佐野元春 REVIEWS Original Album 1980-2013  vol. 3

Review

佐野元春 REVIEWS Original Album vol.3

佐野元春 REVIEWS Original Album vol.3
pct5

5th 「Café Bohemia」
1986年12月1日発表

Epic Records Japan
① Café Bohemia(Introduction)
② ワイルド・ハーツ – 冒険者たち
③ シーズン・イン・ザ・サン – 夏草の誘い
④ カフェ・ボヘミアのテーマ
⑤ ストレンジ・デイズ – 奇妙な日々
⑥ 月と専制君主
⑦ ヤングブラッズ
⑧ 虹を追いかけて
⑨ インディビジュアリスト
⑩ 99ブルース
⑪ Café Bohemia(Interlude)
⑫ クリスマス・タイム・イン・ブルー
⑬ Café Bohemia(Reprise)

作品もパフォーマンスもひとつ頂点を極めた重要作

飛ぶ鳥を落とす勢いで突っ走る佐野は、85年に入るとすぐにシングル「ヤングブラッズ」を発表。国際青年年のテーマソングに選ばれてNHKで大々的に露出されたこともあり、シングルとしては初のトップ10ヒットとなった。

そして翌年にも続々とシングル・リリースを放ったのちに発表したのが、5作目となるオリジナル・アルバム。

前作はニューヨークからの影響が大きかったが、ここではUK発のブルーアイド・ソウルやアシッド・ジャズに触発されたサウンドがユニーク。

フォーク・ロックとソウル・グルーヴが合体したような「ワイルド・ハーツー冒険者たち」、ジャジーなインスト・ナンバーの「Café Bohemia」、スカ・ビートを取り入れた「インディビジュアリスト」などは、その代表的な作品と言えるだろう。

また、ヴァイオリンをフィーチャーしてどこか牧歌的な印象を残す「シーズン・イン・ザ・サンー夏草の誘い」やアーシーなサウンドとラップ調のヴォーカルの融合がユニークな「ストレンジ・デイズー奇妙な日々」など実験を重ねているのもさすが。

先行で12インチ・シングルがヒットしていたレゲエ・ナンバー「クリスマス・タイム・イン・ブルー」も含めて、これだけ振り幅の大きなアレンジができたのも、The Heartlandというバンドの成長と比例する。

実際、このアルバムのツアーはライヴ盤にもなっており、作品もパフォーマンスも頂点を極めた瞬間の記録でもある。

栗本斉


pct6

6th 「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」
1989年6月1日発表

Epic Records Japan
① ナポレオンフィッシュと泳ぐ日
② 陽気に行こうぜ
③ 雨の日のバタフライ
④ ボリビア – 野性的で冴えてる連中
⑤ おれは最低
⑥ ブルーの見解
⑦ ジュジュ
⑧ 約束の橋
⑨ 愛のシステム
⑩ 雪 – あぁ 世界は美くしい
⑪ 新しい航海
⑫ シティチャイルド
⑬ ふたりの理由

時代の変遷期で歌われた個人的イノセンスの危機

このアルバムを聴くとき、いつも意識されるのは “ジュジュとは誰なのか?あるいは何なのか?” という命題だ。

そして、それはおそらく、このアルバムの楽曲にはしばしば “おれ” あるいは “俺” という一人称が登場することと関係があるだろうと理解している。

“ぼく” でも “わたし” でもなく、“おれ” として規定されるその人格は、少し偽悪を気取っているように感じられなくもないが、そのテのセンチメンタリストは自分の身の周りにもいて、その連中を仔細に観察していると、ジュジュという存在についてもある種の答えのようなものが見えてくる気がする。

このアルバムは、1989年6月にリリースされたわけだが、時はまさしくバブル崩壊前夜。

昭和から平成へと元号が変わり、さらには天安門事件やベルリンの壁崩壊といった世界的事件が続き、そうした社会の “システム” の変化との連関で語られることも多い。

そのつながりはおそらく否定できないが、ここではもっと個人的なイノセンスの危機が取り沙汰されているように感じるし、だからこそ ♪ごらん世界は美しい♪ と祈りにも似た気持ちで自らに言い聞かせているのではないか。

もっとも、時代のカナリアたる佐野の個人的な葛藤は、成熟した社会が本来持っているはずの健全なイノセンスをこの国がこの後喪失していくことをいち早く予見していたとも言えるだろう。

兼田達矢


佐野元春 & THE COYOTE BAND
『BLOOD MOON』Now on Sale

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Track List

01. 境界線
02. 紅い月
03. 本当の彼女
04. バイ・ザ・シー
05. 優しい闇
06. 新世界の夜
07. 私の太陽
08. いつかの君
09. 誰かの神
10. キャビアとキャピタリズム
11. 空港待合室
12. 東京スカイライン

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