LIVE SHUTTLE  vol. 49

Report

CBCテレビ開局60周年記念事業 ザ・ビートルズ来日50周年記念コンサート『THE TRIBUTE』 2016.6.28-6.29【後編】

CBCテレビ開局60周年記念事業 ザ・ビートルズ来日50周年記念コンサート『THE TRIBUTE』  2016.6.28-6.29【後編】

名古屋で行われた、ザ  ビートルズ来日50周年記念ライブ《後編》。絢香、奥田民生、斎藤和義、トータス松本らが登場、ビートルズを演奏!

『ザ・ビートルズ 来日50周年記念コンサート「THE TRIBUTE」』が2016年6月28日、29日の2日間、名古屋国際会議場センチュリーホールで開催された。1966年6月30日〜7月2日にかけて東京・日本武道館で行われたザ・ビートルズの来日公演の50周年を記念したこのイベントには、(1日目)ROY(The Bawdies)、スキマスイッチ、LOVE PSYCHEDELICO、CHAR、(2日目)絢香、トータス松本(ウルフルズ)斉藤和義、奥田民生が出演。日本の音楽シーンを代表するアーティストがザ・ビートルズの名曲をカバーする、きわめて貴重なステージが繰り広げられた。

取材・文 / 森朋之


<2日目・6月29日> 雨にも関わらず、開演時間10分前には客席はほぼ満員。ザ・ビートルズが来日時に羽織っていたJALのハッピを着た人、なかには“サージェント・ペパー”のコスプレの人の姿もあり、会場は既にお祭りモード。前日に引き続き、ジョン・レノンの妹ジュリア・ベアード氏の紹介の後、「ビートルズ来日50周年記念コンサート THE TRIBUTE」の2日目がスタートした。

最初にステージに姿を見せたのは、今年デビュー10周年を迎えた絢香。白いドレスに身を包んだ彼女が静謐なピアノの音色とともに歌い始めたのは、もっとも知られた楽曲のひとつである「Yesterday」。ふくよかな響きをたたえた歌声が会場全体を包み込み、いきなり大きな感動へと導かれる。少しだけメロディのニュアンスを変えながら、一つ一つのフレーズを手渡すように歌う彼女の姿からは、デビューから10年というキャリアのなかで積み重ねてきた奥深い表現力がじんわりと伝わってきた。ピアノは名手・塩谷哲。クラシカルな雰囲気を織り交ぜた彼のフレージングも、この名曲の美しいメロディを効果的に引き立てていた。

「私がビートルズと出会ったのは、小学校3年生のとき。夏休みに母が“聴いてみたら”と音源と映像を渡してくれたのがきっかけなんです。デビューしてからも何度かビートルズ・ライブに呼んでいただいて、そのたびに母がいちばん喜んでくれるんです。その顔を見るたびに歌ってきて良かったって思いますね」というMCを挟み「Oh!Darling」。ザ・ビートルズ後期のロックンロール・ナンバーをピアノ1本で聴くのもきわめて新鮮。洗練と情熱がせめぎ合うようなボーカリゼーションも強く心に残った。続く「Eight Days A Week」では自然に手拍子が沸き起こり、心地よい高揚感へとつながっていく。「本当にどれも名曲で。歌っていてワクワク、嬉しくなります」という彼女もザ・ビートルズを歌うことの喜びを全身で味わっているようだった。

ラストは、やはり超名曲のひとつ「Let it be」。「曲作りを始めたばかりの頃、改めてこの曲の素晴らしさに感動したことがあったんです。“こんなにシンプルなコード進行に、どうしてこんなにも美しいメロディが乗せられるんだろう”って。『Let it be』に影響されて出来たのが、じつはデビュー曲の『I Believe』だったんです」というエピソードとともに披露されたこの曲のボーカリゼーションは、まさに絢香の真骨頂。正確なピッチと強い感情表現がひとつになった歌声は、観客ひとりひとりの胸に真っ直ぐに届いたはずだ。

