TVアニメ『SSSS.GRIDMAN』特集  vol. 4

Interview

『SSSS.GRIDMAN』全話を終えて。雨宮哲監督が語るアカネの魅力、『エヴァ』からの影響と回答、そして…「まだまだ火種は残ってます」

『SSSS.GRIDMAN』全話を終えて。雨宮哲監督が語るアカネの魅力、『エヴァ』からの影響と回答、そして…「まだまだ火種は残ってます」

円谷プロダクション制作による1993年放送の特撮作品『電光超人グリッドマン』を原作に、アニメ制作スタジオのTRIGGERが完全新作アニメーションとしてリメイクした話題作『SSSS.GRIDMAN』。ここでは、本作を「アニメと特撮の架け橋になるような作品」にするべく情熱を注ぎこんだ雨宮 哲監督へのインタビューを敢行。原作へのリスペクトを表しつつ、2018年という時代性を切り取って作られた本作で、監督はどのようなことを表現したかったのか? 『新世紀エヴァンゲリオン』や円谷プロ制作の“あの特撮作品”からの影響も含め、ざっくばらんに語ってもらった。

取材・文 / 北野 創(リスアニ!)


その時代にしかない空気感を、純度が高いままパッケージングしたかった

『SSSS.GRIDMAN』は90年代の特撮作品『電光超人グリッドマン』が原作になりますが、それを現代的なアニメ作品にリメイクするにあたって意識したことは?

雨宮監督 原作の『グリッドマン』は単純に言ってしまうと友人関係を描いていて、最終的に「友だちっていいよね」という結論で終わるんですけど、それに似た印象でありつつ、今のアニメとして楽しめるような形にしたかったんです。

キャラクターもアニメ雑誌に載ることを意識したデザインにしたり、2018年の今っぽさを極力入れることで、時代が進んで振り返って観たときに少し古臭くみえるようになればいいなと思って。原作の『グリッドマン』も今観ると古さを感じる文化がたくさん入ってるじゃないですか。それと同じように、その時代にしかない空気感みたいなものを純度が高いままパッケージングしたかったんですね。

たしかに『SSSS.GRIDMAN』に登場するキャラクターたちは、みんな現代っ子ぽい喋り方や振る舞いをしてますね。

雨宮 そこは最初からアニメっぽくしすぎないほうがいいなと思ってました。このアニメは毎回怪獣が出てきてグリッドマンがビームで倒す流れになることが決まっていたので、物語の入り口はそのウソっぽい展開から遠いほうが面白くなると思ったんですよ。例えどんなにリアルな始まり方をしても、かっこつけた演出をしたとしても、結局最後はビームを撃って爆発するアニメなんだよ、ということは常に意識してました。

監督は今作を制作するにあたって「アニメと特撮の架け橋になるような作品」を意識されたとのことですが、原作の『グリッドマン』に対してはどのような思い入れをお持ちですか?

雨宮 原作はコミュニケーション不全の話だったりするところが好きなんですよ。地球破壊とかの規模の大きい話ではなくて、子供たちの社会の話というのが面白いところで。おそらく中学生が主人公の特撮は他にあまりないと思いますし、その設定自体がアニメっぽいんですよね。デザイン的にもウルトラマンと比較するとアニメ向きですし、そこはアニメにするのには相性がいいなあと思いましたね。

『SSSS.GRIDMAN』に登場する新条アカネやグリッドナイトの名前は、原作のお蔵入りになった設定や続編企画から引用されてますが、こちらにはどんな狙いがあった?

雨宮 僕はまずキャラクターの名前を決めてからお話を考えるタイプなので、あくまで足掛かりとして引用したところが大きいです。僕自身は原作の続編を作ろうという気持ちはほとんどなくて、どちらかと言うと、その設定をどう解釈したか、どう描くか、ということのほうが大事だと思うので。なので「if」の物語の提示でしかないですね。でも、グリッドナイトは自分としても観たい部分ではあったんですよ。

アカネちゃんはたまに人間っぽくなる部分があるんですけど、あくまでクズとして描きたかったんです

『SSSS.GRIDMAN』は、自らの世界を作ってその中に閉じこもっていた新条アカネがグリッドマンに救われて現実の世界に戻るまでの物語、という見方ができると思うのですが、アカネとグリッドマンは「ヒロインとそれを助けるヒーロー」という関係性なのでしょうか?

