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水カンin京都・萬福寺。本物のお坊さんも参加した、前代未聞のツアーファイナル

水カンin京都・萬福寺。本物のお坊さんも参加した、前代未聞のツアーファイナル

想定外の展開と病みつきになる刺激。パワーに満ちた “たった今”のカンパネラのライブの形

水曜日のカンパネラ
ワンマンライブ2016“未確認ツアー”ファイナル
@京都・萬福寺 2016.7.18

取材・文 / 平山雄一 撮影 / 横山マサト

水曜日のカンパネラ

 新木場コーストから始まったツアーも、ついにファイナルを迎える。オーディエンスとの新しいコミュニケーションを求めてスタートした、水曜日のカンパネラ史上最大規模のツアーは、コムアイ独特の感性が発揮されて変貌を遂げてきたことだろう。

 あまりのユニークさゆえ、コムアイはライブでずっとアウェーな闘いを繰り広げてきた。しかし彼女を初めて観る人にはそれが非常に刺激的だったようで、イベントに出るたびに新しいファンを獲得していった。

 それが『未確認ツアー』初日の新木場では、詰めかけた“水曜日のカンパネラのファン”を前に、堂々たるパフォーマンス。ホームの闘いっぷりを見せつけた。おそらくこのツアーで水曜日のカンパネラは次のステップに進む。そんな予感に満ちた初日だった。あれから5本のワンマンを重ね、京都・宇治の萬福寺境内の特設ステージに立つ。

 個人的には福岡・嘉穂劇場も観たかった。この昭和の雰囲気を色濃く残した大衆劇場でのJ-POPライブは、椎名林檎以来となる。きっとコムアイに似合うだろうなと思っていたが、萬福寺に足を踏み入れてみると、庭も建物もエキゾティックなムードがいっぱいで、この場所ならではのライブに期待が膨らむ。

 中国から渡来した隠元禅師が、地元の寺と同じ名前を付けて建てただけあって、日本の寺より中国の寺といったほうがいい。装飾も収められている仏像も特異なものが多い。僕のお気に入りは、雲水に時を知らせる大きな魚の形をした板だ。木魚の原型になったと言われるもので、水曜日のカンパネラのメジャー・デビューEP『UMA』(未確認動物)のイメージにピッタリだ。その他、巨大な金ピカのホテイさんや、仏教界最速のランナー韋駄天など、UMAっぽいキャラが350年前から置かれているなんて、よくこんな場所を見つけたものだ。  ステージは寺の中核、大雄寶殿の前の広場に設置されている。舞台には真っ赤な毛氈が敷き詰められ、周囲には中華カラーのノボリがはためき、提灯が吊るされて、荘厳な儀式と盆踊りがミックスされたような賑やかなビジュアルがさらに期待を煽る。

ライブ当日は梅雨明けしたばかりの青空。セミが鳴いている。1500人のキャパがソールドアウトして、開場前から並んでいたオーディエンスは三門(さんもん)で拝観料¥500を払って、次々に入っていく。なんだかライブハウスのドリンク代みたいで面白い。観客は文字通り老若男女で、サブカル系も混じってはいるが、いわゆる“普通の人々”だ。それも「面白いことが大好きな人々」が集まっているように感じた。

 開演時間から遅れること20分、大雄寶殿に数人のお坊さんが入り、中国式のお経の伴奏音楽が奏でられる。続いて主催者から注意のアナウンス。「ステージ前には簡単な柵しかありません。コムアイは3Dで飛び出して会場全部を楽しませますので、絶対に後ろから押さないでください」。一体、どんなライブになるのだろう。

水曜日のカンパネラ 水曜日のカンパネラ

 会場の奥の方から太鼓の音が響いてくる。キャスターの付いたイントレ(台)に大太鼓を乗せ、コムアイがそれを打ち鳴らしながら入場してくる。ははは、確かに3Dだ。広場には立派な松の木が何本も植わっているので、オーディエンスはみんな「どこから太鼓が聴こえてくるのだろう?」と首を伸ばしながらコムアイを探す。そうしている内に、みんなが見える場所にイントレを止めて、コムアイが「ラー」を歌い出す。イントレにはカレーメシ2くんがコムアイと一緒に乗っていて、リズムに乗って観客を煽っている。コーストとは違うオープニング・ナンバーで、萬福寺対応のスペシャル・セットリストだ。

 コムアイとカレーメシ2くんはイントレからステージに移って、「シャクシャイン」が始まる。低音の効いたサウンドが寺の裏山に反響して、中庭のオーディエンスを包み込む。中国風の境内で老若男女がハウス・ミュージックで踊り出す。飛び交う歌詞は、北海道の名産品がズラリ。異様といえば異様な光景だが、グリーンと赤の鮮やかなツートーンのパンツをまとったコムアイのエキゾティックな動きが、すべてをまとめ上げて一つの雰囲気を作っていたのはさすがだった。

 混沌の中に、自然に存在する。ある意味、これがコムアイの特殊能力なのかもしれない。彼女は超個性的な萬福寺に、まったく負けていないのだ。“同化”するのではなく、“異化”することでコミュニケーションを取る。ずっと前にコムアイがライブハウスで鹿の解体をやってのけたことの意味が、ここ萬福寺でぼんやりわかり始める。見に来て、よかった。