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「Dream Power ジョン・レノン スーパー・ライヴ」にも参加している凄腕のミュージシャンが揃ったバンドメンバーが登場、骨太のビートを打ち鳴らす。観客が一斉に立ち上がり体を揺らし始めたと同時に、細身のスーツに身を包んだトータス松本がステージに駆け込み、「ヘイ!」と叫び「Money」を放つ。ザ・ビートルズをはじめ、ザ・ローリング・ストーンズ、ザ・ソニックスなどがカバーしたこのロックンロール・ナンバーをトータスは溢れんばかりのソウルとともに歌い上げ、会場の熱気をグングン上げていく。

「すいません、絢香さんとの温度差があり過ぎて」というMCの後は、「Money」と同じくアルバム「ウィズ・ザ・ビートルズ」に収録されている「All I’ve Got To Do」。ブラックミュージックのエッセンスをたっぷり含んだグルーヴ、1950年代のリズム・アンド・ブルースを想起させるようなコーラスワークも絶品だ。

さらに「You Can’t Do That」を披露した後、ザ・ビートルズの楽曲の魅力について言及。「初期の曲は特に短いよね。それが14曲くらいバーッと並んで、それがスリリングでね。しかも50数年経って、いまなお、売れ続けるってどういうことでしょう? 今回みたいな機会に聴き直したりすると、やっぱりすごいなーって。すごすぎて、ちょっとヘコんだりしながら、でも、やる気も出て来るんですよね」

ラストは切ない情感を描いた歌詞と美しいメロディラインが印象的な「Don’t Let Me Down」、そして、「最後は盛り上がるヤツをやるんで。いっしょに歌ってください」と初期の名曲「Twist And Shout」。客席にマイクを差し出し、コーラスのパートをオーディエンスとともに大合唱、50年以上前のロックンロール・ナンバーによって会場がひとつになっていく。どんなに激しくシャウトしながら、楽曲の情景、ムードをしっかりと描き出すトータスのボーカルはまちがいなく、すべての観客の心に強烈なインパクトを与えたはず。リズム・アンド・ブルースの影響を感じさせる楽曲を中心にした構成も聴き応えがあった。

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3番目に登場したのは、斉藤和義。「せっちゃん!」という大歓声を浴びながら斉藤は「トータスも俺と同い年なんですけど、ちょうど50歳になって。しかも6月生まれなので、俺が生まれてちょうど1週間後くらいにビートルズが日本に来てたってことで……懐かしいです」と挨拶、「I Wanna Be Your Man」からライブをスタートさせる。レノン=マッカートニーがザ・ローリング・ストーンズに楽曲を提供し、それをザ・ビートルズがセルフカバーしたという有名なエピソードを持つこの曲は、シャープなビートと黒人音楽のテイストを含んだメロディが軸になったロックンロール。もちろん斉藤のスタイルにもしっかりとハマっている(客席のジュリア・ベアード氏も楽しそうに踊っていました)。

続いて、ジョンのソロ曲「ジュラス・ガイ」に斉藤自身が日本語の歌詞を付けたバージョン(2007年のアルバム「紅盤」収録)を披露。「焼きもち焼きの男がいるよ」というフレーズで始まり、愛する女性に対する嫉妬を赤裸々に歌い上げるこの日本語バージョンからは、斉藤のソングライティングの奥深さが存分に感じられた。「ジョンが歌ってるのはこうじゃないと思うんですけど、じつはこういう女々しいところもあったんじゃないかと‥」というコメントも印象的。日本のミュージシャンの個性的なカバーを通して、ザ・ビートルズのメンバーの人間性を想像できることもこのトリビュートライブのおもしろさだろう。

憂いを帯びたグルーヴとエッジの効きまくったギターソロが炸裂した「Come Together」(当然ながら前日のCharの演奏とは、まったく解釈が違っていました)、そして、「ジョージの曲を」という短い紹介から「TAXMAN」。シャープかつサイケデリックなバンドサウンド、どこか挑発的なニュアンスを含んだボーカルはインパクト十分。ザ・ビートルズの“ヤバさ”“危うさ”を前面に押し出しながら斉藤自身の音楽的スタイルにリンクさせた、きわめてスリリングなアクトだった。

