を貫いてしまったからこその憎まれ役を念頭に置きながら、演じていきました。ところが、今回の「Case.1 罪と罰」では、そんな霜月が主人公のひとり。憎まれ役が「主人公になってください!」と言われるとは思ってもみなかったし、過去のシリーズから考えると、私の中では急カーブで。どこまで、霜月にいろんなものを背負わせなければならないんだろう?……というのが、本当にプレッシャーだったんです。今まで黒だったものを白にしてくださいと言われても、グレーにしかならないんじゃないかなと(苦笑)。

主人公たるもの、作品を観る人に共感される人物でなければならないですよね。

佐倉 そこで、どうしようかと思っていたら、上がってきた脚本の中の霜月は、じつにいつも通り。「これでいいんだ、こういう主人公なんだ、彼女は」と納得しましたね。彼女は彼女なりに一生懸命、信じる正義のために頑張っている。そういう彼女にとって、宜野座さんとバディを組んでの「Case.1 罪と罰」での潜在犯隔離施設<サンクチュアリ>の捜査は、願ったり叶ったりの事件だったと思います(笑)。

「あいつはそういうヤツだから」と思ってもらえることが霜月のゴールに

「Case.1 罪と罰」は、TVシリーズ第二期とその後の一係を描いた劇場版より後の物語です。変わらず自らの信念と正義を貫く霜月でありながらも、一係の仲間との関係性や深い内面の部分に、変化を感じました。

佐倉 そうですね。霜月自身は、自分がみんなを引っ張って行くんだと思っているようですが、実は先輩たちに霜月は引っ張られている。そういう力関係が、今回はとくに垣間見えますね。仲間と一緒に時間を過ごしてきたことで、孤立していた霜月が、知らない間に一係の絆の中にどんどん組み込まれていってる図になってきたなと。そういうところに、霜月の変化や成長が見て取れると思います。

今まで霜月が反発してきた、常守朱の霜月に対する態度にも、信頼感が感じられましたね。

佐倉 私もそう思います。お互いが考えていること、思考や行動が少しずつ読めている雰囲気が、今回はありましたね。ちょっと背中を預けあっているかな? と。仲間感が出てきていた気がします。ただ……『2』以降を観ていた方には、まだ霜月をなんとなく許せない感じは、どうしても残ると思うんです(笑)。

でも、「あいつはそういうヤツだからな」と皆さんに思ってもらえること自体が、ある意味、霜月にとってのゴールなんじゃないかな?と、思ったりします。私には霜月ほどのパワーはないですが、自分が持っていないものがあるからこそ、霜月に憧れる部分も大きいんですよね。

霜月を演じてきた佐倉さんだからこその言葉ですね。「Case.1 罪と罰」のセリフで、印象に残ったことは?

佐倉 どんどん彼女のセリフに説得力が増していると思います。それは『2』では禾生(壌宗)公安局局長に実は心を折られたり、大人の汚さや権力に屈するような経験を経てきたからこそで。それを表現することが、お芝居としての高いハードルだったりもするので、「Case.1 罪と罰」のお芝居はすごく難しくて、プレッシャーに感じる部分が大きかったです。

ただ、彼女のセリフはたまに、耳の痛いことがあるんですよね。客観的に霜月を見ているとイライラもしちゃうんですが(笑)、「もしも私が霜月なら、やっぱりそうしたかもな」とか「霜月ってすごいな、人はこうあるべきかも知れない」と思える部分が、やはりある。心を折られながらも真っ直ぐに成長してくれている霜月には、ホッとしますね。

たしかに、何があっても彼女自身はねじ曲がらないですよね。

佐倉 そうなんです! こんなに、人のことを考えている人たちだらけの一係にいて、相変わらず、自分のことばかり考えていますから(笑)。そんな中、今回驚いたのが、<サンクチュアリ>のカギを握る夜坂泉(CV:弓場沙織)との対話シーンで。この娘にも優しいところがあるんだ、人間の血が流れてるんだ!(笑) と、霜月の新しい一面を見ることができました。きっと、もともとはそういう優しい娘だったと思うんですよ、霜月も。私たちに見えていなかっただけで。そういうことも感じさせてもらえるお話になっていますね、「Case.1 罪と罰」は。

もうひとつ、とても印象的だったシーンは、朱に向かって「今回は、私の事件ってことでいいですよね、センパイ」とガッツポーズをしていたところ。「うんうん、(捜査を)手がけたかったんだね~」とほっこりしました(笑)。

人間らしい霜月の姿を、ぜひ皆さんに劇場でご覧いただきたいですね。きっと、霜月美佳に対する印象も変わるんじゃないですか?

佐倉 変わっちゃいますかね?……うーん、それはそれでちょっと寂しいかな(笑)。

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