Interview

溝口琢矢&藤原祐規が『怜々蒐集譚』で見せる、兄弟のような愛すべき掛け合い

溝口琢矢&藤原祐規が『怜々蒐集譚』で見せる、兄弟のような愛すべき掛け合い

2月17日(日)から新国立劇場 小劇場にて、Zu々プロデュース キネマ(映画)&キノドラマ(舞台)連動興行『怜々蒐集譚』が上演される。原作は、石原 理の同名漫画で、大正時代の文壇で起こった、様々な境遇の人の想いが交錯して生まれる“謎”に迫るミステリー。今作はキネマ(映画)とキノドラマ(舞台)という連動興行で上映・上演される趣向を凝らした作品となっている。
そのキネマ(映画)とキノドラマ(舞台)で、とある出版社の新人編集者・南を演じる溝口琢矢と、人気挿絵師の出泉七朗を演じる藤原祐規に話を聞いた。本作のチャレンジングな上映・上演方法について、役者としての心構え、果ては“役者あるある”まで、ふたりのまるで兄弟の掛け合いのような楽しいインタビューを。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 増田慶


日本の古き良き時代に流れている特有の空気感

原作漫画『怜々蒐集譚(れいれいしゅうしゅうたん)』は、大正時代の文壇に関係する人々をめぐる、ミステリー仕立てのお話ですが、原作をお読みになられた感想を聞かせてください。

藤原祐規 日本の古き良き時代に流れている特有の空気感に魅了されました。ですから、原作を大事にしながら、舞台ならではの世界をどれだけ具現化できるのかが大切だと思っています。

溝口琢矢 いい意味で漫画らしくなくて、人間同士の関係のお話がしっかりと描かれているので、重厚な小説を読んでいるような気持ちになりましたね。

溝口琢矢

溝口さんは出版社の新人編集者の南、藤原さんは人気挿絵師の出泉(いでいずみ)七朗を演じます。

藤原 原作をご存知の方は、出泉は変わり者に描かれて見えるかもしれませんが、決して変わり者ではなくて、実は奥が深くて魅力的な人物だと思います。それから、みぞたく(溝口琢矢の愛称)が演じる南と絡むことが多いので、これからの稽古が楽しみですね。

溝口 僕は冒頭からストーリーを進めていく語り部の役ですね。たくさん喋る役で、僕もよく喋るのでそこを加味してキャスティングしていただいたのかもしれません(笑)。

藤原祐規

では、どのように演じようと思っていらっしゃいますか。

溝口 本読みがあったので、各々のイメージは徐々にできていると思います。でも、やはり本稽古に入ることでお芝居は変わっていくと思っています。特に出泉や幽興斎葛葉(味方良介)は実際に稽古に入らないとつくれない役だと思っていて、藤原さんが出泉を「変わり者に見えるかも」とおっしゃったように、僕らが演じやすい雰囲気をあえてつくらないと彼らの役が固まらないんです。

藤原 そのとおりで、本読みの段階から手探りですね。みぞたくとのやりとりは本読みで掴み始めてはいるし、演じるうえで大切にするキーワードは何個かあるのですが、どうやって演じていくのかは、これから試行錯誤していくと思います。

期待を裏切る素晴らしい出来栄えの脚本

本読みをされているということで、舞台版の脚本を読まれて原作との違いはありましたか。

藤原 期待を裏切る素晴らしい出来栄えの脚本ですね。原作ものの舞台は、エンタメに寄せるイメージがあるかもしれませんが、小説の世界をそのまま舞台化したような骨太なストーリーになっています。

溝口 今作は、原作のありとあらゆる要素を詰め込まない、風通しが良い作品なので、舞台から原作を知った方は、思わず原作も知りたくなって、漫画を読みたくなると思いますよ。

今作の面白いところはキネマ(映画)とキノドラマ(舞台)を同時に上映・上演する体裁をとっているところですね。

藤原 舞台と映画を同時期に一緒に楽しめることは挑戦だと思います。舞台を先に観るか、映画を先に観るかの違いで、見え方が変わります。映画から観た人は、舞台を観れば違った感動を得られるし、逆もあるはずです。つまり、舞台は場転をするし、暗転もありますが、映画はシームレスに次のシーンに変わっていくので、映画と舞台の違いを見比べていただけたらたくさんの発見があると思います。

溝口 それから、ストーリーの時間軸も違うので、一度で二度美味しいですし、お客様にはそう思っていただけるようにしたいです。お互いの相乗効果で、舞台を先に観た方は映画を気になっていただけたら嬉しいですし、映画から舞台を観ていただいても十分楽しめると思います。

しかも映画と舞台、どちらも新国立劇場という劇場で上映・上演されるのも画期的な取り組みだと思います。

藤原 上演された舞台が時間を経て映画化されることはよくありますが、同じ会場で同じ時期に上映・上演する手法は現代の演劇の世界では新しい試みですね。こういった方法が成功を収めて広まっていくと嬉しいです。

