Interview

ラックライフ・PONに聞く、ロックバンドが作るアニメソングの形

ラックライフ・PONに聞く、ロックバンドが作るアニメソングの形

長いインディーズ活動を経て、今年の春にメジャーデビューを果たした4人組ロックバンド・ラックライフ。彼らが選んだ道は、アニメ音楽界における一大メーカー、ランティスとのタッグだった。ロックバンドとアニソンアーティスト。「アニメ主題歌を作り、歌う」というただ1点の行為を通じ、何をすればロックバンドで、何をすればアニソンアーティストと呼ばれるのか。メジャーデビューシングル「名前を呼ぶよ」に続き、2ndシングル「初めの一歩」においてもTVアニメとのタイアップが決まり、まだ確たる定義のない世界に踏み込んだ彼らの現在地について、フロントマンであるPONに話を聞いた。

文 / 神林華奈
取材・撮影 / 西原史顕

5月のメジャーデビューから3ヵ月弱。インディーズ時代と違うなと感じることはありますか?

あまりないですねぇ。強いて言うならば、アドバイスをしてくれる人ができました。たくさんの人たちと一緒に作っているという感じはありますね。

“メジャーデビューシングル「名前を呼ぶよ」レコ発ツアー”が全国3ヵ所で行われましたが、環境が変わったことによるお客さんの変化や、自分たちのパフォーマンスの変化はありましたか?

初めてラックライフのライブを観る人もたくさんいたので、今まで売りきれなかったキャパシティのライブハウスのチケットが完売して「やったー!」と思いました(笑)。自分たちの変化は全く感じないですね。逆にそれでいいんじゃないかなと思いつつ、こんなに変わらずしていいものかとも思います。でも、10年以上も活動しているので、今更変えないですよね(笑)。どちらかと言うと、初めて観る人に対しては「お前ら見とけよ!」「これがライブハウスや!」くらいの気持ちで臨みました。だからいつも以上に荒々しかったり、ふざけてみたり。思わないことは言わないし、嘘をつかないっていうスタンスでこれからもやっていけたらなと。

ラックライフ PON

前作の「名前を呼ぶよ」はTVアニメ『文豪ストレイドッグズ』のEDテーマとして使用されていましたが、アニメタイアップ特有の反応や感触はありましたか?

原作を読んでヒントをもらって、自分のことに置き換えてから曲を書くので、歌詞の内容は全部自分のことなんですよ。だから、作品に寄せているつもりは全くなかったんですけど、聴けば聴くほどぴったりで! もちろん、ヒントをもらったフレーズやセリフがあるわけだから、その人物目線にはなりますよね。「名前を呼ぶよ」だったら、『文豪ストレイドッグズ』主人公の中島敦目線なんですけど。でも「芥川龍之介にもピッタリじゃん」という意見もあって、面白いなと思いました。

そして今作、2ndシングル「初めの一歩」もTVアニメ『チア男子!!』のOPテーマに採用されました。

メジャーデビューシングルの制作が終わって、「ああこれでちょっと落ちつけるかな」と思った瞬間に2ndシングルリリースの話がきたので、息つく暇もありませんでした。でも、こんな短いスパンでCDをリリースできるってありがたいことだなと。

『チア男子!!』は小説が原作ですが、そこから得たインスピレーションはありましたか?

自分のなかでくすぶっている曲作りのヒントを引き出してくれたのが、原作でした。まず原作を読んで、「これめっちゃスポ根やん!」って思ったんですよ。僕が中学生、高校生の頃に、バスケットボール部で頑張っていたのと同じ感じなんだろうなあと思って。青春ド真ん中のキラキラした曲を作りたいなと。チアがテーマのアニメなので、掛け声を入れたらいいんじゃないかと思っていたんです。これまでのラックライフにはないような、みんなで作り上げる楽曲になりました。

だからシンガロングが?

そうですね。メンバーに「ここで“ヘイ!”って言ってほしいねん」ってお願いして。「ここで“ヘイ!”って言うん? どこ? どこそれ?」「そこちゃうねん~」とか言いながら(笑)。ライブではお客さんの声があったほうがいいし、みんなで歌うことに意味があると思うんです。

lucklife_img03

サウンドはポップスな印象があります。

普段から、バンド音楽よりJ-POPを好んで聴いています。音楽をやるうえで、キャッチーであることが正義だと思っているので(笑)。前作がバラードだったので、その印象を裏切ってやろうという思いもありました。ラックライフは、面白いと思ったことは全部やるというスタンスでやってきたんです。だから、メジャーデビューしても今まで通りに曲調の統一もせず、「これいい曲でしょ!」って出したら「おお、いいねえ!」って言ってもらえる環境に感謝ですよね。

やってみなきゃわからない”とか、“新しい世界に飛び込むのさ”というフレーズから、メジャーデビュー後のご自身も重ねているのかなと思ったのですが。

それは全然意識してなかったです。でも、そう言われるとピッタリですね(笑)。原作(『チア男子!!』の主人公である坂東晴希が、幼馴染みに誘われてチア部を設立するというストーリー)を読んで、ふと自分の人生を振り返ると、ひとりで何か新しいことを始めるってなかったなと思ったんです。いつも半信半疑で自分から動けず、誰かが引っ張っていってくれて、「それ面白そうやからやってみる!」みたいな感じなのが俺。だから、ライブハウスでは僕らがみんなをそういう気持ちにできるようになりたいなと思ってます。「いけんちゃうかな!?」っていうノリで始める瞬間って、キラキラしてるなあと思うので、そんな風に一歩踏み出したときに背中を押してくれる曲になるといいなと。

カップリングの「夜の海」も、歌詞は自身のことを?