雨宮 アカネをヒロインにするつもりは全然なくて、彼女は敵役として話を作っていったので、意味合いとしては裏の主人公というところですね。この作品では、自分が正しいと思ってることと、それは違うんじゃないかという部分のせめぎ合いを描けたらと思ってたんですよ。

その中でグリッドマンは絶対的なヒーローなので、いつも正しいんですけど、正しいからと言ってすぐ解決できるわけではなくて。途中で「どちらも正しいからぶつかってしまう」という台詞が出てきますけど、グリッドマンはそういう当たり障りのないことしか言えなくて、正論は論でしかないんですね。答えは無くてもいいし、そこに至るまでの過程が大事なので、その分を考えていけるような作品になればいいなと思ってました。

アカネはアレクシス・ケリヴにそそのかされて次々と怪獣を作り出すわけですが、第10話で主人公の裕太を刺す際に「私もグリッドマンと話してみたかったな」と語りますよね。それはアカネ自身にもヒーローに対する憧れの気持ちがあったから?

雨宮 アカネちゃんはたまに人間っぽくなる部分があるんですよ。ただ、あくまでクズとして描きたかったので、クズとしてブレないキャラにしようとは考えてました。パンを踏むような奴にロクなのはいないと思うので(笑)。アカネちゃんはもともとねじれてる部分が増大しただけで、(アレクシス・ケリヴに)洗脳されてるようには描きたくなかったんですね。そんな中でも、一個ぐらいは(ヒーローになれる)可能性があってもいいんじゃないかということですよね。

そういう意味では原作の藤堂武史に近い存在というか。

雨宮 そうなんですけど武史くんよりもヤバいですよね(笑)。武史には及ばないまでもそれに匹敵する敵キャラを作らなくてはいけないと思っていたので、あんなに変な奴になってしまったんですよ。でも、自分に正直な人間という部分では一緒ですね。

それと作品内の描写で気になっていたのが季節感です。第8話では暦的に10月になって文化祭が行われますけど、その段階でも夏っぽい雰囲気ですよね。TV放送ではOPアニメ明けに必ず青空とセミの鳴き声が挿入されましたし。

雨宮 それは音のイメージが先行してあって、何もBGMが付かない場面で使いやすい音がセミの声ということもありますし、二学期に突入しても夏が続くことでリフレイン感というか終わらない雰囲気を出したかったんです。あの世界にバグが起こってるというか、季節が動かないことで「その世界が進まない」という意味にも捉えられるようにしようと思って、ずっと夏が続いてる印象にしたかったんです。

それと、たしか三年くらい前に、10月なのにずっと暑かった年があったと思うんですけど、そのイメージもありました。まあ言ってしまうと『(新世紀)エヴァンゲリオン』の影響だと思うんですけど。

本作には『エヴァ』へのオマージュ的な演出も多くみられましたが、やはり影響は大きかったのですね。

雨宮 今作というよりも僕が一番影響を受けた作品ですから。僕の中では『エヴァンゲリオン』が最上位のもので、たぶんアニメじゃないことをやってたとしてもエヴァっぽいものを作ってたと思うんです。僕は『エヴァンゲリオン』の世代で、とにかくどっぷり浸かってたので、それが今でも続いてる感じなんです。

いわゆる『エヴァ』ブームの直後に「ポストエヴァ」を探るような時代があって、エヴァの影響を受けたアニメがたくさん作られた時期があったんですね。でも、その頃の僕はまだ学生でアニメの仕事をしてなかったので、今さらですけど「“ポストエヴァ”レースに参加したい!」という強い想いがありました。

その情熱が今回の『SSSS.GRIDMAN』にも反映されてると。

雨宮 今回は前半部分だけを意識して作ったんです。僕は個人的に後半が大好きなんですけど、『エヴァ』は前半部分があってこその後半だと思いますし、そういうものを意識していました。

1 2 >
vol.3
vol.4