水曜日のカンパネラ

 次の「ディアブロ」からは、コーストと同じ曲順になる。その「ディアブロ」では、例の♪いい湯だね いい湯だね 手の指の皮がふやけるね♪というコール&レスポンスからスタート。コムアイがペースをつかみ始める。続く「小野妹子」では雲水たちが登場。コムアイはヨガの先生みたいにクネクネ踊りながら、彼らを先導して特設ランウェイを練り歩く。かなりシュールな光景だ。終わると「お坊さんたちに拍手を!」と送り出す。その後、確認したところ、雲水たちは“仕込み”ではなく、萬福寺の現役の僧侶であった。全員ノリノリで、この寺が当時の流行の最先端の中国文化の中心地だったことを思い出す。

 「雪男イエティ」では、イエティが2匹乱入。「フェニックス」では“サナギ”の着ぐるみから脱皮したコムアイが蝶々になり、蓮の花のお神輿に乗って、再び客席内を練り歩く。よく見ればお神輿の担ぎ手の中にレコード会社のスタッフもいて、手作り感満載。“仲間で好き勝手に作るコンサート”という水曜日のカンパネラのコンセプトがオーディエンスに伝わって、みんなユルユルになって楽しんでいる。これが“たった今”の水曜日のカンパネラ・ライブの形なのだ。

水曜日のカンパネラ 水曜日のカンパネラ 水曜日のカンパネラ

 ここで掟破りのMCが炸裂する。このライブの前の週に熱愛を激写された雑誌“フライデー”を取り出し、記事を読み上げる。「私は謝りません。みなさん、応援してください!」とキッパリ。オーディエンスは想定外の展開に、完全に呑まれている。あはははは!

 そしてここからは音楽的な核心に突入。「ウランちゃん」、「バク」、「ユタ」と続くディープなダンス・ミュージックに耳が引きこまれていく。凄い。ゲラゲラ笑う着ぐるみとの絡みと、ヤバいアシッドハウスが交錯する精神のマッサージに、心がどんどん解放されていく。

「『UMA』、まだ買ってない人」?」とコムアイが尋ねると、かなりの老若男女が手を上げる。「このツアーでいちばん多くない?」。この日がツアー・ファイナルだぜ。大丈夫か(笑)、コムアイ!

 ライブもいよいよ終盤。「ツチノコ」ではステージ両端にセットされたかがり火が焚かれ、コムアイがそこに花束をくべる。1週間前に下見をした際に、急にひらめいたアイデアだという。急きょ、消防署に申請して、ギリギリ許可が取れたのだそうだ。本当に展開が見えないライブだ。それだけに、オーディエンスには「コムアイの新鮮な歓び」が伝わる。

 ラストの「ドラキュラ」は、コーストと同じくウォーターボールにコムアイが入って、会場を転げまわる。コムアイは「あっちに行きたい」だの「あそこに降ろして欲しい」だのと「注文の多い料理店」状態。観客も思い思いの場所で、思い思いのスタイルで踊ったりして楽しんでいる。ギュウギュウ詰めのコーストも楽しかったが、このユルユル感がたまらない。

 アンコールなしの90分、めちゃめちゃ楽しいファイナルとなった。

水曜日のカンパネラ

 終演後に会ったコムアイは「この大きさ、またやりたいな」と言った。「緊張しないの?」と訊くと、「緊張しなさ過ぎてヤバいです。だから開演前は、少しは緊張しないとって気を付けてます」。って、そんな気を付け方、あるんかい。

 萬福寺の感想を訊くと「リハの時、会場のあちこちで歌ってみたんですけど、何かこの場所のパワーが降りてくる曲がありましたね」。

 そんなことを感じられるのは、彼女だけだろう。僕らはそのパワーをコムアイを通じて感じるのだ。それが水曜日のカンパネラのライブなのだ。

水曜日のカンパネラ
ワンマンライブ2016“未確認ツアー”ファイナル @京都・萬福寺 2016.7.18

セットリスト

01.ラー
02.シャクシャイン
03.ディアブロ
04.小野妹子
05.雪男イエティ
06.フェニックス
07.チュパカブラ
08.ウランちゃん
09.バク
10.ユタ
11.猪八戒
12.ユニコ
13.ツチノコ
14.桃太郎
15.ドラキュラ

リリース情報

UMA

水曜日のカンパネラ
『UMA』

メジャー第1弾アルバム

【初回限定盤】(CD+Tシャツ)
WPCL-12387/¥3,611+税

【通常盤】(CD)
WPCL-12388/¥2,315+税

01.チュパカブラ
02.ツチノコ
03.雪男イエティ
04.ユニコ
05.フェニックス
06.バク
07.クラーケン

水曜日のカンパネラ

水曜日起動型、ポップハウス・ユニット「水曜日のカンパネラ」。2013年からコムアイを主演とするユニットとして始動。メンバーはコムアイ(主演)、ケンモチヒデフミ(音楽)、Dir.F(その他)の3人だが、表に出るのは基本的には主演のコムアイのみとなっている。2014年11月に発売した 『私を鬼ヶ島に連れてって』に収録されている楽曲「桃太郎」がWEBやラジオを中心に話題となり耳の早いリスナーが次々と中毒者になっている。そして、昨年11月11日に1年ぶりのアルバム『ジパング』が発売。ヤフオク!のCM楽曲の「ツイッギー」や日清カレーメシ2とのコラボ曲「ラー」など話題の楽曲が収録されている。2016年3月にはアメリカ・テキサス州『SXSW2016』に出演。
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