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“ベストアニソン5選”で振り返る2018年のアニソン・シーン。音楽評論家/音楽プロデューサー・冨田明宏が選んだ珠玉の楽曲とは?

“ベストアニソン5選”で振り返る2018年のアニソン・シーン。音楽評論家/音楽プロデューサー・冨田明宏が選んだ珠玉の楽曲とは?

Aqoursが、刀剣男士が、そしてYOSHIKI feat. HYDEが『進撃の巨人』テーマ曲で登場した紅白歌合戦から早くも約1か月。2018年もアニメソングにはいくつもの名曲が生まれたが、それらを今一度振り返りながら、1年のシーン全体を総括するという当企画。大反響となった昨年の第1回から引き続き、エンタメステーションでも数多くのアーティストを取材する音楽評論家/音楽プロデューサー・冨田明宏さんに再び話を聞いた。

「たくさんのアーティスト、何百もの楽曲の中から5曲を絞り込むのは本当に悩ましい……」としながらも、厳選された2018年の5曲。またこれとともに、2018年を語る上で重要な楽曲・トピックに至るまで、話題は多岐にわたった。

取材・構成 / 柳 雄大


LiSAの快挙と、アニソン“10年選手”たちの活躍

LiSA「ADAMAS」
作詞:LiSA 作曲:カヨコ 編曲:堀江晶太
TVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション』OPテーマ
リリース:2018年12月12日

2018年はまず、LiSAさんの活躍がすごかったですね。本当に、彼女の“孤高性”のようなものがどんどん増していった一年だったと思います。まずは5月リリースのベストアルバム(『LiSA BEST -Day-』、『LiSA BEST -Way-』)が週間チャートで1位・2位のワンツーフィニッシュを飾ったのがすごい話題でしたが、年末リリースの「ADAMAS / 赤い罠(who loves it?)」もものすごいスピードでゴールドディスクになっている。LiSA×『ソードアート・オンライン』シリーズはこれまでも必殺の名曲を生み出してきましたが、今回の「ADAMAS」でも野心溢れる新機軸を打ち出した。『アリシゼーション』の壮大な世界観を疾駆するように鳴り響くストリングスを利かせたロックサウンドは、LiSAの新たな武器となりえるでしょう。あわよくば紅白出場か!? という勢いも見せてくれただけに、来年こそは期待したいですね。

藍井エイル「アイリス」
作詞:Eir 作曲:ArmySlick、Lauren Kaori 編曲:ArmySlick
TVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション』EDテーマ
リリース:2018年10月24日

そして、活動休止から復活した藍井エイルさん。2018年は復帰作として「流星」と「アイリス」のシングル2作をリリースしていて、どちらも甲乙付けがたいところですが……あえて1曲選ぶなら「アイリス」です。彼女は復活公演がいきなり武道館で、それが本当にすばらしかったというのも大きい。もう、過去最高にいいライブをやってくれたんですよ。

LiSAさん、藍井エイルさんと続きましたが、彼女たちと同年代デビュー組アーティストの躍進だったり、復活だったり、新機軸だったりがすごく目に止まる一年でもありました。例えばMay’n部長(※1)。アニソンという観点ではないですが、彼女は2018年に初めてミュージカル(黒澤明 没後20年記念作品『ミュージカル 生きる』)に挑戦したんですよ。宮本亜門さん演出、市村正親さん、鹿賀武史さん主演(ダブルキャスト)の舞台で、本格的なお芝居初挑戦とは思えないくらい見事な演技で!もちろんも歌もそうなんですけれども、本当にすばらしかったです。

※1 May’n部長
※ライブのことを「ライ部」、ファンクラブ会員のことを「部員」と表現するなど、部活になぞらえたネーミングを好んで使っているMay’nはファンの間でこう呼ばれている。

あとは『とある魔術の禁書目録(インデックス)』8年ぶりのTVシリーズが始まりました。これまでOPテーマを歌ってきた川田まみさんが8年の間に引退されたので、2018年からのシーズン3のOPテーマは黒崎真音が引き継いで歌っています。僕の事務所(株式会社一二三)所属のアーティストなので敢えて敬称を外しますが(苦笑)、黒崎もミュージカルに挑戦したり、昨年は実写映画『BLOOD-CLUB DOLLS 1』に出演したりしているんですけれども……そういったさまざまな活動を経ながらも、2010年前後にデビューし“10年選手”へと向かっていく彼女たちに、2018年もちゃんと存在感があったというのはひとつのトピックだったと思います。

胎動する“2017年~18年デビュー組”の面白さ

鈴木みのり「FEELING AROUND」
作詞・作曲:三原康司 編曲:田中ユウスケ・立崎優介・近藤隆史 ホーン編曲:田中ユウスケ・武嶋 聡
TVアニメ『ラーメン大好き小泉さん』OPテーマ
リリース:2018年1月24日