そうですね。僕、夜になるとひとりになって落ち込むこと探して、浸って……みたいなタイプなんです。ある日、夜の海をひたすら泳ぎ続けるっていう夢を見たんですね。この曲の原型を作っているときに、歌詞のない状態でメロディを歌っていたら、“夜の海”っていうフレーズがポロッと出てきたんですよ。そのときに夢のことを思い出して、どういう意味だったのかなって考えて作りました。怖いししんどいし寒いし嫌な夢だったけど、諦めずに泳ぎ続けたっていうことを誇りに感じて、励まされたというか。自分と向き合って作った曲です。

PONさんは、前に進みながら後ろを振り返るタイプ?

めっちゃ振り返りますね。過去をどんどん美化してしまうので、「あの頃はよかったよな」とか思いがちなんです。そして、その美化された過去にケツを叩かれるんですよね。だから、その場で何か考え込んで過去に浸るっていうのは僕のなかですごく大事な時間なんです。それなしではなかなか前に進めない。

ラックライフ PON

「ソライロ」に関してもセンチメンタルな部分が見受けられますが、やはり自身の過去が題材になっているのでしょうか。

ラックライフは、大阪にある高槻RASPBERRYっていうライブハウスで結成したんです。そのライブハウスは、若いミュージシャンがたくさんいるようなところで、友達がたくさんできて。そのなかに、同い年でキーボードの弾き語りをする女の子がいて、1年前くらいにたまたま再会したんですよ。「全然歌ってない」って言ってて「まあ、忙しいからしゃあないかー」なんて話をして別れたんですけど、その3ヵ月後ぐらいに「キーボード処分しちゃったわー」という話を聞いたんです。弾いてないキーボードを処分したっていうだけなのに、あの頃一緒に音楽をやっていた思い出すべてがなくなってしまったような気がしてすごくショックだったんですよ。そのときに、音楽やライブハウスから離れてしまった人がたくさんいることに気づいて。“夢の形が変わったって そんなんどうだっていいんだ”って歌っているとおり、音楽を辞めてしまうことが悪いっていうんじゃなくて、その人が幸せに過ごしているなら100点なんだけど……。

PONさんが大事にしている思い出だから、10年経っても20年経っても分かち合いたいということですかね。

そうなんです! 多分、実際はみんな忘れてないと思うんですけど、もし僕ひとりだけが覚えてたら悲しいなぁって思って。当時ライブハウスに集っていた同世代の人たちのなかで、歌い続けてるのって僕たちだけなんです。“なんで歌い続けてんねやろ?”って考えたときに、自分が忘れないようにするためと、みんなに忘れないでいてもらうためかなって思って作った曲です。

ネガティブなようでいて、前向きなことを書いてらっしゃる。

そうですね。ネガティブ発信、ポジティブ思考。情けないんですけど、何かにつまずかないと気づけないんですよね。

今回もレコ発のライブがありますね。

9月1日に高槻RASPBERRYで「初めの一歩」のレコ発ワンマンライブをやります。地元なので、調子に乗って帰ろうと思って(笑)。昔から、地元でライブするのがいちばん緊張するんですよね。自分らがしょーもないことやってた時代からの知り合いもいるし、いちばんかっこつけちゃう場所なので、力が入りすぎちゃうんですよ。それに、新しくラックライフを知ってくれた人に、自分たちの育ってきた場所を見せるのも楽しみですね。

アニソン業界に爪痕を残してやろうというような気持ちはありますか?

アニソンやりだすと、“アニソンバンド”として認識されるじゃないですか。それが不思議だなって思っていて。アニソンやってるからアニソンバンドというわけじゃなく、“ロックバンドがアニメの主題歌を歌ってる”でいいと思います。今までロックバンドとしてやってきたし、今もやってるし。だからアニメの主題歌をやったからって、そのシーンにどっぷり浸かるんじゃなくて、これはこれでそれはそれでという風にしていきたいなと思ってます。だから、アニソン系のフェスにも出演して「なんじゃこいつら!」って思われたいですね(笑)。そういう方面にも、どんどんかちこんでいきたいと思います!

ラックライフ

リリース情報

ラックライフ「初めの一歩」

「初めの一歩」

【収録曲】
01. 初めの一歩
02. 夜の海
03. ソライロ

ライブ情報

ラックライフ2nd Single「初めの一歩」Release One-man Live
2016年9月1日(木)大阪・高槻RASPBERRY

【チケット】
7/27(水)18:00~先行販売開始
※詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください
http://luck-life.com

TVアニメ『チア男子!!』

チア男子!!

TOKYO MX(毎週火曜23:00)、サンテレビ(毎週火曜24:00)、KBS京都(毎週火曜24:30)、テレビ愛知(毎週火曜27:05)、BS11(毎週水曜24:30)、ほか、各種配信サイトで放送中。
※曜日・時間につきましては放送局の編成の都合により変更となる場合がございます。
©朝井リョウ/集英社・チア男子!!製作委員会

ラックライフ

大阪・北摂出身の4ピースギターロックバンド。 2005年、高校の同級生であったPON(Vo、G)、イコマ(G、Cho)、たく(B)、LOVE大石(Dr)により前身バンドを結成。2008年3月にバンド名を“ラックライフ”に改名し、大阪・東京を中心に全国的な活動をスタート。2010年に立ち上げた自主イベント“GOOD LUCK”が、2014年以降なんばHatchにて開催されるまでに規模を拡大するなど、バンドとして着実な成長を遂げる。
2016年5月11日、TVアニメ『文豪ストレイドッグス』EDテーマとなるシングル「名前を呼ぶよ」にてメジャーデビュー。今作「初めの一歩」においてもTVアニメ『チア男子!!』OPテーマのタイアップが決まり、バンドとして新たなシーンへと活動の場を広げている。