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「ビートルズ来日50周年記念コンサート THE TRIBUTE」のトリを飾るのは、奥田民生。大歓声を受けて登場した奥田は「えー、ここまでだいぶ時間が巻いておりまして。誰のせいでもなく、ビートルズの曲が短いからなんですけども」というMCで笑いを取る。さらに「カープ強いね!」という観客の声を拾って「え、その話してもいいっすか?」とユルいトークを展開。しかし(当たり前ですが)演奏が始まるとビシッと凄みのあるロックミュージックを体現する。まずは「A Hard Day’s Night」。きわめて原曲に近いアレンジながら、奥田がギターをかき鳴らし、ひと声発するだけで独特のヴィブスを持ったロックが生み出される。このパワーはやっぱり凄い……と圧倒されていると、またしても軽妙なトークへ。「昨日はあっちに行ったんじゃないですか? モンキーのほう(←6月28日、29日の2日間、ザ・イエロー・モンキーが名古屋でライブを開催しました)。モンキーのボーカルの人が、“行きたかった”と伝えておいてと言ってました」という話題でまたしても笑いが起こる。ユルさとカッコよさのコントラストが楽しすぎる。

この後は、ヒネリが効いた選曲と強烈なダイナミズムをたたえたパフォーマンスで観客を魅了していく。ツイン・リードギターの個性的なハモりから始まるロックンロール「And Your Bird Can Sing」。さらにジョージの作詞・作曲による(原曲ではエリック・クラプトンがリードギターを担当)「Savoy Truffle」では、豪快さと緻密さをきわめて自然に共存させたギターソロを弾きまくる。そして、個人的にもっとも強く心を揺さぶられたのは「She Said She Said」だった。中期のアルバム「リボルバー」のA面の最後を飾るこの曲は、4拍子と3拍子が混ざったサイケデリックなナンバー。ザ・ビートルズのなかでももっともドラッギーなこの曲を奥田は、鋭利な手触りと圧倒的な迫力を伴いながら、あくまでもしなやかに再現してみせたのだ。このセンスと技術はやはり並ではない。

「またこういうイベントが名古屋でもどんどん出来たらいいなと思っております!」という言葉を挟み、最後は「Dizzy Miss Lizzy」。ルーツミュージックに根差したロックンロールをラフにカッコよく歌えるのも、奥田民生の大きな魅力だ。
大きな歓声に応えて、奥田がトータスと斉藤をステージに呼び込む。3人でザ・ビートルズ来日時の「JALハッピ」を着て、「こんばんは、ビートルズです!」(奥田)と挨拶。「温泉に来たオッサンみたい(笑)」(斉藤)「ビートルズが着るからカッコいいだけで、我々は着こなしてしまうからね」(奥田)みたいなトークから「I Want To Hold Your Hand」。3人がコーラスを重ね、斉藤、奥田がギターソロを絡め合う貴重なシーンが実現する。さらに「Everybody’s Got Something To Hide Except Me And My Monkey」を披露し、ラストは絢香も加わり「Hey Jude」。最後のサビのコーラスで絢香が客席にマイクを向けると、オーディエンスから美しい大合唱が起こる。ザ・ビートルズの名曲を日本のトップミュージシャンがカバーし、愛情に溢れたファンとともに共有する、本当に意義深いイベントだったと思う。

セットリスト

絢香 w/Pf(塩谷) 1 Yesterday 2 Oh! Darling 3 Let It Be 4 Eight Days A Week

トータス松本 1 Money 2 All I’ve Got To Do 3 You Can’t Do That 4 Don’t Let Me Down 03:34 5 Twist And Shout

斉藤和義 1 I Wanna Be Your Man 2 ジェラス・ガイ(日本語) 3 Come Together 4 Taxman

奥田民生 1 A Hard Day’s Night 2 And Your Bird Can Sing 3 Savoy Truffle 4 She Said She Said 5 Dizzy Miss Lizzy

セッション[奥田民生,斉藤和義、トータス松本] 1 I Want To Hold Your Hand 2 Everybody’s Got Something To Hide Except Me And My Monkey 3 Hey Jude[奥田民生,斉藤和義、トータス松本、絢香]

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