この曲は個人的にも、2018年の上半期にもっとも聴いてた曲のひとつじゃないかなと思います。フレデリック(ロックバンド)の三原健司さんが書いた楽曲も良かった。鈴木みのりさんはこれがソロデビュー曲になりましたが、ワルキューレ(※2)の活動といい、『マクロスΔ(デルタ)』組はすごいです。『マクロスF(フロンティア)』の放送から2018年でちょうど10年が経って、彼女たちは言わばその『F』で育った世代ですよね。同じワルキューレからひと足先にソロデビューしていた東山奈央さんも、「灯火のまにまに」(TVアニメ『かくりよの宿飯』OPテーマ)っていう、彼女の高いポテンシャルがものすごく引き出された楽曲で印象に残っています。

※2 ワルキューレ
TVアニメ『マクロスΔ』に登場する5人組の“戦術音楽ユニット”。劇中の歌唱パートをJUNNA、鈴木みのり、安野希世乃、東山奈央、西田望見の5人が担当している。

『マクロスΔ』組の皆さんもそうですが、2010年代デビュー組に影響を受けた世代、2020年代に向けて次世代のスターになる人たちの名前と顔が出始めたというのもこの1年のトピックで。例えば亜咲花さんの「SHINY DAYS」(TVアニメ『ゆるキャン△』OPテーマ)、大原ゆい子さんの「言わないけどね。」(TVアニメ『からかい上手の高木さん』OPテーマ)あたりもすばらしい楽曲でした。さらに、次のクール(2019年1月~)では、ASCAさんが『ソードアート・オンライン アリシゼーション』の新OPテーマをLiSAさんから引き継いでいたりもして……そのあたりも含めて、 “LiSA・エイル・May’n”世代と比較される新人アーティストっていう見え方もすごく意識するようになりましたね。10年ぐらいのキャリアで一時代を築いた先駆者たちと、「さぁ2020年代は俺たち・私たちが作るぞ」っていう新人アーティストたちの胎動。その対比も2018年の非常に面白かったところです。

別の例では、2018年は宮野真守君もアーティストデビュー10周年でした。ベストアルバムをリリースし、FCイベントを横浜アリーナでやったり、「FNS歌謡祭」にも出演して郷ひろみさんとデュエットしてたり。いわゆる一般メディアへの躍進も含めて、この周年という節目でものすごい活躍でした。彼との対比という形で注目していたのが、2018年アーティストデビューした内田雄馬くん。リリースした楽曲も超フレッシュでしたし、しかも彼の初ステージが東京ドームの「KING SUPER LIVE」(※3)だったという。それを拝見しながら、粗削りながらステージングと歌の存在感も魅力的に映ったし、何より大きな可能性を感じましたよ。彼がもしかしたら10年後、宮野真守君のような存在になってるかもしれないというワクワク感もあります。

※3 東京ドームの「KING SUPER LIVE」
キングレコード主催によるアニソン・ライブイベント。第3回目となった2018年には、開催地をこれまでで最大規模となる東京ドームに移して行った。

悪ふざけの天才的作品と、“声優とラップ”という発明

フランシュシュ「徒花ネクロマンシー」
フランシュシュ…源さくら(本渡楓)、二階堂サキ(田野アサミ)、水野愛(種田梨沙)、紺野純子(河瀬茉希)、ゆうぎり(衣川里佳)、星川リリィ(田中美海)
作詞:古屋真 作曲・編曲:加藤裕介
TVアニメ『ゾンビランドサガ』OPテーマ
リリース:2018年11月28日

『ゾンビランドサガ』のOPテーマはすごくいい曲でしたね。作曲・編曲を手がけている加藤裕介さんは、僕が言うまでもないベテランの方なんですけど、ここ最近、例えばワルキューレ「一度だけの恋なら」(2016年)とか、藍井エイル「ラピスラズリ」(2015年)とか……とにかく「キャッチーでいい曲だな」と思う曲は加藤裕介率がすごく高い、という気づきがあり(笑)。ベテランだけどあらためて注目のサウンドクリエイターだなと思います。

あと『ゾンビランドサガ』はOP、EDもそうですし、第2話に出てきたラップバトルとかも含め、あの“声優力”で引き込まれる感じもすごかった。そしてアニメと音楽の“悪ふざけの天才”ですよね。それができるのが日本のアニメとアニソン文化のいいところだなと思わせてくれました。“声優が伸び伸びしていて楽しそう”なのと“オトナが本気で遊んでるもの”って、やっぱりお客さんにもその魅力が伝わるんですよ。

