モリコメンド 一本釣り  vol. 102

Column

ザ・ジュアンズ ローファイ・ポップの進化型。未完成なのに、めちゃカッコいい!

ザ・ジュアンズ ローファイ・ポップの進化型。未完成なのに、めちゃカッコいい!

ロックバンドという形態(“表現”と言ってもいいだろう)のおもしろいところは、演奏の技術とか音楽的な知識にはほとんど関係なく、センスとか雰囲気とか佇まいといった曖昧な要素によって、なぜか“うわ、やばい! カッコいいやん!”と惹きつけられることがしばしば起きる、という事実だろう。筆者(音楽ライター歴・約20年)はもともとパンクロックとかニューウェイブが大好きで、このジャンルは往々にして「バンドに楽器の上手さとか関係ない! 大事な○○○だ!」(“○○○”には“アティチュード”とか“勢い”などが入ります)みたいに言われがちなのだが、特に80年代〜90年代のローファイと呼ばれるシーンには、“恐ろしく下手だけど、めちゃくちゃいいな”というバンドがけっこう存在していた(ギャラクシー500とか、ペイブメントとか。興味ある人はぜひ聴いてみてください。“この程度の演奏でOKなら、自分もバンドやろうかな”と思うはず)。私も十分すぎるほど大人になって、“演奏が上手いことは、それだけで価値がある”と分かる程度の分別は持っているわけだが、それでもやっぱり、“これはもうセンスがいいとしか言いようがないな”というバンドと出会ったときは、なぜか無性に嬉しくなる。今回紹介するザ・ジュアンズは、まさにそういうバンドだ。

新潟在住、平均年齢20才未満の4人組。バンドもドラムも未経験だった“じゅあん”(Vo&Dr)、作詞作曲を手がけるオオノカツミ(Vo&G)、そして、ベーシストのナノカ(Ba)、ギタリストの岩田雄真(G)によって2017年10月に結成。翌月の初ライブでは、いきなりオワリカラ、ドミコといった人気バンドと共演し、2018年には“未確認フェスティバル”“出れんの!?サマソニ!?”といった大型オーディションの最終選考まで勝ち上がった。さらに今年2月のBAYCAMP、3月にはVINTAGE LEAGUE TOUR 2019への出演が決定、新潟在住ながら噂が噂を呼び、都内のイベント出演のオファーも絶えないという。この急激な展開にいちばん驚いているのはおそらくメンバー本人だと思うが、4人の楽曲を聴き、ライブを観た人たちのなかで“ぜんぜん上手くないし、未完成なのに、めちゃカッコいい!”という熱狂が広がっていることはまちがいない。

2018年7月に発売した完全自主制作盤(300枚限定)が約2カ月で売り切れるなど、早耳のバンドファンの間で“ザ・ジュアンズ”に対する興味が高まるなか、ついに初の正式音源がリリースされる。1stミニアルバム『りれっく』。ここに収められた4曲を聴けば、このバンドの摩訶不思議で捉えどころのない魅力を感じてもらえるはずだ。

『りれっく』の1曲目は、リードトラックの「J.U.A.N」。シンプルで直線的なエイトビート、甘くて切ないメロディを描き出す轟音ギターとともに、“じゅあん”は不安定なボーカルを気持ちよさそうに響かせる。ローファイの極致とも呼ぶべきサウンドのなかで広がる

「アタシは未完成/あからさまに不安定/とりあえず可能性/ゼロではないギリセーフ」いうラインは、このバンドの佇まい、そして、じゅあんのキャラクターを的確に示しているのだと思う(お会いしたことはないので、想像ですが)。

さらに、キャッチーすぎるベースライン(めちゃくちゃ簡単なのに、とんでもなくカッコいい)とキラキラのギターフレーズを軸にしたアンサンブルと“息が苦しいよ”というラインがひとつになったポップチューン「べつに」、オオノカツミがメインボーカルを取るフォーキーでノスタルジックな「いつかきっと」、ギャンギャン鳴らされるメロウなギターと“だって好きだった/大好きだった/やっぱ好きだった/君のすべてが”というフレーズがリフレインする「Kmr」を収録。全編を通し、狂おしいまでの切なさが充満しているのも本作のポイントだろう。

海外のバンドでいうと、モノクローム・セット、ベル・アンド・セバスチャン、パステルズ、ザ・ヴェルベットヴェット・クラッシュなど。日本のバンドではスーパーカーとかN’夙川BOYSなどの影響をナチュラルに感じさせる音楽性、そして、楽しそうにドラムを叩きながら歌うじゅあんを中心としたライブ・パフォーマンスも、ザ・ジュアンズの魅力。ローファイ・ポップの進化型と称すべき4人の音楽が、トレンドを上手く取り込んだ“よくできた”楽曲が目立つ現在のシーンに風穴を開けまくる——そんなことが起きたら痛快だろうなと「りれっく」を聴きながら夢想している。ところで「りれっく」って何だろう?

文 / 森朋之

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