溝口 作品がより立体的になる気がしますね。映画も舞台も新国立の客席で観るわけですから、不思議な感覚に陥ると思います。

まずは僕らがお芝居をしっかり演じること

「キノドラマ」は、実際に映像と舞台を効果的に組み合わせた大正時代に流行った表現方法を用いるということで、現代のマッピングとはまた違った感触があると思いますが、この時代にそういった手法が甦ることの意義を感じたりしますか。

藤原 まだ映像がどういうものになるのかわからないのですが、スタッフから話を聞くと、舞台の世界観を構築するのに有効に使っている気がしますね。

溝口 映像も大切ですが、まずは僕らがお芝居をしっかり演じることが大切になると思います。そこから、どうやって映像を活かしていくかというディスカッションを経て舞台が出来上がるでしょうね。稽古場に入って、どれだけ役者同士が先輩・後輩の垣根を超えて話し合うかで、舞台の良し悪しが変化していくと思います。

演出の八鍬健之介(やくわ・けんのすけ)さんは、wonder×worksでも活躍されている気鋭の演出家ですね。

藤原 適当さが見当たらないから信頼できます。つねに演出プランを想像していらっしゃって、答えを探しているイメージがあります。

溝口 初めてお会いした日に一緒にお食事をさせていただいたんです。そこでどうしても聞きたくて聞いたのが、「絶対にバイクに乗っていますよね?」って。

藤原 なぜ!?(笑)

溝口 見た目からカッコいい方だと思って(笑)。そうしたら、実際にハーレー・ダビッドソンに乗っていらっしゃるそうで、意思疎通ができました(笑)。

(笑)本読みのときに八鍬さんがおっしゃられたことで印象的なことはありますか。

溝口 役者たちに、「自分で役をどんどんつくり上げていって欲しい」とおっしゃっていました。原作があるとどうしてもキャラクターのイメージが先行して固まっている傾向にありますが、今作に関しては、演じ方の可能性が広がっているから、「どうやってそれぞれがつくり上げていくのか、みんなでどれだけ詰めていくかで、全体の質が上がっていく」とおっしゃっていましたね。

藤原 実は初めて原作を読んだときの出泉は「飄々としているな。変わり者だな」と思ったので、その感じで本読みをしていたんです。1幕を読み終えて何もおっしゃられなかったのですが、個人的に演技プランを聞きにいくと、たくさん考えていらっしゃって、すぐに答えが返ってきました。「彼は飄々としているだけではなくて、信じているものがある。だから、あえて飄々と見えたり、変わり者に見えるように演じて欲しい」と静かに熱い言葉をいただきましたね。

まったく違う感性を持ったふたりから同じ役の演出を受ける

「キネマ」(映画)では映画監督の武島銀雅さんが演出をされますが、ほぼ同じ時期にふたりから演技を当てられることも今作の特徴ですね。

藤原 映画はすでに撮り終わっています。なので、舞台の稽古を経て、映画と舞台が全然違う内容になってしまわないようにしたいですね。そうならないように、僕ら役者がしっかり道筋をつくっていきたいです。まったく違う感性を持ったふたりから同じ役の演出を受けることは今まで経験がないですから、これから舞台の稽古があるのが少し怖くて(笑)。

溝口 (笑)。僕は楽しみですね。特撮の『仮面ライダー』シリーズに出演していたときは、監督が5人ほどいらっしゃってローテーションで撮影が進んでいくんです。そうすると、その都度見せ方が変わるので、よくご覧になっている視聴者は「この回は、あの監督」と当ててしまうらしいんです。今作も、映画と舞台で違う演出を受けるので面白いと思いますし、それが魅力になれば作品に深みが増すと思います。

そういった特殊な環境の中で、役者としてのスタンスやモチベーションは、普段の舞台や映像の現場と違うものですか。

溝口 舞台の稽古が始まってから映画の撮影をしていたら、役づくりに混乱して、正直きつかったと思います。ただ、今作はそうではなかったし、舞台の本読みにも映画の監督が同席されて、舞台と映画の演出には共通認識があったうえでの撮影だったり、舞台稽古だと思うので、ふたりの演出家が別々に作品をつくるのではなくて、同じ作品をふたりでつくり上げている感覚で、安心感がありました。ただ映画と舞台というジャンルが分かれているだけで、目指すゴールは同じなので、僕らのお芝居へのスタンスはブレないと思います。

藤原 もし最初に舞台の稽古に入っていたら、ガッチリとつくったキャラクターになってしまって、少しオーバー・アクトになっていたかもしれませんね。プレーンな状態で映画の撮影に入れたから、うまく芝居ができた気がするし、舞台にも自然に臨める気がします。自分の演技プランをまず立てて、それを演出家に提示して、違ったら直すという、役者としてのスタンスは変わらないけれど、映画と舞台が同時に上映・上演されるという新しい試みがあるから自然とモチベーションは高くなっています。事実、本読みからみんなの結束力は高い気がしますね。みんなで話さずにはいられないんですよ。しっかりしたお話だし、それぞれの役どころについて共通項を持っていないと、ぐちゃぐちゃになってしまう危機感を持っているんです。

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