(先述の)ラップバトルのシーンでもそうですし、まだアニメになってない作品では『ヒプノシスマイク』(※4)もそうなんですが、“声優とラップ”っていうのはやっぱり発明だったなと。今まで、声優さんのキャラクターソングにはアニメの本筋とか、そのキャラクターの設定とは違うところでキャラを知れるっていう、アナザーストーリー的な楽しみ方がありました。その1つ先を行ったのがラップで。ラップって、やっぱり「セリフ」に近いんですよね。だからこそ過剰なほどに説得力が生まれたり。『ゾンビランドサガ』に出てきたディスり合いのシーンや、『ヒプノシスマイク』が特にそうなんですけど、あの熱量は、やっぱ観てて聴いてて迫力がすごいんですよね。声優さんはやっぱり発声もいいし滑舌もいいし、何ならリズム感もあったら、ムチャクチャ強い説得力が生まれて……「セリフに近い」のも相まってどんどんとエスカレートしていくという。あのカッコよさを発見したことも、アニメ周辺の音楽シーンで2018年の大きいトピックのひとつなのかなと思っています。

※4 『ヒプノシスマイク』
キングレコードが手がける、男性声優キャラによるラッププロジェクト。アニメやゲームではなく音楽を原作としている作品で、CDやライブイベントなどを起点に注目を集めている。楽曲の作詞・作曲にはヒップホップ、ラップ界の大物クリエイターも参加。

“新しいヒット”が少なかった2018年に際立つ「UNION」の存在感

OxT「UNION」
作詞・作曲:大石昌良 編曲:Tom-H@ck
TVアニメ『SSSS.GRIDMAN』OPテーマ
リリース:2018年11月7日

『SSSS.GRIDMAN』(グリッドマン)は素晴らしい最終話も記憶に新しいところですが、OPテーマの「UNION」で、OxT(オーイシマサヨシ×Tom-H@ck)の2人のすごさをあらためて感じさせてくれました。特にオーイシさんは、ソロアーティストとしても、楽曲提供者としても、OxTとしてもこうして実績を残したこと。ソロでは『野崎くん』(※5)があって、楽曲提供者としては『けもフレ』(※6)があって、OxTというユニットとしての「UNION」があるというか。もはや、着実にシーンのど真ん中でヒットを作り続けるサウンドクリエイターですよね。『グリッドマン』は作品自体のヒットももちろんなんですけど、彼のこの「王道感のあるアニソンの勝利」というのも感じました。「こんなことまでできちゃうのかよ!?」というやつで、もはやズルいなって(苦笑)。

※5 『野崎くん』
TVアニメ『月刊少女野崎くん』(2014年)。OPテーマ「君じゃなきゃダメみたい」をオーイシマサヨシ名義でリリース。

※6 『けもフレ』
TVアニメ『けものフレンズ』(2017年)。OPテーマ「ようこそジャパリパークへ」(歌:どうぶつビスケッツ×PPP)の作詞・作曲を大石昌良名義で担当。

今はやっぱりアニメが増えて、アニソンが増えてきた中で、ただ単にタイアップが付いたらヒットが生まれるような時代じゃないわけです。これはもうアニソンを作る上では超初歩のことなんですが、どれだけ作品と密着してるかっていうことが、結局はヒットの要因の一番大きいところを占める気がしていて、そういったものに今は立ち返らんとしてる時期なのかなと思います。いわゆるキャラクターソングもそうですし、アニソン・アーティストも、声優アーティストも、J-POPアーティストもそう。さまざまな才能が結集しているアニソンシーンですが、結局は作品のために「いかに心砕いて生み出してるか」という部分は、ちゃんとお客さんに伝わる。そういう真実のアニメソングはやっぱり、一定の評価を獲得するなっていうのをすごく感じましたね。ギミックだけでも、奇をてらったことをやるだけでもダメで。視聴者でありリスナーたちは正直です。

2018年はアニメもアニソンも盛り上がっていたと確かに思うんですが、楽曲数に対して、目立ったヒットは逆にすごく少なかった年だったとも思うんです。その中でも際立っていたOxTの「UNION」は、楽曲と作品との寄り添い方、密着度、いかに「アニメのために存在してるか」ということの大切さをあらためて示してくれた一曲でした。

プロフィール:冨田 明宏

音楽評論家/プロデューサー。2010年にアニメ音楽専門誌『リスアニ!』を企画・立案し、日本武道館で毎年開催されているイベント『リスアニ!LIVE』では総合MCを担当。現在は音楽プロデューサーとしてClariS、内田真礼、黒崎真音、飯田里穂らのプロデュースも手がける。2018年にはElements Gardenの代表・プロデューサーである上松範康の著書『アニソン・ゲーム音楽作り20年の軌跡~上松範康の仕事術~』で聞き手・書き手を担当。テレビ朝日『関ジャム完全燃SHOW』、TBS『マツコの知らない世界』ほかTV出演も多数。