LIVE SHUTTLE  vol. 327

Report

「空間を支配する声のチカラ」Aimer、ツアー“soleil et pluie”で魅せた圧倒的な存在感

「空間を支配する声のチカラ」Aimer、ツアー“soleil et pluie”で魅せた圧倒的な存在感

今回のツアー。彼女にとっては新生面を含むもののようだが、僕は彼女のライブを初めて観たので、これまでとの比較ではなく、今回、観たままを書かせて頂くことにする。

開演とともに白いドレスで現われたAimerは、両手を高々とあげ、広い会場の隅々にまでポジティブな“気”を振りまいていった。お客さんは手拍子。曲は「ONE」。歌声とバンドがシナジーを生み、心地良く弾んでいく。バラードのイメージもある彼女だが、そのリズム感は特筆すべきもの。気づけば上半身を、縦に揺らして応えたくなる波動を浴びていた。そのままノンストップで「みなさんついてきてください」と、タイトル未定の新曲(歌詞の“Step up”という言葉が印象的)。さらに「Believe Be:leave」へと、“動”の魅力が炸裂する。次も更なる新曲。こちらはギター・カッティングの鮮やかさに乗せ、歯切れの良い歌唱が印象的だった。

上方にアールヌーボー的な装飾を頂きつつ、ステージの背面ほぼ中央に、海から顔を出すお日様のイラストが掲げられている。ツアー・タイトルの”soleil et pluie”は、フランス語で“太陽と雨”。MCでも説明してくれたが、今回のセットリストは、このふたつの要素を向き合わせた構成である。冒頭4曲は、まさに太陽。降りそそぐ陽光を、全身で浴びるかのようだった。

“太陽と雨”とは、彼女にとって、どんな存在なのだろうか。そこで考えてみた。そもそも海は、太古の昔に大雨が地球を覆い、生み出されたものだ。今ではそれを、太陽が気化させ雲を作り、雨を降らせている。雲は空を塞ぐが、やがてちぎれ、太陽が顔を出す。これらは循環している。そしてAimerという女性のなかでも、ふたつは同じように循環し、彼女の命を息づかせるのだろう。

観客に座って聴いてもらうよう誘いつつの「あなたに出会わなければ~夏雪冬花~」と「今日から思い出 Evergreen ver.」。声を強く張ってもそこが終点ではなく、その先の景色を見せてくれるのが彼女の歌だ。歌い終わると丁寧なお辞儀を欠かさない。誠実な人柄が垣間見られるお客さんの「(ハンド・)クラップがないと成立しない」と前置きしての「カタオモイ」を全員参加で歌い、さらに「思い出は奇麗で」は、ミニマル的に簡素なアレンジが、セットリストのいいアクセントとなっていた。

ドラム→ベース→ギター→キーボードとソロを回していくバンド・セッションから舞台転換となり、彼女は黒を基調としたドレスに着替えて再登場する。歌うは「Ref:rain」。いつしか紗幕のスクリーンが下りていて、そこには雨をイメージさせる映像が。次の「Re:pray」では、その雨が、より細かなものへ変わる。日本語ほど、雨を表わす表現が豊かな言語はないといわれるが、彼女の歌の雨にも、様々な温度感、様々な語彙がある。

「花の唄」は、天候というより、心の中に降る雨だろうか。スクリーンには星屑と、それを縦に切り裂く雨のイメージが重なり合う。歌詞が[花びらが散った]へ差し掛かると、カミナリのような閃光が走り、背景の色が青へと抜ける瞬間も加わりダイナミックに展開した。でもそれも、この楽曲における彼女の強靭な声があるからこそ、演出として成り立つのだろう。「Black Bird」では、舞台に八つの炎が燃え盛り、このライブもいよいよ佳境へと突入していく。

このまま雨の世界へ浸ると思いきや、「最後にもう一度だけ、太陽のもとへ」と、彼女が我々を、陽光のもとへと連れてってくれる。曲は「After Rain -Scarlet ver.-」。会場全体が腕を左右に振り、ワイパーで応える。ヌケのいいギターのリフが響き、ラジオ賛歌、ひいては音楽賛歌といえる「Hz」を。ステージの下手から上手へ、エネルギッシュに動き回るAimer。この、ライブ終盤での機敏な動きも心に残った。でも一瞬、袖に引っ込み、出てくると、「ちょっとハプニングがありまして…」。どんなハプニングかは分らなかったが、それをキッカケに、「今回のツアー中も色々なことがありまして…」という話へ。最後の歌は「蝶々結び」。頭の中で、紐の輪っかの“丸”がバランスを変える。ステージ上手へ下がると、すぐさま場内からは、アンコールを求める拍手が。

アンコールは「自分の原点」という、ピアノの野間康介と二人のステージへ。1月9日に発売された16枚目のシングル「I beg you / 花びらたちのマーチ / Sailing」から、フジテレビ開局60周年特別企画「レ・ミゼラブル 終わりなき旅路」主題歌の「Sailing」を。この作品は、台本を読んでインスパイアされつつ、また、ツアー中、彼女が感じた想いなども盛り込んで作られたという。最後の最後に「キズナ」を。まさにファンのみんなとの絆を確かめ、永遠のものにするかのように歌われた。

ライブ中のMCを、細かく文字に起こしてはいないが、この日、彼女が話していたことで記憶に残ったのは、「これは“自分がやってもいいのかな?”というものも、これからは追求していきたい」という言葉だった。“やってもいいのかな”という表現は、Aimerというアーティストが、皆が認める“らしさ”を確立しているからこそ出てきたものだろう。よく、これまでの殻を破って、という言い方をするが、もしかして、破る必要などないのかもしれない。これまでの総てを肯定し、一回り大きな自分で、今の自分を包み込めばいいのかもしれない。そうやって内側に生まれた年輪を、キャリアと呼ぶのだろう。

取材・文 / 小貫信昭

Aimer Hall Tour 18/19 “soleil et pluie”
2018年12月18日(火) @東京国際フォーラムA

セットリスト

01.ONE
02.Monochrome Syndrome ※新曲
03.Believe Be:leave
04.3min ※新曲
05.あなたに出会わなければ ~夏雪冬花~
06.今日から思い出 Evergreen ver.
07.カタオモイ
08.思い出は奇麗で
09.Ref:rain
10.Re:pray
11.花の唄
12.Black Bird
13.After Rain -Scarlet ver.-
14.Hz
15.蝶々結び

En1.Sailing
En2.キズナ

Aimer

15歳の頃、歌唱による喉の酷使が原因で突如声が出なくなるアクシデントに見舞われるも、数年後には独特のハスキーで甘い歌声を得ることとなる。2011年にシングル「六等星の夜」でメジャーデビュー。
代表曲「蝶々結び」などを収録した4thアルバム「daydream」を2016年9月にリリースし、iTunesアルバムチャート1位などを獲得した他、CDショップ大賞2017において準大賞も受賞。
2019年には16枚目のシングル「I beg you / 花びらたちのマーチ / Sailing」をリリースし、自身初のオリコン週間シングルランキング初登場1位を記録する。

オフィシャルサイト
http://www.aimer-web.jp/

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