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丘山晴己の「死を超え」躍動する肉体が美しく輝く。舞台「Fate/Grand Order THE STAGE -絶対魔獣戦線バビロニア-」東京公演レポート

丘山晴己の「死を超え」躍動する肉体が美しく輝く。舞台「Fate/Grand Order THE STAGE -絶対魔獣戦線バビロニア-」東京公演レポート

舞台「Fate/Grand Order THE STAGE–絶対魔獣戦線バビロニア-」が1月11日(金)より大阪のサンケイホールブリーゼにて開幕。東京公演が1月19日(土)より日本青年館ホールにて上演中だ。原作ゲームは約1,300万ダウンロードを記録している人気作。今作で描かれるエピソードは「第七特異点 絶対魔獣戦線バビロニア」で、“神”と“人間”が共に暮らしていた時代、紀元前2655年の古代メソポタミアが舞台となっている。東京公演のゲネプロの模様をレポート。

※なお東京公演ゲネプロの藤丸立香 役は大海将一郎が務めた。

取材・文 / 竹下力

丘山晴己が引き締まった肉体に汗を垂らしながら、“絶対君主”として舞台を生き抜いた

舞台「Fate/Grand Order THE STAGE–絶対魔獣戦線バビロニア-」を観劇したあとに襲ってきた感情の波は、言葉にできない“絶対”ということだった。“絶対演技”“絶対美術”“絶対衣裳”“絶対音楽”など、書き出してみるとどこかアングラ演劇用語みたいだけれど、この舞台は“絶対”という言葉自体が持つ圧倒的な迫力を感じさせてくれた。

休憩を挟んで3時間と少し。作品のテーマを伝えたい信念、舞台上で起こる出来事を正確に目の前に表出させたい願い、観客を感動させたいエネルギーが、カンパニーの切実なる想いとしてそこかしこから伝わってくる。観客はそのカンパニーの想いを受け止め、心地よい疲労感を味わうことになる。それは、カーテンコールで見せた、ギルガメッシュ 役の丘山晴己が引き締まった肉体に汗を垂らしながら堂々と板の真ん中に立ち、“絶対君主”として舞台を生き抜いたことにも象徴されていた。いずれにせよ、美術・音楽・演出・演技、あらゆる要素が一部の隙もなくカッチリとハマった舞台だった。

物語は2015年、人理継続保障機関のカルデアが近未来を観測できる装置“レンズ・シバ”により2017年に人類が絶滅することを予知するところから始まる。その原因を見つけるために、デミ・サーヴァント(英霊と融合した人間)であるマシュ・キリエライト(ナナヲアカリ)、藤丸立香(大海将一郎/坂本澪香[Wキャスト])、レオナルド・ダ・ヴィンチ(RiRiKA)、カルデアをまとめ上げるロマニ・アーキマン(井出卓也)らは、“聖杯探索(グランドオーダー)”という儀式で解決しようと試みていた。そこで藤丸とマシュは、紀元前2655年の古代メソポタミア、賢王・ギルガメッシュ(丘山晴己)が君臨していた“ウルク”という国に送り込まれる。しかしウルクは、ケツァル・コアトル(赤井沙希)、エレシュキガル(川村海乃)、ゴルゴーン(護あさな)という3人の女神、 “三女神同盟”と“魔獣”の襲撃によって滅亡の危機に瀕していた。そんなタイムスリップした先で、 “魔獣”に襲われる藤丸とマシュは、エルキドゥ(山﨑晶吾)と名乗るサーヴァントに助けられる。さらに、彼らの前に魔術師・マーリン(瑛[あきら])とサーヴァントのアナ(桑江咲菜)が現れ、彼らとの出会いが歴史の歯車を変えていく……。

物語の主軸は、現代の人間が過去に関わり、予期せぬ事件によって本来あるべき未来が変わってしまうという、いわゆる“タイムパラドックス”と対峙するSFファンタジーである。初演の「Fate/Grand Order THE STAGE-神聖円卓領域キャメロット-」(17)では、13世紀のエルサレムを舞台に“絶対君主”であるファラオ、オジマンディアス(本田礼生)といかに交渉ごとを進めてグランドオーダーを行うか、ということが物語になっていた。本作でもその鍵を握るのが、“絶対君主”ギルガメッシュである。彼らといかに折衝を行うのか……いわゆる“父性”との出会いがテーマでもあると思う。

まず、イギリスでも活躍している舞台美術の松生紘子のセットに刮目すべきだろう。今作では、幅の違う3枚のスクリーンが上下左右と動き、魔術やサーヴァントの必殺技のエフェクトや街の様子を色とりどりに表現していく。セット自体に映像が美しく映し出されることもあり、夜のシーンが多いわけではいないのだが、夜空や花火がとても印象的で、夜景の色合いが美しかった。そこには照明の大波多秀起の手腕も発揮され、昼や夜の雰囲気を劇場内に緻密に伝えている。

また、エキゾチシズム溢れる巨大な装置にも注目したい。なにより場面転換数が多く、セットが所狭しと動き回る。アンサンブル・役者を含め、どれだけの稽古を積んだら、セットの位置や導線を正確に覚えられるのだろう。この舞台シリーズは、とにかく役者とセットが渾然一体となって、物語をグイグイ進めていく。まさに演劇ならではの仕掛けとも言えるだろう。さらに、牧野 iwao 純子の重厚でモダンな衣裳も、原作に寄り添いながら、なおかつ古代メソポタミアの歴史を切り取ったようでド肝を抜いてくれた。

音響も素晴らしかった。日本青年館ホールを十二分に活かした天野高志に拍手を送りたい。左右のスピーカーから、音楽の大塚 茜のエキゾチックな音楽や現代音楽が耳に心地よく入ってくる。SEも直接心臓に突き刺さる迫力があった。さらに、前作では奏者 役としてヴァイオリンのAyasaが生音で幽玄な調べを付けてくれたが、今作奏者 役の美鵬直三朗の太鼓の音は、中央から“ドン”と響くリズムが音楽にアクセントを付け、腹にずしりとくる。今作の“神”と“人間”の対立をドラマチックな“音塊”で表現していたと思う。

演出の福山桜子は、人類の未来が藤丸とマシュの肩にかかっているという切迫感やシリアスなトーンを、時折りコミカルな情景を交えながら、芝居の緩急を自在に操り見せてくれているようだった。また彼女の脚本から感じたのは、まっすぐな“原作愛”。けれど、原作を知らなくても、語り部になっている井出卓也がしっかりと説明してくれるから安心できる。いずれにせよ、それぞれのキャラクターがしっかりと存在していて、誰が見ても楽しめる造形をつくり上げていたと思う。

当然、今作でも見どころはたくさんある。過去と現在のストーリー、 “カルデア”と“ウルク”の時空を超えた会話、それらが激しく交錯し、グルーヴのある壮大な物語で観客を引っ張っていくのだが、合間に挟まるマイルドで口当たりの良い歌、キレのあるダンス、アクロバティックな殺陣が見せ場をつくってくれるので、観客をお芝居の進行から置いてきぼりにしない。歌、ダンス、殺陣はストーリーの要所で楔のような役割を明確に果たしていたし、観客をハッとさせるカンフル剤になっていた。そういった優しい配慮も演出の福山の力だろうし、アンサンブルを含めキャスト37人の大所帯の力量をまざまざと感じさせてくれた。

初演から続投のナナヲアカリ、井出卓也、RiRiKAは造形が深くなって、演技に説得力が増していた。特にRiRiKAの歌は聴くたびにうまくなっているような気がして底が知れない。初出演組の、シドゥリ 役の門山葉子は“忠義”が似合うきっぷのいい女性、ゴルゴーン 役の護あさなはその対極にあるような悪女を演じ、それに応えるように、ケツァル・コアトル 役の赤井沙希は躍動的な所作を機敏にみせ、エレシュキガル 役の川村海乃は冥界の女主人という恐ろしい任を負っていながらも佇まいが可愛らしいという絶妙なコントラストを生んでいた。イシュタル 役の八坂沙織は溌剌と恋に生き、アナ 役の桑江咲菜は小柄な体躯ながら優しげで影がある抜群の存在感を見せる。

マーリン 役の瑛(あきら)は、どこかあっけらかんとした性格を演じ抜き、藤丸立香 役の大海将一郎は果敢に正義に生き、そして成長する男の子をしっかりと演じてみせた。また、エルキドゥ 役の山﨑晶吾は自らの出自に悩みながら、ギルガメッシュとの切っても切れぬ関係性を繊細に表現し、過酷な運命を背負った役どころを熱演していた。

ギルガメッシュ 役の丘山晴己は、“絶対君主”はさもありなんといった風情で、佇まいからして威風堂々としていた。初日コメントで「この舞台を一言で表すと“死”」と語っていたが、人間の抜き差しならない“生”と“死”から浮き彫りになる、人の“人生そのもの”を果敢に己の肉体ひとつで表現していたと思う。そして、堂々とした台詞回しも魅惑的で、役がブレないところに“丘山”の“丘山”たる所以を感じさせてくれ、感動的ですらあった。

この舞台に溢れている“絶対”感──それは“安心”感とも違う、何か見てはいけないものを見てしまっているような、禁忌にも似た感覚だ。“たぶん”ではなし得ない、カンパニーの“絶対”的な完成度に、ただため息が漏れることへの愉悦。それこそがおそらくこの舞台から漂っている圧倒的な何かなのだ。だけど、それがうまく言葉にできないから口惜しい。だからこそ何度でも足繁く通ってしまう。まさに“演劇”マジックにかかってしまう舞台でもある。

公演は、1月27日(日)まで日本青年館ホールにて上演される。また、1月26日と27日の公演はライブビューイングも決定している。さらに、本作のBlu-ray / DVDが6月26日(水)に発売される。

舞台「Fate/Grand Order THE STAGE -絶対魔獣戦線バビロニア-」

2019年1月11日(金)~1月14日(月・祝)サンケイホールブリーゼ
2019年1月19日(土)~1月27日(日)日本青年館ホール

原作:Fate/Grand Order
脚本・演出・作詞:福山桜子
音楽:大塚 茜

ギルガメッシュ 役:丘山晴己
エルキドゥ 役:山﨑晶吾

藤丸立香 役:大海将一郎/坂本澪香(Wキャスト)
マシュ・キリエライト 役:ナナヲアカリ

マーリン 役:瑛(あきら)
アナ 役:桑江咲菜
イシュタル 役:八坂沙織
エレシュキガル 役:川村海乃
ケツァル・コアトル 役:赤井沙希
ゴルゴーン 役:護あさな
シドゥリ 役:門山葉子

レオナルド・ダ・ヴィンチ 役:RiRiKA

ロマニ・アーキマン 役:井出卓也


奏者 役:美鵬直三朗


アンサンブル:加藤貴彦、前原雅樹、西田健二、穴沢裕介、増山航平、早川一矢、KiKi、田口恵那
大久保芽依、竹井未来望
海谷ひとみ、工藤博樹、田嶋悠理、渡辺誠也、仁木紘
街の民:野崎みちる、千葉由香莉、萩原梨美子、飯嶋みずき、外井咲和子、古城戸美穂、脇領真央

主催:「Fate/Grand Order THE STAGE -絶対魔獣戦線バビロニア-」プロジェクト(アニプレックス/イープラス/ノーツ/ディライトワークス)

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